山田洋次 「霧の旗」 (1965) | It’s not about the ski 遅れて来た天才スキーヤー???、時々駄洒落(笑)、毎日ビール!(爆)

It’s not about the ski 遅れて来た天才スキーヤー???、時々駄洒落(笑)、毎日ビール!(爆)

スキー大好き、ゴルフ、読書、映画、演劇、音楽、絵画、旅行と他の遊びも大好き、元々仕事程々だったが、もっとスキーが真剣にやりたくて、会社辞めちまった爺の大冒険?






【あらすじ:映画.comよりの引用(→)】

柳田桐子(倍賞千恵子)は高名な弁護士 大塚欽三(滝沢修)の法律事務所を今日も訪れた。だが、多忙を理由(実際には高額の弁護料が払えまいと足元を見られ)、返事は冷たい拒絶の言葉であった。

熊本の老婆殺しの容疑者として誤認逮捕され起訴された兄 正夫(露口茂)のためにわざわざ上京して足を運んだ桐子は、貧乏人のみじめさを思い知らされた。

「兄は死刑になるかも知れない!」と激しく言い寄った桐子の言葉を、何故か忘れられない大塚は、愛人 河野径子(新珠三千代)との逢瀬にも、この事件が頭をかすめた。

熊本の担当弁護士から書類をとり寄せた大塚は、被害者の致命傷が後頭部及び前額部左側の裂傷とあるのは、犯人が左利きではなかったかという疑問にとらわれた。 (桐子の兄の正夫は右利き。) この疑問は大塚の頭の中で雲のように広がった。

数日後、大塚は桐子から、「兄が死刑を言い渡され、その後、獄中で病死した」と手紙で知らされた。大塚は弁護をひき受けなかった自分を悔んだ。

兄の死後、上京した桐子はバー「海草」のホステスとなった。そして知り合いの記者 阿部から、「大塚が事件の核心を握ったらしい」と聞かされて復讐の念にかられた。

桐子は同居のホステス信子(市原悦子)から恋人杉田健一(川津祐介)の監視を頼まれた。ある夜、尾行中の桐子は、健一が本郷のしもた屋で何者かに殺害された後の現場に、来あわせた。さらに、偶然そこには、健一に会いに来た健一の元恋人で、今は大塚の愛人である径子も来ていて、死体を発見して激しく動揺していた

桐子は、径子を現場から立ち去らせた後、健一の死体の側にあった径子の手袋を残し、健一の同郷の不良仲間の友人であった山上(河原崎次郎)のライターをバッグに締まった。

【以下、結末までの記述あり。映画未見/小説未読の方は、次の感想欄に飛んで下さい。】

径子は健一殺しの容疑者として逮捕され、大塚の社会的地位も危ぶまれた。大塚は証拠品のライターの提出と、正しい証言を求めて桐子の勤め先に足しげく通った。

そんなある夜、桐子はライターを返すと大塚をアパートに誘い、ウィスキーを勧めて大塚を酔わせ、強引に関係を迫った。翌日、桐子は担当検事の島田に「大塚から偽証を迫られ、暴行された」と処女膜裂傷の診断書をそえて訴えた。いまや大塚は完敗した。

九州に向う連絡船上、桐子は山上のライターを海に向かって放り投げた。




【感想】

山田洋次監督というと、フーテンの寅さん「男はつらいよ」シリーズと喜劇映画のイメージが強いが、松本清張原作/橋本忍脚本で、こんなにダークでハードな映画を昔撮っていたのかと素直に驚いてしまう。しかも、主演の(アンチ)ヒロイン役は、寅の健気な妹「さくら」の倍賞千恵子だ。

この倍賞千恵子演じる桐子が怖いのだ。桐子に復讐される大物弁護士 大塚は、別に悪徳弁護士な訳ではない。高名な弁護士という社会的名声・地位を得て、得意になっている面はあるのかもしれないが、人間誰しもそうなりがちだろう。むしろ弁護士としての手腕がとても優秀だからこそ、それだけの高額取りな弁護士になれたのだと思われる。

そんな大塚が多忙を理由に、弁護料を払えない(であろう)桐子の依頼を断ったのも、あながち大塚を責めることは出来ない。しかし、桐子は違った。大塚が弁護してくれなかったが故に、兄は死刑判決を受け獄中で病死するに至ったと決めつけた。

そこからの桐子の執念の復讐は凄まじい。そんなことをしても死んだ兄は帰って来ないのにと思うのだが、桐子が復讐の手を緩めることはない。げに恐ろしきは女の執念なり。虫をも殺さぬ「さくら」倍賞千恵子が演じているので、その怖さは2倍にも3倍にも感じられる。

松本清張原作、橋本忍脚本、山田洋次演出、倍賞千恵子主演の完璧なカルテットによるミステリー/サスペンス映画の傑作である。




【スタッフ、キャスト等】

監督:山田洋次
脚本:橋本忍
原作:松本清張の同名小説(1961)
音楽:佐藤勝
撮影:高羽哲夫
美術:梅田千代夫
キャスト:
柳田桐子(倍賞千恵子)
大塚欽三(滝沢修)
阿部幸一(近藤洋介)
河野径子(新珠三千代)
杉田健一(川津祐介)
柳田正夫(露口茂)
信子(市原悦子)
山上(河原崎次郎)
島田検事(内藤武敏)

上映時間:1時間51分
日本公開:1965年5月28日
鑑賞日:2018年9月6日
場所:新文芸坐(池袋)



【橋本忍脚本映画リスト】

・題名の前の氏名は監督
・題名の後の氏名は、共同脚本執筆者  氏名記載無き場合は、橋本忍単独脚本

(01)黒澤明「羅生門」(1950)黒澤明
(03)黒澤明「生きる」(1952)黒澤明、小國英雄
(10)黒澤明「七人の侍」(1954)黒澤明、小國英雄
(19)黒澤明「蜘蛛巣城」(1957)黒澤明、小國英雄、菊島隆三
(29)黒澤明「隠し砦の三悪人」(1958)黒澤明、小國英雄、菊島隆三
(35)中村登「いろはにほへと」(1960)国弘威雄
(47)岡本喜八「」(1965)
(49)山田洋次「霧の旗」(1965)
(53)小林正樹「上意討ち 拝領妻始末」(1967)
(55)森谷司郎「」(1968)
(60)黒澤明「どですかでん」(1970)黒澤明、小國英雄
(65)森谷司郎「日本沈没」(1973)
(66)野村芳太郎「砂の器」(1974)山田洋次
(69)森谷司郎「八甲田山」(1977)






No.9532    Day 3361