白石和彌 「孤狼の血」 (2018) | It’s not about the ski 遅れて来た天才スキーヤー???、時々駄洒落(笑)、毎日ビール!(爆)

It’s not about the ski 遅れて来た天才スキーヤー???、時々駄洒落(笑)、毎日ビール!(爆)

スキー大好き、ゴルフ、読書、映画、演劇、音楽、絵画、旅行と他の遊びも大好き、元々仕事程々だったが、もっとスキーが真剣にやりたくて、会社辞めちまった爺の大冒険?





【予告編:1分31秒】




【登場人物相関図】




【あらすじ:Cinemarcheよりの引用(→)】

1974年、広島県呉原市で、地元の尾谷組(おたにぐみ)と広島市を地盤にする五十子会(いらこかい)の間で、後に第三次広島抗争と呼ばれる縄張り争いが勃発したが、このは時は、尾谷組組長逮捕と五十子会幹部の死で痛み分けとなった。

それから15年後の1988年、五十子会の下部組織の呉原市 加古村組と組長服役中の尾谷組の間で緊張が高まってる折、加古村組のフロント組織 サラ金 呉原金融の経理士が行方不明になる事件が起きる。

呉原東署のマル暴の刑事大上(通称:ガミさん、役所広司)と、広島県警本部から異動してきた若手刑事の日岡(松坂桃李)は、この経理士失踪事件から、両暴力団間の抗争を阻止しようとする。

大上は日岡を連れて、組長不在の間、若頭 一之瀬(江口洋介)が率いる尾谷組を訪問。五十子/加古村の挑発が続く中、若手の暴走を抑えるのにも限度があると、一之瀬大上に語る。

ある夜、呉原市の闇社会の社交場、高木里佳子(真木よう子)がママを務めるクラブ梨子で、大上が、一之瀬等尾谷組幹部と談笑していたところに、五十子会会長の五十子(石橋蓮司)、加古村組組長の加古村(嶋田久作)等が店に入って来た。全くの偶然と語る五十子と加古村だったが、呉原再進出に本腰を入れて来たことを、尾谷組側にアピールしようとしたことは明らかだった。

大上は五十子会系の右翼団体代表の瀧井(ピエール瀧)から呉原金融の経理士の拉致に関する情報を入手した。瀧井は五十子会系の人物だったが、大上とは古くからの仲で、時々情報のやり取りをしていたのだ。

その証拠集めに向かう大上は、日岡が止めるのも聞かずに、放火・窃盗・不法侵入等、多くの違法捜査をして証拠を得ていく。

尾谷組との癒着等のダーティな噂の絶えない大上。実は日岡は、大上の内偵の為に県警本部監察官から送り込まれた密偵だったのだ。監察官は更に、大上の持つ日記帳を探す様に日岡に命じる。

そんな中、尾谷組の若手構成員、里佳子の恋人が加古村組の者によって射殺される事件が起きる。報復として、今度は尾谷組側が加古村組事務所に銃弾を数発撃ち込み、両者の抗争は本格化する。


【以下には、結末までの記述/ネタバレあり。映画未見の方は、次の感想欄に飛んで下さい!!】

大上は一之瀬に、全面戦争を思いとどまるように迫るが、逆に三日間以内に加古村組の挑発を止めさせないと、尾谷組も全面的に戦うとの条件を、一之瀬から突き付けられてしまう。そこで、大上は現在収監中の尾谷組組長(伊吹吾郎)に一之瀬の説得を依頼するが不調に終わる。

そこで、里佳子に手伝って貰って、里佳子の恋人を殺した加古村組の構成員をおびきだして、拷問に近い方法で情報を聞き出すが、それによって経理士の遺体が発見される。

これにより加古村組に捜査が本格的に入るが、一方で地元新聞の記者から呉原東署に、10年前の五十子会系暴力団員殺人事件についての大上の関与疑惑についての問い合わせが入り、大上は自宅待機処分を言い渡されてしまう。

約束の三日間の期限となり、日岡は単独で一之瀬に会いに行くものの、大上の不在は約束の反古だと言い渡され、突き放されてしまう。そして、遂に尾谷組が加古村組幹部を襲撃。捜査の手は尾谷組にも迫る。

大上は自宅待機の命令を破って単独行動を開始し、五十子/加古村と尾谷の手打ちを画策するが双方の条件は、決して相容れない。

直後に、大上が行方不明となり、数日後に大上は川で溺死体で発見される。多くの暴行の跡がありながらも、警察の公式発表は泥酔した上で川に転落しての事故死だった。

大上の遺体の状況から大上が五十子/加古村の手にかかって消されたことを確信した日岡は、一之瀬と示し合わせて、一之瀬たち尾谷組に五十子会会長を襲撃させる。五十子の命を奪った後は、尾谷の若手を実行犯に仕立てて逮捕させるという約束をしていた日岡だが、これを反古にして一之瀬ごと一網打尽に現行犯逮捕してしまう。

