鳥巣清典の時事コラム1567「水野和夫氏『持てる者により負担をしてもらうべき+消費税20%余』」
水野和夫氏の『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書)について知人の経営者の意見を聞きました。
鳥巣
水野和夫氏の『資本主義の終焉と歴史の危機』は読みましたか?
経営者
いや、読んでいない。
鳥巣
日本を筆頭にアメリカやユーロ圏でも政策金利がゼロになり、10年国債利回りも超低金利となり、資本の自己増殖が不可能になってきている。「電子・金融空間」のなかでも、1億分の1秒単位で投資しなければ利潤をあげることができない。つまり「地理的・物的空間」からも「電子・金融空間」からも利潤をあげることができなくなってきている。これは、資本主義が終わりに近づきつつある兆しだと。ま、マルクス経済学的な考えかもしれないけどね。
経営者
『資本主義の終焉』なんていうタイトルを付けているくらいだから社会主義者だと思う。僕は社会主義者の言う事は信用していない。彼らは、歴史的事実を自分の都合の良いように解釈するからね。
むしろ今の中国の状況を見ていると、何でも国の計画通りに進めようとする”社会主義の終焉”と言った方が良いんじゃないか。今の安倍政権も設備投資を経済界に押し付けようとしたり、全くおかしいけど(苦笑)。
鳥巣
そこで、聞きたい。水野氏は中国のバブルの崩壊は世界にリーマンショック以上のリスクがあると警告している。同時に今のグローバリゼーションでは、バブルは生成と崩壊を繰り返すと述べている。この分析はどう思う?
経営者
中国は今3番底になろうとしていると言われている。
鳥巣
ソフト・ランディングは無理なのか?
経営者
バブルはハード・ランディングしかない。クラッシュさせるしかない。そういう意味では、その水野氏が言うように、世界経済の深刻な不況という影響が出るだろう。また政府による財政出動をしなくてはならなくなる。
鳥巣
財政出動をすれば、また税負担に跳ね返る。ところで、マイ・ナンバーカードは申請しましたか?
経営者
会社は、義務だから、申請した。個人的には、していない。国は資産を把握しようとしている。これからは経営者や資産家と国との駆け引きになっていく。どう資産を隠すか・・。
鳥巣
最終的には、デノミをやるかもしれない。
経営者
資産を吐き出させる訳か・・。
【鳥巣注】
さらに水野氏は、深刻な影響を受ける筆頭として「日本」を挙げています。
❶中国のバブルが弾け、世界経済が冷え込めば国家債務は膨れ上がる。日本は財政破綻に追い込まれる国の筆頭候補。
❷国家間の大規模戦争の可能性は少ない代わりに、国内では行き場を失った労働者の抵抗が高まり、内乱の様相を呈するかもしれない。
❸日本は「ゼロ成長社会(=定常状態)」を目指すべき。ただし、国が巨額の債務を抱えていては、ゼロ成長下においては税負担だけが高まる。基礎的財政収支(プライマリー・バランス)を均衡させておく必要がある。
❹現在、破綻しない理由(フローの資金繰り)。
金融機関は800兆円の預金ーーその多くが年金ーーが年3%、約24兆円ずつ増えている。さらに企業は、年間の資金余剰が23・3兆円(2013年第3四半期時点)。家計部門と企業部門を合せた資金余剰は48兆円(2013年第3四半期での1年間の累計)
これが、銀行や生保などの金融機関を通して、国債の購入費に充てる金額で、毎年40兆円発行される国債が消化されている。
❺しかし、日銀の試算では、2017年ーー来年ーーには預金の増加が終わると予測されていて、そうなると外国人に国債を買ってもらわなければならなくなる。(高い金利を要求されて)金利が上昇すれば利払いが膨らむので、日本の財政はあっという間にクラッシュしてしまう。
