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 予測や世界情勢解釈の大筋において、既刊書である 『新世紀の大逆転』 と同じことが書かれている。本書が書かれたのは、リーマンショック直後の、2009年1月初版。

 

 

【略奪資本主義が辿る道の象徴】
 最後の投資銀行トップ2社が商業銀行になったことで、アメリカには大手の投資銀行がなくなってしまった。
 まさに、ブッシュ政権の市場原理主義、新自由主義の最大のシンボルともいえる、ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーの転身は、略奪的資本主義がこれから辿る道を象徴するものと言えるだろう。(p.84)
 そもそも、アメリカで商業銀行と証券=投資銀行業務が切り離されたのは、1929年の世界大恐慌がきっかけだった。しかし、結局、証券化のテクニックを悪用した投資銀行が再び墓穴を掘ったのである。それを規制しなかったのがアラン・グリーンスパンという富裕層サイドの遣り手だったのである。馬鹿げている。

 

 

【グリーノミクスの本当の姿】
 私にいわせれば、グリーンスパン氏の 「グリーノミクス」 の本当の姿は 「グリードミクス(greed=強欲の経済手法)」 なのだ。
 本来、社会全体のために機能しなければならない経済を、富裕者を中心とした 「強欲」 のシステムに変質させてしまった。前述した下院公聴会での証言で、グリーンスパン氏は 「銀行などが利益を追求すれば、結果的に株主や会社の資産が守られると考えていました」 と述べたが、これこそがいみじくも彼の本質を表している。
 いったい、どこの世界に、「私益を他人に配分する銀行・金融機関」 があるというのだろうか。銀行こそが、資本をかき集め、根こそぎ奪っていく 「強欲」 の根源でなくてなんだというのだろう。(p.162)
 強欲、愚劣なアメリカ銀行団に追随する日本。いつまでそんなことをやってるのやら。世界は明らかに潮流を変えている。

 

 

【中南米の新しい動き】
 (ベネズエラの)チャベス政権が、南米の貿易協力機構であるメルコスール(南米南部共同市場)にも加わり、イランやロシア、中国、ベラルーシなどと積極的に外交を繰り広げている。(p.204)
 南米は、『チェ・ゲバラ』 などに代表される歴史的反米地帯である。アメリカの強欲に強烈に痛めつけられてきた国々ではあるけれど、ロシアとのタッグであるから、日本も諸手をあげて協力するというわけにはいかないだろう。今年、来日したチャベス大統領も、あまり期待していた成果は上げられなかったはずである。

 

 

【ロシア】
 過去5年間、年間6~8%の経済成長を遂げたロシアだったが、他国に侵攻したことはイメージを落とした。ロシア軍が南オセチア自治州への攻撃を開始してからの2営業日だけで、70億ドル(約7000億円)の資金が外国人投資家によって引き揚げられた。(p.208)
 これだけ読むと、ロシアだけが悪者に思えてしまうけれど、最初に仕掛けたのはアメリカである。北京オリンピックの開会式当日に軍事力で仕掛けたアメリカに、反撃したロシアは、次に資本力で屈服させられたのだろう。勿論ロシアもアメリカの経済崩壊に一矢を報いたに違いないのである。世界的な大不況の背後には、アメリカ・ロシアの世界覇権をめぐる強欲な争いがある。
   《参照》   『暴走する国家 恐慌化する世界』 副島隆彦・佐藤優 日本文芸社 《下》
             【グルジアの言語上の特殊性】
 オバマ新大統領に対しては、メドベージェフ大統領はG20でワシントンDCを訪れた際に次のように述べている。
 「アメリカとロシアは、相互の信頼に欠けてきたが、私たちはアメリカの新しい政権の誕生に期待している。私たちは、対話の窓口を開けている私たちから先に敵対的行動をとることはない。ロシアに反米感情はない」
 こう述べたが、同大統領は、まさにオバマが当選を果たしたその日を狙ったかのように、アメリカのミサイル防衛(MD)網のポーランドなど東ヨーロッパ配備に対抗してロシアの西部にミサイルを配備することを表明した。(p.210-212)
 実にロシアらしいやり方である。とは言え、日本のメディアはアメリカ側に牛耳られているから、ロシアだけがひどそうに見えるけれど、先のグルジア問題に書いたように、アメリカとロシアは互角のカウンター・パートナーである。鴨は地政学的に真ん中に位置して素直で良い子の日本である。
 ロシアは、08年10月以降、ミサイル発射実験を繰り返し行っている。中でも北極海のバレンツ海から、潜水艦発射弾道ミサイルを 「太平洋の赤道付近」 に設置した標的に着弾させるなどしている。
 これは、今後ロシアが、太平洋に軍事的にも進出してくるという意思表示と考えることができる。(p.212)
 スーパーの息子であるヤワそうな岡田外相が、強欲銀行団のアメリカばかりを嫌悪し、強奪盗人のスラブ主義的ロシアの手法を甘く見ているなら、とんでもないことである。

 

 

【中国】
 中国は現在の体制をしばらくは維持していくだろう。ただし、「2008年の予測」 で述べたとおり、2010年に中国に大きな危機が到来する。
 その危機の具体的な内容はまだわからないが、イランで発生する変化と同じように、国内や外国の状況によって、さまざまな危機が起こりうる。台湾が関係した政治・軍事的な危機となる可能性も捨てきれない。(p.221-222)
 台湾がトリガーとなる可能性は、アメリカから台湾への武器売却による中台の対立によって、中国に進出している多量の台湾資本が中国から一挙に引き揚げられることで発生することが考えられる。
 中国にしてもロシアにしても、経済成長の実態は外需による処が大きくかつ外資による業績によるところが大きいのだから、自国が発端となる崩壊なら、政治・軍事的傲慢が引き金となるのだろう。

 

 
【日本】
 著者は、資本主義の崩壊によって新たな世界秩序が形成される時、日本が世界の中心となって、その役割を果たすことになるだろうと述べている。この点は、既刊書(『新世紀の大逆転』)の繰り返しである。
 

 

<了>
 

  ラビ・バトラ著の読書記録

     『史上最悪の大破綻!!』

     『2010年資本主義大爆発』

     『2009年断末魔の資本主義』

     『新世紀の大逆転』