《前編》 より
 

 

【ソルベンシー・マージン】
 銀行が国債へ向かわざるをえなかった構図はわかったけれど、生保もまた銀行と同じ構図だったのである。
 実は、生保もBIS規制と同じく、規制の毒に汚染されているのです。誰も文句を言わないし、疑問の声も聞こえてきません。銀行が子羊のようにおとなしく国債の買い付けに走っていったように、生保もまったく同じ構図で破綻への道をまっしぐらなのです。
 生保の規制は何かというと、それはソルベンシー・マージンという規制です。 ・・・(中略)・・・ このソルベンシー・マージン比率でみると、国債を保有すればするほど財務体質がよくなるわけです。(p.153-154)
 このソルベンシー・マージン比率は、今年3月さらに比率を上げて生保各社に課せられるという。
 この記事(2011年5月27日の日経新聞)は、このソルベンシー・マージン比率に2012年3月から新基準を適用することが書かれています。 ・・・(中略)・・・ 金融庁の指導のもとになされた制度変更です。信用を重んじる保険業界にあっては、この規制に沿って国家の意志に従って、国債を買い付けるしかありません。(p.157-158)
 大震災後にこの通達である。金融庁は天使なのか悪魔なのか、どっちでしょう?

 

 

【こういうシナリオ】
 1980年代後半から見事に仕組まれたシナリオは、バブルの拡張、崩壊、デリバティブの拡張、金融工学というインチキ学問の発展、コンピューターによる高速取引の全盛、そして債権バブルのピークと続き、ついに日本から崩壊していくのです。
 日本人は長いシナリオ通りに見事に動いてくれました。なぜなら、日本人は素直で人を疑うことがなく、一生懸命その場、その場で頑張るからです。シナリオさえ作ってあげてレールさえ敷いておけば、時間をかけながらも予定通りに動いてくれるからです。
 さあ、シナリオの最終局面、債権の大暴落、財政破綻が始まります。残された時間は1年半もないでしょう。(p.151)
 遅くとも2012年の秋までが我々に残された時間と思えばいいでしょう。(p.191-192)
 「ふう・・・」って感じ。
 よく頑張ってきたよい子の日本人のみなさんに、御褒美は何がいいんだろうか。
 金融庁の皆さんは、日本人であっても、よい子の日本人を監視してきた悪魔代理人ですからね。
 よい子と悪魔代理人さんの御褒美は、別々ですよ。
   《参照》   『恐慌前夜』 副島隆彦 (祥伝社)
              【金融庁】

 

 

【日本国債暴落の予兆】
 上記で見てきたように、シナリオ通り、暴落へ向けて国債漬けまっしぐらの日本経済財政模様なのだけれど、どうやら臨界点が近ずいているらしい。
 原発補償は東電だけでできるものではないから、肩代わりする国費は当然のごとく国債で・・となる。そうでなくてもグラグラ状態なのに、さらに上積みしなければならないのである。
 このような状態の裏側で、抜き差しならない状態になっている。
 つまり、
 日本国債でも日本人ならきちんと保有してくれるという見通しが、最近はもう立たなくなってきた。
 個人投資家にとって低金利すぎて全然魅力のない国債は2003年以降保有者は減るばかり。
 銀行は、優先すべき東日本大震災の復興需要の融資に資金が流れ、国債を買う余力がない。
 生保にしても東日本大震災の保険該当被災者への支払いを優先せざるをえないから、国債を買う余力がない。
 年金は、高齢者が増え若年者が減る状況から、入るより出る方が多くなり、日本国債を買うどころか、保有していた国債を現金化しなければならない状況にある。既に2009年から国債の売却が始まっているという。
 じゃあ、一体全体、誰が日本の国債を買い支えるのか?
 世界的な財政不安でどこといって行き場のない世界中の資金が、日本復興を唯一の光と見込んで、日本市場に向かってくれない限り・・・ヤバイよね~~~。
 日本の株式相場は、企業の実力からいったら世界の2倍の高値でもいいのに、平均株価は実に世界平均の6割程度の低水準に留まっていることは昔から言われている不思議な状態なのだけれど、恐らくは日本企業の実力を怖れ、この力を封印するために仕組まれていることだろう。ここに光があるといえないのだろうか。
 ユーロも中国も余りに不安定なので、それぞれの国の資金は行き場を探しつつも、日本の国債には見向きもしないけれど、日本の株式市場には依然として選択肢を置いている。中国は実際に東京証券取引所の元取締役会長・西室泰三氏をアドバイザーとして、主だった日本企業90社の株を買い込んでいると書かれている。この状況を著者は、「国家資本主義の中国に飲み込まれる日本」という章の中で書いているけれど、この事実は、中国は日本の暴落を望まない勢力としてみなすことも出来るのだから、必ずしもマイナスに取らなくてもいいかもしれない。しかし、日本経済の防波堤となってくれているのは、中国人というより台湾人の資金のはずである。
 東日本大震災復興に関わる状況は、民間の資金を明らかに債権市場から株式市場へと向かわせる力になっている。
 日本国債バブルをトリガーとして日本を暴落させようとする意志と、技術力ある日本企業の復興を見込んで株式市場にかけようとする意志。それぞれの思惑で動く国際資金のカウンター・バランスが趨勢を決めるのかもしれない。
 はっきりしているのは、欧米起源の「闇の権力」に纏わる資金は前者を引き起こすために、中東やアジア起源の資金は後者に流れるだろうという大きな相反する流れがあるということ。
   《参照》   『地球維新 ガイアの夜明け前』 白峰 (明窓出版) 《後編》
             【仮面の告白】
   《参照》   『宇宙戦争 ソリトンの鍵』 光悠白峰 (明窓出版) 《前編》
              【台湾と日本】
 現在、ヘッジファンドに一番人気のある取引は、日本の国債が暴落した時に利益が出るオプション取引です。ヘッジファンドのヘイマン・アドバイザーズを率いるカイル・バスは、「日本国債の空売りはサブプライム・ローンの空売り以上に “抗しがたい” 取引だ」「数年後、生涯で最も見通しの明確だった状況だったと振り返るだろう」などと述べて、日本国債の暴落は確実に起こると狙っているのです。(p.175-176)
 「日本ほど美味しい肥えたブタちゃんはない。バーベキューの準備は万端」って言ってる。
 空売りしといて暴落したところで買い戻せば差額がボロ儲けになるんだろうけど、そんなボロイ商売が横行している地球の経済手法に巣食う人々の頭ってもう根本的にイカレポンポンパンパン花火状態。チャンちゃんもヤケクソ気味にイカレポンポンパンパン花火状態。

