【演目内容】
モーツァルト: 歌劇「魔笛」K620
タミーノ…デイヴィッド・ポルティーヨ (t)
パミーナ…ソフィア・フォミナ (s)
ザラストロ…ブリンドリー・シェラット (bs)
夜の女王…カロリーネ・ヴェッテグレン (s)
パパゲーノ…ビヨルン・ビュルガー (br)
パパゲーナ…アリソン・ローズ (s)
モノスタトス…イェルク・シュナイダー (t)
ライアン・ウィグルワース指揮、エイジ・オブ・インライトゥメント管弦楽団
グラインドボーン合唱団
演出・美術・衣装…バルブ&ドゥセー
2019年8月4日収録
【感想】
クラシック音楽の中でオペラは苦手なジャンルです。全く聞いていない訳ではないですが、来日コンサートとか、めっちゃ高いし、かといってレコードやCDで対訳を見ながらオペラを聞くのが大変苦手で、すぐに今どこを歌っているのかわからなくなります。レコードだと容易に戻ることもできず、ほぼあきらめていました。そんな感じなので、DVDの時代になっても、食わず嫌いで鑑賞していません。
2019年のグラインドボーン音楽祭での上演。舞台設定が、20世紀初頭のホテルとされています。ザラストロが料理長、夜の女王が女将という設定。ストーリーの中には婦人参政権の運動など挟まれています。さすが、魔笛は面白いですね。一番の聞きどころの夜の女王のアリア。十分堪能できました。カロリーネ・ヴェッテグレンさんによる歌唱です。
その他面白かった演出は、最初に三人の侍女がタミーノを見つけ、顔の上に座るところ。パパゲーナがパパゲーノの子供をいっぱい産むところなど、笑える場面です。小道具として、人形を使った一人二役の演技などもなかなか楽しめました。パパゲーノ役のビヨルン・ビュルガーも楽しかったです。
さて、そんな魔笛ですが、楽しいシングシュピールの中に潜んでいる、宗教観とか土着性など、なかなか奥が深そうで、一筋縄ではいかないと思いました。たくさんの研究があることと思います。一部はフリーメイソンの組織の描写とも言われますが、その他にも文化の根源的なものがあるのではないでしょうか。そして、火と水の試練の人形を見て、映画の「ウィッカーマン」なども思い出しました。女性参政権といった社会性に加え、文明的な部分もよく描き出した、興味深い演出だと思います。
2023/05/15 NHKプレミアムシアターよりの録画鑑賞