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 アメリカの大学で最先端の学術領域を学んできた著者の記述には確信がこもっている。他の著者の本の中で読んでもあまり重要に思えないことを、著者の本の中で読むと腑に落ちるように理解できる場合が少なくない。著者の深く広い学問経験による確信の深さ故なのだろう。
 学生時代に読んでいた講談社ブルーバックス系列の科学用語が出てくるのも、チャンちゃんにとっては楽しさが増す要因である。2007年6月初版。

 

 

【抽象度を上げる】
 実は、「抽象度を上げる」ことによって、加速学習が可能になる!
  ・・・(中略)・・・ 
 これが、「新しい脳」をつくるメカニズムなんです。
 そもそも、学習とは一つ上の抽象空間(「ゲシュタルト」といいます)をつくっていくことです。言語も数学もスポーツもすべて同じ。(p.66)
 「抽象度を上げる」は本書のキーセンテンスである。
 場合によってはこの文章を「視点を高くする」と言い換えてもいいだろう。視点が高くなれば、側面方向からしか見られなかったものが、俯瞰する視点で全体的に見えるので、余計な推測も論理も超えて解に近づけるのである。
 ですから、今まで体感したことや学んだことを、きちんと抽象化できていれば新しい学習が圧倒的な速さでできるようになるのです。(p.67)

 

 

【抽象度を上げる方法】
 名門校に入学できるような娘の親に、どう育てたのかと尋ねたところ、
「 ・・・(中略)・・・ 。とにかく世の中に対して説明をいつもさせたんだ」
 と教えてくれた。
 まさに、説明するという行為をさせることで抽象度の高い世界をつくるという訓練をさせていたんです。抽象度の高い世界がつくれれば、IQが上がるというのは本書でも再三述べてきたとおりです。
 説明原理を与えるということは、一度事象の抽象化が必要ですから、抽象思考をすることと同じです。知識を暗記するのとは全然違います。(p.74-75)
 単なる「報告」ではなく「説明」という点がポイントである。
 確かに、説明しようとすれば、否が応でも抽象化という過程を経なければならない。

 

 

【ストレス解消法】
 現代人は、意識が気づいていないだけで、無意識はいってみればストレス空間の金縛りにあっているともいえます。(p.85)
 このようなストレスの解き方として、息を吸うときお腹を凹ませ、吐くときお腹を膨らます逆腹式呼吸を、著者は勧めている。
 脳にストレスを抱えていると、体も同時にストレスを抱えてしまっている。故に、推奨されるのは逆腹式呼吸のように、通常と違う刺激を体に与えて脳をほぐそうとする行為なのである。ヨーガを含むエソテリック(密教)系統のエクソサイズの目的もそこにあるのである。
 要は、現代人の生活というのは、交感神経が過敏状態になってしまっているので、これを副交感神経系が活発になるようにスイッチングすることが、ストレス軽減に有効なのである。日本人は、昔からお風呂に入ることでそれを行っていた。シャワーだけだとストレス軽減にはならない。温泉にでも浸かってフヤケ切ったタレパンダにでもなれたら最上である。
   《参照》   『誰も知らない開運絶対法則』 白峰・有野真麻 (明窓出版) 《前編》
             【体をゆるめる】

 

 

【逐次処理脳ではなく、超並列処理脳】
 現代の私たちがやっているのは全部逐次的な思考です。「それをやってからこれ、これをやってからそれ」という思考が正しいというふうに思いこまされてきたわけです。それが古典的な構造主義のものの考え方でしょう。
 しかし、現代は古典的な構造主義の時代ではありません。(大陸哲学でいうとデリダの時代に脱構築して現代は構造主義の時代はとっくに終わっています。米国分析哲学で言うと、非単調論理や可能世界論理の時代にとっくに入っています。面白いことに、東洋哲学では、バラモンの修業の時代から何千年も伝わっている密教などの方法論は超並列思考の訓練になっています)。
 全体と部分を同時につくってしまう。それはもう完全に超並列的な処理です。
 そこで、超並列処理にするためには、どうしても我々は逐次的なボトルネックを外さなければいけないわけです。(p.93-94)
 著者は、右脳・左脳という言葉は使っていないけれど、巷間言われている能力開発に当て嵌めれば、左脳は逐次処理、右脳は超並列処理、ということになる。
 弘法大師が会得していたと言われる「求聞持聡明法」を現代的にアレンジした、七田眞さんの能力開発法によって超並列処理できる脳になった子供達はたくさんいるはずである。
 情報量が膨大な現代社会においては、脳を超並列状態にしたうえで、できるだけ大量の情報を同時に見るようにします。同時に受け、同時にすべての情報を受け入れるという訓練を自分でするようにします。(p.116)
 超並列処理をしたいなら、逐次処理は停止させなければならない。超並列処理の能力開発を目指し速読を行いながら、逐次理解的に普通に文章を理解しようとしているのではお話にならない。
 脳に逐次処理させないためには二つの方法がある。一つは、膨大な量の情報に晒し続ける方法。もう一つは、余りに過少な情報を超低速で与える方法。下記リンクは後者の方法。
   《参照》   『見る技術』 石岡裕邦 (PHP)
             【超スローペースで 「ものをみる」 】

 

 

【時代は超並列処理脳の人類を創出する】
 左脳主導で取り組むと、詳細に理解しようとする場合は全体を部分に分け(要素に還元し)て理解し、全体を理解しようとする場合は部分と部分を組み合わせてゆくことになる。右脳主導で物事に取り組むと、全体と部分が即時・同時である。どっちの方がハイスペックなのかは言うまでもない。
 分離相対性の強い言語である「英語」を話す民族が長期間にわたって地球の中心的なプレーヤーとなっていたから、地球全体が左脳主導による逐次処理しかできない状態になってしまっていたのである。
 しかし、現代は、ガイアの法則に従って最大融合極性の地である日本が、地球の活性点になっている。
   《参照》   『ガイアの法則』 千賀一生 (徳間書店) 《前編》
             【文明の盛衰を定める 『ガイアの法則』 を知っていたシュメールの叡智】
             【経度0度と経度135度の文明的特徴】

 日本人が逐次処理というボトルネックを外したいのならば、日本古来の生活に戻し、純日本人ならではの日本語による思考に回帰すればいいのである。日本語は、要素還元的に処理する(論理的に考える)ように作られてはいない。日本語を話す日本人の脳は、それが特性であり最大のメリットなのである。それが左脳的でないのは言うまでもないけれど、右脳的というのでもない。日本語を話す日本人の脳は、左脳と右脳を融合させた、つまり著者の言葉を用いて言えば、「“抽象度の高い”脳の構造」を最初からもっているのである。
 日本人の意識にかけられた枷(ボトルネック)が外されたなら、日本人は、世界をリードする素晴らしい業績を次々と挙げて行く筈である。
   《参照》   『ネオスピリチュアルアセンション』 エハン・デラヴィ/中山/白峰/澤野(明窓出版)
            【メラトニンと松果体】
   《参照》   『「びっくり現象」こそ決めて』 船井幸雄 (あ・うん)
             【悟りは物理的なもの】