爆発頭 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 仮面屋で爆発頭を購入した。いかにも危険そうな雰囲気が漂うデザインが気に入った。

 布製のマスクだった。家に帰宅してから手洗いし、一晩掛けて乾かしてから被ってみた。何も起こらなかった。室内はとても静かだった。ちょっと頭部が締め付けられるように感じたが、サイズが合っていないのではなく、新品なので生地がまだ固いのだろうと思った。目の位置も問題なかったし、呼吸も支障なかった。私は顔の筋肉を動かし、様々な表情を作ってみた。マスクはその動きに合わせて伸縮した。

 洗面所へ行き、鏡の前に立ってみた。すると、頭部に数字が光っていた。同じペースで減少していた。それは明らかに時間と連動したカウントダウンの表示だった。そして、まだ爆発していないらしかった。

 私は鏡に映った自分の姿を凝視したまま考え込んだ。このまま数字がゼロになるまで被り続けるべきかと迷っていた。なんだか嫌な予感がしていた。何度も利用している店なので危険な商品を取り扱っているわけはないという信頼を持っていたが、それでも一抹の不安があった。数字は減少していくに連れて表示が大きくなり、輝きも増してきていた。私はマスクを脱ぎたかったが、そのまま爆発の表現を見届けたいという好奇心にも駆られていた。それに、誰に見られているわけでもないのに、マスクを脱ぐという行為は臆病であるように思われ、半ば度胸試しのような、引くに引けない気持ちになっていた。

 数字はいよいよ一桁になり、ゼロが近付いてきた。その時になって私はようやく肝が据わるように感じた。諦めかもしれなかったが、とにかく迷いが失われた。鏡を睨み、爆発頭の内側で歯を食い縛った。


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