~Integration and Amplification~ クラシック音楽やその他のことなど

~Integration and Amplification~ クラシック音楽やその他のことなど

学生時代から断続的に聞いてきたクラシックCD。一言二言で印象を書き留めておきたい。その時の印象を大切に。
ということで始めました。
そして、好きな映画や読書なども時々付け加えて、新たな感動を求めていきたいと思います。

【LPについて】

作曲:ダンツィ

曲名:木管五重奏曲変ロ長調 op56-1 (13:45)

作曲:カール・シュターミッツ

曲名:木管四重奏曲変ホ長調 op8-2 (9:59)

    オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットのための

作曲:ライヒャ

曲名:木管五重奏曲ハ長調 op91-2 (26:19)

演奏:ベルリン・フィルハーモニー管楽アンサンブル

   ゴールウェイ(fl)、コッホ(ob)、ライスター(cl)、ピースク(fg)、ザイフェルト(hr)

録音:1970年6月3-5日 ベルリン Ufaスタジオ

LP:MG 2280(レーベル:DG、発売:ポリドール)

 

パリ・オリンピックが始まりました。開会式はしっかり録画して見ましたが、今まで体験したことのないような、素晴らしく感動的な演出でした。今後こういったスタイルが取り入れられていくとすれば、開会式のハードルが相当上がったような気がします。次回は、ハリウッドのあるロサンゼルス。どうなるのでしょう✨。

さて、その開会式の前に、近くのBookOffでLPを1枚買ってきました。オリンピックとは全く関係ありません(笑)。以前に店頭で見て気になっていたのですが、ついつい買ってしまいました。500円です。

 

【曲と演奏について】

まずは、A面から。ダンツィは、ベートーヴェンとほぼ同世代にドイツで活躍した音楽家であり、活動の振出はマンハイムからである。父は宮廷楽団の名手で、彼自身も宮廷楽団に所属している。ダンツィはベートーヴェンの音楽に多大な関心を寄せつつも、モーツァルトを敬愛し、ウェーバーを指導したと言われている。一方、カール・シュターミッツは、マンハイム楽派の最も栄えた時代に、宮廷楽団の中核的人物として、その最盛期を過ごしている。マンハイムに就職活動のために訪れたモーツァルトも、マンハイムの管楽器編成の影響から、交響曲31番「パリ」を作曲している。

 

そのような背景もあってか、この2曲は似た雰囲気を醸し出している。それぞれ4楽章、3楽章の交響曲的な構成ではあるが、性格的には、ディヴェルティメント的な雰囲気が強い。そして、各木管楽器の特徴が活かされ、次々と対等に受け継がれていく音色を聴いているのがとても楽しいものであった。

当時のマンハイムの楽団の演奏水準の高さと、その木管の演奏技術から着想を得て様々な名曲を生み出されたモーツァルトの名曲の数々。こういった歴史を考えつつ、ベルリン・フィルの名手たちによる匠の技を味わうのも素晴らしいことだと思う。

 

カール・シュターミッツの木管四重奏曲op8-2より、第二楽章

美しいメロディでした。

 

これは、このLPと同じ音源ですね。

カール・シュターミッツの四重奏曲 op8-2全曲です。

 

B面はライヒャの曲が一曲収録されている。ライヒャはべートーヴェンと同年生まれて、活躍はロマン派の時代に少しかかるようになる。一時期、ボンの宮廷楽団にフルート奏者として所属しており、その時この楽団にヴィオラ奏者として所属していたベートーヴェンと親交を結んでいる。楽団解散後しばらくして、パリに出て作曲活動を始め、その後はベートーヴェンたちとも親交を保ちながら、パリ音楽院の教授として名だたる作曲家たちを育てている。

 

ライヒャは、管楽五重奏曲を24曲残している。ライヒャ自身フルートとクラリネットに精通しており、この分野の作品においては重要な位置を占めている。またライヒャはチェコ出身で、ドイツ、フランスで活躍した作曲家であり、それらの地域の様々な流行要素なども織り込まれているのだろう。ちなみにカール・シュターミッツも、ライヒャ同様にチェコ系の人物であった。

 

曲自体は、A面の二曲と比べると、ずっと規模も大きくなり、構成感もしっかりしたものになっている。それぞれの楽器の特色や音色が緻密に組み合わされ、聴いていても大変面白い。

第一楽章は、ソナタ形式。快活な第一主題と、ロマン的な第二主題の対比が、いかにもという感じがするものの、面白く感じる。その後、いろいろな楽器で展開していく充実した内容である。

 

第一楽章:アルベルト・シュヴァイツァー五重奏団による録音。cpoに全集を録音しています。

 

第三楽章は、ちょっとスケルツォっぽいメヌエットになる。この冒頭に各パートがそれぞれの音色で登場するフレーズが楽しい。それぞれのパートが次々と活躍していくので、木管五重奏を聴く楽しさが存分に味わえるのではないかと思った。

 

第三楽章のメヌエット:これも、このLPと同じ音源だと思います。

 

