源氏物語イラスト訳【末摘花111】玉襷 | 【受験古文速読法】源氏物語イラスト訳

源氏物語イラスト訳【末摘花111】玉襷

「いくそたび君がしじまにまけぬらむものな言ひそと言はぬ頼みに
のたまひも捨ててよかし。玉だすき苦し」

とのたまふ。

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【これまでのあらすじ】

故常陸宮の姫君の噂を聞いた光源氏は、「零落した悲劇の姫君」という幻想に憧れと好奇心を抱き、大輔命婦に手引きを頼んでようやく逢瀬を迎えます。

 

【源氏物語イラスト訳】

 

いくそたびしじままけらむ

訳)何十回もあなた沈黙負けてしまったことだろうか。

 

 

もの言ひ言は頼み

訳)もの言うとあなたが言わないことを頼みとして

 

 

のたまひ捨ててよかし

訳)お言葉として私を見捨ててしまってください

 

 

玉だすき苦しのたまふ

訳)たすきのようなどっちつかずの状態では苦しいおっしゃる

 

【古文】

いくそたびしじままけらむもの言ひ言は頼み
のたまひ捨ててよかし玉だすき苦し

のたまふ

 

【訳】

何十回もあなた沈黙負けてしまったことだろうか。

 もの言うとあなたが言わないことを頼みとして

 お言葉として私を見捨ててしまってくださいたすきのようなどっちつかずの状態では苦しい

おっしゃる

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

■【いくそたび(幾十度)】…何十回も。何度も

■【君】…あなた。末摘花のこと

■【が】…連体修飾格の格助詞

■【しじま(無言)】…沈黙。無言

■【に】…対象の格助詞

■【まけ】…カ行下二段動詞「負く」連用形

■【ぬ】…完了の助動詞「ぬ」終止形

■【らむ】…現在推量の助動詞「らむ」連体形

■【もの】…物事。何か

■【な~そ】…~するな

※【な】…禁止を表す陳述の副詞

※【そ】…禁止の終助詞

■【言ひ】…ハ行四段動詞「言ふ」連用形

■【言は】…ハ行四段動詞「言ふ」未然形

■【ぬ】…打消の助動詞「ず」連体形

■【頼(たの)み】…あて。頼り

■【に】…資格の格助詞

■【のたまひ】…「のたまふ」の名詞化

※【のたまふ】…「言ふ」の尊敬語(光源氏⇒末摘花)

■【も】…強意の係助詞

■【捨(す)て】…タ行下二段動詞「捨つ」連用形

■【てよ】…完了の助動詞「つ」命令形

■【かし】…念押しの終助詞

■【玉だすき】…たすきの尊称。許可とも拒否ともとれる、どっちつかずの状態をさす

■【苦し】…シク活用形容詞「苦し」終止形

■【と】…引用の格助詞

■【のたまふ】…「言ふ」の尊敬語(作者⇒光源氏)

 

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◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

☆本日の『源氏物語』☆

 

「玉だすき」というのは、「たすき(襷)」の尊称です。

 

 

まるで、たすきが交差して絡み合うように、

事がかけ違って、わずらわしいたとえとして、よく用いられます。

 

ここでは、末摘花の返答がまるでどっちつかずの状態で、

OKなのか、NOなのか、はっきりさせてほしい、と

光源氏は訴えているのですね。

 

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