 

 

【中国の財政】
 中国当局が地方政府の180兆円もの財務残高を発表したとなると、財政の局面は変わってきます。 ・・・(中略)・・・ (中国研究で知られる米ノースウェスタン大学のビクター・)シー教授の指摘どおり、2012年までに中国は深刻な金融危機に陥る可能性は高いのではないでしょうか。
 実際、最近の中国の経済統計は予想を下回るものばかりです。(p.209)
 サブプライムやリーマン・ショックのときは、インフレ傾向が負債分を吸収して中国経済立て直しに役立っていたけれど、現在も続いているインフレは、露骨に国民の生活を直撃するだけである。貧困層は物が買えなくなるから集団的に沸騰するだろう。
 インフレは、人民元安を保つために繰り返された為替介入の結果であり、これによって市場に垂れ流された人民元の量は、ドルに負けず劣らずのとんでもない規模になっているという。日銀の1.6兆ドル、FRBの2.4兆ドルに対し、人民銀行4.0兆ドル! (p.212) だという。
 日本ではヨーロッパ財政危機のことばかり報道されているけれど、中国経済にまともな状況は殆どない。

 

 

【ヨーロッパに巣食うゴールドマン・サックス人脈】
 ギリシャに粉飾の智恵を与えたのはゴールドマン・サックスです。為替デリバティブを使って、一気に国家債務の見せかけの減少に成功しました。 ・・・(中略)・・・ ギリシャはこのような粉飾の智恵を与えられて、名目上、財政赤字をGDPの3%に抑え、ユーロに加盟することができたのです。
 2000年から始まっていた粉飾は水面下に封印され、2009年パパンドレウ政権が発足するまで明らかになりませんでした。この間、2002年から2006年までゴールドマン・サックスの欧州部門の副会長をやっていたのがドラギです。
 誰が粉飾を封印してきたのですか? 誰が真実を知っていたのですか?
 表も裏も全てを知るゴールドマン・サックス出身のドラギが、ECBの総裁にEUの全員一致で選出です。これから何が待っていると思いますか?  (p.246)
 ECB(欧州中央銀行)総裁になる前、ドラギはギリシャより遥かに負債規模の大きいイタリアの経済財務大臣やイタリア銀行総裁をしていたゴールドマン人脈の要人である。
 下記リンクと合わせてみれば、もう役者は完全に出揃っていることが分かるだろう。
   《参照》   『新たなる金融危機に向かう世界』 副島隆彦 (徳間書店) 《後編》
             【頭はアメリカ派】

 

<了>