という形で、あちこちで楽しませてくれながら、しっかりと構成された4楽章構成で締められる、大変面白い曲であった。

 

【まとめ】

BookOffで見つけたLPということで、内容は半信半疑で聴いていたのですが、大変面白いアルバムでした。その後、この音源もCD化もされていますが、それは少し他の録音が付加されているので、オリジナルのカプリングで聴けるこのLPは、それなりに良かったと思います。

演奏メンバーは、当時それぞれソロでも第一線で活躍されていたベルリンフィルの名手たちで、素晴らしい演奏がきかれました。いい録音だと思います。

 

購入:2024/07/26、鑑賞:2024/07/26

 

関連する過去記事のリンクです。

 

 

 

 

ここ2週間くらいで、面白そうなコンサートはないかな~、と思って探していた時に、気になったものの一つ。いい席が残ってないなーと思って、いろいろなサイトをみていると、一つありました爆笑。サイトによって残っているチケットが少々異なることがあるので、いろいろ見てみるものですね。

 

私にとってバッハの鍵盤楽器の曲は、どちらかと言うとシュールな音楽という印象で聴いていました。たぶん、グールドの演奏を聴いてからそうなったかもしれません。ゴルトベルク変奏曲は、以前に小林道夫さんのチェンバロのコンサートを聴いたことがありますが、ピアノでのコンサートは初めてです。菊池さんのコンサートは、2013年に、シューマンの交響的練習曲を聴いたことがありましたが、ずいぶん久しぶりです。

 

菊池洋子さんのサイトをみていると、ゴルトベルク変奏曲を、ライフワークとされたようで、毎年ゴルドベルク変奏曲を弾いていかれるとのことです。きっとその年まで積み重ねてこられたゴルトベルク変奏曲が聴かれると思います。たいへん興味深く思いました。

 

以下、インタビュー記事

オフィシャルサイトです。

 

◆プログラム
J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988

演奏:菊池洋子(p)

2024年7月24日 サントリーホール ブルーローズ

 

さて、演奏会が始まります。うまくチケットが取れたおかげで、5列目のピアノの正面。なかなかいいです!小ホールはほぼ満員ではないですかね…。

 

さて、アリアがはじまりました。アリアはけっこう演奏の印象や方向を決定づける感じがするので、聴きどころです。いつも聴いているCDと言えば、グールドやピーター・ゼルキンというところですが、それらとは違いました。グールドのあのシュールな濃厚さは、他に類のないものという感じですが、今日のアリアはそれらとは異なるもの。シュールとか軽やかといった表情を表に出すよりは、むしろ古典的というか、いやロマン派的かもしれません。むしろ、グールドやゼルキンが変わっていて、こちらの方がスタンダードなんでしょうね。

 

第一変奏に入っていきます。このペースと雰囲気が、ここからのこの曲の大部分の通常運転モード。印象としては、強靭でかつ流れるように感じました。変奏ごとに表情を変えながら、快調に変奏が続いていきますが、とても集中度が高くて、こちらは息もつけない感じですし、聴けば聴くほど大変な曲だと思いました。そんな曲の音が一点の乱れもなく紡がれていく感じです。そして、演奏が進むにつれて、バッハという直接的な表情が抑制的に感じる音楽の中で、すごくロマンティックな演奏ではないかと思い始めました。

 

終盤に入って盛り上がって行きながら、熱気のある圧巻の演奏が続きます。第25変奏はじっくりとロマンティックに歌われました。そして、圧巻の迫力の第29変奏が、とても強靭な演奏でした。そして、そのまま最後の第30変奏へ繋がり華々しく閉められました。最後のアリアで現実に戻ってきますが、それはすでに最初のアリアを聴いた時とは違う、新たな世界への大いなる充実感に満ちたものでした。

 

強靭でロマンティックな演奏という印象でしたが、この長い曲をこれだけパワフルかつ流麗に引き切ることはとても大変なことだと思います。10年前に聴いた時の印象とは全く異なりました。正直言うと、私も少々バッハの印象が変わりました😆。

 

キャリアとしては、モーツァルトの大家であり、日本の音大出身ではないところなど、内田光子さんと印象がダブります。これからどんな演奏を聴かせてくれるのか、とても楽しみです。ずっと毎年バッハは聴かれますね。いずれ、ゴルトベルクで大ホールを満員にすることを楽しみにしています👍

【演目内容】

  歌劇「トゥーランドット」(プッチーニ作曲)

  演出:クラウス・グート
出演

  トゥーランドット:アスミク・グリゴリアン
  カラフ:ヨナス・カウフマン
  皇帝:イェルク・シュナイダー
  リュー:クリスティーナ・ムヒタリヤン
  ティムール:ダン・パウル・ドゥミトレスク

