別府アルゲリッチ音楽祭に行ってきた!④(最終話) | 感傷的で、あまりに偏狭的な。

感傷的で、あまりに偏狭的な。

ホンヨミストあもるの現在進行形の読書の記録。時々クラシック、時々演劇。

2024年5月17日~20日、大分の「別府アルゲリッチ音楽祭」に行ってきたお話(最終話)。

 

 

 

 

 

大分滞在3日目。

明日は朝イチ(大分駅を早朝5時30分出発…早起き苦手なあもちゃん死ねる自信あり)で出発するため、実質大分滞在最終日である。

 

前日も食べたガンジー牛乳プリンを再び食す。

私があまりに美味しい美味しいと食べていたので、汗かき夫も釣られて食べていた。

美味しかったそうです。

 

今日は16時からコンサートだから、まずは大分市内を散策して温泉とスパを楽しんで、ホールに向かおうということになった。


汗「今日はどんなプログラムなんだっけ?」

私「今日はね!!!アルゲリッチのソロ演奏があるんだよ!アンコールではソロ聞くけどプログラムとしては初めて聞くかも。あとあとあとあと!」

私「ギドン・クレーメルがバッハのシャコンヌを弾くの!!!!!!」

 

↓「ギドン・クレーメルとシャコンヌと私」の思い出はこちら。

 

あもちゃん、それはもう熱くシャコンヌの思い出を語った(昔の恋人の話はうまいこと省く笑)

 

私&汗「楽しみだね〜!!!」

 

午前中は軽く大分市内の史跡巡り。

 

大智禅寺

 

万寿寺

 

若宮八幡

 

南蛮…ブブンゴ…?と思ったら、普通に南蛮豊後交流館と読むそうな。

そのオシャレ気取った「V」はなんや!

 

昨日の府内城跡でダウンロードした(させられた)ARのアプリは使えず、新たにVRのアプリをダウンロードして(させられて)楽しんだ。

データ利用量が上限超えちゃう〜〜〜〜〜。

 

府内城跡のARはムムムな出来だったが、大友氏館跡地のVRの完成度はすごかった。

大型予算が投入されております!

 

私「ちょっと見て見て~!!!ここらへんは能楽堂だったみたいだよ!!」

汗「へ~」←遠くから返事

 

何もない野っ原でスマホを空にかざしてはキャッキャ言って一人でウロつくおばちゃん、何も知らない通りがかりの人が見たらただのやべぇヤツ。

 

南蛮BVNGO交流館

 

何か売ってるのかな〜

と冷やかし半分で入ると、感じのいいお兄さんがにこやかに近づいてきて

「大友宗麟や大分の歴史を動画で学んでいきませんか!?ボランティアガイドもおります!」

とボランティアガイドのおじいちゃんを私の横に張り付かせた。←言い方!!

 

ちょちょちょ、強引すぎん!?

壺とか売りつけてくる気じゃないでしょうね!?

 

とちょっと嫌がる素振りを見せましたらば、すぐその顔色を察知したんでしょうね、お兄さんとおじいちゃんが

 

「本当にちょっとの時間だけなんで!10分くらいで終わります!!!」

 

と熱意タップリで私を逃がしてくれそうもなかったので(言い方!!)、渋々おじいちゃんガイドの説明を聞き、大友宗麟や世界における戦国時代の九州・日本とスペインやヨーロッパとの立ち位置についての動画を見ましたらば(私と汗かき夫2人のためだけに放映してくれた)、これがもうすごく面白くて、最終的には私から色々質問なんぞして、結局10分で終わるところが、30分くらい私がガイドのおじいちゃんを独占しちゃったよ笑

 

おじいちゃんから

「色々鋭いこと聞いてくるね〜」

と言われながらも、嬉しそうに説明してくれるのであった。

(結局壺を売りつけられることなく、大友宗麟などについてガイドしてくれるだけだった笑)

 

おじいちゃんの話によると、2030年には大友氏館跡地にVRでなく復元した屋敷が建つ予定らしいので、この目でその姿を確認したいところ。それまでアルゲリッチも元気でいてほしい。

