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 2009年12月1日初版。初版日の10日ほど前には書店に並んでいるから、この日には読み終わっていた。
 ドル暴落に関して、「日本政府は何もせず、みすみす日本を転覆させる気なのか」 と呆れるけれど、日本が恐慌に巻き込まれるその見え透いた仕組みが、最初の数ページに記述されている。
 経済ってそんなに興味はないけれど、国際経済は明らかに政治的に作られているという背面観察のために、この本と、副島隆彦さんの 『あと5年で中国が世界を制覇する』 と 『暴走する国家 恐慌化する世界』 を合わせて読むならば、全体が見えてくるから少しは面白いだろう。

 

 

【為替仕組み債】
 専門家ですら明確に理解しづらいデリバティブという金融商品には、為替の変動に応じて損得が分岐する 「為替仕組み債」 というのが相当数存在しているらしい。
 日本全体でみると、凄まじい額の為替仕組み債取引がなされているのは疑いなく、これが、私の見方通り、激しい円高ということに陥れば、ほとんどすべてノックイン状態 (いわゆる契約で言われた為替の水準に到達して、大損する状態) になるのは疑いなく、国家として、緊急事態を迎えることになるだろうということです。(p.15)
 つい数日に起こったドバイ危機。その後には安定した円が買われさらに円高が進んだと、今日のニュースで言っている。いずれにせよ、アメリカ・ドルの凋落はわかっていることなのだから、円高は進み、日本の民間団体が資金運用しているものは、先々全てを失うことは明白である。対オーストラリア・ドルに対して円高に振れて有名大学の資金が失われたというニュースが数ヶ月前にでたけれど、あれと同じことが日本の全ての運用資金で起きることになる。
 中国は、これに対してはっきりした対応をしている。
 これら、デリバティブ契約の無効宣言は、中国が国家の意志として、欧米金融機関に通達したことは・・(p.16)
 日本は何故、中国と同じことを宣言しないのか?
 アメリカが編み出したこのようなデリバティブの 「為替仕組み債」 などというものは、長期的なアメリカの衰退を既定の事実として戦略的に作られている物なのに、これで資産運用だなんて・・・完全に狂気である。

 

 

【ドル資産を増やしたBRICs】
 中国やロシアなどは、アメリカに対立するような動きを見せている反面、その行動とは裏腹に、BRICs4カ国のドル資産は増え続けています。この4カ国は、08年からの世界的な景気後退によって輸出が打撃を受け、それを緩和するために自国通貨を売り、大量のドル買いに走り、09年5月時点で、外貨準備高が600億ドルの増加しているのです。ブラジルもインドも08年1月以来の増加、ロシアも同年7月以来、最大の外貨準備高になりました。いずれも急激な自国の通貨高に対応するために、やむを得なかったというわけです。(p.63-64)
   《参照》   『暴走する国家 恐慌化する世界』 副島隆彦・佐藤優  日本文芸社 《上》

               【アメリカ処分案】

 かなり、皮肉っぽいけれど、基軸通貨国の終わりを告げるサドンデス以外の急激なショック(失速)は、このような揺り戻しを伴ってしまうのが現実の経済というもの。

 

 

【ロボット・トレーディング】
 リーマン・ショック後に懲りもせず金融商品でまたまた稼いでいるのが、禿鷹ファンドで悪名高いゴールドマンサックスである。
 ゴールドマンは4~6月期に年間換算すれば5兆2000億円に上る異常な利益を叩き出しました。これは日本の法人税の半分です。この立役者はロボットによるトレーディング・システムです。 (p.176)
 ロボットは儲けるために異常な取引を繰り返していたに違いないのです。もちろん恐怖から株を売ったり、先物を売り叩いた投資家も多かったと思います。その動きに便乗して恐怖感を煽り、相場を売り叩いて大儲けしたのは、プログラム売買です。東証は不正など見つけることはできません。(p.177)
 アメリカでは既に、コンピューター・プログラムによる高速処理(フラッシュオーダー)のトレーディング・システムが標準的に稼働している。これによって10000分の4秒差で先んじた売買をして利益をあげているのである。日本もアローヘッドというシステムが来年1月から稼働するそうであるけれど、悪知恵がふんだんに託しこまれているであろうジェームズ・シモンズのシステムに太刀打ちできるのだろうか。既に金融は、コンピュータの性能と確率の勝負になっている。金融の知識とは無関係な数学者が作ったシステムがボロ儲けしているのである。 (この付近の記述の中に、 “ロボットの 「独断場」“ という誤記がいくつもあるのが気になる)
 しかし、問題は勝ち負けではない。
 いずれロボットが繰りだす考えもつかないような相場展開にすべてを失うことになるでしょう。資本主義も機械化もついに我々を滅ぼすところまで来たのです。やがて嵐のように氾濫する相場をみて、人々は自分たちがやってきた愚かな行動の結末を知ることになるでしょう。(p.178)

