メダカに必要なのは【無農薬】では無い | まぁ、こんなもんでえぇんとちゃう?

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8月9日の朝6時台のNHK総合TV(関東圏か?)において、「メダカなどの水生動物の復活のために、水田と用水路の間に魚道をかける」事を普及しているという人物についての報道があった。


番組中で紹介されていた人物名「中茎元一氏」から検索して見た。

すると下記の団体に所属する人物だと判明した。


メダカ里親の会ホームページ


これはどうやら栃木県宇都宮を本拠地としている会で、TVに出演していた中茎氏はその事務局を担っているらしい。

そしてこの会のHP「メダカが生存できる水路復元技術指針 」には、以下の記述がある。


【上記HPより引用】


3.メダカが何故いなくなったのか
(1)工事に伴う水路の分断(水の枯渇・生き埋め)
(2)用水・排水の分離に伴う水田との移動分断(産卵ふ化,幼魚生育場所の減少)
(3)非カンガイ期の断水と水路ネットワークの分断(落差工等)
(4)用排水路のコンクリート化(流速が速く待避場所ない,水温が上がらない)
(5)地下水位の低下による水たまりの減少(冬期の生存場所の消滅)


【引用終了】


これを見て、疑念を感じる方が居られるかもしれない。

「メダカが居なくなったのは農薬が原因ではないのか?」と。


実はメダカが減少した理由については、既に研究発表がなされている。

そしてその原因は、以下の農水省資料にまとめられている。


【以下、「農薬の環境影響 千葉大学園芸学部本山直樹」  23頁より】


メダカやホトケドジョウやゲンジボタルが少なくなった本当の原因は?
1.水田用・排水路がコンクリート3面張りのU字溝になった
2.灌漑水の供給停止による水路の干上がり
3.暗渠排水設備の普及による水田の乾田化
4.ため池その他の自然湿地の埋め立て・宅地化
5.家庭の一般雑排水(洗剤を含む)による水路の汚染


【引用終了】


つまり、メダカの減少は以上のような要因によるのであって、農薬が原因ではないと考えられている。

実際上記「メダカ里親の会」の「魚道設置」等の活動により、水生生物が水田、用水路で増える事が報告されている。


この一連の研究についての本山直樹氏へのインタビューが農薬工業会のHPに掲載されているので、少し紹介しよう。


【以下、農薬ニューズレター No.31 メダカと農薬と水路(発行2003年1月) 本山直樹千葉大学教授に聞 くより】

- 予想外の調査結果だったとか。

本山

 いま稲作では、農薬は殺菌剤と殺虫剤を育苗箱に施用し、田植え後1週間から2週間ぐらいに除草剤を散布する。ここでも同じ。だからその時期には農薬が水路に流出する可能性があります。しかし、田植え前の4月中旬から7月末まで毎週20本の水路の水を分析しても、農薬が出たのは3箇所だけ。殺虫剤のフェノブカルブと除草剤のエスプロカルブとテニクロール。濃度も0.13~0.80ppb、検出限界ぎりぎりの低い値。農薬の検出と関係なくメダカの多い水路も少ない水路もある。水路の水は毎週採取しているから、農薬濃度の高い時に採りもらした可能性はない。そうすると農薬はメダカの密度に影響しているとは考えにくい。

<<中略>>

- 生態学からの見方はどうでした。

本山

 一番大きなファクターは水路の水位というのが田中先生の検討結果でした。長い間には水路に泥がたまって水位が上がりコンクリートの護岸を越す。そうすると水があぜの土と接触したり、あぜから垂れ下がっている草が水面と接するようになる。あるいは水路に植物が生えてくる。そうするとメダカが住みやすくなる。それが数が増える一番の要因。

- 結局、一年のうち途中で水が枯れてしまうような水路にはメダカをはじめ水生生物は住みにくく、反面、水のいつもある水路では水生生物が多く、さらに、調査地点では航空防除も含め、農薬の影響は見られなかったということですか。

本山

 30年、40年前は分かりませんが、現在、農薬のせいでメダカが減っているというのは事実ではありませんね。水が入れば現在の水田でも生き物は溢れています。長靴をはいてしゃがんでよく見れば実感できますよ。ただ、山田町の航空防除は有機リン剤を使っていないので、日本で多く使われている有機リン剤については、来年以降、試験地を増やし調査をします。また、水溶性の低い農薬は水中濃度は非常に低いけれど、底質に吸着されるから、水の中にないといって環境中から消えたとは即断できない。ですから底質の分析も続けている。水生昆虫への影響も検討課題です。


【引用終了】


実は初めに記したNHKの番組中でも、「農薬と水生生物の減少との関連」については、一切触れていなかった。

これは取材先の行動と主張を、バイアスを加えずにありのまま報道するという「当たり前の報道」を実践できていた例だと自分は考える。


私は報道人に対して、この様な正確な報道を行う事を、強く要望する。



【8/15追記】

田んぼへの魚道を作る取り組み-NHKおはようにっぽんから 」へのトラックバック設定及び文章の微修正実施