鳥頭 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 仮面屋で鳥頭を購入した。なかなか派手な色使いのデザインだった。

 自宅に持ち帰り、居間でソファに腰を下ろしたままマスクを被ってみた。それから私は静かに呼吸を繰り返した。小さな異変も見逃さないように注意していたが、何事も起こらないままに時間だけが経過した。

 気持ちが焦れてきたのでソファから立ち上がってみたが、身体感覚にも異常はなかった。翼が生えているわけではなかったし、体重が軽減したわけでもなかった。

 しばらく様子を見るつもりで鳥頭を被ったまま台所へ行ってみると二羽の鳥が夕食を調理していた。私はその鳥達が自分の妻と娘であると認識できていた。

 その日から私はすべての人間が悉く鳥に見えるようになった。電車に乗っても他の乗客全員が鳥だったし、映画を鑑賞しても鳥ばかりが画面に登場した。どうやら、それが鳥頭の効用であるらしかった。

 鳥頭を被ったまま記憶を思い返すと自分が少年期からたくさんの鳥に囲まれていたような気がした。私は人間という生き物の顔立ちを思い出せなくなっていた。そういえば、私は常日頃から人間の外見が鳥類と似通っていると頭のどこかで感じていたのかもしれなかった。


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