 

駅に戻ると、駅前広場で音楽イベントをやっていた。

(アルゲリッチ祭の関連行事らしい)

 

ボランティアガイドのおじいちゃんが

「駅前に「豊後」と記載のある世界地図があるから、見ていくといいよ」

ということで、駅前広場にあるザビエル像の前に広がる世界地図を確認。

 

写真だと見づらいが、

私「あ!本当だ!ブンゴってある!」←大友宗麟はブンゴ王と呼ばれていたそうな。

私「これはアキタかな?シコク?サツマかな。」

 

当時の日本は戦国時代で、日本から見るとどうしても京都中心に見てしまいがちだが、スペインなどヨーロッパからは豊後・薩摩とわざわざ記載するほど九州は重要地区だった模様。

 

大分駅構内にアルゲリッチコーナーがあるのを発見!

アルゲリッチポーズ。

 

お昼はニラ豚炒め定食を注文。

私「ニラ豚炒めって大分発祥の郷土料理なんだ〜。知らんかった。」

 

私「…ただの野菜炒めと何が違うのか…?」

 

でも安定の美味しさ。これがおいしくないわけない笑

 

なんやかんやでいよいよ夕方。

一張羅(初日と同じだけど笑)に着替えてホールへ向かう。

少し早めに着いたものの、すでに大勢の人がホールの前に並んでいた。

 

そしていよいよ入場〜

 

私「あれ?なんか入り口に張り紙がある〜」

 

演奏家の強い希望により、戦禍のウクライナで苦難に喘ぐ人々へ捧げたく、ウクライナと旧ソ連構成国ジョージア出身の作曲家の楽曲をお届けします。
(略)
【当初予定曲】
J. S. バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第2番 ニ短調 BWV1004より第5曲 シャコンヌ

 

私「ガーーーーーーーン!!!!!」←効果音が昭和

 

今日の楽しみの半分が消えた。ガックリ。

そりゃギドン・クレーメルはラトビア出身の方だし、ドイツ系ユダヤ人の出自を持っていて、彼の父親はホロコーストの生き残り…となれば、私の想像以上に色々と思うところもあるだろう。

でもぉぉぉぉ。やっぱシャコンヌ聴きたかったよ。ヨヨヨ。

 

◆◇

 

 

V. シルヴェストロフ:独奏ヴァイオリンのための〈セレナード〉
I. ロボダ:独奏ヴァイオリンのための〈レクイエム〉
M. ヴァインベルク:ヴァイオリン・ソナタ 第5番 op.53

 

(秘密のお宝曲。詳細は以下!)
M. ラヴェル:水の戯れ
F. シューベルト:ヴァイオリン・ソナタ イ長調 D574 “グラン・デュオ” 
 

アンコール

ペルト:天にいます われらの父よ

ピアソラ:ジャンヌとポール

 

 

それにしても急に曲が変わっちゃって、アルゲリッチは伴奏は大丈夫なのかな。

しょうがないわね〜って感じなのかしらん笑

あ、でもシャコンヌは無伴奏だし、変更後の曲も無伴奏なのか?

と思っていたら、やはり最初の2曲は無伴奏でした。

 

シャコンヌ聞けなくてガッカリしていたが、変更後の2曲は本当に素晴らしく私のご機嫌もすぐ直った笑

「戦禍のウクライナで苦難に喘ぐ人々へ捧げたく」と書いてあったように、本当に彼の祈りの声が聞こえるような演奏であった。木の中に埋まる仏像を掘り出すように、心の底にある祈りの声を自然に拾い上げ、ただただ純粋に祈りの音を磨いて美しく並べていく演奏。

 

 

 

10年前の演奏とまるで違う。

そら以前も素晴らしい演奏だったけど、今日の演奏は透明度がまるで違う。

人が楽器から出す音がこんなにも美しくなるもんなんだろうか。

 

素晴らしい演奏にため息なんかついていたら、アルゲリッチ登場。

そしてM. ヴァインベルクのヴァイオリン・ソナタが始まった。

 

いやもう、こりゃすごいですな。

刺激しあっているのか、それともお互いが自分の魂のために演奏してるのか、それとも両方なのか知らないが、どんだけ二人で美しさを競い合うんや!とツッコミたくなるくらい美しい演奏であった。

まさに競演。美しさを競い合う。その手合わせの場に立ち会えた私たちは幸せだと思う。

 

ギドン・クレーメルの音の純度がさらに一段階アップ、こちらがその透明度にビビるレベル。

混じりっけゼロ。

いやもっとこう、昔は野心的な音を出してたじゃん!?

