源氏イラスト訳【若紫353】主語の確認
「…いかにはかばかしき御答へ、聞こえさせたまはむ」
とて、うち笑ひてゐたり。君、入りたまへば、いとかたはらいたく、
「うちとけて、あやしき古人どもの、はべるに」と聞こえさす。
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【源氏物語イラスト訳】
「…いかにはかばかしき御答へ、聞こえさせたまはむ」
訳)「…どんなにしっかりしたお返事を、姫にお聞かせなさるのでしょう」
とて、うち笑ひてゐたり。
訳)と言って、ちょっと笑って座っていた。
君、入りたまへば、いとかたはらいたく、
訳)源氏の君は、入りなさると、とてもきまり悪くて、
「うちとけて、あやしき古人どもの、はべるに」と聞こえさす。
訳)「くつろいで、見苦しい古参の女房たちが、そばにおりますのに」と申し上げる。
【古文】
「…いかにはかばかしき御答へ、聞こえさせたまはむ」
とて、うち笑ひてゐたり。君、入りたまへば、いとかたはらいたく、
「うちとけて、あやしき古人どもの、はべるに」と聞こえさす。
【訳】
「…どんなにしっかりしたお返事を、姫にお聞かせなさるのでしょう」
と言って、ちょっと笑って座っていた。源氏の君は、入りなさると、とてもきまり悪くて、
「くつろいで、見苦しい古参の女房たちが、そばにおりますのに」と申し上げる。
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■【いかに】…どんなに~か
■【はかばかしき】…シク活用形容詞「はかばかし」連体形
※【はかばかし】…しっかりした。はっきりした
■【御―】…尊敬の接頭語(少納言乳母⇒光源氏)
■【答(いら)へ】…返事。返答
■【聞こえ】…ヤ行下二段動詞「聞こゆ」未然形
※【聞こゆ】…「言ふ」の謙譲語(少納言乳母⇒若紫)
■【させ】…尊敬の助動詞「さす」連用形
■【たまは】…ハ行四段動詞「たまふ」未然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(少納言乳母⇒光源氏)
■【む】…推量の助動詞「む」連体形
■【とて】…~と言って
※【と】…引用の格助詞
※【て】…単純接続の接続助詞
■【うち―】…ちょっと~(接頭語)
■【て】…単純接続の接続助詞
■【ゐ】…ワ行上一段動詞「ゐる」連用形
※【ゐる】…座る
■【たり】…完了(存続)の助動詞「たり」終止形
■【君】…源氏の君
■【入り】…ラ行四段動詞「入る」連用形
■【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」已然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【ば】…順接確定条件の接続助詞
■【いと】…とても
■【かたはらいたく】…ク活用形容詞「かたはらいたし」連用形
※【かたはらいたし】…きまり悪い
■【うちとく】…気を許す。くつろぐ
■【て】…単純接続の接続助詞
■【あやしき】…シク活用形容詞「あやし」連体形
※【あやし】…みっともない。見苦しい
■【古人(ふるびと)】…古参の女房
■【―ども】…複数の接尾語
■【の】…主格の格助詞
■【はべる】…ラ変動詞「はべる」連体形
※【はべり】…「控ふ」の謙譲(光源氏⇒若紫)
■【に】…逆接の接続助詞
■【と】…引用の格助詞
■【聞こえさす】…「言ふ」の謙譲(作者⇒光源氏)
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今回は、誰の行動なのかをきちんと押さえましょう。
「君入りたまへば」のあとで、主語が変わっています。
敬語をきっちりと捉えて
主語を確認していくべきですね。