鶏達の朝 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 夜明け前に妻の唸り声が聞こえてきたので目が醒めた。寝室の灯りを点けると陣痛が始まっていた。彼女の苦しそうな表情を見て私は気持ちがそわそわとして落ち着かなくなり、部屋から飛び出して家の屋根に上った。

 既に遠くの空が明るくなってきていた。私はその方角を見つめながら大きく口を開け、それから鶏声を張り上げた。この界隈で私が最も早く鳴いたようだった。

 すぐに他の雄鶏達が家々の屋根に姿を現して鶏声を発し始めたので辺りはたちまち騒々しくなった。私は妻の苦悶の表情を思い出しながら何度も鳴いた。どれだけ声を振り絞ってもまだ足りないような気がしていた。私は他の雄鶏達と大声を競い合うようにして鳴き続けた。

 しかし、しばらくして急に情熱が失せたので私は口を閉じて首を捻った。妻の産卵を終わったらしいと第六感が告げていた。他の雄鶏達は屋根の上でまだ鳴いていたが、私はすっかり肩の荷が下りたように感じながら晴れ晴れしい気分で寝室に戻った。

 すると、やはり妻は産卵を終え、寝台の上でぐったりとした表情を浮かべていた。「随分と騒がしかったわね」と彼女が言ったので私は「他の雌鳥達と産卵日が重なったらしいね」と返事をした。

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