木村大作 「散り椿」 (2018) | It’s not about the ski 遅れて来た天才スキーヤー???、時々駄洒落(笑)、毎日ビール!(爆)

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スキー大好き、ゴルフ、読書、映画、演劇、音楽、絵画、旅行と他の遊びも大好き、元々仕事程々だったが、もっとスキーが真剣にやりたくて、会社辞めちまった爺の大冒険?





【予告編:1分33秒】




【あらすじ

享保15年(1730年)、かつて藩の不正を訴え出たが認められず、故郷 扇野藩を出た瓜生新兵衛(岡田准一)は、連れ添い続けた妻 篠(麻生久美子)が病に倒れた折、妻から最期の2つの願いを託される。「故郷に戻り、元の家の庭の散り椿を見て来て欲しい」、そして、「采女様(西島秀俊)を助けて欲しい」と。

采女とは、平山道場 四天王の一人で、新兵衛とは親友だったものの、二人には新兵衛の離郷に関わる大きな因縁があったのだ。

采女と篠は昔、相思相愛だったが、采女の母親 滋野が、篠との結婚を猛反対したことで、その縁談は破談になった。そして、8年前に起きた藩内の不正事件。告発者は釆女、新兵衛、篠原三右衛門(緒方直人)、篠の兄 坂下源之進(駿河太郎)の四天王、告発されたのは釆女の養父 榊原平蔵等。

しかし、その平蔵は何者かによって暗殺され、平蔵の斬られた傷が、四天王のみが使う技による切り口だったため、坂下源之進が事件の責任をひとり被って切腹。新兵衛は、藩を離れることとなり、肝心の不正事件は未解決のまま、幕が引かきれた。

妻の願いどおり、扇野藩に戻った新兵衛は、妻 篠の実家、現在は、坂下源之進の弟であり新兵衛の義弟である藤吾(池松壮亮)の家に、居候を決め込む。そしてその家は、篠の妹である里美(黒木華)が切り盛りしていた。

事件当時幼かった藤吾は、最初は新兵衛を迷惑がり、距離を置こうとしたが、新兵衛の人柄と見事な腕前に、段々と新兵衛を慕う様になっていく。また、今だ独り身の里美も、新兵衛に惹かれていく自分の気持ちを留めることが出来ない。そんな里美は、新兵衛の荷物の姉 篠の遺品を整理をしている内に、その中にあった釆女が篠に出した手紙を読んでしまう。

8年前の不正事件の首謀者は、藩の上代家老の石田玄蕃(奥田瑛二)である。玄蕃は、商人 田中屋惣兵衛(石橋蓮司)と組んで、藩の最大の産品である和紙の取扱いによる莫大な利益の上前を撥ねて私腹を肥やしていたのだ。新兵衛は、敢えて田中屋惣兵衛の用心棒となるが、玄蕃と惣兵衛の密約の証拠となる起草文を手に入れるためである。

一方、頭脳明晰で優秀な采女は、藩主の覚えめでたく、8年前の事件後も藩の要職に留まり、玄蕃と対立していた。そんなある日、田中屋に何者かが進入し惣兵衛が斬られる事態に。新兵衛は惣兵衛の手当てをしつつ、上手く起草文を手に入れる。

【以下に結末までの記述あり。映画未見の方は次の感想欄までお進み下さい。】

長年、江戸で勤めていた若き藩主 千賀谷政家(渡辺大)が、ついに国に帰って来たが、僅か数日後に、玄蕃一派の鉄砲に倒れる。しかし、実際に打たれたのは若君の身代りとなった篠原三右衛門(緒方直人)であった。三右衛門は虫の息の中、藤吾(池松壮亮)に、釆女の義父 平蔵を切ったのは自分だと告げる。

一方、新兵衛は采女の屋敷で、釆女と面会していた。篠が死ぬ前に、釆女の助けになってやってくれと頼まれたこと、釆女からの手紙を大事に持っていたことを釆女に告げる。

采女は、確かに若いころ篠に想いをかけたことはあるが、篠には、決して新兵衛と離れずついていくつもりだと告げられたと、手紙を見せられる。篠は、篠の後を追って死ぬつもりの新兵衛を死なせたくなかったので、釆女を助けてやれと言ったのだ。篠は、新兵衛を生かすために心にもないことを言ったのだと、釆女は新兵衛に言った。

その後、釆女と新兵衛は、玄蕃一派と対決。釆女は玄蕃を斬って捨てたが、一派の放った矢に倒れた。采女は「散る椿は、残る椿があると思えばこそ、見事に散っていけるのだ」と言い残す。残りの一派は、すべて新兵衛の剣が始末した。

藩主の慰留を振り切り、里美が止めるのも聞かず、新兵衛はひとり扇野藩を去って行った。





【感想】

オール ロケーションによる木村大作のキャメラが素晴らしい。耐える侍、成長していく若侍、ついに立ち上がる侍、そして侍を取り巻く女性たちの物語。もうこれぞ日本映画の王道、時代劇!という感じで、1時間51分を堪能した。

岡田准一の新兵衛と、西島秀俊の釆女。2人の友情と篠を巡る微妙な関係が良い。青い若侍の藤吾(池松壮亮)が新兵衛と出会ってたくましくなっていくのは、時代劇あるあるだが、良い感じ。篠を演じる麻生久美子も良いが、個人的には黒木華の日本的な顔だち、素々とした佇まい、内に秘めた情熱に魅力を感じた。

石田玄蕃の奥田瑛二は、徹底的に悪役なのだが、この人物には、もう一歩掘り下げて描き込んで欲しかった気も少しするが、そうすると映画の流れが一時的に停滞して話が散漫になったかもしれず、これはこれで仕方ないのかな。

釆女と篠の中を引き裂いた釆女の母親役の富司純子(寺島しのぶの母、元 火牡丹のお竜!)は、最初は憎まれ役だったが、映画の最後ではすっかり良いおばあちゃんになって、なかなかの儲け役というか、木村大作監督の富司純子へのリスペクトだろう。

本年(2018年)日本公開作品中の私のオススメ作品にまた1本追加です:





【スタッフ、キャスト等】

監督・撮影:木村大作
脚本:小泉堯史
原作:葉室麟の同名小説(2012)
音楽:加古隆
美術:原田満生
殺陣:久世浩
キャスト:
瓜生新兵衛(岡田准一)
榊原釆女(西島秀俊)
坂下里美(黒木華)
坂下藤吾(池松壮亮)
瓜生篠(麻生久美子)
篠原三右衛門(緒方直人)
宇野十蔵(新井浩文)
平山十五郎(柳楽優弥)
篠原美鈴(芳根京子)
坂下源之進(駿河太郎)
千賀谷政家(渡辺大)
田中屋惣兵衛(石橋蓮司)
榊原滋野(富司純子)
石田玄蕃(奥田瑛二)

上映時間:1時間51分
日本公開:2018年9月28日
モントリオール国際映画祭:審査員特別賞
鑑賞日:2018年9月28日
場所:TOHOシネマズ新宿






No.9567    Day 3375