大上以上に暴力団を利用すること決めた日岡は五十子/加古村だけでなく尾谷組も一気に潰すつことを密かに決意にしていたのだ。

日岡には、殺された大上が生前に日岡宛に発送したスクラップブック(大上の日記帳)が送られて来るが、そこには、過去から現在までの警察関係者の暴力団との癒着や不正の証拠が記されており、日岡は愕然とする。大上がアンタッチャブルな存在でいられたのもこの情報のおかげだったのだ。

また、日岡は、10年前の五十子会系暴力団員殺人事件についての真相を里佳子の口から知ると、そのスクラップブックを自分の武器として警察内で生きていくこと決める。大上をさらに上回る存在となって・・・





【感想】

本来、「仁義なき戦い」(1973)系のヤクザ映画はあまり好きではないのだが、あまりにも評判が良いので観て来た。なるほど、これは面白い。

現実にあった暴力団広島抗争(1950-1972)から16年後、暴力団対策法成立前夜の1988年の広島/呉を舞台にした原作、柚月裕子の同題小説(2015)は、直木賞(2015下期)の候補にもなり、日本推理作家協会賞を受賞した他、「このミステリーが凄い(2016)」国内部門第3位、「本の雑誌」選考2015ベストテン第2位に選ばれており、これは原作もかなり上質のミステリーと思われ、いずれ読まねばなるまい。

原作にはグロいシーンは殆ど無く、映画のグロいシーンは全て映画制作サイドによるものと監督の白石和彌は述べているが、映画も予告編で想起されるよりずっと警察ものっぽいタッチで、アメリカ映画の刑事ものを彷彿させ、すぐにでもハリウッドでリメイクされそうなストーリー/キャラクターだ。

まあ、予告編はどうしても派手な場面、キャッチーな台詞のシーンばかりを使うから、極端にヴァイオレンスものの印象を受けるが、実際はそれが2時間ぶっ続けなはずも無く、全体的には良質の警察小説を読んでいる様な雰囲気なのだ。

主人公の巡査部長 役所広司(ガミさん)が渋過ぎて、カッコ良過ぎる。私の喫近の記憶では、是枝裕和監督の「三度目の殺人」(2017)の殺人犯役だが、その時とは全く違う、男のフェロモン全開のダーティ ヒーロー。いやあ、役所広司は本当に大した役者だ。

そのガミさんに付く、新米警官の松坂桃李も悪くないが、若頭の江口洋介もgoodだ。ガミさんは「警察じゃけぇ、何をしてもええんじゃ!」と映画の中で叫んでいたが、ヤクザ役は初めてだと言う江口洋介だが、現実世界では一生お会いしたくない、切れっ切れのヤクザの若頭役を颯爽と、「映画の中じゃけぇ、何をしてもええんじゃ」という感じで楽しそうに演じている。
また、江口洋介の役の名前が一之瀬守孝(=森高)なのは、笑えるwww。

何かのインタビューで、「この映画の中で一番男っぽいのは誰?」と聞かれた松坂桃李が「真木よう子さん」と応えていたが、真木よう子も、切符が良くてカッコ良いのだ。ピエール瀧も良い味出しているし、日岡(松坂桃李)に絡む、阿部純子も可愛いし、最大の敵役の石橋蓮司も相変わらず憎たらしいし、百花繚乱の一流どころの一癖も二癖もある役者たちの演技を観るのがとても楽しい映画だ。

〇〇〇〇の付いている男子諸君と、男気のある真木よう子さんの様な女性(笑)は、今すぐ、映画館に急いだ方が良いと思う。




【スタッフ、キャスト等】

監督:白石和彌
脚本:池上純哉
原作:柚月の同題小説(2015)
キャスト:
大上(役所広司)
日岡(松坂桃李)
里佳子(真木よう子)
一之瀬(江口洋介)
桃子(阿部順子)
五十子(石橋蓮司)
瀧井(ピエール瀧)
加古村(嶋田久作)

上映時間:2時間05分
日本公開:2018年5月12日
鑑賞日:2018年6月8日
場所:TOHOシネマズ日本橋



【映画「孤狼の血」の撮影舞台裏:9分53秒】





【真木よう子、映画「孤狼の血」を語る:18分24秒】






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