中村登 「いろはにほへと」 (1960) | It’s not about the ski 遅れて来た天才スキーヤー???、時々駄洒落(笑)、毎日ビール!(爆)

It’s not about the ski 遅れて来た天才スキーヤー???、時々駄洒落(笑)、毎日ビール!(爆)

スキー大好き、ゴルフ、読書、映画、演劇、音楽、絵画、旅行と他の遊びも大好き、元々仕事程々だったが、もっとスキーが真剣にやりたくて、会社辞めちまった爺の大冒険?





【あらすじ:映画.comよりの引用(→)】

警視庁捜査二課の松本刑事(伊藤雄之助)は、「世の中は、いろはかるたどおりにやっていれば、一番間違いはない」という母ミネ(浦部粂子)の影響で、いろはかるたを口ずさむのが癖だった。その彼の常識から考えて、どうも腑に落ちないのは、月三分の高額配当で街の話題をさらっている投資経済会の存在だった。

加入者二十万、出資金総額七十億と噂されるこの投資経済会は理事長の天野(佐田啓二)に言わせれば、「単なる利殖機関ではなく、日本における庶民のための唯一の投資銀行」なのだが。松本は経済会の内偵に踏み切ったのだ、二年たった今日でも事件になるような目処は全然つかなかった。

しかし、いつかは尻尾を出す。松本はそう信じて疑わなかった。天野が匿名組合法による投資経済会を設立したのは、西垣(宮口精二)、黒河(殿山泰司)の協力に負うところが大きかった。一方、松本の動きは、天野にとってやはり不気味だった。

天野は政民党総務の大崎(柳永二郎)をはじめ、政界の有力者に運動資金をばらまき、投資銀行法案の立法化を急いだ。この法案が通過すれば、投資経済会は銀行と同じ扱いを受け、出資者の権利は法律で保護されることになるのだ。

だが、突如襲った株式市場の大変動は投資経済会を根底から揺さぶり、三十億に上る緊急出費を余儀なくされた。天野にとって、松本の存在はますます厄介なものになり、渉外課長の三宅(織田政雄)に、松本懐柔の工作を推進するよう命じた。松本の唯一の楽しみは、女将およね(藤間紫)の許で一杯やることだった。

およねがある夜彼を温泉旅館に誘った。実は三宅がたっぷり謝礼する約束で彼女に因果を含ませたのだ。しかし、松本は「さわらぬ神にたたりなし」とその場を逃げ出した。天野は一時休業し、投資銀行法案の通過を待つより仕方ないと思った。が、そのためには松本を抱きこんで警視庁の調べを緩和させておく必要がある。

西垣が松本を自宅に招き、五百万円の金をさし出した。松本は、日本裏には何かあるという確信をもった。翌日、投資経済会は休業した。大崎をはじめ、政界の有力者たちも冷たくなった。

松本が逮捕状をもって投資経済会に現われた。天野は、「金で動かし得なかった人間はあなた一人だけだった」とうそぶいた。念願は果されたが、松本の心は晴れなかった。口をぬぐってすましている腐敗した政治家たちの道義的な責任が見逃されていることに対する怒りであった・・・



【感想】

実際にあった保全経済会事件(1953)がモデルになっている。

頭脳明晰でちょっとニヒルな二枚目、投資経済会を率いる天野を演じる佐田啓二(中井貴一の父)の、まるでアラン・ドロンの様なヒールぶりがこの映画の華なのだが、これとは対照的な、禺直なまでにくそ真面目で、叩き上げの庶民刑事 松本を演じている伊藤雄之助が素晴らしい。

絵に描いた様な性格俳優、バイプレイヤーとでも言うべきなのだろうか、「」(1965)での水戸浪士による井伊直弼暗殺団の冷徹なリーダー、「血と砂」(1965)の元葬儀屋の一等兵、「赤毛」(1969)の悪代官等でも良い味を出していたが、今回の作品では、ポスター(↑)を見ても判るとおりの、主演級。伊藤雄之助の特徴である顎の少ししゃくれた馬面が、二枚目 佐田啓二と画面を二分している(笑)

映画とか芝居は、主役の美男・美女ばかりではやはり駄目で、脇を固める渋い役者たちが、映画を引き締める。あの「七人の侍」(1954)では、カッコいい剣の達人を演じていた宮口精二や、タコ坊主の様な風貌の(笑)、殿山泰司等の渋い面々が、天野のヤミ金融業時代からの仲間を演じているのも、楽しめる。

脚本の橋本忍が、どちらの側に立っているかは明々白々であるが、これらのキャラクターを、感情のある人間として立体的に描写して動かす、橋本忍の脚本はもちろん素晴らしく、映画の展開で客を飽きさせることはない。




【スタッフ、キャスト等】

監督:中村登
脚本:橋本忍、国弘威雄
音楽:黛敏郎
撮影:厚田雄春
美術:芳野尹孝
キャスト:
天野竜一(佐田啓二)
松本宗治(伊藤雄之助)
西垣(宮口精二)
黒川(殿山泰司)
およね(藤間紫)
松本ミネ(浦部粂子)
大崎(柳永二郎)
三宅(織田政雄)

上映時間:1時間49分
日本公開:1960年5月20日
鑑賞日:2018年9月5日
場所:新文芸坐(池袋)



【橋本忍脚本映画リスト】

・題名の前の氏名は監督
・題名の後の氏名は、共同脚本執筆者  氏名記載無き場合は、橋本忍単独脚本

(01)黒澤明「羅生門」(1950)黒澤明
(03)黒澤明「生きる」(1952)黒澤明、小國英雄
(10)黒澤明「七人の侍」(1954)黒澤明、小國英雄
(19)黒澤明「蜘蛛巣城」(1957)黒澤明、小國英雄、菊島隆三
(29)黒澤明「隠し砦の三悪人」(1958)黒澤明、小國英雄、菊島隆三
(35)中村登「いろはにほへと」(1960)国弘威雄
(47)岡本喜八「」(1965)
(53)小林正樹「上意討ち 拝領妻始末」(1967)
(55)森谷司郎「」(1968)
(60)黒澤明「どですかでん」(1970)黒澤明、小國英雄
(65)森谷司郎「日本沈没」(1973)
(66)野村芳太郎「砂の器」(1974)山田洋次
(69)森谷司郎「八甲田山」(1977)






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