トッド・ヘインズ「ワンダーストラック」 (2017) | It’s not about the ski 遅れて来た天才スキーヤー???、時々駄洒落(笑)、毎日ビール!(爆)

It’s not about the ski 遅れて来た天才スキーヤー???、時々駄洒落(笑)、毎日ビール!(爆)

スキー大好き、ゴルフ、読書、映画、演劇、音楽、絵画、旅行と他の遊びも大好き、元々仕事程々だったが、もっとスキーが真剣にやりたくて、会社辞めちまった爺の大冒険?





【予告編:1分47秒】





【あらすじ:映画ウォッチよりの引用(→)】


【1927年】

米国ニュージャージー州ホーボーケン。裕福な家庭の耳が聞こえない少女ローズ(ミリセント・シモンズ)の楽しみは有名女優リリアン・メイヒューの切り抜きをすることと紙細工。紙の摩天楼を部屋に飾っている。

今日は一人でメイヒュー主演の映画「嵐の娘」をオルガン備え付けの映画館に見に行く。他の観客と共に感動して外に出てきた時、外も大雨、映画館はトーキー映画の上映が近日始まることを宣伝していた。


【1977年】

ミネソタ州ガンフリント。12歳の少年ベン(オークス・フェグリー)は図書館員だった母のエレイン(ミシェル・ウィリアムズ)を交通事故で亡くしたばかり。母はついにダニーの父親が誰か教えてくれなかった。今は伯母に引き取られている。

狼に追われる夢で目を覚ました夜、母と暮らした家に行くと、従姉ジャネット(モーガン・ターナー)が先にしのびこんでタバコを吸っていて、タバコのことを伯母には内緒にすることで貸しを作る。ベンはその時、母親の遺品の中から「ワンダーストラック」と題されたアメリカ自然史博物館の古い本を見つける。

そこにはさめられたキンケイド書店と書かれたしおりには「愛をこめて、ダニー」と記されていた。ダニーが自分の父親だと確信したベンは、書店の電話番号に電話をかけようとする。外は嵐。家に雷が落ちる。


【1927年】

厳格な父親は、先生が来るからとローズに勉強を命じる。だが、ローズは長い髪を自分でハサミを使って切って家出する。リリアン・メイヒューがニューヨークで芝居に出るという新聞の切り抜きと、兄から来たアメリカ自然史博物館の絵葉書をもってフェリーでニューヨークへ。

楽屋口からプロムナード劇場に入ったローズが稽古中のメイヒュー(ジュリアン・ムーア)に見つかる。ローズは楽屋に通される。「会いたかった」と紙に書いたローズにメイヒューは怒り出す。彼女はローズの母親だった。


【1977年】

ベンは病院で意識を取り戻す。だが、落雷のせいで聴力を失っていた。それでもベンは従姉に手助けさせて病院を脱走し、長距離バスで、父親を探すためにニューヨークへ行った。だが街で財布の金を盗まれてしまう。


【1927年】

母に拒絶されたローズは楽屋に取り残されるが、窓から外へ逃げてアメリカ自然史博物館に行く。展示に目を奪われるローズ。とりわけ巨大な隕石に。だが、ローズは一人の博物館員につかまえられ、館員しか入れない部屋につれていかれる。なぜニューヨークに来たかをきかれる。それは兄のウォルター(コーリー・マイケル・スミス)だった。


【1977年】

キンケイド書店はとうの昔に店を閉じているように見えた。ベンと体のぶつかった一人の少年が書店について何か話したようだがベンには聞こえない。少年と彼の父の後をつけてベンはアメリカ自然史博物館に行く。

ベンの落とした財布をその少年が拾ったため、ベンは少年を追って館内を歩き回る。ベンも巨大隕石に心惹かれる。だがベンを驚かせたのは夢に出てくるのと同じ、ガンフリント湖の狼のジオラマだった。ベンの財布を拾った少年ジェイミー(ジェイデン・マイケル)と仲良くなったベンは、ジェイミーだけが知る館内の秘密の隠れ家に通される。

その中には、「ワンダーストラック」に描かれた陳列棚がそのまま残っていた。そして昔の資料の中にベンの家の絵があることを発見する。描いたのはダニーである。エレイン宛の、仕事の援助を頼む手紙も見つかった。

博物館員であるジェイミーの父親にダニーのことを尋ねるように頼むベン。だが、ジェイミーはキンケイド書店の移転先を話しそびれていたことをベンにわびる。孤独な彼はベンと遊びたかったのだった。ベンは怒って博物館を出る。

【以下結末までの記述あり。 映画未見の方は次の感想欄まで飛んで下さい。】


【1977年】

ベンは移転したキンケイド書店へ行く。耳の聞こえない女性客が入って来た。ベンが落とした「ワンダーストラック」を見て女性客は驚く。女性はローズ(ジュリアン・ムーア)で店の主人はウォルター(トム・ヌーナン)だった。ベンは母の死を告げる新聞記事の切り抜きを見せる。ローズとベンはバスに乗ってクイーンズ美術館へ行く。

