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 世界中どこが火種となって大崩壊が始まるのかわからないほど、世界中に不安要因が満ちているけれど、著者は大崩落が起こることは既定の事実という主旨で記述している。日本の国債不安について、なぜ危険なのか、どの本よりも分かりやすく説明されている。2011年7月初版。

 

 

【まえがき】
 今後世界に訪れるのは各国の国債市場の大暴落(金利急騰)、それに伴う通貨価値の失墜、さらに加速するインフレです。世界経済は鎖のようにつながっているため、一度どこかで市場の波乱が起きれば、その影響は瞬く間に世界に広がるのです。
 2012年、いよいよ資本主義システムが崩壊に向かうのです。
そして、その大混乱は実のところ、長期間にわたって極秘裏に計画されていたものなのです。(p.6)
 “長期間にわたって極秘裏に計画されていた” とあるけれど、その計画の手順はこの本を読んでみればよく分かる。

 

 

【ニューエッジ証券】
 日本株が歴史的な大暴落をした3月15日、一体誰が相場を動かしたのですか? ・・・(中略)・・・ 得体のしれないニューエッジ証券の巨大な売買ではないですか! 誰も知らない不気味なお化けが日本の市場を席巻しているのです。(p.24)
 大震災直後の日本株を暴落させたのは、フランス系のニューエッジ証券という会社だった。
 顧客が日本の投資家ということは考えられません。おそらくこのニューエッジ証券自体が自分たちで大量の取引を行っているか、一番高い可能性としては、大物のヘッジファンドの注文を仲介しているということでしょう。
 外務員わずか20人の会社が、連日総額で1兆円も超える取引など、人間を介してできるわけがありません。
 ということは、これはすべてコンピューターによる取引、つまりロボット・トレーディングによる注文と思って間違いないでしょう。(p.26)

 

 

【規制も意味がないロボット・トレーディング】
 コンピューターによるロボット・トレーディングについては、下記リンクの著作に書かれているけれど、1000分の1秒という高速で売買を繰り返すシステムは、体系的な戦略で確実に利益を出すことができる仕組みということになる。つまり、利益を生み出す売買を、人為より高速に人為より確実にかつ徹底的に遂行するのである。
 もはや、世界の証券市場で、このようなロボット・トレーディングが機能していないところはない。手数料で収益を上げようとする証券市場を運営する会社にとって、矢継ぎ早に高速で売買するロボット・トレーディング手法を擁する顧客は上顧客である。それゆえ、世界中の各地の証券市場は、高速トレードのできるシステムへと更新されつつあり、それができていない所は、高速取引の機能を持つ私設の電子取引所に顧客を奪われているという。
 つまり、世界中の証券市場が、システム的に、わずか数秒間で、より振り幅が大きくなる(大暴落に向かう)仕組みになってしまっているということ。
   《参照》   『すでに世界は恐慌に突入した』 船井幸雄・朝倉慶  ビジネス社 《前編》
             【ロボット・トレーディング】
 米国の証券取引所には、5分以内に10%の値動きがあった場合は停止する規制(サーキットブレーカー)がありますが、1000分の1秒で繰り広げられる取引では、数秒で信じられないような天文学的な取引をすることが可能なのです。規制など全く役に立ちません。 ・・・(中略)・・・ 完全に機械にあやつられている世界の市場は、もはや救いようがないのです。(p.32-33)

 

 

【すべてがグル】
 まさに、相場は茶番劇なのです。当局とゴールドマン・サックス、ヘッジファンド、取引所、すべてがグルと言っても過言ではなく、要所要所でお互いをうまく利用しあっていると言えるでしょう。(p.111)
 つまり露骨なインサイダー取引なのだけれど、胴元は何をしようが決して摘発されないのである。ヘッジファンドと言ってもいろいろあるけれど、ロスチャイルド・ファミリーに育てられたソロスのような人々が運営するそれは、勿論、胴元の内である。
 下記リンクと同様の記述をあえて書き出したのは、暴落は起こってしまうのではなく、意図的に起こされるということの確認のため。
   《参照》   『連鎖する大暴落』 副島隆彦 (徳間書店)
             【CMEの先物取引】

 ユーロの不安定に関わる要因も、アメリカ(ゴールドマン・サックス人脈)によってきちんとセットされてきているのである。

 

 

