源氏イラスト訳【若紫337】身勝手
御文は、たびたびたてまつれたまふ。暮るれば、例の大夫をぞたてまつれたまふ。「障はる事どものありて、え参り来ぬを、おろかにや」などあり。
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【源氏物語イラスト訳】
御文は、たびたびたてまつれたまふ。
訳)お手紙は、頻繁に差し上げなさる。
暮るれば、例の大夫をぞたてまつれたまふ。
訳)日が暮れると、いつものように惟光大夫をお差し向けなさる。
「障はる事どものありて、え参り来ぬを、おろかにや」などあり。
訳)「差し障り がいろいろとあって、参上することができ ないのを、いい加減な奴だとお思いか」などと、伝言がある。
【古文】
御文は、たびたびたてまつれたまふ。暮るれば、例の大夫をぞたてまつれたまふ。「障はる事どものありて、え参り来ぬを、おろかにや」などあり。
【訳】
お手紙は、頻繁に差し上げなさる。日が暮れると、いつものように惟光大夫をお差し向けなさる。「差し障り がいろいろとあって、参上することができ ないのを、いい加減な奴だとお思いか」などと、伝言がある。
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■【御―】…尊敬の接頭語(作者⇒光源氏)
■【文(ふみ)】…手紙
■【は】…取り立ての係助詞
■【たびたび】…頻繁に
■【たてまつれ】…ラ行下二段動詞「たてまつる」連用形
※【たてまつる】…「与ふ」の謙譲(作者⇒若紫)
■【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【暮るれ】…ラ行下二段動詞「暮る」已然形
■【ば】…順接確定条件の接続助詞
■【例の】…いつものように
■【大夫(たいふ)】…五位以上の官職の者。ここでは、惟光をさす
■【を】…対象の格助詞
■【ぞ】…強意の係助詞
■【たてまつれ】…ラ行下二段動詞「たてまつる」連用形
※【たてまつる】…「遣る」の謙譲(作者⇒若紫)
■【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【障(さ)はる】…差し障る
■【―ども】…複数の接尾語
■【の】…主格の格助詞
■【あり】…ラ変動詞「あり」連用形
■【て】…単純接続の接続助詞
■【え~(打消)】…~できない(「え」は陳述の副詞)
■【参り来(こ)】…カ変動詞「参り来」未然形
※【参り来(く)】…参上する
■【ぬ】…打消の助動詞「ず」連体形
■【を】…対象の格助詞
■【おろかに】…ナリ活用形容詞「おろかなり」連用形
■【や】…疑問の係助詞
■【など】…引用の副助詞
■【あり】…ラ変動詞「あり」終止形
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光源氏は、こうして惟光を来させるだけで、
正式な「妻」としての待遇をしてきません。
これは、光源氏の「メンツ」ともいえるものだったでしょうか?
しかし、
手紙はたびたび贈って、
「誠意がないと思われたら困る」
と書いているのですね。
なんと、身勝手な……。