【あらすじ:映画.comよりの引用(→☆)】
徳川幕府の治世下、播州脇坂藩竜野城で恒例の武器倉庫点検が行われていた。丁度通りかかった奏者番 奥野孫太夫(神山繁)は槍の穂先の曇りを見つけ、皮肉な言葉でなじった。これを聞きとがめた江崎新八(萬屋(中村)錦之助)は、孫太夫と口論した。無役軽輩から侮辱された孫太夫は、新八に果し状をつきつけたが、結果は孫太夫が斬殺された。
私闘と厳禁の掟を破った2人を、新八の兄馬廻り役 江崎重兵衛(田村高廣)と孫太夫の伯父 丹羽伝兵衛(加藤嘉)は協議の末、乱心しての私闘届け出、新八は城下遠隔の地にある感応寺に預けられた。
住職 光悦(進藤英太郎)との静かな生活は、新八の気持を変えていった。
感応寺 光悦は他藩へ逃亡して人間として生きる様に促した。しかし、新八は
【感想】
実は個人的には、萬屋(中村)錦之助という役者があまり好きではない。男としては妙に甲高い声で、歌舞伎出身者らしい仰々しい台詞回しと、目を向いて見栄を切る様な所作等が、どうも苦手である。
しかし、この映画ではそれらが良い方向に働いている。最後の集団殺陣シーンでも、ギラギラしてカッと開かれて、どこか狂気を帯びている萬屋錦之助の目が、映画に異様な悲壮感と、迫力を添えている。
ストーリーは、「切腹」(1962)や「上意討ち 拝領妻始末」(1967)同様、橋本忍による武士道残酷物語であるが、萬屋錦之助が主演すると、仲代達矢、三船敏郎主演の上記の映画とは一味違った雰囲気になる。表現が繰返しになるが、狂気にも似た凄みが加わるのだ。だから、映画を観ている最中、観客側も殆ど気を抜くことが出来ない。
そんな中、本作本で、唯一ほっとするのは、進藤英太郎演じる感応寺住職の光悦が新八(萬屋錦之助)を相談に乗ったり、忠告したり、諭したりするシーンである。この和尚の人徳が武士の悲惨で理不尽な掟に対するアンチテーゼとなっている様だ。
【スタッフ、キャスト等】
監督:今井正
脚本:橋本忍
音楽:黛敏郎
撮影:中尾駿一郎
美術:鈴木孝俊
キャスト:
江崎新八(萬屋(中村)錦之助)
江崎重兵衛(田村高廣)
光悦(進藤英太郎)
奥野主馬(丹波哲郎)
丹羽伝兵衛(加藤嘉)
奥野辰之助(石立鉄男)
りつ(三田佳子)
奥野孫太夫(神山繁)
片貝頼母(三津田健)
上映時間:1時間43分
日本公開:1964年11月1日
キネマ旬報ベストテン:日本映画第9位
鑑賞日:2018年9月8日
場所:新文芸坐(池袋)
【橋本忍脚本映画リスト】
・題名の後の氏名は、共同脚本執筆者 氏名記載無き場合は、橋本忍単独脚本
(01)黒澤明「羅生門」(1950)黒澤明
(03)黒澤明「生きる」(1952)黒澤明、小國英雄
(10)黒澤明「七人の侍」(1954)黒澤明、小國英雄
(19)黒澤明「蜘蛛巣城」(1957)黒澤明、小國英雄、菊島隆三
(29)黒澤明「隠し砦の三悪人」(1958)黒澤明、小國英雄、菊島隆三
(34)松林宗恵「ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐」(1960)国弘威雄
(35)中村登「いろはにほへと」(1960)国弘威雄
(40)野村芳太郎「ゼロの焦点」(1961)山田洋次
(42)小林正樹「切腹」(1962)
(45)今井正「仇討」(1964)
(47)岡本喜八「侍」(1965)
(49)山田洋次「霧の旗」(1965)
(53)小林正樹「上意討ち 拝領妻始末」(1967)
(55)森谷司郎「首」(1968)
(60)黒澤明「どですかでん」(1970)黒澤明、小國英雄
(65)森谷司郎「日本沈没」(1973)
(66)野村芳太郎「砂の器」(1974)山田洋次
(69)森谷司郎「八甲田山」(1977)
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