黒澤明 「蜘蛛巣城 (くものすじょう)」 (1957) | It’s not about the ski 遅れて来た天才スキーヤー???、時々駄洒落(笑)、毎日ビール!(爆)

It’s not about the ski 遅れて来た天才スキーヤー???、時々駄洒落(笑)、毎日ビール!(爆)

スキー大好き、ゴルフ、読書、映画、演劇、音楽、絵画、旅行と他の遊びも大好き、元々仕事程々だったが、もっとスキーが真剣にやりたくて、会社辞めちまった爺の大冒険?


この記事は、2018年7月22日の記事を再録したものです。





【予告編:3分38秒】


【あらすじ:Wikipediaよりの引用(→)】

北の館(きたのたち)の主 藤巻の謀反を鎮圧した武将 鷲津武時(三船敏郎)と三木義明(千秋実)は、喜ぶ主君 都築国春(佐々木孝丸)に召し呼ばれ、蜘蛛巣城へ馬を走らせていたが、雷鳴の中、慣れているはずの「蜘蛛手の森」で道に迷い、奇妙な老婆と出会う。

老婆は、武時はやがて北の館の主、そして蜘蛛巣城の城主になることを、義明は一の砦の大将となり、やがて子が蜘蛛巣城の城主になることを告げる。二人は一笑に付すが、主君が与えた褒賞は、武時を北の館の主に、義明を一の砦の大将に任ずるものであった。

武時から一部始終を聞いた妻 浅茅(山田五十鈴)は、老婆の予言を主君 国春が知れば、こちらが危ないと、謀反をそそのかし、武時の心は揺れ動く。折りしも、国春が、藤巻の謀反の黒幕、隣国の乾を討つために北の館へやって来る。

その夜、浅茅は見張りの兵士たちを痺れ薬入りの酒で眠らせ、武時は、眠っている国春を殺す。主君殺しの濡れ衣をかけられた臣下 小田倉則保(志村喬)は国春の嫡男 国丸(太刀川洋一)を擁し、蜘蛛巣城に至るが、蜘蛛巣城の留守をあずかっていた義明は開門せず、弓矢で攻撃してきたため、二人は逃亡する。

義明の強い推挙もあって、蜘蛛巣城の城主となった武時だったが、子がないために義明の嫡男 義照(久保明)を養子に迎えようとする。だが浅茅はこれを拒み、加えて懐妊を告げたため、武時の心は又しても変わる。

義明親子が姿を見せないまま養子縁組の宴が始まるが、その中で武時は、死装束に身を包んだ義明の幻を見て、抜刀して錯乱する。浅茅が客を引き上げさせると、ひとりの武者が、義明は殺害したものの、義照は取り逃がしたと報告する。

嵐の夜、浅茅は死産し、国丸、則保、義照を擁した乾の軍勢が攻め込んで来たという報が入る。無策の家臣たちに苛立った武時は、轟く雷鳴を聞いて森の老婆のことを思い出し、ひとり蜘蛛手の森へ馬を走らせる。


【以下結末までの記述あり、映画をご覧になっていない方は、感想欄まで、お飛び下さい!】

現れた老婆は「蜘蛛手の森が城に寄せて来ぬ限り、お前様は戦に敗れることはない」と予言する。蜘蛛巣城を包囲され動揺する将兵に、武時は老婆の予言を語って聞かせ士気を高めるが、野鳥の群れが城に飛び込むなど不穏な夜が明けた翌日、浅茅は発狂し、手を「血が取れぬ」と洗い続ける。

そして蜘蛛手の森が動き出したことに恐慌をきたす兵士たち。持ち場に戻れと怒鳴る武時めがけて、味方達の中から無数の矢が放たれる。



【感想】

黒澤明が、シェイクスピアの「マクベス」を元に、能の様式美を取り入れて映画化した作品。なお、黒澤明の晩年の作品の「乱」(1985)も、やはり、同じシェイクスピアの「リア王」が原作、能を取り入れて作られている。

本当は、シェイクスピアや能についての知識がもう少しあれば、この映画をもっと楽しめるのだろう。しかし、それらを欠く私ですら、この映画は人間の業を描いた傑作に思える。

三船敏郎の鬼気迫る演技。この映画はちょうど、成瀬巳喜男監督「妻の心」(1956)と千葉泰樹監督「下町 ダウンタウン」(1957)の間に公開されており、両方の映画で三船が見せた爽やかで誠実な青年像とは、180度真逆の、出世欲・権勢欲に取り付かれた亡者の如く、破滅に突き進む武将の得も言われぬ負の迫力がある。

三船の武将の妻を演じた山田五十鈴の演技も素晴らしい。或る意味、夫以上に欲望に取り付かれており、弱腰の夫を焚き付け、終いには狂気に陥っていく、その表情と仕草。この後の「下町 ダウンタウン」で、三船敏郎演じる鶴石に徐々に惹かれ控え目に彼を愛する様になる戦争未亡人(夫の生死不明)と同じ俳優とはとても思えない。

霧の中から現れる巨大な蜘蛛巣城、武時(三船敏郎)が嵐の様な矢の攻撃から逃げ惑うを映画史上有名なシーン等、黒澤映画らしい映像美も見ものである。

もちろん映画館でご覧戴くのが一番良いに決まっているが、なかなかその機会は少ないと思うので、DVDでも良いのですぐにでも観て戴きたい、名作中の名作である。

考えてもみてほしい。世界最高の戯曲作家ウィリアム・シェイクスピアと世界最高の映画監督 黒澤明のコラボレーションなのだよ、この映画は。



【スタッフ、キャスト等】

監督:黒澤明
脚本:小國英雄、橋本忍、菊島隆三、黒澤明
原作:ウィリアム・シェイクスピアの戯曲「マクベス」(1606)
撮影:中井朝一
美術:村木与四郎
音楽:佐藤勝
特殊効果:円谷英二
キャスト:
鷲津武時(三船敏郎)
鷲津浅茅(山田五十鈴)
三木義明(千秋実)
小田倉則保(志村喬)
三木義照(久保明)
都築国春(佐々木孝丸)
都築国丸(太刀川洋一)

