源氏イラスト訳【若紫398】忘却
君は、男君のおはせずなどして、さうざうしき夕暮などばかりぞ、尼君を恋ひきこえたまひて、うち泣きなどしたまへど、宮をばことに思ひ出できこえたまはず。
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【源氏物語イラスト訳】
君は、男君のおはせずなどして、さうざうしき夕暮などばかりぞ、
訳)若紫の姫君は、源氏の君がいらっしゃらなかったりして、もの寂しい夕暮時などだけは、
尼君を恋ひきこえたまひて、うち泣きなどしたまへど、
訳)亡き尼君をお慕い申し上げなさって、つい涙ぐみなどしなさるけれど、
宮をばことに思ひ出できこえたまはず。
訳)父宮は特にお思い出し申し上げなさらない。
【古文】
君は、男君のおはせずなどして、さうざうしき夕暮などばかりぞ、尼君を恋ひきこえたまひて、うち泣きなどしたまへど、宮をばことに思ひ出できこえたまはず。
【訳】
若紫の姫君は、源氏の君がいらっしゃらなかったりして、もの寂しい夕暮時などだけは、亡き尼君をお慕い申し上げなさって、つい涙ぐみなどしなさるけれど、父宮は特にお思い出し申し上げなさらない。
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■【君】…若紫の姫君
■【は】…取り立ての係助詞
■【男君】…源氏の君をさす
■【の】…主格の格助詞
■【おはせ】…サ変動詞「おはす」未然形
■【ず】…打消の助動詞「ず」連用形
■【など】…例示の副助詞
■【し】…サ変動詞「す」連用形
■【て】…単純接続の接続助詞
■【さうざうしき】…シク活用形容詞「さうざうし」連体形
※【さうざうし】…もの寂しい
■【など】…例示の副助詞
■【ばかり】…限定の副助詞
■【ぞ】…強意の係助詞(結びの流れ)
■【尼君】…若紫の祖母
■【を】…対象の格助詞
■【恋ひ】…ハ行上二段動詞「恋ふ」連用形
■【きこえ】…ヤ行下二段動詞「きこゆ」連用形
※【きこゆ】…謙譲の補助動詞(作者⇒故尼君)
■【たまひ】…ハ行四段動詞「たまふ」連用形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒若紫)
■【て】…単純接続の接続助詞
■【うち泣き】…ちょっと泣くこと。つい涙ぐむこと
■【など】…例示の副助詞
■【し】…サ変動詞「す」連用形
■【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」已然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒若紫)
■【ど】…逆接の接続助詞
■【宮】…父である兵部卿宮
■【をば】…~を。~は(「を」の強調)
※【を】…対象の格助詞
※【ば】…強意の係助詞「は」の濁音化
■【ことに】…ナリ活用形容動詞「ことなり」連用形
※【ことなり】…特別だ。格別だ
■【思ひ出で】…ダ行下二段動詞「思ひ出づ」連用形
■【きこえ】…ヤ行下二段動詞「きこゆ」連用形
※【きこゆ】…謙譲の補助動詞(作者⇒兵部卿宮)
■【たまは】…ハ行四段動詞「たまふ」未然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒若紫)
■【ず】…打消の助動詞「ず」終止形
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若紫の君は、「男君(光源氏)」のいない時は、
時々、亡き尼君を思い出しているようですね。
ただ、あまり会いに来てくれなかった父宮のことは、
だんだん忘れていってるようです。
「君」というのは、古文では、男にも、女にも使われます。
今回は、若紫にも、光源氏にも、「君」と使いたいので、
光源氏のほうを、「男君」と言っているんですね。
女のほうを「女君」と言う場合もけっこうあります。
また、「宮」と出てきたら、皇族をさすので、
今回の巻では、若紫の父である「兵部卿宮」でしたね!