蛙頭 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 仮面屋で蛙頭を購入した。帰り道に公園に立ち寄ってベンチに座ったまま被ってみると鳴いてみたくなってきたので私は口を大きく開けてから声を張り上げた。

 すると、自分の声がとても蛙に似ていて心地良い響きであると感じられたので私は連続して鳴いた。その度に声質が蛙に似ていっているという手応えを得られた。蛙の声は言語としての意味を伴っていなかったが、発しているだけで気分が清々しくなってくるように感じられたので私は時間が経つのも忘れて鳴き続けた。

 徐々に辺りが暗くなって夜になった。私は体力の限界を感じて呼吸が荒れ始め、昼間のような大声を出せなくなってきた。そして、遂には口を開いても声が音にならずに空気だけが漏れるようになった。鳴けなくなると自分が蛙ではなくなったように思われて悲しい気分にならされた。

 しかし、よく考えてみると私の正体は蛙ではないのだった。数時間振りにその事実に気が付き、私は蛙頭を脱いだ。顔面が汗でびっしょりと濡れていて腹がひどく空いていた。家に帰って蕎麦でも茹でて食べようと考えた。


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