源氏イラスト訳【若紫401】対比
さかしう心あり、何くれとむつかしき筋になりぬれば、わが心地も、すこし違ふふしも、出で来やと、心おかれ、人も恨みがちに、思ひのほかのこと、おのづから出で来るを、いとをかしきもてあそびなり。
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【源氏物語イラスト訳】
さかしら心あり、何くれとむつかしき筋になりぬれば、
訳)小賢しい智恵が身につき、何やかやとうっとうしい関係となってしまうと、
わが心地も、すこし違ふふしも、出で来やと、心おかれ、
訳)自分の気持ちとも、少し違う点も、出て来るだろうかと、用心せずにいられなくて、
人も恨みがちに、思ひのほかのこと、おのづから出で来るを、
訳)相手の女も嫉妬しがちになり、意外なもめ事が、自然と出て来るものなのに、
いとをかしきもてあそびなり。
訳)たいそうかわいい遊び相手である。
【古文】
さかしら心あり、何くれとむつかしき筋になりぬれば、わが心地も、すこし違ふふしも、出で来やと、心おかれ、人も恨みがちに、思ひのほかのこと、おのづから出で来るを、いとをかしきもてあそびなり。
【訳】
小賢しい智恵が身につき、何やかやとうっとうしい関係となってしまうと、自分の気持ちとも、少し違う点も、出て来るだろうかと、用心せずにいられなくて、相手の女も嫉妬しがちになり、意外なもめ事が、自然と出て来るものなのに、たいそうかわいい遊び相手である。
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■【さかしら心】…小賢しい知恵。利口ぶった考え
■【あり】…ラ変動詞「あり」連用形
■【何くれと】…何やかやと。あれこれと
■【むつかしき】…シク活用形容詞「むつかし」連体形
※【むつかし】…うっとうしい
■【筋(すぢ)】…関係
■【に】…変化の結果の格助詞
■【なり】…ラ行四段動詞「なる」連用形
■【ぬれ】…完了の助動詞「ぬ」已然形
■【ば】…順接確定条件の接続助詞
■【わが】…自分の
■【心地(ここち)】…心持ち。気持ち
■【も】…強意の係助詞
■【少し】…副詞
■【違(たが)ふ】…違っている
■【ふし(節)】…点。面
■【も】…強意の係助詞
■【出で来(いでく)】…出てくる(カ変複合動詞)
■【や】…疑問の係助詞
■【と】…引用の格助詞
■【心おか】…カ行四段動詞「心置く」未然形
※【心おく】…気兼ねする。用心する
■【れ】…自発の助動詞「る」連用形
■【て】…単純接続の接続助詞
■【人】…ここでは、相手の女のこと
■【も】…添加の係助詞
■【恨みがち】…嫉妬しがち。恨むことが多い状態
■【に】…状態の格助詞
■【思ひのほか】…意外。思いも寄らないこと
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【おのづから】…自然と
■【出で来る】…カ変動詞「出で来」連体形
■【を】…逆接の接続助詞
■【いと】…たいそう
■【をかしき】…シク活用形容詞「をかし」連体形
※【をかし】…かわいい。趣深い
■【もてあそび】…相手として遊び、心を慰めること。遊び相手
■【なり】…断定の助動詞「なり」終止形
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ここでの「さかしら心」は、
若紫のあどけなさと対比的に置かれています。
男女関係を結び、嫉妬するような関係になったら、
このように、光源氏がどこか(の女性の元)から帰ってきた翌日は、恨みのひと言も言ったりしますよね。
それに対し、若紫は、
何もそういう邪心がなく、
心から、真っ先に朝帰りした光源氏を出迎えてくれるんです。