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 日本人にしては奇妙なお名前の著者。本当は米国人か英国人であって、そのペンネームなのかとも思えるけれど本名らしい。
 今や書店の新刊平積みコーナーで苫米地さんの本を置いてないところなんてないだろう。オーム信者の脱洗脳を果たすというテクニカルな技術をもつ機能脳科学者さんだけれど、コンパクトにまとめられたどの著作であれ、一冊読んでみるだけで、その知性の及ぶ領域が圧倒的に広い方であることはすぐに分かるはずである。
 このタイトルからは自己啓発系の著作に思えるけれど、人間が認識している世界の根本を捉えて一挙に変革してしまう術を表現した著作といえる。この本を読んでみれば、実際のところ、「自分の夢をかなえることと、世界を良くすることは、同じ地平で同時になされてこそより効果的な供創になる」ことに気付けるはずである。「自分には夢なんてない」と思っている人こそ、この本を手に取るべきである。
 著者は間違いなく、新しい時代へのゲートを開く役割を持った方の一人だろう。2009年11月初版。

 

 

【苫米地さんの役割】
 どうして私は、こんなに多くの仕事を楽々とこなし、大きな反響を呼んでいるのでしょうか。
 私には自分がこの世界で果たすべき役割が明確に見えているからです。 ・・・(中略)・・・ 。
 では、私の役割とは何なのか。ズバリ、言いましょう。
 「この世界に害悪をもたらしているニセモノの支配のあり方、すなわち戦争と金融資本主義を終わらせ、世界が平和になること、人々から差別をなくすこと。そのために力を尽くすのが私の役割です」 (p.21-22)
 この記述、圧倒的に気に入ってしまった。
 だから、2012年度、最初の読書記録は、この記述からにしようと・・・。
 チャンちゃんの過去のブログには、ベンジャミン・フルフォードさん、船井幸雄さん、中丸薫さん、その他、新しい時代を予感している方々の読書記録が多いけれど、彼らもまた、「戦争と金融資本主義を終わらせ、世界が平和になること、人々から差別をなくすこと。そのために力を尽くしている」人々である。
 苫米地さん同様、シリコン・バレーに集っている圧倒的に優れた知性を有する才人たちも、皆この感覚で世界を導こうとしているのである。
   《参照》   『ウェブ時代 5つの定理』 梅田望夫 (文藝春秋) 《前半》
             【Power to the people】

 

 

【キーホールテレビ】
 私は、 ・・・(中略)・・・ さらに、誰でも自分のパソコンから映像を流すことのできる「Key Hole TV (キーホールテレビ)」のソフトを無料で配っています。これは、政府や大企業、大手マスコミ優位の情報発信システムをひっくり返す試みです。(p.20)
 趣味的な本以外は何も読まず、インターネットすら使っていないのであれば、「闇の権力」によって世界の軍事と金融が支配されていることに何も気づいていない人々が殆どだろう。
 日本中のテレビすべてがソニーのブラビアみたいにインターネット機能を備えたテレビになるまで、日本人大衆の圧倒的な愚かさはキッチリ維持されるんだろう。しかしそれまで早くても3年。2012年度中に予定されている世界経済の崩壊がソフトランディングに切り替えられたとしても、現状のテレビはそれほど世界の善化を促進する役には立たない。

 

 

【コンフォートゾーンを上げるというのは・・・】
 夢をかなえる上での重要な概念構築とその手順が、この本の中にも簡略に書かれているけれど、その中枢的な部分について。
 ビジネスパーソンの皆さんにも、そこのところは強く意識していただきたい。
「コンフォートゾーンを上げるというのは、抽象度を上げることで、同じ抽象度で数字を上げることではない」
 ということです。だから、もしイチローやタイガー・ウッズがプレイヤーとしての数字を上げることや、稼ぎを増やすことをめざしているのなら、ちっとも偉くないのです。(p.35)
 イチローの年間200本安打の連続記録更新は、2011年度は達成できず途切れてしまったけれど、著者の定義をそのまま当てはめれば、イチローは連続記録更新という数字にこだわってしまい、野球文化を通じて世界に貢献するとか世界平和に貢献するという、より抽象度の高いコンフォートゾーンを見失っていたのだろう。
 高い抽象度にコンフォートゾーンを設定するということは、「年収を上げたい」とか「金持ちになりたい」というような自分自身の物欲から思いきり離れて、「世界平和に貢献する」といった抽象的なゴールを設定することなのです。(p.36)
 抽象度が高いということは、私利私欲といった低い意識レベルではなく、もっと高い意識レベルにフォーカスするということである。
   《参照》   『アセンションの超しくみ』 サアラ (ヒカルランド)  《前編》
             【エネルギー量と意識レベル】

 抽象度が高いゴールを設定すると、何が効果的なのかと言うと、
 抽象度が高いゴールにリアリティーを持てる人にはこういう「ランダムに散らばっているカオスの世界を瞬時にしてパターン認識し、最短・最速で思い通りの結果を出す」能力が備わっています。
 だから、仕事だって、うまくいきます。より高い視点で多くの情報を一瞥し、そこから不要な情報を捨てて必要な情報だけをピックアップ、その必要な情報をうまく組み合わせて判断することができるわけです。(p.137)
 抽象度が高い=より高い視点で見る、ということは、具体的な職場環境に照らして言えば、「自分自身の現在の肩書きより数ランク上の立場で見ること」とも言えるはずである。

