道化師頭4 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 抗争は延々と繰り広げられた。道化師頭を装着していると暴漢に襲われる確率が高まるという噂が世間に広まったので道化師頭派の増加は小幅に止まり、戦局は膠着状態に陥った。

 昼間は道化師頭派が圧倒的に有利な立場にあるので反対派は滅多に姿を現さず、夜間は反対派が活動的になって強盗の危険があるので道化師頭派は外出を控える、といったように時間帯による棲み分けが出来上がっていったので実際に暴力沙汰が起きる場面は少なく、彼等の中でも戦いが行われているという認識を持っている人間はむしろ一部の急進派に限られていた。

 住人の大半はどちらの派閥に属しているという自覚も持たないまま従来通りの生活を営み、たまに道端などで道化師頭を目撃しては大笑し、道化師頭のマスクを押し売りしようと目論む輩に対して首を横に振り、夜間の治安の悪さを嘆き、警察の仕事ぶりを非難していた。

 彼等の抗争は終わらなかった。ずっと水面下で小競り合いが続いていた。


「道化師頭」シリーズ






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