【あらすじ:映画.comよりの引用(→☆)】
警視庁捜査二課の松本刑事(伊藤雄之助)は、「世の中は、いろはかるたどおりにやっていれば、一番間違いはない」という母ミネ(浦部粂子)の影響で、いろはかるたを口ずさむのが癖だった。その彼の常識から考えて、どうも腑に落ちないのは、月三分の高額配当で街の話題をさらっている投資経済会の存在だった。
加入者二十万、出資金総額七十億と噂されるこの投資経済会は理事長の天野(佐田啓二)に言わせれば、「単なる利殖機関ではなく、日本における庶民のための唯一の投資銀行」なのだが。松本は経済会の内偵に踏み切ったのだ、二年たった今日でも事件になるような目処は全然つかなかった。
【感想】
実際にあった保全経済会事件(1953)がモデルになっている。
頭脳明晰でちょっとニヒルな二枚目、投資経済会を率いる天野を演じる佐田啓二(中井貴一の父)の、まるでアラン・ドロンの様なヒールぶりがこの映画の華なのだが、これとは対照的な、禺直なまでにくそ真面目で、叩き上げの庶民刑事 松本を演じている伊藤雄之助が素晴らしい。
絵に描いた様な性格俳優、バイプレイヤーとでも言うべきなのだろうか、「侍」(1965)での水戸浪士による井伊直弼暗殺団の冷徹なリーダー、「血と砂」(1965)の元葬儀屋の一等兵、「赤毛」(1969)の悪代官等でも良い味を出していたが、今回の作品では、ポスター(↑)を見ても判るとおりの、主演級。伊藤雄之助の特徴である顎の少ししゃくれた馬面が、二枚目 佐田啓二と画面を二分している(笑)
映画とか芝居は、主役の美男・美女ばかりではやはり駄目で、脇を固める渋い役者たちが、映画を引き締める。あの「七人の侍」(1954)では、カッコいい剣の達人を演じていた宮口精二や、タコ坊主の様な風貌の(笑)、殿山泰司等の渋い面々が、天野のヤミ金融業時代からの仲間を演じているのも、楽しめる。
脚本の橋本忍が、どちらの側に立っているかは明々白々であるが、これらのキャラクターを、感情のある人間として立体的に描写して動かす、橋本忍の脚本はもちろん素晴らしく、映画の展開で客を飽きさせることはない。
【スタッフ、キャスト等】
監督:中村登
脚本:橋本忍、国弘威雄
音楽:黛敏郎
撮影:厚田雄春
美術:芳野尹孝
キャスト:
天野竜一(佐田啓二)
松本宗治(伊藤雄之助)
西垣(宮口精二)
黒川(殿山泰司)
およね(藤間紫)
松本ミネ(浦部粂子)
大崎(柳永二郎)
三宅(織田政雄)
上映時間:1時間49分
日本公開:1960年5月20日
鑑賞日:2018年9月5日
場所:新文芸坐(池袋)
【橋本忍脚本映画リスト】
・題名の後の氏名は、共同脚本執筆者 氏名記載無き場合は、橋本忍単独脚本
(01)黒澤明「羅生門」(1950)黒澤明
(03)黒澤明「生きる」(1952)黒澤明、小國英雄
(10)黒澤明「七人の侍」(1954)黒澤明、小國英雄
(19)黒澤明「蜘蛛巣城」(1957)黒澤明、小國英雄、菊島隆三
(29)黒澤明「隠し砦の三悪人」(1958)黒澤明、小國英雄、菊島隆三
(34)松林宗恵「ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐」(1960)国弘威雄
(35)中村登「いろはにほへと」(1960)国弘威雄
(47)岡本喜八「侍」(1965)
(53)小林正樹「上意討ち 拝領妻始末」(1967)
(55)森谷司郎「首」(1968)
(60)黒澤明「どですかでん」(1970)黒澤明、小國英雄
(65)森谷司郎「日本沈没」(1973)
(66)野村芳太郎「砂の器」(1974)山田洋次
(69)森谷司郎「八甲田山」(1977)
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