それが今や99.9%の純度。世界が透けて見える。

楽譜に書き付けられている音をそのまま掬って私たちに聞かせてくれる。

0.1%の不純はただただクレーメルが私たちにこの曲を聞いてもらいたいという意思。

 

あっという間に休憩。

 

私「もう半分終わってしまった〜〜〜〜( ;  ; )」

汗「残り半分も楽しもう!すごい演奏だよ、今日は。」

私「ほら〜〜〜〜〜〜!やっぱり2公演とって正解だったでしょ!」

汗「ありがとー、あもさん!!!」

 

↓チケットについて一悶着あった件

 

そして後半。

アルゲリッチが舞台へ現れ、ピアノの前に座る。

 

私(はあ〜。アルゲリッチによるラヴェルの水の戯れが聴けるのか〜)

 

とワクワクしながら有名な冒頭部の演奏を待っていますと…

水の戯れとは全く別の、コロコロとした高速音符が次々から次へと会場中に一気に飛び出した。

一瞬、会場もざわつく。

 

私(こ!!!これは!!!!!!)

私(シューマンの「夢のもつれ」(幻想小曲集作品12より)!!!!)

 

シューマン好きのあもちゃん、感動で胸が震える。

 

こ、これは、気まぐれ?

なんかのサービス?

指慣らし?笑?

いずれにせよ、最高のプレゼントであった。

 

コロコロとした可愛らしい「夢のもつれ」が終わると休む間もなく、ラヴェルの水の戯れへ。

(そのまま続けて演奏したもんだから、汗かき夫は「こんな始まり方だったっけ?」(直前にyoutubeで予習済)と思いながらも、ずっとラヴェルの水の戯れだと思っていたらしい。予習の意味〜笑)

 

若かりし頃のアルゲリッチの「水の戯れ」

 

これも素晴らしい演奏なのだが、今回聞いた「水の戯れ」はこれ以上、というか比較にならないくらい最高の演奏だった。

まず単純に、いやアルゲリッチさん、80歳超えてますよね?

なのに全く技術が落ちていないってどういうこと!?

と不思議。

そんな年齢の不思議はとりあえず横に置くとして、

風に揺れる水、水たまりに跳ねる雨、キラキラと光る水面、弾ける水飛沫…

色々な水の態様や水の変化をこれでもか、と表現するアルゲリッチ。

噴水から湧き上がる水で虹が見える><

とか幻覚が見えちゃうほど戯れる水。

 

すごく冷静な演奏なのに、なぜかアルゲリッチの体から燃える情熱を感じることができた。

その熱い思いが会場中に伝わったのだろう、演奏後拍手の嵐。

そら、手がもげるってくらい拍手したいわ。

 

その後、ギドン・クレーメル再び登場。

シューベルトのヴァイオリン・ソナタ “グラン・デュオ”の演奏。

あなた方はどこまで透明になっていくのか。

 

私はアルゲリッチの伴奏で演奏するクレーメルのヴァイオリンを聞きながら

高村光太郎の「あなたはだんだんきれいになる」(「智恵子抄」より)を思ったよ。

 

あなたが黙つて立つてゐると/まことに神の造りしものだ。
時時内心おどろくほど/あなたはだんだんきれいになる。

 

 

 

どうでもいいんですが、なぜ今?!って時にカバンを開ける人がおりましてですね。

シーン…とした演奏中、

 

ジジ…ジジ…ジジ…ってチャックの音が〜><

多分、私の数列ほど後ろの方。←地獄耳w

 

飴玉はいつでも舐められるように、皮を剥いて手にもっときなさい!!!

