ベン・リューイン 「500ページの夢の束」 (2018) | It’s not about the ski 遅れて来た天才スキーヤー???、時々駄洒落(笑)、毎日ビール!(爆)

It’s not about the ski 遅れて来た天才スキーヤー???、時々駄洒落(笑)、毎日ビール!(爆)

スキー大好き、ゴルフ、読書、映画、演劇、音楽、絵画、旅行と他の遊びも大好き、元々仕事程々だったが、もっとスキーが真剣にやりたくて、会社辞めちまった爺の大冒険?





【特別映像+予告編(日本語字幕):1分35秒】




【予告編(日本語字幕無し):2分26秒】







【あらすじ:映画ウォッチよりの引用(→)】

ウェンディ(ダコタ・ファニング)は自閉症のため、カリフォルニア州オークランドでソーシャル ワーカーのスコッティ(トニ・コレット)の指導を受けながらグループホームで暮らしている。

ウェンディは、曜日によってセーターの色を変え、食事時間等規則正しい生活を送っている。平日はシナボン(菓子パンのチェーン店)で働き、夕方はTVで「スター・トレック」(米国の人気SFテレビドラマ、10作以上映画化もされている)を欠かさず観ること、そして自分で考えたスター・トレックの脚本を書くことが、最大の楽しみだ。ウェンディの姉のオードリー(アリス・イヴ)は結婚して出産、2人の母は既に他界している。

ある日、ウェンディはパラマウント映画会社による、優勝賞金10万ドルのスター・トレックの脚本コンテスト(電子ファイルは受け付けず、印刷された原稿で郵送されたもののみ受付)があることを知り、挑戦を決意する。ウェンディは脚本の草稿をスコッティに見せるも、スコッティの知らないスター・トレック用語が多く、なかなか読み進むことが出来ない。

そんな中、オードリーが生まれた赤ちゃんの写真を携え、ウェンディを訪問した。ウェンディはグループホームから出たいため、オードリーと赤ちゃんと一緒に暮らしたいと申し出る。オードリーはまだ時期尚早だと断ると、ウェンディはパニックになり、スコッティに何とかなだめられる。

ウェンディは土曜の夜に、日曜は郵便の配達が休みで月曜も祭日で同様に休みのため、脚本コンテスト締め切り日の火曜までには郵送では間に合わないことに気付き、日曜の朝、脚本をコンテスト主催のパラマウント社があるハリウッド(ロサンゼルス)まで届けに行くことを決意する。

早朝出発するウェンディの後を愛犬、チワワのピートが付いて来てしまう。ウェンディはなんとかロサンゼルス行きのバスに乗り込むが、ピートがバスの中で粗相をしてしまい、ペット乗車禁止のバスから降ろされてしまう。その頃、ウェンディが行方不明になった事に気づいたスコッティは、オードリーに電話しても、オードリーも行方を知らず、警察に捜索願いを出す。

バスから降ろされ、途方に暮れるウェンディは途中、現金も奪われてしまう。ウェンディは子供のころピアノでひいた歌を歌いながら、歩いてハリウッド
を目指す。取られずに残った小銭でコンビニでチョコレートを買おうとした際、店員に代金をちょろまかされそうになるが、居合わせた老女に助けてもらい、老女の乗る大型ヴァンでロスまで連れていって貰えることになった。

一方、ウェンディが心配で居てもいられぬオードリーは、自分の車で幹線道路沿いにウェンディを探し回っていた。スコッティは、心当たりに電話を掛けまくっていたが、ウェンディの部屋の壁に、スター・トレック脚本コンテストのポスターが張ってあるのを発見し、ウェンディはハリウッドに向かっていると確信する。

老女とウェンディが乗ったヴァンは、運転手の居眠り運転で事故に遭い、ウェンディは病院にかつぎ込まれたが、軽い脳震盪だけで外傷は殆ど無い。スコッティは電話した病院にウェンディがいることをつきとめ、息子のサム(リヴァー・アレクサンダー)と病院に向かう。オードリーもスコッティからメイルを受け取り、その病院に急行する。

しかし、月曜の朝、目覚めたウェンディはハリウッドに早く行かねばとの一念から、ピートを託すメモ書きを残して、病院を脱走し、その時に脚本完成稿の一部を病院の駐車場にバラ撒いてしまう。ウェンディはやむを得ず、それら脚本の一部を残して、先を急ぐ。