上映時間:1時間50分
日本公開:1957年1月15日
1957年度キネマ旬報ベストテン:日本映画第4位
鑑賞日:2022年11月19日
場所:TOHOシネマズ日本橋



【三船敏郎 主要出演作品】

谷口千吉 「銀嶺の果て」 (1947)
黒澤明 「酔いどれ天使」 (1948)
黒澤明 「静かなる決闘」 (1949)
谷口千吉 「ジャコ萬と鉄」 (1949)
黒澤明 「野良犬」 (1949)
黒澤明 「醜聞」 (1950)
黒澤明 「羅生門」 (1950)
黒澤明 「白痴」 (1951)
森一生 「荒木又右衛門 決闘鍵屋の辻」 (1952)
千葉泰樹 「東京の恋人」 (1952)
谷口千吉 「吹けよ春風」(1953)
本多猪四郎 「太平洋の鷲」 (1953)
黒澤明 「七人の侍」 (1954)
稲垣浩 「宮本武蔵」 (1954)
杉江敏男 「天下泰平」 (1955)
杉江敏男 「続 天下泰平」 (1955)
稲垣浩 「続 宮本武蔵 一乗寺の決闘」 (1955)
黒澤明 「生きものの記録」 (1955)
稲垣浩 「宮本武蔵 完結編 決闘巌流島」 (1956)
成瀬巳喜男 「妻の心」 (1956)
黒澤明 「蜘蛛巣城」 (1957)
黒澤明 「どん底」 (1957)
千葉泰樹 「下町 ダウンタウン」 (1957)
稲垣浩 「無法松の一生」 (1958)
黒澤明 「隠し砦の三悪人」 (1958)
稲垣浩 「或る剣豪の生涯」 (1959)
稲垣浩 「日本誕生」 (1959)
岡本喜八 「暗黒街の対決」 (1960)
松林宗恵 「ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐」 (1960)
黒澤明 「悪い奴ほどよく眠る」 (1960)
黒澤明 「用心棒」 (1961)
稲垣浩 「ゲンと不動明王」 (1961)
黒澤明 「椿三十郎」 (1962)
稲垣浩 「どぶろくの辰」 (1962)
松林宗恵 「太平洋の翼」 (1963)
黒澤明 「天国と地獄」 (1963)
岡本喜八 「侍」 (1965)
黒澤明 「赤ひげ」 (1965)
岡本喜八 「血と砂」 (1965)
谷口千吉 「奇巌城の冒険」 (1966)
ジョン・フランケンハイマー 「グラン・プリ」 (1966)
小林正樹 「上意討ち 拝領妻始末」 (1967)
岡本喜八 「日本のいちばん長い日」 (1967)
熊井啓 「黒部の太陽」 (1968)
丸山誠治 「連合艦隊指令長官 山本五十六」 (1968)
ジョン・ブアマン 「太平洋の地獄」 (1968)
稲垣浩 「風林火山」 (1969)
蔵原惟繕 「栄光への5000キロ」 (1969)
丸山誠治 「日本海大海戦」 (1969)
岡本喜八 「赤毛」 (1969)
沢島忠 「新撰組」 (1969)
岡本喜八 「座頭市と用心棒」 (1970)
テレンス・ヤング「レッド・サン」 (1971)
中島貞夫 「日本の首領 野望編」 (1977)
熊井啓 「お吟さま」 (1978)
中島貞夫 「日本の首領 完結編」 (1978)
スティーヴン・スピルバーグ「1941」 (1979)
舛田利雄 「二百三高地」 (1980)
山田洋次 「男はつらいよ 知床慕情」 (1987)
熊井啓 「千利休 本覺坊遺文」 (1989)
熊井啓 「深い河」 (1995)



【黒澤明監督作品】

①「姿三四郎」 (1943)
②「一番美しく」 (1944)
③「続 姿三四郎」 (1945)
④「虎の尾を踏む男達」 (1945)
⑤「わが青春に悔いなし」 (1946)
⑥「素晴らしき日曜日」 (1947)
⑦「酔いどれ天使」 (1948)
⑧「静かなる決闘」 (1949)
⑨「野良犬」 (1949)
⑩「醜聞」 (1950)
⑪「羅生門」 (1950)
⑫「白痴」 (1951)
⑬「生きる」 (1952)
⑭「七人の侍」 (1954)
⑮「生きものの記録」 (1955)
「蜘蛛巣城」 (1957)
⑰「どん底」 (1957)
⑱「隠し砦の三悪人」 (1958)
⑲「悪い奴ほどよく眠る」 (1960)
⑳「用心棒」 (1961)
㉑「椿三十郎」 (1962)
㉒「天国と地獄」 (1963)
㉓「赤ひげ」 (1965)
㉔「どですかでん」 (1970)
㉕「デルス・ウザーラ」 (1975)
㉖「影武者」 (1980)
㉗「乱」 (1985)
㉘「夢」 (1990)
㉙「八月の狂詩曲」 (1991)
㉚「まあだだよ」 (1993)





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