(飴玉出してるのかどうか知らんけど)

隣席の人は、はっ倒したくなるくらいイラっとしただろうな〜。心底同情。

 

そんなチャックの音なんかも乗り越え、演奏終了。

素晴らしい演奏だったね〜!!!!!!

 

アンコール1曲目は

ペルト:天にいます われらの父よ

 

知らん曲だったけど、これまた素晴らしい演奏でね…

もう感動が止まりません!!!!

そして会場の拍手も鳴り止みません!!!!!

 

アンコールの拍手に応えるお二人。

テクテク出たり入ったり。

年齢を感じさせない二人の歩み。元気すぎんか。

 

なんて思っていたら、私の前列のお二人がタイミングを見て外に出て行った。

 

…飛行機の最終便に乗るためのバスに乗るためだろうか…

 

と思ったら、アンコール2曲目。

 

ピアソラ:ジャンヌとポール

 

これがすんごい演奏で!!!!!

アルゲリッチってピアソラまで弾くの!?しかも格別うまい。

守備範囲広すぎて、もうこっっわ!!!!!!

そりゃ彼女のふるさとアルゼンチンの音楽だけどさ。

まさかピアソラを弾くアルゲリッチを拝めるとは思わんだ。

しかもノリノリで弾いてるの。

ギドン・クレーメルもこれまたノリノリで、もう二人ともとにかく楽しそう!!!!

 

直前に帰ってしまった前列のお二人はこのピアソラが聴けなかったんだなあ…

これは一生後悔するやつ!

(聞いてないから後悔しようがないけどさ)

 

やんややんや、会場中から割れんばかりの大拍手が送られる。

会場の皆が総立ち、もちろんあもちゃんもスタンディングオベーション。

そしたら、なんと!!!!!!

あの、周りが立っていても一切立とうとしない汗かき夫が!!!!

立ったではありませんか!!!!

 

クララが立った!

 

大感動の中、ホールが明るくなり興奮冷めやらぬ観客たちは追い出された笑

 

私が生きている間に聞くことができるこれが最後の二人の演奏かもしれないと思ったら、なんか泣けてきた。

と言うと

多分あもさん以上にあの二人はそういう気持ちで1回1回を演奏してると思うよ。少なくとも今日の演奏はそんな気迫というか命を燃やしているって感じがした。

と言う汗かき夫であった。

 

煉獄さんじゃないけど、まさに心を燃やす、そんな演奏。

1音たりとも無駄な音は出さない、全ての力を音楽に注ぐのだ、という強い覚悟を感じた。

 

大分の最後の夜は〜

アルゲリッチのパンフレットを手にパチリ。

 

豊後黒毛和牛をいただきました。ウマウマ。人の金で食う肉はウマイ。

 

ご飯の間、二人でず〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっと今日のコンサートの話をしていた。

それくらい心に残る演奏だった。

 

私「前列の二人は最後のピアソラ聴けなくて残念だったね〜。」

汗「次に予定があったんだね。」

私「きっと東京行きの最終便に乗るためだよ!ほら〜途中で抜けたりせず、最後までいてよかったでしょ!」

汗「途中で帰らなくてホントよかった。ありがとー」

私「2公演とった私のお手柄〜。」←何度でも言う笑

 

アルゲリッチ、そしてギドン・クレーメル、素晴らしい夜をありがとう。

 

そして翌朝は5時起き。

急いで支度してチェックアウト、駅前からバスに飛び乗った。

 

無事、大分空港に到着。

待っている間、空港内で遊ぶ。

私の背景の湯気の模様が「OITA」になってるの、わかります?!芸が細かい。

 

流石に朝早すぎて足湯はしていなかった。

 

そして予定通り離陸。東京へ。

 

さよなら、大分!

また来られるといいなあ。

終わり。

 

長々と、しかも1ヶ月も前の話に最終話までお付き合いいただき、ありがとうございました。