人類の夜明け(THE DAWN OF MAN)
遠い昔、ヒトザルが他の獣と変わらない生活を送っていた頃、黒い石板のような謎の物体「モノリス」がヒトザルたちの前に出現する。やがて1匹のヒトザルが謎の物体の影響を受け、動物の骨が道具・武器として使えることに気付いた。
獣を倒し多くの食物を手に入れられるようになったヒトザルは、反目する別のヒトザルの群れに対しても武器を使用して殺害し、水場を巡る縄張り争いに勝利する。
歓びのあまり、ヒトザルが骨を空に放り上げると、骨から地球周回軌道の最新衛星に場面が一瞬で転換する。 (モンタージュ。)
月に人類が住むようになった時代。アメリカ合衆国(米国)宇宙評議会のヘイウッド・フロイド博士(ウィリアム・シルヴェスター)は、月のティコ クレーターで発掘された謎の物体「TMA1」(Tycho Magnetic Anomaly 1, ティコ磁気異常1号、通称「モノリス」(一枚岩))を極秘に調査するため、月面クラビウス基地に向かう。調査中、400万年ぶりに太陽光を浴びたモノリスは強力な信号を木星に向けて発した。
木星への特命飛行(JUPITER MISSION)
18か月後、米国宇宙船ディスカヴァリー1号は木星探査の途上にあった。乗組員はデイヴ・ボーマン船長(キア・デュリア)、副長フランク・プール(ゲイリー・ロックウッド)ら5名の人間(ボーマンとプール以外の3名は出発前から人工冬眠中)と、ディスカヴァリー号の機能全てをコントロールする、史上最高の人工知能、HAL(ハル)9000型コンピュータである。
順調に進んでいた飛行の途上HALは、ボーマン船長にこの探査計画に疑問を抱いている事を打ち明ける。その直後HALはディスカヴァリー号の地球との通信用アンテナAE35ユニットユの故障を告げるが、ボーマン船長が実際の装置を船外活動で回収し、プールと共にチェックしたが、問題は全く見付からなかった。
【以下、結末までの記述あり。 お読みになりたくない方は、次の感想欄まで飛んで下さい。】
2人はHALの異常を疑い、その人工知能回路を停止させるべく話しあうが、これを察知したHALが乗組員の殺害を決行する。プールは船外活動中に宇宙服への酸素供給ホースを切断され、人工冬眠中の3名は生命維持装置を切られてしまう。
唯一生き残ったボーマン船長は、何とかHALの知能回路を停止させ、その折に偶然、探査計画の真の目的である、ティコ クレーターで発見されたモノリスの件を、初めて知ることになる。
木星 そして無限の宇宙の彼方へ(JUPITER AND BEYOND THE INFINITE)
今回を入れてこの映画を劇場でも15回くらいは観ていると思うが、最後に劇場で観たのは2015年、渋谷Bunkamuraのオーチャードホールでが最後である。
3年ぶりの劇場での鑑賞だが、やはり「2001年―」は、家庭のTVモニターではなく、劇場の大スクリーンで観てこそ、その真価が判る映画だ。
宇宙での孤独感、浮遊感、倦怠感、緊張感等、自分がまるで本当に宇宙にいるかの様な感覚。従来はもしかして「神」と考えられていた存在、人類より遥かに進化し人類を超える何者かの存在を、ここまで深遠に描いている作品は他に無いと改めて思う。
また、キューブリックの映像センスの良さが、1つ1つのカットに溢れている。例を挙げるとキリが無いのだが、冒頭タイトルの地球から太陽が上るシーン、シャトルと宇宙ステーションと地球が1つの画面に踊っているかの様に納まるシーン、木星に向かう宇宙船ディスカヴァリーの脇を隕石が2つ通り過ぎるシーン、モノリスと木星と衛星が1直線に並ぶシーン等々。
会話場面を可能な限り削ぎ落とし、ナレーションを全廃したこの映画では、あらすじにもあるとおり、3回サブ・タイトルが表示される。
(1)THE DAWN OF MAN
(2)JUPITER MISSION - EIGHTEEN MONTHS LATER
(3)JOURNEY BEYOND THE STARS AND THE INFINITE