病院に着いたスコッティ。息子サムは、散らばったウェンディの脚本を見付け拾い集める。オードリーも病院に到着。しかし、病院関係者にもウェンディの行方は判らない。一方、ウェンディはゴミ箱から、捨てられた大量のコピー用紙を見付け、無くした脚本の一部をコピー用紙の裏側に手書きで書き付ける。

バスの待合室でロスまでの切符を買おうとするが、もうロス行きのバスは終ったと言われ、一夜をバス乗り場横のベンチで過ごす。スコッティ、サム、オードリーは安ホテルに宿泊し、ウェンディのことを語り合う。翌朝の火曜日は脚本提出の締切日、ウェンディはロス行きの切符を買おうにもお金が足りず、係員の隙を付いて、バスの貨物室に乗り込むことに成功する。

何とかロスに着いたウェンディはハリウッドのパラマウントスタジオを目指して歩く。スコッティ、サム、オードリーもハリウッドを目指して車を走らせる。ウェンディは途中、警察に見つかる。捜索願の出ている顔と一致すると見た警官は彼女を追う。ウェンディの鞄にスター・トレックのマークがあるのを見て取った警官は、怯えるウェンディに対し、クリンゴン語(スター・トレックに登場する異星人の言語)で話し掛け、彼女を安心させ、無事保護する。

【以下、結末までの記述あり。 映画未見の方は、次の感想欄まで、お進み下さい。】

警察署でウェンディは、無事、オードリーとスコッティに再会。ウェンディは言う。コンテストに応募するのは、賞金10万ドルを姉オードリーに、家と赤ちゃんのために使って欲しいから、そして原稿を一番読んで欲しい人は姉だと。

ムは拾い集めた脚本をウェンディに渡し、4人は脚本コンテストを主催するパラマウント社に向かう。パラマウント社の郵便室で、ウェンディは担当者に脚本を手渡そうとするが、担当者は「郵送のみ」と断る。ウェンディは抗議しながら、相手の隙を見て、郵送物がたまっているボックスに上手く脚本を入れて来る。喜ぶ、オードリー、スコッティ、サム。

コンテストの結果を待つウェンディ。しかし、残念ながら送られて来た封書には、落選の旨が記載してあった。その後のある日、オードリーからの手紙を受け取るウェンディ、オードリーの赤ちゃんが、ウェンディに会いたいという自宅への招待状だった。

オードリーの自宅の前に置いてあった子供の頃に遊んだピアノで当時の曲を弾くウェンディ。家のドアが開き、そこには赤ん坊を抱っこしたオードリー。ウェンディに赤ちゃんを渡し、今度はウェンディが抱っこする。

エンディングタイトルが流れる中、ウェンディの愛犬が走って来て、オードリーの家のドアの前で、2-3回吠えると、ドアが開き、ピートは中に入っていった。




【感想】

そんなに泣く様な場面ではないのだが、警官(パットン・オズワルド)とウェンディ(ダコタ・ファニング)のクリンゴン語での会話の場面で、不覚にも涙がこぼれた(笑) もしかすると、スコッティが警察に捜索願いを出した時に、その情報も加えていたのかもしれないが、一瞬でウェンディのスター・トレック好きを見抜き、思いやりからクリンゴン語で呼び掛けた警官の優しさに心打たれたのだろうか。

ウェンディを見つけた警官もスター・トレック好き(クリンゴン語を話せるのは、相当オタク度が高い)というのは、作劇として、超ご都合主義だが、それを指摘するのは野暮というもの。それを言ったら、一般人が、パラマウント スタジオにあんなに簡単には入れないはずだ(笑) 今時パラマウントに限らず、ある程度以上の規模の企業であれば、米国でも日本でも、世界中何処でも、セキュリティはかなり厳しい。また、今時、原稿が郵送のみ受付というコンテストも無いだろう(笑)

この映画は、主人公ウェンディのオタク的スター・トレック好きが、映画の要所要所で味噌になっているが、それほどスター・トレックを知らなくても充分楽しめると思う。実際スコッティ(トニ・コレット)が、スター・ウォーズとスター・トレックの区別がつかず、息子のサム(リヴァー・アレクサンダー)に色々と教えて貰う場面がある。