  大官:アッティラ・モクス

  トゥーランドットの侍女:アンティゴニー・ハルキア 、ルシーラ・グレイアム

  ピン:マルティン・ヘスラー

  パン:ノルベルト・エルンスト

  ポン:尼子広志
  合唱:ウィーン国立歌劇場合唱団
  管弦楽:ウィーン国立歌劇場管弦楽団
  指揮:マルコ・アルミリアート
収録…2023年12月7・8・13日

   ウィーン国立歌劇場

 

【感想】

BSでトゥーランドットを放映していました。プッチーニといえば、今年が没後100年のアニバーサリー・イヤーですし、トゥーランドットはプッチーニの逝去によってリューの死のところまで書かれたところで未完となり、アルファーノによって補筆完成されました。ということなので、ほぼほぼ100年前の作品ですね。

初演にあたったトスカニーニは、補筆部分を大幅にカットしたため、以後そのカット版で演奏されてきましたが、アルファーノ補筆の全曲版も近年上演されるようになり、この公演も補筆版での上演となっています。

 

今回のグートによる演出は、近代的で無国籍な雰囲気のもの。曲は西欧における異国趣味的作品で、中国が舞台となるだけに、京劇風の華美な演出などが伝統的なものとは思いますが、この演出はスッキリしていて親近感が持て、シュールでコミカルでもあり、大変見やすい演出だと思います。とはいっても、セリフははっきりと中国が舞台というベースで書かれているので、現代的な衣装と重ね合わせると、妙に今の中国がちらついて来るのも事実。周辺異民族との攻防を繰り返してきた中国の現在の姿もダブって見えてきました。

展開的には、リューの死からあとの繋ぎがポイントかと思いました。リューの死が重いので、そのあとの二人の駆け引きにどう違和感なく繋がるかは、演出や演技のポイントのように感じました。そのあたりは、ちょっと違和感がありつつも、こんなもんかなぁ…という感じですが、全体の演出とのバランスなんでしょうね。

アスミク・グリゴリアンと、ヨナス・カウフマンの二人は歌も演技も素晴らしいものでした。迫力のある声量と細かく気を配った演技に圧倒されます。カウフマンの「誰も寝てはならぬ」も素晴らしかったです。あとは、クリスティーナ・ムヒタリヤンの歌と迫真の演技も大変良かったと思います。

演出面では、セリフはありませんが、トゥーランドットの仮面を被った4人の侍女が印象的でした。この仮面は見る角度によっていろいろな表情が感じられるような気がして、興味深かったです。あと、4人の侍女がご先祖様の四肢の骨をトゥーランドットにあてがう場面。面白かった。「この宮殿の中で」のあたりだったかな…。

オーケストラの方は、それほど目立つ感じはありませんでしたが、そつのないものだったという感じだと思います。

 

2024/07/23:2024/07/22のNHKプレミアムシアター放映分よりの録画鑑賞

 

ブログの過去記事からの関連リンクです

 

 

 

 

 

 

【CDについて】
①作曲:ヴェルディ

 曲名:弦楽四重奏曲ホ短調 (23:40)

②作曲:プッチーニ

 曲名:弦楽四重奏曲「菊」 (8:00)

③作曲:ヴェルディ=ムツィオ編

 曲名:歌劇「ルイザ・ミラー」弦楽四重奏版 (28:49)

演奏:ハーゲン四重奏団
録音:1993年12月 ポリング Bibliothekssaal(①,②)

   1994年4月 アーバーゼー Kirche St. Konrad(③)

CD:447 069-2(レーベル:DG)

 

先日のコンサートで聴いた、プッチーニの「菊」のCDを持っていなかったので、じっくり聴いてみようと、さっそく一枚CDを調達してみた。どんな演奏がいいのかな?…と思いつつ、手に入れたのは、安定のDGブランドのCDであった。しかし、ハーゲンQは私にとってあまり安定ではないのだが…(笑)。

 

きっかけとなった、聴きにいったコンサートは以下のもの…↓

 

「菊」自体は短い曲なので、メインにはならず、CDの大半は同じイタリアのオペラ作家ということで、ヴェルディの作品が多く収められて、そちらがメインである。

 

【曲と演奏について】

ヴェルディ:弦楽四重奏曲ホ短調

ヴェルディの器楽曲は決して多くはなく、この曲の成立事情はよく解らないけれども、歌手の都合でアイーダの公演が延びてしまった頃、ホテルに滞在中に作曲され、プライベートで演奏されたということである。なにやら「筆のすさび」のような雰囲気を感じるエピソードであるが、実のところどうだったのだろう。

 

曲は長さ的には、第一楽章と第二楽章がそれぞれ三分の一、第三楽章と第四楽章が残りの三分の一で、前段に重きを置き、後半は駆け抜ける構成。急-緩-急-急で、最後はスケルツォからフーガという展開で締められる。第一楽章はかなり動きの幅の大きい曲で、ハーゲンQの輪郭の立ったソリッドな演奏で、よりダイナミックさが強調されたように感じた。逆に第二楽章は静かな緩徐楽章で、繰り返されるシンプルなテーマが心地よく感じる面白い曲。この曲の中でホッとするところかもしれない。そして、第三楽章から第四楽章へとエッジの効いた演奏で駆け抜けていった。

