あもる一人直木賞(第173回)選考会ー途中経過1ー
今回、6試合連続ホームランの大記録がかかっております。(その試合をす~っかり忘れていたのはどこのどいつだとか言わない)それにしても今回も難しかった。これはないやろって作品が1つもなくてさ。絞れず困る。そのおかげで楽しく読み進められた、というのもあるからいいんだけども。果たして6試合連続ホームランなるか!?『あもる一人直木賞(第173回)選考会ースタートー』いや〜気づいた時には驚いたね、直木賞候補作が発表されてからもう2週間が経っていようとは。はい!そんなわけで今度こそ不戦勝(不戦敗ではない!)かと思われた「あ…ameblo.jp前回の記事にコメントくださった方からの情報で知ったのだが、なんと選考委員の髙村薫女史が退任されたらしい。(米澤穂信氏が加入)あの舌鋒鋭い講評を繰り出す髙村女子が!あの読者をもビビり散らかす髙村女子が!寂しくなるなあ…私の意見と合わないことももちろんあったが、髙村女史の繰り出す講評は勉強になることも多々あり。髙村女史が私のホームランを支えてくれたこともあった…ようなこともあったはず。。←要するによく覚えてない笑てなわけでテキトーに手に取った(今、リビングを本の山が占拠してるもんで)作品から順次発表してまいります(()内は出版社)。順位については読んだ時点でのもの。次の記事以降で順位は上下していきます。※全体的に作品の内容に詳しく触れています!!!(次回以降の記事も同様)1位 2位 3位 夏木志朋『Nの逸脱』(ポプラ社)4位 逢坂冬馬『ブレイクショットの軌跡』(早川書房)5位6位 ◇◆Nの逸脱Amazon(アマゾン)初めましての夏木さん。こういう機会がないと一生読むことはなかったであろう作品。ありがとう直木賞!全体的にとてもよくできた作品で、最後まで飽きさせない作りになっていた。日常生活を営む中でちょっとした「奇妙」な「逸脱」をする人たちの物語3つ(「場違いな客」「スタンドプレイ」「占い師B」)が紡がれており、ちょっとアヤシク小洒落た雰囲気なのもいい。この夏木さんから繰り出される文章は清潔感すら覚える。リアルな世界で苦しんだり、辛かったり、の描写はとても繊細で、読んでいるこちらまでも手に汗握る表現力。「場違いな客」では父親に給料を持ち逃げされたとき、「スタンドプレイ」では両親が軽い知的障害を持っていることを言われたとき、「占い師B」で披露された占いの細々した技術、これらの表現の筆致には圧倒された。とても読みやすいのに、深くて厚い。バランス感覚がいいのだと思う。ただこの物語の「核」」となる「「奇妙」な「逸脱」」が奇妙すぎるのか、それともいわゆる普通の人の感覚からそう距離が離れていないところを攻めすぎてるのか(おそらく後者)、唐突な逸脱(たとえば今ここにいる皆を⚪︎ろしてやりたいとか、強盗したりとか)が近すぎず遠すぎず、で最後まで並行してしまった。この「逸脱」が急に公衆の面前で裸になって踊り出す、とかならまだ受け入れられた気がする。←西加奈子「ふくわらい」を言うてます。腹抱えて笑ったわ。ふくわらい (朝日文庫)Amazon(アマゾン)登場人物に共感できなくても楽しく読めればいいのだが、その楽しみを読者に理解させるだけの説得力が足りなかった気がする。(特に「占い師B」は途中までものすごく面白かったのに、逸脱した途端に大失速、なんかよくわからない展開が長々と続き私はひたすら戸惑い続けた…そしてなんか知らない間に終わった…)緩やかに逸脱していく描写であれば、説得力を持たせることができたのではなかろうか。もしくはもっと奇抜な逸脱であれば、逆のその唐突さがよかったかもしれない。昔聞いた例え話を思い出した。