【市場を決めるモノ】
 市場の動きを正確に予測できなければ、経済等わかるわけはありません。経済が市場を決めると思ったら大間違いで、今や市場はマネーの力で荒れ狂うのです。リーマン・ショックなどはその典型です。市場がどのように暴発するかを予測できなければ、経済など語っても意味がありません。それでも現実は、従来のような教科書的な解説が堂々とまかり通っているのです。(p.140)

 

 つまり、大学で経済学を教えているオッチャンたちは、イケシャアシャアとした、ないしは、間抜けなグルなのだということ。

 

【日本人に日本国債を保有させた計略】
 日銀の資金循環統計が算出した2009年度末の国債の保有状況をみると、銀行等が38%、保険・年金基金が24.4%、公的年金が11.6%、家計が5%、海外が4.6%となっています。(p.124)
 「日本国債の95%は日本人が保有しているのだから、夫婦間貸借のようなものであって、それによって国家破綻することなどない」と言われているけれど、そもそも日本国債は低金利すぎて魅力ある金融商品ではなかったからそうならざるをえなかったという単純な事実と、さらには、銀行や保険会社や国民が自国債の保有へ向かわざるをえない状況と国際的な規制という計略があったのである。
 
【リスキーな先物取引より国債へ】
 先物の導入ですべてがかわったのです。 ・・・(中略)・・・ 。資金を持っているところが絶対的に有利で負けないSQ(Special Quotation)制度によって成り立っています。 ・・・(中略)・・・ さらには、この自由に株価を動かせる制度を利用して、デリバティブなどといった仕組みを構築し、今や日本の市場ははっきり言って外資のエサになっています。(p.145)
 アメリカの支配下にある日本の証券会社は、日本国内でアメリカの様々なババ証券を今でも売っている。
   《参照》   『ドル亡き後の世界』 副島隆彦 (祥伝社) 《前編》
             【償還期限】

 まあ、日本のみならず世界中がそうだったから、世界席巻作戦の第一弾としてサブプライムやリーマン・ショックがド派手に起こされたのだけれど、「証券市場での暴落に懲りた方々は、債権に乗り換えなさい」という世界的な作戦だった。

 

 

【BIS規制】
 このBIS規制も1988年に作られました。すべては日本が頂点に立っていた1980年代の後半に仕掛けが始まったのです。 ・・・(中略)・・・ いわゆる自己資本比率8%というやつです。
 この自己資本比率に国債が含まれていたのである。
 BIS規制によると、トヨタやキヤノンといった優良企業の社債はリスク100%で、ギリシャ国債はリスク0%ということになる。規制とか法律なんて、既得権者の意向によって造られているだけで、実質はこのように実にいい加減なものなのである。
 とにかく、自己資本比率8%を維持するために、当時も今も日本の各銀行は、日本国債を率先して購入せざるをえなくなっていた。
 日本の銀行がBIS規制でがんじがらめにされている間、欧米の銀行は商業銀行と投資銀行に分かれていて、後者はBIS規制の対象外として、やりたいようにやれていたのである。
   《参照》   『2009年断末魔の資本主義』  ラビ・バトラ  あ・うん
             【略奪資本主義が辿る道の象徴】

 上記リンクにあるように、リーマン・ショック以降、投資銀行は再び商業銀行となってはいる。そして現在は商業銀行としてロボット・トレーディングで荒稼ぎをしているのである。つまり、1929年の世界恐慌前の状態に戻っているのである!!!
 横道というかバイパスに入ってしまうそうだから、BISに話を戻すと、
 ではこのBIS規制は何をめざしているのでしょうか?
 それは、国債漬けなのです。(p.151)
 先物取引は、30万円の証拠金で1000万円の取引ができるというルールだから、欧米の投資銀行の資金力に対抗するために、日本の商業銀行は、BIS規制に抵触しないためにどこも国債をジャンジャン購入して資金量を膨らませるしかなかったということだろう。
 つまり、日本のみならず世界各国は、世界的な投資バブルにつられて国債バブルに誘導されていたのである。
 「ほぉ~~~」と、嵌められていながら感心してしまうほどに見事な計略である。
 ついでに、広瀬隆の『赤い楯』を読んだことがある人なら、「バーゼル・クラブ」という単語を知っているはずだから、下記リンクを付けておきます。

   《参照》  『恐慌前夜』 副島隆彦 (祥伝社)

             【 B I S 】

 

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