【あらすじ:映画.comよりの引用(→☆)】
警視庁捜査第一課の下岡(宮口精二)と柚木(大木実)は、質屋殺しの共犯 石井を追って佐賀へ発った。
主犯の自供によると、石井は兇行に使った拳銃を持っていて、3年前上京の時別れた元彼女のさだ子に会いたがっており、両刑事は今のさだ子の家の向かいの木賃宿然とした旅館で張込みを開始した。
さだ子(高峰秀子)は今は佐賀の銀行員 横川の後妻になっていたが、物静かな女で、過去に熱烈な恋愛の経験がある様には到底見えなかった。
20以上も歳の違う夫を持ちながら、夫の3人の連れ子とも上手くやっている様で格別変わった様子は見られず、増して、石井から連絡が来たり、石井が立寄ったりした形跡はまだなかった。
猛暑の中で昼夜の別なく張込みが続けられた。3日目。4日目。だが石井は現れなかった。
松本清張の原作を、橋本忍が脚本化(脚色)した最初の作品。加えて、監督は同じ松本清張原作、橋本忍脚本で、後に、名作「ゼロの焦点」(1961)、「砂の器」(1974)を撮る、野村芳太郎。日本映画史上でも、幸福なトリオの出会いである。
柚木刑事(大木実)と下岡刑事(宮口精二)が横浜から佐賀まで列車を乗り継いで向かう11分に亘る導入部に観客は驚かされ、映画に引き込まれる。そして「張込み」というメイン タイトルは、その11分後に漸く出るのだ。
今でこそ、導入部の後にメイン タイトルが出る映画はざらにあるが、1958年当時では、初めてかどうかは知らないが、相当に珍しく、初めてハイカラな導入部だったのではないだろうか。また、鉄道ファンにとっても、堪らない11分ではなかろうかと思う。
容疑者の石井(田村高廣)が、なかなか現れず、何度も両刑事が肩すかしを食うサスペンス、物静かなさだ子(高峰秀子)が突如情熱的になる静と動のコントラスト、柚木と弓子(高千穂ひづる)との関係が石井とさだ子の関係に重なって見える妙、容疑者 石井が必ずしも悪人でないどころかどこか同情が感じられるところ、そして、下岡を演じる宮口精二のいかにもベテラン刑事らしい演技等々、この映画の面白さは尽きない。
【スタッフ、キャスト等】
監督:野村芳太郎
脚本:橋本忍
原作:松本清張の同名の短編小説(1956)
音楽:黛敏郎
撮影:井上晴二
美術:染井清一郎
キャスト:
柚木刑事(大木実)
下岡刑事(宮口精二)
さだ子(高峰秀子)
石井(田村高廣)
弓子(高千穂ひづる)
上映時間:1時間56分
日本公開:1958年1月15日
キネマ旬報ベストテン:日本映画第8位
鑑賞日:2018年9月9日
場所:新文芸坐(池袋)
【橋本忍脚本映画リスト】
・題名の後の氏名は、共同脚本執筆者 氏名記載無き場合は、橋本忍単独脚本
(01)黒澤明「羅生門」(1950)黒澤明
(03)黒澤明「生きる」(1952)黒澤明、小國英雄
(10)黒澤明「七人の侍」(1954)黒澤明、小國英雄
(19)黒澤明「蜘蛛巣城」(1957)黒澤明、小國英雄、菊島隆三
(25)野村芳太郎「張込み」(1958)
(29)黒澤明「隠し砦の三悪人」(1958)黒澤明、小國英雄、菊島隆三
(34)松林宗恵「ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐」(1960)国弘威雄
(35)中村登「いろはにほへと」(1960)国弘威雄
(40)野村芳太郎「ゼロの焦点」(1961)山田洋次
(42)小林正樹「切腹」(1962)
(45)今井正「仇討ち」(1964)
(47)岡本喜八「侍」(1965)
(49)山田洋次「霧の旗」(1965)
(53)小林正樹「上意討ち 拝領妻始末」(1967)
(55)森谷司郎「首」(1968)
(60)黒澤明「どですかでん」(1970)黒澤明、小國英雄
(65)森谷司郎「日本沈没」(1973)
(66)野村芳太郎「砂の器」(1974)山田洋次
(69)森谷司郎「八甲田山」(1977)
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