 

もしかしたら、標準的演奏はこれ?ということで、本家イタリア四重奏団の演奏です。

 

プッチーニの菊もそうですが、これも、弦楽合奏がとてもよく似合う曲だと思いました。

バレンボイムとミラノ・スカラ座フィルハーモニー管弦楽団による演奏です。

この演奏の編曲者は定かではないですが、トスカニーニの編曲版があるようです。

 

プッチーニ:菊

これが、本命。この曲は、プッチーニの支援者であったスペイン王アマデオ1世の追悼として書かれたもの。しみじみとドラマチックな旋律が朗々と流れる曲で、いかにも追悼の音楽。そのまま映画音楽にもなりそうな雰囲気である。ハーゲン四重奏団の演奏も、濃厚に情緒を湛えた演奏で、じっくりと聴き入ることができる。10分に満たない短い曲ながら、素晴らしい曲である。

 

ここは、もうこのCDを載せておきたいと思います。これはいいと思います。

 

ヴェルディ=ムツィオ編:歌劇「ルイザ・ミラー」弦楽四重奏版

最後に収録されているのは、ルイザ・ミラーの弦楽四重奏版。ルイザ・ミラーは正直見たことも、聴いたこともないので、よく解らないが、名場面の音楽が次々と弦楽四重奏で演奏されるので、知っていればサントラ風にでももっと楽しく聴けるのではと思う。知らずに聴いても、十分楽しめるものだった。編曲も面白いと思う。ムツィオは生涯ヴェルディの友人であり、唯一の弟子。そして、作曲家・指揮者・教育者だった。ただ、ヴェルディより8歳年下ながら、先に亡くなってしまったようだ。ルイザ・ミラーを聴く機会があったら、再聴したいと思う。

 

ということで、今日はヴェルディとプッチーニの音楽をインストゥルメンタルで楽しむというもの。聴かなかった分野でもあり、大変興味深いものだった。

 

購入:2024/07/16、鑑賞:2024/07/18

【CDについて】
作曲:ファランク

曲名:三重奏曲第2番ニ短調 op34 (25:49)

   スイス民謡による協奏的変奏曲 op.20 (9:12)

   三重奏曲第4番ホ短調 op.45 (24:32)

   ソナタ第1番 ハ短調 op.37 (19:05)

演奏:リノス・アンサンブル
録音:2022年1月24-27日 Deutschlandfunk Kammermusiksaal

CD:555 538-2(レーベル:cpo)

 

その① ↓ より続きます。

 

三重奏曲第4番ホ短調

第4番op45のトリオは、フルート・チェロ・ピアノという編成になっている。同時期に作曲された第3番op44がクラリネット・チェロ・ピアノという編成なのに対して、対をなしている感じである。ファランクは、この第4番作曲の数年後に娘を失ってからは、ほぼ作曲を行わなくなったので、最後期の作品にあたる。そして、この第4番は、ファランクが忘れ去られていた間でも、比較的楽譜が手に入りやすかったということである。

 

第一楽章は、哀愁を帯びたチェロとフルートによるメロディから入り、ソロはフルートへ、ピアノへと受け継がれて展開していく。メロディは情緒豊かでかつ明快なもので、ピアノの装飾がとても目立って活躍するのも、ファランクらしい。出色なのは、第二楽章のメロディのハッとするような美しさと、第三楽章のロマン派らしいスケルツォ。ファランクの音楽は成熟していて、強くロマン派の音楽を感じるが、一方で古典派の伝統の構築感が保たれており、安心して楽しめるのも特徴である。第四楽章も明るく美しいロンドで力強く締められる。ロマン派室内楽の傑作である。

 

Left Coast Chamber Ensembleは、1992年創設でサンフランシスコで活動している、室内楽アンサンブル。輪郭のはっきりした、躍動的な演奏を聴かせてくれます。

 

ソナタ第1番 ハ短調

ファランクによるヴァイオリン・ソナタ。美しく濃厚なメロディを楽しめる曲だった。そして、そんなメロディを楽しみながらも、古典的な構成がしっかりしているので、聴いていて安心感もある曲である。曲の雰囲気は、他の3曲と大きくは変わらないが、楽器構成的に、ロマン度が濃いという感じはある。第二楽章の美しい主題のメロディや、躍動的な第三楽章のロンドが素晴らしい。

 

協奏的変奏曲と同様、ダニエーレ・オルランド(vn)、リンダ・ディ・カルロ(p)のデュオによる演奏です。

 

ファランクの室内楽曲集のCDを最後まで聴いて感じたことは、これらの曲がなぜ埋もれていたのだろうという事。きっと、女性だからということが大きな原因の一つだろう。生前は良く演奏されたらしいが、没後はほぼ消えてしまっている。世間は存命中は彼女の曲を持て囃したが、没後は関心の外に行ってしまったということだろうか。

