道化師頭3 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

アメーバブログにて超短編小説を発表しています。
「目次(超短編)」から全作品を読んでいただけます。
短い物語ばかりですので、よろしくお願いします。

 「諸君、しばしの間、その素敵なマスクを脱ぎ、真面目な態度で私の言葉に耳を傾けてもらいたい。今日、この場に集まってもらったのは他でもない、先日、我々の仲間が闇夜に数人の暴漢によって襲撃された件について報告しておきたい、と考えたのだ。しかも、最近、これと類似した強盗事件が街中で頻発しているのである。犯人達は明らかに我々を標的にしている。その証拠に、彼等は我々の仮面を強奪しているのである。諸君は充分に注意して生活し、夜間の外出をなるべく控えてもらいたい。なにしろ暗闇は道化師頭の模様を隠し、笑いの効果を失わせるのだ。

 今まで我々は世間に笑いを与えようと活動を続けてきた。我々が存在したおかげで社会は陽気な雰囲気になっていたはずである。少なくとも私はそのように信じている。しかし、実際に凶悪な事件が多発している現状を目の当たりにしてみると笑いだけで幸せな社会を実現できるものかという点に一抹の疑念を抱かざるを得ない。

 そこで、私は考えてみた。なぜ、我々が仮面を強奪されなければならないのか?なぜ、彼等は盗むのか?すべての根本的な原因は道化師頭の絶対数が足りていないという点にある、と私は思う。そのせいで、彼等は奪ってでも入手したいと願うのだ。

 だからこそ、我々の新たな使命として仮面製造工場に圧力を加えて道化師頭を増産させなければならない。街中の人間達が一人残さず同じマスクを所有できるような環境を早急に整備するべきである。そして、私はこの会議を道化師頭増産運動の旗揚げ式にしたいと思う。我々は明るい社会実現の為に決起するべきである。お互いに笑い合える世の中にしよう。我々の仲間を増やすのだ」


「道化師頭」シリーズ






目次(超短編小説)