閉館している時間だがローズの鍵で入館しニューヨークのパノラマ模型のある部屋に行く。ローズはウォルターの元に身を寄せて、ろう学校に通い始め、そこで知り合った男性と結婚してダニーを産んだ。

アメリカ自然史博物館の展示部門に勤めたが1964年の万国博覧会のためのニューヨークのパノラマ模型を作る仕事に参加し、常設展示されることになったパノラマ模型の管理のために今はクイーンズ美術館で働いている。

息子のダニーも自然史博物館のジオラマ部門に就職し、狼のジオラマの仕事でエレインと愛し合うようになったが、心臓の病気で若くして死んだのだった。ローズはエレインと狼のジオラマの前に来た幼いベンを覚えていた。ベンはローズが模型の中に隠していたダニーの描いた狼の絵を見せてもらう。

停電になり、ベンは「来なさい」という声を聞き母の姿を見る。美術館の外には二人の跡をつけてきたジェイミーがいた。ベンは友達をローズに紹介する。ニューヨーク中が停電で街は騒然としている。三人は美術館に避難し、停電の街を見下ろすのだった。




【感想】

お目当てはウディ・アレンの「女と男の観覧車」(2017)で、この映画については全く予備知識がないまま、二本立て興行だったので観たせいか、映画の冒頭はちょっと判り難かった。

1977年のベン少年は、母親が亡くなってしまった様だし、狼に追いかけられる夢も見るし、電話をかけ様とすると落雷に遇うし、セリフも非常に少ないので、物事の結びつきが良く判らず、頭の中でクエスチョン マークが幾つも点灯した。ちょうど人が何の予備知識もなく「2001年宇宙の旅」(1968)を初めて観たらなる様に(笑)

そんな映画の始めの方で、ベンの母親が聴いているのが、デヴィッド・ボウイのデビュー シングル曲「スペース・オディティ(Space Oddity)」(1969)である。デヴィッド・ボウイのこの曲が、スタンリー・キューブリックの映画「2001年宇宙の旅(2001: A Space Odyssey)」にインスパイアされて作られたのは有名な話である。

父を知らず母を亡くした孤独な少年が映画のラストで家族のもとに帰還を果たす物語なのだから、監督のトッド・ヘインズが、デヴィッド・ボウイと「2001年宇宙の旅」へのオマージュとして使用したことは、間違いないだろう。

あの「2001年宇宙の旅」の冒頭、人が道具を使い始めるシーン、最後と3回も流れるリヒャルト・シュトラウスの交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」が、この映画のラスト近くでも使われているのだから。ちなみに、「2001年宇宙の旅」で使われているのは、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウィーン・フィルハーモニー版、本作品ではデオダードによるジャズ・ファンク版である。

肝心の本作品の感想から、話が逸れてしまったが、ミステリアスなオープニングと、1977年と1927年のニューヨークの物語が交互に語られ、それぞれの主人公が、事故で聴覚を失った少年と、聾唖者の少女であり、それが映画のラストで、見事に物語が収束し大円団を向かえる構成と、少年を演じるオークス・フェグリーと、少女を演じるミリセント・シモンズ(聾唖の女優)、そしてジュリアン・ムーアが素晴らしく、ワンダーストラック(圧倒的感動)に打たれること必至の傑作だと思う。

1977年のニューヨークと、1927年のニューヨーク、そして二つを繋ぐアメリカ自然史博物館とクイーンズ博物館のニューヨーク市のジオラマの描写も細部まで凝っていて(博物館好きには堪らない)、大いに楽しめる。

本作品も、本年日本公開映画「私のオススメ作品」に追加である。:「君の名前で僕を呼んで」「孤狼の血」「ファントム・スレッド」「スリー・ビルボード」「レッド・スパロー」「ザ・シークレットマン」「ペンタゴン・ペーパーズ」「英国総督最後の家」「ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男」「タリーと私の秘密の時間」「きみの鳥はうたえる」「散り椿」「500ページの夢の束LBJ ケネディの意志を継いだ男」「負け犬の美学日日是好日」 「恋のしずくウスケボーイズ」「女と男の観覧車「ワンダーストラック」(鑑賞順、評価順にあらず。)




【スタッフ、キャスト等】

監督:トッド・ヘインズ
脚本:ブライアン・セルズニック
原作:ブライアン・セルズニックの同名小説(2011)
音楽:カーター・パウェル
撮影:エドワード・ラックマン
キャスト:
ベン(オークス・フェグリー)
リリアン・メイヒュー(ジュリアン・ムーア)
ローズ(ジュリアン・ムーア 二役)
エレイン「ベンの母」(ミシェル・ウィリアムズ)
少女時代のローズ(ミリセント・シモンズ)
ジェイミー(ジェイデン・マイケル)
ウォルター(トム・ヌーナン)
若き日のウォルター(コーリー・マイケル・スミス)

上映時間:1時間57分
米国公開:2017年10月20日
日本公開:2018年4月6日
鑑賞日:2018年11月7日
場所:早稲田松竹






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