そして、これらの曲が後世に与えた影響はどうだろう?同じフランスの作曲家であれば、同世代としてはベルリオーズなのだが、次世代といえばサン=サーンスやフランクといったところで、彼らの学んだ時代は、ファランクのピアノ科教授時代と重なっている。門下の指導と言えば、同時代にパリ音楽院教授であったブノワ(オルガン科)の名前がクローズアップされるが、ファランクの音楽もあちこちで影響を与えているのではないか?と想像してみるのも面白い。

 

このCDを演奏しているリノス・アンサンブルは、1977年に創設された、ケルンを拠点として活動する団体で、古典派に造詣の深いファランクの曲の演奏ということで、アプローチ的にもドイツ的なのかな?と思ったりする。実際色調が暗めな印象を持った。しかし、この曲からは、どうしても明るい、天真爛漫な性格がにじみ出てくる感じがするので、いろいろなスタイルの演奏で聴いてみたいと感じる。リノス・アンサンブル自身は既に1993年のファランクのCDを録音していて、かなり早い段階で手の内に入れていたのだと思う。慧眼である。ファランクの演奏機会や録音も多くなってきているようで、これから、まずます楽しみである。

 

~完~

 

購入:2024/07/14、鑑賞:2024/07/18

【CDについて】
作曲:ファランク

曲名:三重奏曲第2番ニ短調 op34 (25:49)

   スイス民謡による協奏的変奏曲 op.20 (9:12)

   三重奏曲第4番ホ短調 op.45 (24:32)

   ソナタ第1番 ハ短調 op.37 (19:05)

演奏:リノス・アンサンブル
録音:2022年1月24-27日 Deutschlandfunk Kammermusiksaal

CD:555 538-2(レーベル:cpo)

 

先の休日の日曜日、再び渋谷に映画を見に行ったついでに、タワーレコードを、今度はCDを買いに行こうという目的をもって訪ねてみた。休日の渋谷は、コロナの頃は人が少なめだったが、今や大賑わいで、歩くのもなかなか気疲れする様になっている。ハチ公前のスクランブル交差点あたりでは、外国人観光客向けのゴーカードが行き交ったり、アイドルが中でライブを演じながら専用バスが走っていたりしている。かつては無かった風景だが、商売のアイデアは絶え間なく進化している様だ。

 

タワーレコードも多くの人出で賑わっていた。しかし、クラシックのフロアに行くと、なんと私以外にお客さんがいない!店を出る頃には数人のお客さんが訪れていたので安心したが、外の喧騒とは裏腹に静かな空間であった。静かなのは常としても、もう少しお客さんで賑わっていいのだが…。

 

という訳で今回の目的な、ファランクのCDを買う事である。5月の新日本フィルの室内楽演奏会で聴いて興味を持ったからだ。オンラインでも買えるし、そちらの方が割引があったりしてお得なのだが、10000円買わないと送料無料にならないし、他のついでがあれば交通費も有効に使えるので、店にあれば買うことに決めていた。それに来店用のクーポンもあったことだし…。今日は、その時に2組3枚買ったCDからの1枚を聴いてみる。

 

その演奏会の鑑賞メモへのリンク。↓

 

 

【曲と演奏について】

三重奏曲第2番ニ短調

まずは、先日コンサートで聴いた時に調べたことを、おさらいしておきたい。ルイーズ・ファランク(1804-1875)は、フランス出身の女性作曲家でピアニスト、そして教育者であった。主に19世紀前半に活躍しており、その時代はメンデルスゾーンやシューマンの活躍の時代と一致する。チェコ出身で、ドイツ・フランスで活躍したライヒャの影響が大きく、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンなど古典派に造詣が深い。作風としては、古典派の基礎の上に、当時のロマン派の技巧を独自の手法で発展させたとされている。自ら実績を積んで、女性として初めてパリ音楽院教授に就任したが、男性と同等の待遇を求めて戦い続けたとのこと。当時の女性作曲家といえば、ファニィやクララの名前が出てくるが、立ち位置がかなり異なると思われる。

 

ということで、まずトリオ第2番から聴いてみよう。編成は、vn,vc,pfなので、ピアノ三重奏曲である。曲に関する印象は、コンサートで聴いたピアノ五重奏曲とほぼ同じ感想を持った。

 

曲は三楽章で、ソナタ・変奏曲・ロンドと進行していく。主題はどれも簡潔で親しみやすく、それが美しく展開する。ピアノが常に豪華に輝くのが印象的である。また、どこをとっても緩みがなく、華麗に鳴り続けている。短調の曲であるが情緒を湛えたメロディの中に、ある種の明るさをも感じさせる。長い間演奏されてこなかったのが不思議なくらいであるが、ロマン派的な濃厚な感情表出に頼らない垢抜けなさや、突き抜けるような斬新さには乏しい、といったところもあるのだろうか。ともかく、構築のしっかりとした美しい音楽であることには間違いないと思う。

 

Trio Orelonによるトリオ第2番

2019年にケルンで結成された若いトリオ。これも、なかなかいい演奏だと思いました。

 