❻そうならないためには、財政を均衡させなければならない。財政の均衡を実現するうえでは、増税はやむをえない。消費税も最終的には20%近くの税率にならざるを得ない。ただし逆累進性の強い消費税の増税ばかりが注目されるが、本来は法人税や金融資産税を増税して、持てる者により負担をしてもらうべき。
【鳥巣注】
水野氏の説はーー持てる人には申し訳ないのですがーー日本人の体質(天皇を象徴として平等さを尊ぶ)としては受け入れやすい話だと思います。これからの最大の課題は、いかにパニックにさせず、取り付け騒ぎを起こさず、日本人の団結力に持っていくか。痛みは伴うけれど解決策はあるんだーーというより精度の高い情報を伝えることが大切になってくる。
現在はまだ一般の高齢者の人は「1000兆円の借金があるといっても、ほとんどは日本人から借りている。アベノミクスで何とかなるだろう」と思っています。「これ以上、社会保障が削られたらうちのカミさんなんか・・大変だよ」。私も最初は震撼しましたーー確度の高い情報(私の場合は、それは”一次情報”と考えて、財務省、国会議員、日本銀行、金融機関のエコノミストや大学・大学院経済学部教授に直接取材して行きました)を探しながら認識のギャップを埋め、解決策を模索していく必要があります。
そういえば故・松村劭氏がつぶやいていました。「日本人は価値観を変えられるだろうか」。水野氏の言う「ゼロ成長社会」の到来を見通していたのでしょう。デフレに育った若い世代の方が適合しやすく、負担も軽くなってむしろ喜ぶかもしれません。
現在の日本経済の実力そのものが「ゼロ成長」とも言われています。日本人よ、身の丈に生きよう、という話です。
<ミヒャエル・エンデが言うように豊かさを「必要な物が必要なときに、必要な場所で手に入る」と定義すれば、ゼロ金利・ゼロインフレの社会である日本は、いち早く定常状態(ゼロ成長社会)を実現することで、この豊かさを手に入れることができるのです。>(水野和夫氏)
【ミヒャエル・エンデ】
ドイツの児童文学作家。
鳥巣
水野和夫氏の『資本主義の終焉と歴史の危機』は読みましたか?
経営者
いや、読んでいない。
鳥巣
日本を筆頭にアメリカやユーロ圏でも政策金利がゼロになり、10年国債利回りも超低金利となり、資本の自己増殖が不可能になってきている。「電子・金融空間」のなかでも、1億分の1秒単位で投資しなければ利潤をあげることができない。つまり「地理的・物的空間」からも「電子・金融空間」からも利潤をあげることができなくなってきている。これは、資本主義が終わりに近づきつつある兆しだと。ま、マルクス経済学的な考えかもしれないけどね。
経営者
『資本主義の終焉』なんていうタイトルを付けているくらいだから社会主義者だと思う。僕は社会主義者の言う事は信用していない。彼らは、歴史的事実を自分の都合の良いように解釈するからね。
むしろ今の中国の状況を見ていると、何でも国の計画通りに進めようとする”社会主義の終焉”と言った方が良いんじゃないか。今の安倍政権も設備投資を経済界に押し付けようとしたり、全くおかしいけど(苦笑)。
鳥巣
そこで、聞きたい。水野氏は中国のバブルの崩壊は世界にリーマンショック以上のリスクがあると警告している。同時に今のグローバリゼーションでは、バブルは生成と崩壊を繰り返すと述べている。この分析はどう思う?
経営者
中国は今3番底になろうとしていると言われている。
鳥巣
ソフト・ランディングは無理なのか?
経営者
バブルはハード・ランディングしかない。クラッシュさせるしかない。そういう意味では、その水野氏が言うように、世界経済の深刻な不況という影響が出るだろう。また政府による財政出動をしなくてはならなくなる。
鳥巣
財政出動をすれば、また税負担に跳ね返る。ところで、マイ・ナンバーカードは申請しましたか?
