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 認識問題の基底を語った著作であり、能力開発の方法を示してもしるし、発想法に分類される内容をも含んだ書籍。2007年2月初版。

 

 

【言語モードと視覚モード】
 いまでこそ言語中心の社会になっていますが、進化論的に見ると、言語を使いこなせるようになった歴史は浅く、「言語による分析的思考」(言語モード)は、ごく最近使うようになった思考モードといえます。
 それまでは、絵を描いたり、顔の表情やボディアクションで意志を伝える、「視覚による感覚的思考」(視覚モード)で考えていたのです。(p.40)
 ごく最近までは、言語モード(左脳)優先できたけれど、近年の人類は、視覚モード(右脳)が優先になってきた。今後この傾向はますます進んでゆくことになる。
   《参照》   『波動経営力』 七田眞 (ビジネス社)
            【漫画は右脳に関わっている】

 ただし、言語モードがなくなるのではない。両方のモード(右脳・左脳)を使い分けることが大切になる。
 問題解決や創造的思考のためには、「言語モード」 と 「視覚モード」 の2つの思考モードを上手に使い分けることがとても重要なポイントとなります。
● 「言語モード」 で気がついたことは、ヴィジュアルに変換
● 「視覚モード」 で気がついたことは、ことばに変換
 することで、2つのモードを上手に使うことができます。(p.41)
 ヴィジュアル変換は、数多出版されている記憶術に共通する基本的な方法でもあり、ことば変換は、漫画で育ってきた若者たちが、是非とも伸ばさなければならない能力だろう。
 

 

【超スローペースで 「ものをみる」 】
 「ものを早く見る」 ために、余計な部分は削除し、「ことば」 をぺたぺた貼るようにしてスピード化し認識しているのです。そのほうが手っ取り早いからです。そのせいか、先入観や固定観念でものを見てしまいがちです。(p.84)
 このような、日常のものの見方は 「言語モード」 が主導権を握っています。余分なものをはぶき、スピーディに見ていくので、この状態では、ものの本質を見きわめたりすることは不可能になります。すべてが日常の中に覆い隠され、美しいものを見つけ出すことなどできません。
 ベティ・エドワーズ教授のメソッドの 「見るスピードを変え、思考モードを切り替える方法」 があります。 ・・・(中略)・・・ 。 「言語モード」 の状態を 「視覚モード」 に変えるためには、「ゆっくりものを見る」 のです。1ミリを1秒で見ていきます。(p.85)
 通常の右脳開発では、「言語モード(左脳)」 が追随不能となり作動をあきらめてしまうように、あえて高速でページをめくる手法を用いているけれど、この方法はその反対である。つまり、 「言語モード」 を作動させないために、通常より、早すぎるか遅すぎるか、いずれかで行うといいのである。
 

 

【逆さまにものを見る】
 「上下逆さまにものを見る」 ことも、思考モードを切り替えるための 「見る技術」 なのです。
 正対しているものは、「言語モード」 で認識します。 ・・・(中略)・・・ 「ことば」 で、ものを見ているのです。それに対して、上下逆さまにすると、「視覚モード」 で、見るようになります。ここで思考モードが切り替わるのです。(p.97-98)
 この書き出した部分だけ読んでも、意味不明かもしれないけれど、我々はいかに “ 「ことば」 で、ものを見ている” ことか、と納得できる絵の実例が掲載されている。
 ならば、 “本を逆さにして読んでみようか”、などと無意味なことをふと思ってしまったりもする。

 

 

【現場主義】
 こんな例があります。
 町役場の職員が、あらたな街づくりのヒント発見のために、自転車に乗り町内を巡回している地方自治体があります。
 現場主義です。
 町役場の会議室で、いくら考えても見つけ出せない問題も、住民の目線で 「街を見る」 ことにより発見できるはずだという考え方です。 ・・・(中略)・・・ 視点を変え、よく対象を観察することにより、数多くの課題を発見することができます。
「ヒントは現場に落ちている」 のです。(p.122)
 現場主義こそ、見る技術、および、発想の原点である。
 過日、山梨県甲斐市の教育課次長と図書館長を目の前にして、身の程もわきまえず、「偉そうに椅子に座ってばかりいないで、市民の利用者が使っている所を回ってみてはどうですか? トヨタなど、一般の民間企業では常識的なことですよ。現場を回ってみてください」 と進言したことがある。教育課次長と言う人物は、露骨にむかついた表情をしていたけれど、こちらにも計算あってのこと。
 今どき信じ難いだろうけれど、山梨県甲斐市には室内温度が33度にもなる図書館があるのである。公務員は25度程度の快適空間でふんぞり返って居ながら、市民は33度の図書館で夏を過ごさせて平気なのである。実は、この図書館は昨年もこのような状況だった。その前は知らない。
 次長も図書館長も、おそらく現場には行っていないだろう。それでもって、「予算がない」 とお決まりのフレーズでピリオドとし、「市民は、去年もそうだったのだから、今年も室温33度の図書館で過ごせ」 と言うことなのだろう。
 現場主義など、優良な民間企業では当たり前のことだけれど、公務員にとって現場主義は、当然のごとく当たり前ではないのである。市民の視点で現場を見て体感する意志はなく、ふんぞり返っているのが常態である。
 この甲斐市教育課次長は、要請対応の遅延に対し結論をせまると 「警察を呼ぶ」 と言う人物だから、当人に繰り返しの要請はせず、ほぼ2週間経過した昨日(8月4日)、直接市長に状況を話して改善を要請しておいた。
   《参照》   『人を育てるトヨタの口ぐせ』 OJTソリューションズ 中経出版
             【者に聞くな、物に聞け】
   《参照》   『「見えない資産」の大国・日本』 大塚文雄・Rモース・日下公人 (祥伝社) 《後編》
            【 「現場主義」 という 「インタンジブルス」 】

 

 

【アイデアの出し方】
 斬新なアイデアを考えだしたいときは、テーマに関する情報を目一杯頭に入れ、勇気を出してその問題から離れるのです。
 美術館に行ったり、散歩するのもいいでしょう。違うものを見ることで、脳に刺激を与えればいいのです。視覚モードを使うのです。
 バラバラな要素をまとめたいときには、空飛ぶ鳥が地上を見るような俯瞰的な眼を使えばいいのです。大きなテーブルにすべての要素をならべ、ジーッと見ているとグループ分けがみえてきます。(p.135)
 この書き出し部分は、アイデア創出法、発想法などのジャンルの本には、必ず書かれていることである。
 この本は 「見る」 という視点を中心に据えて、能力開発法や発想法の具体例を示しつつ、コンパクトで冗長な記述がないのでとても理解しやすい。 
 
<了>