休日なので他人頭を被って繁華街を練り歩いていく。たくさんの通行人と擦れ違うが、誰からも知人と認識されるはずがないので、私の方でも他者の存在にほとんど着目しない。しだいに無人の廃墟を探検しているような気分になってくる。或いは、透明人間はこんな具合に世間を眺めているのかもしれない、と思い当たる。しかし、私の存在自体は他者からも普通の人間として視認できるので空腹を感じればレストランに入店して食事を取れるし、衣服や雑貨などの買い物にも支障が出ない。
せっかく人間関係のしがらみから解放されたのであるから気を楽にして休日を満喫しようと心掛ける。私はまるで旅人になったかのような心境で街角の風景を眺める。日常から解放され、すべてが新鮮に感じられる。孤独ではあるが、それ以上にのびのびと自由を謳歌している。普段よりも意識が拡大しているような気がする。雑踏に囲まれているが、慌ただしいような印象は微塵も受けない。目に見える光景がやわらかな朝日に照らされたように、悉く爽やかに感じられている。実に充実した休日であり、自然と足取りも軽くなっている。
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