【夕顔143-3】古文単語「田舎の通ひ」
源氏物語イラスト訳の重要古語です
【古文単語の主なパターン】
1.古典特有語
…現代にない古語。
2.古今異義語
…現代と意味の異なる古語。
3.死語的現代ワード
…高校生がほぼ使わない死語?
【今回の源氏物語】
「今年こそ、なりはひにも頼むところすくなく、田舎の通ひも思ひかけねば、いと心細けれ。北殿こそ、聞きたまふや」
など、言ひ交はすも聞こゆ。
――――――――――
今回出てきた古文単語
――――――――――
■【こそ】…強意の係助詞
■【なりはひ】…生計。商売。農作物
■【に】…対象の格助詞
■【も】…強意の係助詞
■【頼(たの)む】…あてにする。頼りにする
■【すくなく】…ク活用形容詞「少なし」連用形
■【田舎(ゐなか)】…田舎。地方
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【通(かよ)ひ】…行き来。往来
■【も】…添加の係助詞
■【思ひかけ】…カ行下二段動詞「思ひかく」未然形
※【思ひかく】…心にとめる
■【ね】…打消の助動詞「ず」已然形
■【ば】…順接確定条件の接続助詞
■【いと】…とても
■【心細けれ】…ク活用形容動詞「心細し」已然形
■【北隣こそ】…北隣さん
※【―こそ】…呼びかけの接尾語
■【聞き】…カ行四段動詞「聞く」連用形
■【たまふ】…尊敬の補助動詞(隣の男⇒北隣の人)
■【や】…疑問の係助詞(文末用法)
■【など】…引用の副助詞
■【言ひ交はす】…言い交わす。語り合う
■【も】…強意の係助詞
■【聞こゆ】…聞こえる(ヤ行下二段動詞)
◇ 今回は「や」にも注意しましょ♪
―――――――――――――――
☆ 本日の古文単語「田舎の通ひ」 ☆
―――――――――――――――
「今年こそ、なりはひにも頼むところすくなく、田舎の通ひも思ひかけねば、いと心細けれ。北殿こそ、聞きたまふや」
など、言ひ交はすも聞こゆ。
問)傍線部の意味として最も適当なものを選べ。
1.田舎に帰りたいのに、その資金がどうにも調達できず、困っているということ。
2.都会暮らしに飽きて、田舎に帰りたくても、その旅費が手に入らないということ。
3.田舎暮らしに憧れているものの、日々の生活に追われて気持ちが向かないということ。
4.地方に出稼ぎに行っても、帰ってくるだけの資金がないため、どうにも仕方がないということ。
5.地方をまわって行商しようにも農作物が不足しているから、当てにできないということ。
「田舎(ゐなか)」というのは、
現代でいう、「田舎」「地方」のことです。
「田舎の通ひ」は、
そこに通って行く、という意味☆
この意味で捉えるならば、
選択肢どれも、間違ってはいないんですけど…
でも…
1.田舎に帰りたいのに、その資金がどうにも調達できず、困っているということ。
2.都会暮らしに飽きて、田舎に帰りたくても、その旅費が手に入らないということ。
…核家族化?!
(`・д´・ ;)
ま、まあ、
地方から京へ出て来て、所帯を持ち、
実家に久しぶりに帰りたい…っていう人もいるでしょうが^^;
直前の「寒しや」とのつながり
直後の「北隣さん」に共感を求める
という文脈に合いませんよね;;
(((((゚Д゚ ;))))
3.田舎暮らしに憧れているものの、日々の生活に追われて気持ちが向かないということ。
…ロハス?!
(`・д´・ ;)
た、たしかに、
憧れるのもいいですが…
平安王朝文学の背景知識にそぐわないかも…
また、これも、直前直後の文脈に
合いませんね~;
ヽ(;´ω`)ノ
実は、ここで、
「田舎渡らひ」という古典常識が
非常に役に立ちますっ!
ヽ(*・ω・)人(・ω・*)ノ
【田舎渡らひ(ゐなかわたらひ)】
【名詞】
…田舎を回って生計を立てること。今で言う行商の類
*全訳古語例解辞典(小学館)より
つまり、
「なりはひ(農作物)」もあてにできす…、
したがって、
「田舎渡らひ」に思いをかけることもできない
というわけです。
Σ(・ω・ノ)ノ!
正解…5
「今年こそ、なりはひにも頼むところすくなく、田舎の通ひも思ひかけねば、いと心細けれ。北殿こそ、聞きたまふや」
など、言ひ交はすも聞こゆ。
● 過去記事リンク
■こそ
■いと
■も
ーーーーーーーーーーーー