スイス民謡による協奏的変奏曲

この曲は、vnとpfの変奏曲で、古典的なスタイルの変奏曲だった。そして、ファランクの曲らしく、ピアノがきらびやかで、メロディもシンプルで楽しく可愛らしいもの。いろいろな変奏を歌うヴァイオリンと、装飾と和音でサポートするピアノ。時折ピアノがメロディを弾く。そういった10分間はなかなか楽しく、聴きやすくて、飽きない曲だった。

 

ダニエーレ・オルランド(vn)、リンダ・ディ・カルロ(p)のデュオによる演奏。

ファランクのヴァイオリン曲集を、Brilliant Classicsに録音してます。

 

繰り返し聴いているうちに、ファランクの曲を聴くのは至福の時間だなと感じ始めました。

ということで、長くなりますので、後半はまた後日にアップしたいと思います。

今日のところは、これで…

 

~つづく ↓ ~

 

購入:2024/07/14、鑑賞:2024/07/16

新日本フィルハーモニー交響楽団の室内楽シリーズ。今回は、コンサートマスターの西江辰郎さんのプロデュースによるもの。大御所の登場である。そして、プログラムがとても興味深くて、どれも聴いたことの無い曲。一応予習ということで、メインのタネーエフのピアノ五重奏曲くらいはYouTubeで聴いてから会場に向かった。

 

タネーエフはチャイコフスキーに学び、モスクワ音楽院の教授として、スクリャービン、ラフマニノフ、グラズノフ、プロコフィエフ、メトネルたちを指導した。どちらかと言えばロシアの西欧派の系譜を思わせる。ただし、チャイコフスキーのようなロマンティックな旋律は多用せず、厳格な構築性を重視した。そんなことから、ロシアのブラームスと呼ばれることもあるようだが、本人はブラームスやワーグナーを毛嫌いしていたという。このあたりロシアという立ち位置からの微妙な葛藤が見受けられる。

 

◆プログラム
①J.S.バッハ(ジョン・バーンスタイン編):来たれ、異教徒の救い主よ BWV659

②ドヴォルザーク:弦楽四重奏のための「糸杉」 B.152より第4曲

 「ああ、私たちの愛に求める幸せは花開かない」
③ミルゾヤン:弦楽四重奏曲ニ長調

④タネーエフ:ピアノ五重奏曲ト短調 op.30

 

演奏:西江辰郎(vn)、立上舞(va)、中恵菜(va)、サミュエル・エリクソン(vc)、

   菊池裕介(p)

2024年7月8日 すみだトリフォニーホール

 

プレトークでは、西江さんが選曲の経緯を語られた。その言葉自体はすでに忘れかけているのだが、だいたいこんな内容だったと記憶している。「昨今の世界情勢(紛争など)に鑑み、歴史を紐解いてみた。西欧音楽の歴史はキリスト教教会音楽に始まり発展してきた。その歴史の流れの中で、今起こっている事象を読み解くような曲を集めている。ラテン語で書かれ市民には理解の難しかったキリスト教の経典が、ルターによってドイツ語に翻訳された。これにより、人々は書いてあることを知り、現実とのギャップも知ることになった。(J.S.バッハのこの曲はルターの翻訳から来ている)。ドヴォルザークの曲から流れ出るボヘミアの情景。ミルゾヤンは、ソ連時代のアルメニアを生きた、民族色の強い作曲家。タネーエフの曲からは西欧への憧れが見られる」全体をなかなか結び付けづらい点もあると思うが、俯瞰してみた時、キリスト教世界と異教徒、周辺国の民族主義と西欧文明との葛藤などキーワードが浮かぶようなスピーチであった。

 

という前置きで音楽が始まった。最初の2曲は短い曲でもあり、美しい音楽を楽しんだ。ボヘミアの風景の浮かぶようなドヴォルザークの音楽は素晴らしい。そして、前半の大曲はミルゾヤンである。1921年生まれの作曲家で、グルジアのゴリ生まれ(スターリンやムラデリと同郷)だが、アルメニアに移住している。プロコフィエフ、ショスタコーヴィチ、バルトークの影響を受けた作風で、アルメニアの民俗音楽としては、ハチャトゥリアンの次世代の後継者であった。1947年に作曲されたこの曲は、なるほどショスタコーヴィチ的なテイストも強いのだが、それがアルメニアの旋律と融合して展開していく面白い曲であった。

 

そして、後半はタネーエフ。この曲は事前に聴いてはいたが、最終的にまだよくつかめていない。確かにタネーエフ自身に関する評伝から読み解くと、チャイコフスキーの流れを汲みつつ、叙情性を薄めて構築性を上げたらこうなるという、頭での理解には至るのだが、なかなか体感として入ってきていない。いずれもっとじっくり聴いてみたいと思った。ラストの教会の鐘のようなピアノの連打は印象的であった。

 

