総合交通政策調査特別委員会における「内部・八王子線存続問題」についての議論は、近鉄側の参考人招致も終え、現在取りまとめの段階に入っています。


 5月2日に行われた特別委員会にて、「内部・八王子線存続問題」についての報告書の叩き台が委員に示されました。


 今後内容が揉まれ、5月中に報告書が出来上がる予定です。


 これまでの特別委員会での議論を踏まえ、今回のブログでは現時点において「内部・八王子線」が取り得る今後の選択肢についてまとめてみました。


 まず、「内部・八王子線」を鉄道で残すとなると、以下の2つのケースが考えられます。


①「近鉄の子会社」での運行


②第三者譲渡による「第三者事業者」での運行


 ①の近鉄子会社での運行は、簡単に言えば近鉄主体の運行になります。


 車両更新等の国からの補助金スキームの活用を考えると、近鉄主体での運行になると「子会社」という形態を取る事になります。


 ここで留意しなければならないのは、近鉄子会社化での存続となるとその存続条件は『公設民営方式』と『行政による赤字補填』が必須となることです(先日の近鉄参考人招致における近鉄側の回答から)。


 公設民営とは、鉄道の施設、車両、土地等を公で保有するというものです。


 公設民営方式で、近鉄が子会社化した場合の収支シュミレーションは今後10年間の平均で年間1.3億円の赤字となります。


 従って、近鉄子会社に継続して運行を任せるとすると、行政は年間1.3億円の運営費補助を毎年支出しなければならない事になります。


 しかも、年間の赤字1.3億円というのは、公設民営方式の下での試算ですので、ここには「減価償却費」「税金」等の費用は含まれておりません。


 つまり、公設民営方式で公が施設や車両等を保有する事から、完全民営時に比べてこの部分の年間経費が軽減されているのです。


 では、公設民営方式で軽減される経費はどのくらいかというと、年間1.6億円に上ります。


この1.6億円を踏まえると、結局行政は年間2.9億円(1.3億円〔通常赤字〕+1.6億円〔公設民営方式による負担〕)の財政負担が必要になります。


 2.9億円という数字は、現在の「内部・八王子線」の年間赤字とほぼ同額です。


 よって、近鉄子会社での運行継続は、結局今の赤字額(3億円弱)の全額を行政が補填するという事になるのです。


 この事から、近鉄子会社での運行継続は実質的に現在の内部・八王子線の赤字額全額を行政が負担するという事になり、多額の税金投入が果たして市民の理解を得る事が出来るかと言う問題が出てきます。


 最後に断りですが、近鉄子会社の場合の年間1.3億円の赤字という数字は近鉄側の収支シミュレーションによるもので、この赤字が今後改善される可能性もありますし、行政と近鉄側の今後の交渉により運営費補助の金額が軽減される可能性も残されています。


 あくまでも現時点で、明らかになっている条件下での話となっています。


 次回のブログでは、鉄道で存続するケースの2つ目の「第三者事業者」について書いていきます。



◎以下は、過去の関連記事です。


■『近鉄内部・八王子線』今後の行方 ① 【現状整理、そしてタイムリミット】

http://ameblo.jp/mori-tomohiro/entry-11209058849.html


■『近鉄内部・八王子線』今後の行方② 【市、議会の取り組み】

http://ameblo.jp/mori-tomohiro/entry-11209176279.html


■『近鉄内部・八王子線』今後の行方 ③ 【総合交通政策調査特別委員会 設置へ】

http://ameblo.jp/mori-tomohiro/entry-11292928131.html


■『近鉄内部・八王子線』今後の行方 ④ 【様々な動きとその方向性】

http://ameblo.jp/mori-tomohiro/entry-11295351212.html


■ 『近鉄内部・八王子線』今後の行方⑤ 【自治会・高校が近鉄に対して要望書提出へ】

http://ameblo.jp/mori-tomohiro/entry-11334578122.html


■『近鉄内部・八王子線』今後の行方⑥ 【近鉄がBRT(バス高速輸送システム)を提示】

http://ameblo.jp/mori-tomohiro/entry-11339326584.html


■『近鉄内部・八王子線』今後の行方⑦ 【強気の近鉄/BRT(バス高速輸送システム)とは】

http://ameblo.jp/mori-tomohiro/entry-11364546388.html


■『近鉄内部・八王子線』今後の行方⑧ 【鉄道維持か/BRT導入か/廃線か 現状の選択肢整理】

http://ameblo.jp/mori-tomohiro/entry-11392503953.html


■『近鉄内部・八王子線』今後の行方⑨ 【鉄道維持:子会社化シミュレーションの結果】

http://ameblo.jp/mori-tomohiro/entry-11399583209.html


■『近鉄内部・八王子線』今後の行方⑩ 【ハードルの高いBRT転換/課題整理】

http://ameblo.jp/mori-tomohiro/entry-11421418171.html


■『近鉄内部・八王子線』今後の行方⑪ 【タイムリミット 2013年夏が迫る】

http://ameblo.jp/mori-tomohiro/entry-11449732272.html


■『近鉄内部・八王子線』今後の行方⑫ 【特別委員会が「両備ホールディングス㈱小嶋会長」を参考人招致】

http://ameblo.jp/mori-tomohiro/entry-11461432821.html


■『近鉄内部・八王子線』今後の行方⑬ 特別委員会:近畿日本鉄道株式会社関係者を参考人招致へ

http://ameblo.jp/mori-tomohiro/entry-11509399238.html

■『近鉄内部・八王子線』今後の行方⑭ 近鉄からの参考人招致 ~近鉄は何を語ったのか~

http://ameblo.jp/mori-tomohiro/entry-11516012320.html


■『近鉄内部・八王子線』今後の行方⑮ ~鈍い行政の動き~

http://ameblo.jp/mori-tomohiro/entry-11516027227.html