ただ、アメリカ人にとっては、スター・トレックの詳細は知らなくても、そういうTVドラマ/映画があるということは、おそらく誰でも知っており、それを前提にこの映画は作られているので、全くスター・トレックに馴染みの無い人の多い日本では、ちょっと理解が難しい場面があるかもしれない。

そんな映画ではあるが、私は本作品も、2018年の日本公開映画のオススメ作品に強引に加えてしまう(笑):「君の名前で僕を呼んで」「孤狼の血」「ファントム・スレッド」「スリー・ビルボード」「レッド・スパロー」「ザ・シークレットマン」「ペンタゴン・ペーパーズ」「英国総督最後の家」「ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男」「タリーと私の秘密の時間」「きみの鳥はうたえる」「散り椿「500ページの夢の束」

ウェンディの入っている施設のソーシャル・ワーカーで、ウェンディの捜索に奮闘するスコッティ役のトニ・コレットが、またウェンディを本当に心配している感じが良く出ていて、私は好きなのだが、映画の中で何も説明は無いが、このスコッティというのは彼女の本当の名前では無く、ウェンディが付けた呼び名だと思う。

実は、スコッティというのは、スター・トレックに登場する宇宙船エンタープライズ号の機関長(不可能な要求を創意工夫で可能に変え、エンタープライズ号を窮地から何度も救う)の名前である。

ウェンディ自身は自分をスポック(エンタープライズ号副長、地球人とヴァルカン星人の混血、論理を重視するヴァルカン人として地球人の血が呼び起こす感情との葛藤にいつも悩んでいる)、姉のオードリーをカーク(エンタープライズ号艦長でスポックの親友)に準えて考えていることからも、それは明らかであると思う。

その息子サム(リヴァー・アレクサンダー)も出番は多くないが、上記のとおり、スコッティにスター・トレックの知識を教授し、結果ウェンディを見つけ出す大きな助けになる重要な役どころである。

出番が多くないが重要な役どころというと、ウェンディの愛犬、チワワのピートを忘れてはいけない。ネタバレになるので、ここには書かないが、映画の最後に登場するのは、ウェンディでもスコッティでもなく、このピートなのだ。何て素敵なシーンだろうか。

大事な、脚本の原稿の一部をバラ撒いて無くしてしまったウェンディが自分に言う言葉、「(船が)困難に陥った時に進むべき論理的方向は、前進あるのみ(Move forward)」、これはスター・トレックの中でのスポックの台詞だと思われるが、そう言ってウェンディは無くした原稿を手書きで書き始める。

ちなみに、映画の原題の「Please stand by(待機して下さい)」は、具体的にスター・トレックの中の誰の台詞かは判らないが、ウェンディが自分を落ち着かせようとする時に、自分自身に言っている言葉だ。

以下は、スター・トレックの冒頭/若しくはエンディングに流れる文言:

Space, the final frontier. These are the voyages of the Starship Enterprise. Her ongoing mission: to explore strange new worlds, seek out new life and new civilizations, to boldly go where no man has gone before.

「誰も行ったことの無い所に勇敢にも向かう」。自閉症のウェンディにとって、オークランドからロサンゼルスへの400km弱の旅は正にそういう旅だったのに違い無い。

なお、ウェンディの姉オードリー役のアリス・イヴは、「スター・トレック」のリブート第2作、J.J.エイブラムス監督の「イントゥ・ダークネス」(2013)に出ていたので、楽屋落ちか何かあるのかと思ったら、特に何も無かった(笑)




【スタッフ、キャスト等】

監督:ベン・リューイン
脚本:マイケル・ゴラムコ
音楽:エイトル・ペレイラ
撮影:ジェフリー・シンプソン
キャスト:
ウェンディ(ダコタ・ファニング)
スコッティ(トニ・コレット)
オードリー「ウェンディの姉」(アリス・イヴ)
サム「スコッティの息子」(リヴァー・アレクサンダー)
フランク警視(パットン・オズワルド)
シナボンでのウェンディの同僚(トニー・レヴォロリ)

上映時間:1時間33分
米国公開:2018年1月26日
日本公開:2018年9月7日
鑑賞日:2018年10月3日
場所:新宿ピカデリー






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