さて、演奏会は通常のプログラムでは終わらない。アンコールがあるのだ。この日は2曲のアンコールがあった。

①プッチーニ:弦楽四重奏曲「菊」

②ピアソラ:天使の死

「菊」は、言わば追悼曲であり、レクイエムである。「天使の死」は、魂を救済しに下界に降りた天使が、ブエノスアイレスの場末でナイフで刺し殺されるという場面につけられた音楽である。この2曲のアンコールで極めてインパクトの強い演奏会となった。

 

憧れが欲望を生み続けるこの世界には、救済は無いのだろうか…。

我々は聖なる心の犠牲の上にのみ、生き続けることができるのだろうか…。

 

関連する動画ですが、一曲だけ。素晴らしい演奏があったのでリンクします。

 

プッチーニ:弦楽四重奏曲「菊」(弦楽合奏版)

マリス・ヤンソンス追悼(一周忌)としてのバイエルン放送交響楽団による演奏です。

指揮台は空席になっています…

 

その①② ↓↓ よりつづく…

 

 

さて、Amazon Primeで視聴できたので、「北ホテル」の映画化作品をじっくり鑑賞させていただいた。1938年に公開された作品で、監督はマルセル・カルネである。

 

映画化ということで、より娯楽性が増した印象。群像劇というスタイルから、北ホテルを背景として、その中のエピソードを創作し、サスペンス風味やメロドラマという形でまとめられている。これに対して原作とは異なるという評価もできるが、むしろこの「北ホテル」のエッセンスをうまく織り込み、その北ホテルでの日常の情緒を活かして、当時のフランス映画の名作を作り上げたという風に見るのが良いと思う。メインのストーリーを軸にしながら、北ホテルを人生の通過点として、そこに行き交う人々の哀愁を見事に表現している。1938年と言えば、トーキーが熟成され、名画がたくさん生まれている、そんな時代である。

 

以下、私の映画ブログに、詳細のあらすじや感想をアップしたので、ご興味あれば…

 

さて、クラシック音楽がメインのブログという事で、音楽の話題も追記しておきたい。この映画の音楽がそれほど有名かというと、そうでもないと思うが、この映画に音楽をつけたのは、モーリス・ジョベールである。モーリス・ジョベールは、1900年生まれの作曲家で、1940年に第二次大戦に従軍し戦死した。しかし、1930年代の映画に音楽が重要な位置を占め、ともに発展した時代に、数多くの名画に対して音楽を作曲していた。まさにフランスの映画音楽の成長時代の作曲家で、その曲は、ジャン・ヴィゴ、ルネ・クレール、ジュリアン・デュヴィヴィエ、マルセル・カルネ監督などによる、多くの錚々たる作品を飾っている。

 

モーリス・ジョベールは、元来クラシック音楽の作曲家であり、クラシックの分野でも多くの曲を残しているはずなので探してみた。とりあえず見つけたのが、以下の曲がが含まれるCDのもの。このバラード(1934)は映画音楽でなく、劇音楽「テッサ、誠実な心を持ったニンフ」からの曲ということのようだ。クラシックとは言っても、映画音楽タッチを感じる曲だったので、いつか純クラシック作品も探してみたいと思う。

 

マルティノン指揮、フランス国立放送管弦楽団の演奏によるバラード(1934)

 

さて、今日は7月14日で、パリ祭の日。映画「北ホテル」もラストはパリ祭の日であった。オリンピックを控えたパリ。今日は盛り上がることだろう…。

 

~ 完 ~

 

その① ↓↓ よりつづく…

 

この「北ホテル」のあらすじはシンプルで、パリのジェマップ河岸にある小さな北ホテル(L'Hôtel du Nord)を買って、新たな経営者となったルクーヴルウル夫妻と、そのホテルのおよそ上流とは言えない住人やホテルのカフェの客たちの群像劇。ホテルと言っても観光客が入替り立替りというものではなく、中長期滞在のアパートという雰囲気で、言わば木賃宿。労働者を中心とした住人たちの短くもほろ苦いエピソードが連ねられて、全体が形作られている。そして最後に全体を振り返ると、そのちっぽけなホテルの中にも、いかにたくさんの住人たちの日常や喜怒哀楽が積み重ねられていた、ということにしみじみと思い当たるのだ。

 

こういった木賃宿の市井の人々の生活を描いた小説としてまず思い当たるのが、ゴーリキーの「どん底(1902)」なのだが、雰囲気も表現するものもかなり違っているように思える。例えば、この「どん底」をフランスでジャン・ルノワール監督が映画化した作品は、逆に明るく希望の持てる作品になっているが、むしろこの小説「北ホテル」もルノワール版「どん底」の雰囲気を感じ、これにはお国柄の違いなど、伝統的な相違が色濃く出ているものと思う。

 