 

 

【リーマン・ショック後のドル】
 もとはデリバティブという金融の怪物が1兆円の6万倍の6京円という、天文学的バブルを起こし、破裂したのが原因なのです。とにかく、問題の分析や主因を考える暇などありません、世界を金融危機から救うには、手っ取り早くドルを供給するしかありませんでした。 ・・・(中略)・・・ 。
 世界は強調して、ドル供給に努めました。そこには金融のモラルも秩序もなく、ただ世界の終わりを防ぐというお題目だけがあったのです。結果、気が付いてみると、世界中にドルというドルが撒き散らかり、ついにはお金でジャブジャブの状態になっていたのでした。(p.56)
 誰かが身を捨てて発信するべきです。「FRBの信用緩和政策に出口はありません。我々は時間の問題で、ドル暴落というハイパーインフレに向かうしかないのです」 と。 (p.104)
 ジャブジャブのドルは、価値が下がるのが必然。まずはデフォールト宣言(日本風にいえば徳政令)、次いで戦争でもオッパジメてハイパーインフレを起こし、最後にデノミで締めくくる。というかつて歴史上に行われた筋道しか、アメリカが再建する方法はないのだろう。露骨にやると世界中から文句がでるから、カウンターパートナーの中国を使いつつ、偶然そうなったかのように上手にその筋書きを進めるのである。

 

 

【インフレ創出法】
 いくつかケースが考えられますが、その破壊的なインフレの出現は、あたかもそれが自然発生したかのごとく演出されることでしょう。今、予想されるところでは、イランの核開発に対する強硬策、イスラエル対イラン保守政権の対立激化からくる紛争の拡大、これらの軍事衝突による石油暴騰に端を発する商品インフレ等々です。(p.86)
   《参照》   『あと5年で中国が世界を制覇する』  副島隆彦  ビジネス社 《後編》

              【世界政治の本当の焦眉の中心】

 

 

【焼け太りする巨大金融】
 規制緩和であれば敗れたものは退場し、それが活性化を生む素地になっていくのですが、巨大金融機関はめちゃくちゃなゲームをやり過ぎて実質破綻して、気が付いてみると巨額な債務を市場が吸収できなくなって、救うしかなくなりました。結果、敗れたものが、まさに<焼け太り>となってジャイアント金融機関となり、その姿を現しているのです。(p.118)
 「金融機関の破綻は、川下への影響が大きい」 と、もっともらしい理由がいつも語られるけれど、それも影響力の大きい人物が政府とのパイプ役として介在し、全てを思うがままに支配しているのである。金融機関こそが世界を牛耳る癌細胞人脈の巣窟である。
 金融システムの維持という大義名分のもとに、結果的には、彼ら全体(勝者のゴールドマン・サックス、敗者のシティー、AIG)としてみると、アメリカ政府が天文学的な資金(税金)を投入することによって、誰も倒れることなく、焼け太りとなったのです。要するに、彼らはデリバティブという賭博に張る額を大きくすればするほど、全体としては肥え太るという構図になっているのです。(p120)
 まさに狂気! しかし、狂気はこれだけではない。
 公的資金を得た金融機関の100億円単位のボーナス支給が問題となり、米国民を怒らせました。しかし、その1万倍の資金が、紙くずのような住宅ローン担保証券と社債に使われることがすんなり決定された点については、ニュースにもなりません。要は、巧みなマスコミ操作で、問題の先送りに成功したということです。そして先送り名人というより、世界をマネーインフレで破滅に導く役割を負ってきたバーナンキFRB議長の再選が難なく決まったのです。
 もはや、誰にもこの流れを止めることはできません。すべてはシナリオどおりに進んでいくのです。(p.127)
 さて、そのシナリオに書かれているオバマの役割とは・・・。

 

 

【オバマの役割】
 そして今回オバマの役割、一番大事な、すでに大統領になる前から決まっている最大の仕事は何かといえば、<借金の踏み倒し>。いわゆる米国債のデフォールト、それに伴う新秩序の形成なのです。(p.130)
 オバマがデフォールトまで、次のヒラリー・クリントンが戦争によるハイパーインフレ創出とデノミ、ということなのだろう。基軸通貨ドルの支配者・ロックフェラーが4年以上も前から決めていることである。
   《参照》   『第3次世界大戦、始まる!』  ゲリー・ボーネル  VOICE

            【2011年 バクダッド】