【乱読NO.95-1】「犬は「びよ」と鳴いていた 日本語は擬音語・擬態語が面白い」山口 仲美 ( | D.GRAY-MANの趣味ブログ

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[ 内容 ]
「私が一番最初にひっかかったのは、平安時代の『大鏡』に出てくる犬の声です。「ひよ」って書いてある。頭注にも、「犬の声か」と記してあるだけなのです。私たちは、犬の声は「わん」だとばかり思っていますから、「ひよ」と書かれていてもにわかには信じられない。雛じゃあるまいし、「ひよ」なんて犬が鳴くかって思う。でも、気になる。これが、私が擬音語・擬態語に興味をもったきっかけでした。」―英語の三倍・一二〇〇種類にも及ぶという日本語の「名脇役」擬音語・擬態語の歴史と謎を、研究の第一人者が興味深く解き明かす。

[ 目次 ]
第1部 擬音語・擬態語の不思議(擬音語・擬態語に魅せられる 擬音語・擬態語のかたち 擬音語・擬態語の寿命 擬音語・擬態語の変化 ほか)
第2部 動物の声の不思議(昔の犬は何と鳴く ニャンとせう―猫 チウき殺してやらう―鼠 モウモウぎうの音も出ませぬ―牛 ほか)

[ 発見(気づき) ]
擬音語というのは、「ほうほけきょー」「がたがた」などの物音や声を写しとった言葉。
擬態語は、「べったり」「きらきら」などの様子や状態を写しとったもの。
三島由紀夫は、擬音語・擬態語が大嫌いで、品のない言葉だといって自分の作品の中では使わなかったとのこと。
昔、犬は「びよ」と鳴いていたそうだ。
本当だろうか? 何故なんだろうと読み進めたくなる。
言葉のルーツをたどること、本書には推理小説の犯人探しにも似た面白さがある。
江戸時代まで日本人は犬の声を、「びよ」と聞いていたという。
平安時代の『大鏡』には犬の声は「ひよ」と書いてある。
昔は濁音と清音をきちんと区別して表記しないから。
当時の実際の発音を再現するとしたら、「びよ」になる。
江戸時代も中頃をすぎると、「わん」が、犬のごく普通の吠え声として使われている。
「わん」の勢力が次第に圧倒的になり、「びよ」の声は方言としてのみ残った。
犬の吠え声が、「びよ」から、なぜ「わん」に変わったのか。
著者は、言葉の推移は、犬自体の吠え声の変化を写し出していると推測する。
「びよ」と写すよりも、「わん」と写すほうが適切と思えるような変化が、犬の鳴き声そのものの方に起こったのだ。
環境の変化による犬の鳴き声自体の方に、質的変化があった。
たとえば、江戸時代以前では、野犬が横行し、人間の死肉を食べたりしている。
総じて江戸時代以後の落ち着いた環境で飼われる犬のよりも、野性味をおびていた。
そうした時の犬の声は、闘争的で濁ってドスの効いた吠え声であったと想像される。
「わん」と写すより、「びよ」と濁音で写すのがより適切と思われるような声であったと。

