源氏物語イラスト訳【末摘花113】まうし
「鐘つきてとぢめむことはさすがにて答へまうきぞかつはあやなき」
いと若びたる声の、ことに重りかならぬを、
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【これまでのあらすじ】
故常陸宮の姫君の噂を聞いた光源氏は、「零落した悲劇の姫君」という幻想に憧れと好奇心を抱き、大輔命婦に手引きを頼んでようやく逢瀬を迎えます。
【源氏物語イラスト訳】
「鐘つきてとぢめむことはさすがにて
訳)「鐘をついて終了するようなことは、そうはいってもやはり、いたしかねて…、
答へまうきぞかつはあやなき」
訳)でも、お答えするにも躊躇してしまうのが、一方では私にもわけが分かりません」
いと若びたる声の、ことに重りかならぬを、
訳)とても若々しい声で、格別重々しくないのを、
【古文】
「鐘つきてとぢめむことはさすがにて答へまうきぞかつはあやなき」
いと若びたる声の、ことに重りかならぬを、
【訳】
「鐘をついて終了するようなことは、そうはいってもやはり、いたしかねて…、でも、お答えするにも躊躇してしまうのが、一方では私にもわけが分かりません」
とても若々しい声で、格別重々しくないのを、
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■【鐘(かね)】…鐘。つりがね
■【つき】…カ行四段動詞「つく」連用形
■【て】…単純接続の接続助詞
■【とぢめ】…マ行下二段動詞「とぢむ」未然形
※【とぢむ】…終了する
■【む】…婉曲の助動詞「む」連体形
■【は】…取り立ての係助詞
■【さすがに】…ナリ活用形容動詞「さすがなり」連用形
※【さすがなり】…そうはいってもやはり~だ
■【て】…単純接続の接続助詞
■【答へ】…ハ行下二段動詞「答ふ」未然形
■【まうき】…打消希望の助動詞「まうし」連体形
■【ぞ】…強意の係助詞
■【かつ】…一方で
■【は】…取り立ての係助詞
■【あやなき】…ク活用形容詞「あやなし」連体形
※【あやなし】…道理に合わない。わけがわからない
■【いと】…とても
■【若び】…バ行上二段動詞「若ぶ」連用形
■【たる】…存続の助動詞「たり」連体形
■【の】…同格の格助詞
■【ことに】…ナリ活用形容動詞「ことなり」連用形
※【ことなり】…格別だ
■【重(しげ)りかなら】…ナリ活用形容動詞「重りかなり」未然形
※【重りかなり】…重々しい
■【ぬ】…打消の助動詞「ず」連体形
■【を】…対象の格助詞
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「若人」、つまり若い女房が、
末摘花の代わりに、光源氏への返歌を申し上げたようです。
「まうき(まうし)」というのは、打消の希望を表す助動詞です。
これは、希望の助動詞「まほし」が、「ま欲(ほ)し」と理解されたことから、その対義語を、「ま憂(う)し」とみなしたことから生まれた造語と言われています。
あまり用いないので、文法書には出てないと思います。
こういう助動詞は、大学入試では、注釈がつくと思いますが、
難関大学では、注釈がなく文脈判断を要する場合もあるので、出てきたものから覚えていきましょう!
YouTubeにもちょっとずつ「イラスト訳」の動画をあげています。
日々の古文速読トレーニングにお役立てください。