 

 

【A次元】
 抽象度という言葉に関して「A次元」という用語が定義されている。
 「A次元」とは?
 4次元空間に規定された物理次元の上にある抽象次元の情報宇宙のことです。抽象(Abstract)次元を略して「A次元」といいます。個人の思考と情動は、脳を通じて、この時間も空間も超えた「A次元」に広がっています。もし「A次元」が存在しなければ、人間はものごとをパターン認識する能力をもつことができません。
 このA次元に関して、物理学との相関で、「そうだよね」と思える記述があった。
 その物理学者が「ない」とするA次元を扱う学問が、心理学、哲学、情報科学です。そして、それらのA次元の学問を物理学と統合して考えようというのが、私の発明した、「脳と心」をひとつに捉えた「機能脳科学」なのです。要するに、
「物理学の理論のなかに『心のモデル』を入れないと、おかしいでしょう?」
 ということです。(p.46)

 

 

【「空」とは】
 「空」とは「いる」と言えば「いる」し、「いない」といえば「いない」。少なくとも物理的には存在しえないけれど、人の心の中には存在しうる、ということです。だから、もし霊が見えても、幻覚でしかない。それは頭ではわかっていました。(p.89)
 霊は今日の物理学の範囲内では捉えられないだけで、実在していると思っているから、この記述には同意できない。だからといって否定はしない。
「物理的には存在しえない」というのは「唯物論」の立場だろうし、「人の心の中には存在しうる」というのは「唯心論」の立場だろうし、最終的に「霊が見えても、幻覚でしかない」と定義するのは、つまり「唯脳論」なのだろう。「唯脳論」の立場を一貫させることでそれなりの効果をもたらすことはできるはずだから、否定する必要はない。

 

 

【行動基準】
 もっとも大事なのは、自分の行動基準を「やりたいか、やりたくないか」「好きか、嫌いか」で決めることです。前にも述べたように、仕事をはじめとする全ての行動は、自分の「want to」でなければなりません。(p.98-99)
 この様な行動基準に沿うことで皆が自分に相応しい仕事が見つかればいいけれど、現実の労働市場は、一般市場の需要に即した分野にしかない。現実的にお金を稼がなければ生活できない状況であるなら、その点の折り合いの付け方は、常識的に判断すべきことである。
   《参照》   『「随所に主となる」人間経営学』 浜田広 (講談社)
             【やりたいことをするのが充実した人生か?】
 間違っても、「みんながいいと言っているから」「親や周囲の人が望んでいるから」「世間の評価が高いから」といった理由で、仕事や行動をしてはダメなのです。(p.99)
 ダメの理由の大きな一つは、みんなや親や世間は、すべて貨幣経済を前提としたコントロールグリッドによって発想が支配されているからである。
   《参照》   『アセンションの超しくみ』 サアラ (ヒカルランド)  《前編》
             【社会意識(コントロール・グリッド)という檻から出る】
             【貨幣経済社会からマネーフリー社会へ】

 

 

【A次元には、「自分だけが幸せになる」なんて命題はありえない】
 抽象度の高いゴールがあるということに気づくと、他の多くの人たちが資本主義の奴隷と化していることが、非常によくわかります。
 誰もが崇高な使命を持って生まれ、社会を、人類を良くするための役割を担っているのに、それに気づかない人があまりに多いことに愕然とするかもしれません。資本主義社会の系の外にあるものがすべてスコトーマになり、大半の人々の目には「競争に勝つ」ことしか見えなくなっているのが現状なのです。(p.144)
 スコトーマとは、「無意識が設定した認知上の盲点」のこと。
 もとよりA次元には「自分だけが幸せになる」なんて命題はあり得ないのです。 ・・・(中略)・・・ 。
「自分はこのままでいいんだろうか?」
「自分が求めている幸せは、本当に競争に勝つことだろうか?」
 ・・・(中略)・・・ 。資本主義社会の奴隷のまま人生を終える危険がどれほど高いかに気づくと、それまでのスコトーマがはずれるかもしれません。(p.145)
 貨幣経済が人類全体に仕掛けているスコトーマは、世界経済の崩壊によってではなく、意外な事態によって外されるかもしれない。
 いずれにせよ、貨幣経済が続く限りにおいて人類全体のスコトーマを一挙に外す解法はない。既に気づいている人々が、徐々にその数を増やしてゆくしかないのである。

 

 

<了>
 
 

  苫米地英人・著の読書記録

     『日本の盲点』

     『脳と心の洗い方』

     『脳を味方につける生き方』

     『正義という名の洗脳』

     『経済大国なのになぜ貧しいのか?』

     『苫米地式「幸せ脳」のつくり方』

     『一瞬で相手をオトす洗脳術』

     『バイリンガルは二重人格』

     『なぜ、脳は神を創ったのか?』

     『頭の回転が50倍速くなる脳の作り方』

     『夢が勝手にかなう脳』