ファランク:三重奏曲第2,4番 他 室内楽曲集 リノス・アンサンブル (2022) その② | ~Integration and Amplification~ クラシック音楽やその他のことなど

~Integration and Amplification~ クラシック音楽やその他のことなど

学生時代から断続的に聞いてきたクラシックCD。一言二言で印象を書き留めておきたい。その時の印象を大切に。
ということで始めました。
そして、好きな映画や読書なども時々付け加えて、新たな感動を求めていきたいと思います。

【CDについて】
作曲:ファランク

曲名:三重奏曲第2番ニ短調 op34 (25:49)

   スイス民謡による協奏的変奏曲 op.20 (9:12)

   三重奏曲第4番ホ短調 op.45 (24:32)

   ソナタ第1番 ハ短調 op.37 (19:05)

演奏:リノス・アンサンブル
録音:2022年1月24-27日 Deutschlandfunk Kammermusiksaal

CD:555 538-2(レーベル:cpo)

 

その① ↓ より続きます。

 

三重奏曲第4番ホ短調

第4番op45のトリオは、フルート・チェロ・ピアノという編成になっている。同時期に作曲された第3番op44がクラリネット・チェロ・ピアノという編成なのに対して、対をなしている感じである。ファランクは、この第4番作曲の数年後に娘を失ってからは、ほぼ作曲を行わなくなったので、最後期の作品にあたる。そして、この第4番は、ファランクが忘れ去られていた間でも、比較的楽譜が手に入りやすかったということである。

 

第一楽章は、哀愁を帯びたチェロとフルートによるメロディから入り、ソロはフルートへ、ピアノへと受け継がれて展開していく。メロディは情緒豊かでかつ明快なもので、ピアノの装飾がとても目立って活躍するのも、ファランクらしい。出色なのは、第二楽章のメロディのハッとするような美しさと、第三楽章のロマン派らしいスケルツォ。ファランクの音楽は成熟していて、強くロマン派の音楽を感じるが、一方で古典派の伝統の構築感が保たれており、安心して楽しめるのも特徴である。第四楽章も明るく美しいロンドで力強く締められる。ロマン派室内楽の傑作である。

 

Left Coast Chamber Ensembleは、1992年創設でサンフランシスコで活動している、室内楽アンサンブル。輪郭のはっきりした、躍動的な演奏を聴かせてくれます。

 

ソナタ第1番 ハ短調

ファランクによるヴァイオリン・ソナタ。美しく濃厚なメロディを楽しめる曲だった。そして、そんなメロディを楽しみながらも、古典的な構成がしっかりしているので、聴いていて安心感もある曲である。曲の雰囲気は、他の3曲と大きくは変わらないが、楽器構成的に、ロマン度が濃いという感じはある。第二楽章の美しい主題のメロディや、躍動的な第三楽章のロンドが素晴らしい。

 

協奏的変奏曲と同様、ダニエーレ・オルランド(vn)、リンダ・ディ・カルロ(p)のデュオによる演奏です。

 

ファランクの室内楽曲集のCDを最後まで聴いて感じたことは、これらの曲がなぜ埋もれていたのだろうという事。きっと、女性だからということが大きな原因の一つだろう。生前は良く演奏されたらしいが、没後はほぼ消えてしまっている。世間は存命中は彼女の曲を持て囃したが、没後は関心の外に行ってしまったということだろうか。

そして、これらの曲が後世に与えた影響はどうだろう?同じフランスの作曲家であれば、同世代としてはベルリオーズなのだが、次世代といえばサン=サーンスやフランクといったところで、彼らの学んだ時代は、ファランクのピアノ科教授時代と重なっている。門下の指導と言えば、同時代にパリ音楽院教授であったブノワ(オルガン科)の名前がクローズアップされるが、ファランクの音楽もあちこちで影響を与えているのではないか?と想像してみるのも面白い。

 

このCDを演奏しているリノス・アンサンブルは、1977年に創設された、ケルンを拠点として活動する団体で、古典派に造詣の深いファランクの曲の演奏ということで、アプローチ的にもドイツ的なのかな?と思ったりする。実際色調が暗めな印象を持った。しかし、この曲からは、どうしても明るい、天真爛漫な性格がにじみ出てくる感じがするので、いろいろなスタイルの演奏で聴いてみたいと感じる。リノス・アンサンブル自身は既に1993年のファランクのCDを録音していて、かなり早い段階で手の内に入れていたのだと思う。慧眼である。ファランクの演奏機会や録音も多くなってきているようで、これから、まずます楽しみである。

 

~完~

 

購入:2024/07/14、鑑賞:2024/07/18