とある人がゴ⚪︎ブリを食べると聞くと近寄りたくないただの奇人変人であるが、犬やサルを食べると聞くと言いしれぬ嫌気がする、というもの。ちょっと強引だがパーソナルスペースを侵された気持ちと同じなのかもしれない。そんなわけで候補作最初の作品だったが、この後に続く作品全部がこれより悪いということはなさそう、というわけで、とりあえず中の上で3位にした(次の記事以降で順位は上下していきます。)。ただそれでもいい作品であったことには違いなく、こういう時にこのセリフが出てくるだろうなあ、「次回に期待」。◇◆ブレイクショットの軌跡Amazon(アマゾン)前回候補作「同志少女よ、敵を撃て」で衝撃の直木賞候補デビューを果たした逢坂さん、2度目のご登場であります。↓直木賞候補デビュー云々以前に、この作品がデビューだそう…売れる作家は最初から違う。『同志少女よ、敵を撃て』同志少女よ、敵を撃てAmazon(アマゾン)1,881円同志少女よ、敵を撃て [ 逢坂 冬馬 ]楽天市場2,090円(あらすじ)※Amazonより独ソ戦…ameblo.jpさあ、いよいよ受賞しちゃうのかな!?とか思いながら読み、いや〜やっぱり面白いわ〜と思っていたのだが…中盤あたりから急に失速。物語はどんどん盛り上がってきているのだが、読むこちらがなんだか疲れてきてしまった。おそらくだけど、多分だけど、物語の展開がワンパターンになりつつあるのを感じたからだと思う。あああ〜〜大変なことになった〜〜〜というところから、あ?驚いた?実は違うんだよ〜んの繰り返し。悪い展開になりつつも最悪の結果にはならない、最終的に全て幸せという作品は読んでいる側はストレスなくていいのだが、それはそれで良し悪しだと思わされた。じゃあ反対に追い込まれる作品がいいかといえば、それも辛くてなかなか読み進められないんだけどさ。(とりあえずどんな展開であれ、文句を言うあもるおばさん)たとえば「絞め殺しの樹」(河﨑秋子)なんかは直木賞の候補作じゃなかったら読了できてる気がしない。苦しすぎ…絞め殺しの樹 (小学館文庫)Amazon(アマゾン)『絞め殺しの樹』絞め殺しの樹Amazon(アマゾン)1,980円(あらすじ)※Amazonよりあなたは、哀れでも可哀相でもないんですよ北海道根室で生まれ、新潟で育ったミサ…ameblo.jp早い段階で河﨑さんが直木賞を受賞してくれてよかった。推しが受賞した喜び以上に、直木賞がある度に辛い思いで読み進めにゃならん苦しみを自分のペースでコントロールできないのは辛い。あれは休み休み読まないと死ぬ。…とかいう話ではなく〜この作品はたくさんの登場人物が出てくるのだが、みんな苦境に陥りつつも「ブレイクショット」という種類の車を通じ、さまざまな形の「愛」で乗り切る。それは奇跡のような軌跡。…って読者に言わせたいんやろな〜というタイトルよ笑ちょっとオサレな形にこだわりすぎたかも。シンボルや小物やらが用意周到で、オサレに飾り付けられていて、全てが箱庭の中でできている物語。それが日常生活を描いた〜というものであれば、一つの手法であると思うのだが、日本の車工場から中央アフリカの戦地まで、世界規模での話が書かれているわりに箱庭サイズに収められた印象。現実の砂漠でやたらと「TOYOTA」と書かれたジープが走っている光景が重ねられていたのはよかったが笑内容はとても面白かったのだが、私は前作の「同志少女〜」の方がインパクトがあってよかった。今作は前作と全く違う話なのに、醸し出す空気感が似ているという印象が最後まで拭えなかった。全く違う物語を描いて、選考委員そして私をあっと驚かせてほしい。ううーん、残り4作、ずっとこんな感じ(すごく良いわけでも悪いわけでもない)だと困るなあ…と、この時点では思ってたのだが〜〜〜〜!てなわけで次回、どんどん続きます…!