「北ホテル」は、フランスの第1回ポピュリスト小説賞を受賞しており、このポピュリスト小説賞は現在では、ウジェーヌ・ダビ賞の名が冠せられている。まず、ここで言うポピュリスト・ポピュリズムという言葉は、現在において政治的な意味で使われるそれとは、ニュアンスが異なっている。ポピュリスト小説とは、源流はナロードニキ運動にあるとは言われるものの、プロレタリア小説とは似て非なるものらしい。というのも、ポピュリスト小説はプロレタリア小説のような小説の社会性や政治性を否定し、むしろ市井の人々への人間愛を前提としている。自然主義を継承しつつもこれに対抗して、自然主義のように彼らを獣のように扱い、同情を以て観察するのではなく、深い愛情をもってそこにある絵画的美しさを描く、という思想とのことである。今風に言えば、目線が違うのだ。

 

以上の文学論は訳者である岩田豊雄氏の巻末解説に書かれていることから推測してみたのだが、私の浅学ゆえ、足りない部分は多いと思う。その岩田豊雄氏は小説を書くときは獅子文六と号していた。あの多くの作品が映像化された獅子文六である。彼は1920年代にフランスに滞在してフランス現代劇の研究に没頭し、フランス人女性と結婚した。

 

そのようなポピュリスト小説であるのだが、日本に類似した作品があるかというと、私の少ない読書経験からだと、いい当てるのがなかなか難しい。プロレタリア小説はたくさんあるのだが、ポピュリスト小説となると、たぶん分野としてあまり認識されていないでは?と感じた。その中では山本周五郎の小説など、これに近いのかな、と思ったりもする。

 

ウジェーヌ・ダビは1936年に、38歳でクリミアのセヴァストポリにて客死した。その2年後1938年に北ホテルは、マルセル・カルネ監督によって映画化される。せっかくなので、そちらも見て見ようと思う。どういう作品になっているのか、楽しみでもあり不安でもあり、なのである…。

 

~つづく~↓

 

【CDについて】
作曲:シューマン

曲名:ピアノ五重奏曲変ホ長調 op44 (28:11)

   ピアノ四重奏曲変ホ長調 op47 (26:08)

演奏:レーゼル(p)、ゲヴァントハウス弦楽四重奏団
録音:1983-84年 ドレスデン ルーカス教会

CD:KICC 3565(レーベル:Deutsche Shallplatten、発売:キングレコード)

 

初めて、渋谷のタワーレコードに立ち寄ってみた。銀座山野楽器のCDフロアもこの7月末に閉店が報道されており、ワンフロアがクラシックCDという店舗は、ディスクユニオンなど中古レコード店を除けば稀有な存在となってきている昨今のこと、新品のクラシックCDが並んだフロアに足を運んでみたかったのだ。そして、そこには昔と変わらぬ時が流れていた。

 

あまり上客とは言えないかもしれないが、お目当てはなく、1枚だけ何か買っていきたいという気分であった。お店の推薦のCDが、書店でいえば平積み扱いのような形で、宣伝コメント付きで棚の上段の部分に並んでいる。新譜などにもいろいろ目移りする中で、目についたのがこのCD。相変わらず古い男だ…。そもそもこのCDが平積みになっているという事に、驚きと親しみを覚えたのであった。2010年の発売で、税抜きで952円のいにしえのCDである…。

 

【演奏について】

シューマンのピアノ五重奏曲と言えば、ピアノと2vn+va+vcの弦楽四重奏という形の曲では、古今屈指の名曲であると思う。個人的にはこの曲は、2012年に聴いた上海カルテットと長富彩さんの演奏がとてもスリリングで、強烈な印象を受け、それ以降いろいろ聴いた思い出がある。そして、今回のCDはゲヴァントハウスSQの演奏。そう、この2曲の初演地はライプツィヒのゲヴァントハウス。いわば本家本元の演奏なのである。

 

ピアノ五重奏曲は、ピアノが少し強い性格の曲だと思うのだが、この演奏も強めのレーゼルのピアノで入っていった。ただ、これは冒頭の印象だけで、あとは非常に調和した演奏であると感じた。もっと濃厚な演奏もあると思うのだが、表情は抑制気味で品格を保っている。フレーズ毎の表情つけよりも、絶妙なテンポから深い叙情性が湧き出てくる感じであった。後半に入っても激高していく感じは無く、安定と構築感を出し切った、さすが本家であった。

 

そして、もう一曲はピアノ四重奏曲。冒頭の静かに入っていく雰囲気がとても良くて、調和の美しさの中に浮遊していく。そして、レーゼルの刻む、静かに沸き上がるようなスケルツォ。これに続く、美しいメロディが存分に歌われる第三楽章が、ここは筆舌に尽くしがたいほど美しいのだ。これほどまでに…。第四楽章は安定の演奏で、しっかりと着地して閉じられていく。この曲は、今まで聴く頻度は決して多くなかっただけに、こんなに美しい曲なのかと改めて再認識させてくれたのだった。

 

【まとめ】

調和して、安定して、とても美しい演奏。これは確かにお薦めですね…。タワレコさんありがとう✨。この2曲、またどこかで生で聴きたくなりました。

 

購入:2024/07/11、鑑賞:2024/07/12

 

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