月でモノリスが発見される部分には題が付いていない。これはこの部分まで含めて、THE DAWN OF MAN、人類の夜明けだからだ。
あの、映画史上、最も有名なモンタージュのひとつ、ヒトザルが投げた骨が地球を周回する宇宙船に変わる。あのシーンは、長々とした人類の歴史を省略して、400万年前から尚、21世紀になっても人類は未だ夜明けの段階であることを示している。
モノリスを造った、人類より遥かに進化した知性体から見れば、月に基地まで作っているが、人間はヒトザルとさして変わらない幼稚な生命体なのだ。
【以下、ネタバレあり。 お読みになりたくない方は、公開劇場情報欄まで飛んで下さい。】
デイヴ・ボーマン船長がスターゲートを初めて通って、宇宙の彼方まで旅をして、スターチャイルドに変貌して地球に帰還して、人類は初め夜明けから次の段階に移行したのである。
しかし、もしHAL9000が、デイヴとの「闘争」に勝って、スターゲートの彼方に到達したのが、もしコンピューターだったら、どうなったのだろうか。デイヴもHALも知らなかったが、それは遥かに進化した知性体とファースト・コンタクトをするのが、人間かAIのどちらなのかを決する闘いであったのだ。
- 109シネマズ:二子玉川、木場、湘南、菖蒲(埼玉県久喜市)、大阪エキスポシティ、箕面
- TOHOシネマズ:日比谷、新宿、ららぽーと横浜、なんば、二条、仙台
- ユナイテッド・シネマ:としまえん、浦和、豊橋18、岸和田、キャナルシティ13(福岡市)
- T・ジョイ:T・ジョイ PRINCE 品川、横浜ブルク13、広島バルト11、鹿児島ミッテ10
- シネマサンシャイン:大和郡山、衣山(愛媛県松山市)、土浦
- イオンシネマ大高(名古屋市)
- 成田HUMAXシネマズ
- USシネマちはら台(千葉県市原市)
- エーガル8シネマズ(広島県福山市)
脚本:スタンリー・キューブリック、アーサー・C・クラーク
撮影:ジョフリー・アンスワース
撮影補佐:ジョン・オルコット
特殊効果:ウォーリー・ヴィーヴァース、ダグラス・トランブル、コン・ペダーソン、トム・ハワード
美術:トニー・マスターズ、ハリー・ラング、アーニー・アーチャー
編集:レイ・ラヴジョイ
キャスト:
デイヴィッド(デイヴ)・ボーマン船長(キア・デュリア)
フランク・プール副長(ゲイリー・ロックウッド)
ヘイウッド・フロイド博士(ウィリアム・シルヴェスター)
ヒトザルの群れのリーダー(ダニエル・リクター)
上映時間:164分、休憩時間含む。 (休憩時間15分を除くと149分、前奏・間奏・終奏を除くと141分。)
日本公開:同年同月11日
同年度アカデミー賞:視覚効果賞
同年度キネマ旬報ベストテン:外国映画第5位
場所:TOHOシネマズ日比谷 スクリーン4番IMAXシアター 座席番号I-16
【スタンリー・キューブリック監督作品リスト】
①恐怖と欲望(1953年3月米国公開/日本未公開)
②非情の罠(1955年9月/1960年9月)
③現金に体を張れ(1956年5月/1957年12月)
④突撃(1957年12月/1958年2月)
⑤スパルタカス(1960年10月/同年12月)
⑥ロリータ(1962年6月/同年9月)
⑦博士の異常な愛情 又は私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛する様になったか(1964年1月/同年10月)
⑧2001年宇宙の旅(1968年4月/同年同月)
⑨時計じかけのオレンジ(1971年12月/1972年4月)
⑩バリー・リンドン(1975年12月/1976年7月)
⑪シャイニング(1980年5月/同年12月)
⑫フルメタル・ジャケット(1987年6月/1988年3月)
⑬アイズ ワイド シャット(1999年7月/同年同月)
【参考文献】
・キネ旬ムック フィルムメーカーズ⑧スタンリー・キューブリック [責任編集]巽孝之