グリンダ・チャーダ「英国総督 最後の家」 (2018) | It’s not about the ski 遅れて来た天才スキーヤー???、時々駄洒落(笑)、毎日ビール!(爆)

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スキー大好き、ゴルフ、読書、映画、演劇、音楽、絵画、旅行と他の遊びも大好き、元々仕事程々だったが、もっとスキーが真剣にやりたくて、会社辞めちまった爺の大冒険?






【あらすじ:Cinemarcheよりの引用(→)】

1947年、インドの首都デリー。ここにある英国総督の官邸は、数百人もの使用人が、隅々に至るまで清掃を行なっていた。

第二次世界大戦で国力が疲弊した英国は、植民地インドを去ることを決め、主権譲渡のために任命された元軍人の新総督ルイス・マウントバッテン卿(ヒュー・ボネヴィル)とその家族が英国からやって来る。インド人青年ジート・クマール(マニシュ・ダヤル)は、以前からそこで働く幼なじみドゥリーブのつてで、その新総督の家で勤務することになり、2人は新総督の秘書に抜擢された。

ジートは新総督の娘パメラ(リリー・トラヴァース)の世話係に任命されたイスラム系インド人女性アーリア(フマー・クレイシー)を邸宅内で見かけ、驚愕する。かつて警察官だったジートは、ラホール刑務所に勤務していた。アーリアの父親はデモ行進が加わって、そこに投獄されていたが、外部との面会が許されずジートが手紙や食料などを届けていたのだ。ジートはアーリアに思いを寄せていたが、この2年間居場所すらわからずにいたのだ。

一方のインドを返還するために赴任したマウントバッテン卿は、「最後の総督として主権譲渡の任務を誇りを持って遂行する」心構えでいた。またそれ以上に政治に通知した妻のエドウィナ(ジリアン・アンダーソン)は、夫以上にインドの人々の平安を心から願っていた。総督官邸内では、マウントバッテン総督は妻エドウィナと娘パメラとともに2階に住むこととなり、下の階には、ヒンドゥー教徒、イスラム教徒、シーク教徒である使用人のインド人が500人住んでいる。

2階では連日連夜論議が行われ、独立後に統一インドを望むネルー(タンヴィール・ガニー)率いる国民会議派と、分離してパキスタンを建国したいジンナー(デンジル・スミス)のムスリム(イスラム)連盟が対立していた。世界に多大な影響を与える歴史的な決断が、まさになされようとしていたのだ。

一方で、新総督のもとで働くインド人青年ジートと令嬢の秘書アーリアは、互いに惹かれあうが、信仰が違う上に、アーリアの幼いときに父親が決めた婚約者が現れる。その時、国家分断の緊張感に沸き返ったインドの各地では、大きな暴動が多発し、多数の死傷者が出ていた・・・




【感想】


インドとパキスタンの英国からの独立、それが統一インドではなく、インドとパキスタンと2つの国に別れての独立にならざるを得なかった経緯が、最後の英国インド領総督だったマウントバッテン卿とその妻・娘、及び、ヒンドゥー教徒のジート・クマールとイスラム教のアーリアの恋人同士の視点から描かれる。

インドの人々のために、可能な限り早く且つ平和に、インドを独立させることに尽力したマウントバッテン卿もさることながら、それを支えた妻と娘、特に妻役のジリアン・アンダーソンが素晴らしい。

また、クマールとアーリアの恋人同士の切ない物語が、涙ながら、作品に彩りを添え、歴史絵巻でありながら、家族と恋人の物語でもあるという、まさに娯楽映画の王道の組立となっている。

しかし、インドとパキスタンに別れて英国から独立したことは知っていたが、その際に宗教・民族間の対立から、夥しい数の人名(正確な人数は不明)が殺されたことは初めて知った。

この映画では、英国のチャーチル前首相が数年前に線引きしていたインド・パキスタンの分割案(対ソ連を意識し石油の権益が英国に残る様な分割案)に、イスラム連盟のジンナー指導者が乗った様に描かれているが、これについては異論も大きい様で(英国提案の連邦案を国民会議派が拒否し寧ろネルー率いる国民会議派がジンナーを分離独立に追い込んだ)、映画の解釈を鵜呑みにすることは出来ない。

しかし、いずれにしても、インドとパキスタンの対立は21世紀になっても続いており、いずれも核保有国となっていることは、この1947年のインド・パキスタン分離独立に端を発しているのだ。日本人があまり詳しくない歴史への興味と関心を呼び起こしてくれることも有り難い。

最後に、この映画の監督のグリンダ・チャーダこそが、このインド・パキスタン分離独立で家族を殺されながら何とか生き延びたひとりの女性の孫娘であることが、エンドロールでクレジットされる。大きく非常な歴史のうねりと、それに翻弄される人々の喜び・悲しみ・怒り・そして希望を描いた、秀逸な映画である。


なお、実在のマウントバッテン卿は、第二次世界大戦中にビルマで日本軍と激戦を行ない、また当時英国領だったマレーシア・シンガポール・香港を日本軍に奪われたことから、日本への怨恨深く、遺言で自身の葬儀には日本人の参列を認めなかった・・・  (1979年、アイルランド過激派組織IRA暫定派の仕掛けた爆弾により、孫たちと共に暗殺された。)




【スタッフ、キャスト等】

監督:グリンダ・チャーダ
脚本:グリンダ・チャーダ、ポール・マエダ・バージェス、モイラ・パフィーニ
原作:ラリー・コリンズ、ドミニク・ラピエール、ナレンドラ・シン・サリラ
製作:グリンダ・チャーダ、ポール・マエダ・バージェス、ディーパック・ネイヤー
キャスト:
ルイス・マウントバッテン(ヒュー・ボネヴィル)
エドウィナ・マウントバッテン(ジリアン・アンダーソン)
パメラ・マウントバッテン(リリー・トラヴァース)
ジート・クマール(マニシュ・ダヤル)
アーリア(フマー・クレイシー)
アーリアの父(オム・プリ)
ネルー(タンヴィール・ガニー)
ジンナー(デンジル・スミス)

上映時間:1時間46分
英国公開:2017年3月3日
日本公開:2018年8月11日
鑑賞日:2018年9月3日
場所:新宿武蔵野館






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