「諸君、今や街は道化師頭に制圧されようとしている。我々は追い詰められている。現状は敗勢に近い。あの奇妙なマスクを目撃しただけで笑いが止まらなくなるのであるから実力行使もままならない。我々は彼等に出会わないように各々の家で隠遁生活を余儀なくされ、こうした集会の開催さえ秘密裏に行わなければならない程に困難な状況に置かれている。
しかし、だからといって私は彼等を敵視しようとは思わない。なぜならば、彼等も我々とは別の立場ではあるが、紛れもなく道化師頭の被害者なのである。そう。真の敵はあのふざけた仮面である。あれを被っている人間達はお互いの姿を見て笑いが止まらなくなり、いずれ生活や人格が破綻して餓死するはずである。そうなる前に我々は彼等を救わねばならない。彼等は我々の家族であり、友達であり、隣人であった人々である。なんとしても仮面の呪縛を解かなければならないのである。
では、どうするか?仮面には仮面で対抗できるはずである、と私は考えている。道化師頭は完全無欠の兵器であろうか?私はそうは思わない。何か解決策があるはずである。その糸口を探る為に仮面屋を襲撃しよう、と思っている。倉庫を制圧して商品を一つずつ試しに被ってみてもいいだろうし、仮面屋の主人を確保して彼から有益な解決策を聞き出せれば重畳である。
というわけで、私は自分と一緒に仮面屋を襲撃する人員を募集している。なるべく大勢の方が心強い。志願者はこの場で挙手してほしい。どうだろうか?」
「道化師頭」シリーズ
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目次(超短編小説)