[ 教訓 ]
イヌが「わんわん」、ネコが「ニャーニャー」鳴く、擬音語。
「バリバリの営業マン」「電子レンジでチンしておいて」という具合で使う擬態語。
この本によると、英語では350種類しかないのに、日本語には1200以上あるとか、5倍も多いなどの調査結果が紹介されている。
著者の調べによると、約半数は900年以上も永続する古い言葉であり、単なる流行語というわけではないらしい。
この本の著者は、日本語における擬音語、擬態語の第一人者。
辞書も出版している。
・暮らしのことば擬音・擬態語辞典
時代によって、擬音語、擬態語の表現は変る例もあるそうで、江戸時代のイヌの鳴き声は「びよびよ」だったという例が、タイトルにもなっている。
古い文献をたどりながら、多数の実例を挙げて、擬音語、擬態語がどう発生し、変化し、消滅して行くかの考察が重ねられる。
現代の用法や流行ももちろん、解説されており、チン、ピンポン、ブーなど現代では電子音の擬態語が多いことなど、なるほど、と感心する。
著者のサイトには多数の論文が公開されており、特に以下の文章は、この本のリードとしてぴったりだ。
・擬音語・擬態語の変化(前編)
http://www.toshima.ne.jp/~yosh8091/ronbun2.html
・擬音語・擬態語の変化(後編)
http://www.toshima.ne.jp/~yosh8091/ronbun3.html
上記のコラムを読んでさらに知りたいと思う人にこの本、絶対におすすめである。
雑誌から集めた擬音語、擬態語のパターン分析などは特に興味深く、これから流行る言葉を作ろうとするマーケターにも参考になる情報が多く書かれている。
擬態語で不思議に思っていたのが「ギャフン」である。
「ギャフンと言わせてやる」という表現は普通に使うが、実際に負けて「ギャフン」と言う人などいないわけで、どういうことなんだろうと思っていた。
私だけではなかったようだ。
・ギャフンの由来をおしえて!
http://homepage2.nifty.com/osiete/s450.htm
なるほど調べてみるものである。
日常生活の中にも新しい擬態語、擬音語は頻出する。
・マターリ(2ちゃんねる?)
・するっとお見通しだ(ドラマ TRICK)
・ざわわざわわ(森山良子楽曲:「さとうきび畑」)
・そうそう(夏川りみ楽曲:涙そうそう)
・感動して眼の幅涙ダー(友人の言、分かる気がするが...)
IT業界の職場でも独特の擬態語をよく使う。
ざっと身の回りで使う例を思い出してみるだけでも、
「3Dでグリグリ動くやつを作ってくださいよ」(デザイナー)
「ゴリゴリ、プログラムのコードをゼロから書くのが好きで」(プログラマ)
「来週の原稿ですが、ここでサクっと書いちゃってもらえませんか?」(編集者)
など、日常的な言葉である。
業界が違う人に前後の言葉を省略してしまうと、きっと伝わらないだろうが、逆に同じ業界内部では、この方が意味が活き活きと伝わるから不思議である。
(Web)マーケティングの世界でもこの種の表現は、有効なはずだ。
検証してみる。
検索エンジンは、言葉の検索結果画面に広告枠を販売している。
キーワードが広告枠なわけだ。
・Googleで「ピカピカ」で検索すると、
「スーパークリーニングSetしつこい汚れもこれ一本でOKTV通販で人気の家庭用クリーナーwww.shopjapan.co.jp」
というキーワード広告が見つかった。
「キラキラ」「ガンガン」だと、なぜか、
「ドラゴンクエストV予約古本市場で予約受付中!親子三代にわたる感動の名作がPS2で復活www.ubook.co.jp」
という広告がでた。
「カサカサ」など大人気で、
「温泉で人気かかとクリームかかとのカサカサをツルツルにかかと専用の角質柔軟クリームwww.concierge-beauty.com/ パラフィンパック自宅で簡単に手足のうるおいパック
一度使うと手放せませんよーwww.kyoto-wel.com/shop/S81131/ ゲルアンドゲルクリーム乾燥する季節のお肌には保湿一番プレゼント有・全国送料・消費税無料sankoinc.com/」
と3つも広告が表示される。
Webマーケターも、擬音語、擬態語を意識している証拠だ。
焼肉屋の「ジュージュー」のように、擬音語、擬態語には、シズル感の演出効果があると思う。
トラフィックを呼び込むキーワードとして、意外にまだ活用例の少ない盲点だったりするかもしれない。
キーワード広告こそひとつも出ていないけれど、「ビンビン」などすごく男らしい。
検索結果が出てくる。
この種の商品には「ビンビン」は売れるキーワード広告枠かもしれない。
Googleのキーワード広告販売サイトでは、各キーワードの金銭的価値が調べられる。
キーワードの人気に応じて入札が行われるので、広告的価値の高いキーワード、つまり、儲かるキーワードほど、高い数字になるはずだ。
擬音語、擬態語にも、商業価値の高低の差はだいぶ、あるみたいだ。
もうひとつの広告代理店Overtureのツールでも、一般ユーザがどのくらい頻繁に各キーワードで検索を行うかがわかる。結果は次のようになった。
・Overtureキーワードツール
http://inventory.overture.com/d/searchinventory/suggestion/?mkt=jp
53518 ガンガン
1353 キラキラ
693 ピカピカ
591 ビンビン
63 カサカサ
総合的に見ると、ビンビンはユーザにあまり検索されない言葉らしい。
その代わり、広告枠は安く買うことができる。
ある種の商品を売るのであれば、もしかすると少数だが商品購入率の高い特定の層をサイトへ呼び込める有効なキーワードだったりするかもしれない。
でも、まだ有効性は良く分からない。
Webにおける擬態語、擬音語の研究はこれからの分野だろう。

以下に↓つづく。
http://blogs.yahoo.co.jp/bax36410/47898137.html?p=1&pm=l

[ 読了した日 ]
2007年3月11日