夫頭 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 初めて夫頭を被った時から数年が経過したが、まだ私はその仮面が顔に馴染んでいないように感じている。常に少しだけ窮屈で息苦しい。しかし、そのマスクの着用が結婚の条件だったのである。

 ちなみに相手は妻頭を被っている。私達は互いの素顔を今までに一度も見ていない。職場で知り合って結婚したのだが、仕事中は社員頭の着用を義務付けられているし、婚約前の交際期間には恋人頭を被っていたのである。

 しかし、だからこそ私達の関係は順調に推移しているのかもしれない。幸せな結婚生活はそこそこ居心地が良い。仮面からの指示を守っていれば快適に過ごせるという安心感がある。

 ただ、私はその一方で常に息苦しさを覚えている。たまには仮面に逆らってみたいという衝動が胸中にある。しかし、物心が着く以前から様々な仮面に補助されながら生きてきたので独断で指示と異なる行動を取ると深刻な不安に苛まれる。今さら自立はできないのかもしれない。

 それで、私は夫頭が演出する幸せな生活を仮面の奥から傍観している。まるで自分という人間に寄生しているかのような気分で日々を過ごしている。


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