経営者
会社は、義務だから、申請した。個人的には、していない。国は資産を把握しようとしている。これからは経営者や資産家と国との駆け引きになっていく。どう資産を隠すか・・。
鳥巣
最終的には、デノミをやるかもしれない。
経営者
資産を吐き出させる訳か・・。
【鳥巣注】
さらに水野氏は、深刻な影響を受ける筆頭として「日本」を挙げています。
❶中国のバブルが弾け、世界経済が冷え込めば国家債務は膨れ上がる。日本は財政破綻に追い込まれる国の筆頭候補。
❷国家間の大規模戦争の可能性は少ない代わりに、国内では行き場を失った労働者の抵抗が高まり、内乱の様相を呈するかもしれない。
❸日本は「ゼロ成長社会(=定常状態)」を目指すべき。ただし、国が巨額の債務を抱えていては、ゼロ成長下においては税負担だけが高まる。基礎的財政収支(プライマリー・バランス)を均衡させておく必要がある。
❹現在、破綻しない理由(フローの資金繰り)。
金融機関は800兆円の預金ーーその多くが年金ーーが年3%、約24兆円ずつ増えている。さらに企業は、年間の資金余剰が23・3兆円(2013年第3四半期時点)。家計部門と企業部門を合せた資金余剰は48兆円(2013年第3四半期での1年間の累計)
これが、銀行や生保などの金融機関を通して、国債の購入費に充てる金額で、毎年40兆円発行される国債が消化されている。
❺しかし、日銀の試算では、2017年ーー来年ーーには預金の増加が終わると予測されていて、そうなると外国人に国債を買ってもらわなければならなくなる。(高い金利を要求されて)金利が上昇すれば利払いが膨らむので、日本の財政はあっという間にクラッシュしてしまう。
❻そうならないためには、財政を均衡させなければならない。財政の均衡を実現するうえでは、増税はやむをえない。消費税も最終的には20%近くの税率にならざるを得ない。ただし逆累進性の強い消費税の増税ばかりが注目されるが、本来は法人税や金融資産税を増税して、持てる者により負担をしてもらうべき。
【鳥巣注】
水野氏の説はーー持てる人には申し訳ないのですがーー日本人の体質(天皇を象徴として平等さを尊ぶ)としては受け入れやすい話だと思います。これからの最大の課題は、いかにパニックにさせず、取り付け騒ぎを起こさず、日本人の団結力に持っていくか。痛みは伴うけれど解決策はあるんだーーというより精度の高い情報を伝えることが大切になってくる。
現在はまだ一般の高齢者の人は「1000兆円の借金があるといっても、ほとんどは日本人から借りている。アベノミクスで何とかなるだろう」と思っています。「これ以上、社会保障が削られたらうちのカミさんなんか・・大変だよ」。私も最初は震撼しましたーー確度の高い情報(私の場合は、それは”一次情報”と考えて、財務省、国会議員、日本銀行、金融機関のエコノミストや大学・大学院経済学部教授に直接取材して行きました)を探しながら認識のギャップを埋め、解決策を模索していく必要があります。
そういえば故・松村劭氏がつぶやいていました。「日本人は価値観を変えられるだろうか」。水野氏の言う「ゼロ成長社会」の到来を見通していたのでしょう。デフレに育った若い世代の方が適合しやすく、負担も軽くなってむしろ喜ぶかもしれません。
現在の日本経済の実力そのものが「ゼロ成長」とも言われています。日本人よ、身の丈に生きよう、という話です。
<ミヒャエル・エンデが言うように豊かさを「必要な物が必要なときに、必要な場所で手に入る」と定義すれば、ゼロ金利・ゼロインフレの社会である日本は、いち早く定常状態(ゼロ成長社会)を実現することで、この豊かさを手に入れることができるのです。>(水野和夫氏)
【ミヒャエル・エンデ】
ドイツの児童文学作家。