鳥巣清典の時事コラム1565「スローフォックストロットを心より愛す&『音が先』!」 | 絶対に受けたい授業「国家財政破綻」

鳥巣清典の時事コラム1565「スローフォックストロットを心より愛す&『音が先』!」

 社交ダンス
 スローフォックストロット






 8月も終わりに近づき、自主練習を残すのみとなりました。スローフォックストロットとも一旦お別れが近づき、一抹の寂しさが過ります。計7種目の中で、スローは私の1番のお気に入り。K先輩は「スローは1番難しいと言われる」と力説するのですが、「好き」に変わりはありません。「好きこそ、物の上手なれ」とよく言いますが本当のようです。

 最初は、K先生から個人レッスンを受けているN子さんからでした。
 N子さんが私とのスローを踊り終えたら開口一番。
「軽くなったわね」
 つづけて、
「以前は、がちがちだった時期もあるけど、踊っててすごく軽くなった」

 「重い」「軽い」と感じるのは、パートナー。私もフリー・パーティに参加した時に、その「軽い」「重い」の違いを実感したことがあります。踊り慣れていないフリー・パーティの方が、リズムなどの差が顕著に出るからでしょう。一般的には、上級者ほど軽い。
 ですからN子さんから「軽くなったわね」と言われたのは、ホメ言葉に近いニュアンスを感じました。

 そして次の週。
 今度はなんとK先生から直接「うまくなったね」と声をかけてもらったのでした。
 うまくなった度合いは、あくまで相対的な話。少なくとも以前に比べて良くなったのでしょう。もちろん、あえてK先生が言葉に出したくらいなのですから、変化ぶりが目立ったのだと思います。自分でも身体がナチュラルにスムーズに動くようになったのをスローを踊りながら感じてはいました。

 スローのレッスンは、1年間で2回、計4か月。K先生の直のレッスンは月3回ですから、年計12回。この7~8月のスローは、自分なりに心に決意を忍ばせていたところがありました。
 1つは、社交ダンス歴が4年目(2012年7月~)に突入。ひと段階成長する時期です。何か1つ、得意種目を持ちたい。好きこそものの上手なれ。閃いたのが、スローでした。(なんとなく好きだ。私向きかもしれない)とは感じつつも、技術はビギナー。ここで集中して技術会得の機会にしたいーーそう思ったのでした。
 思いは通じたのかもしれません。
1、U子さんが「ぴょんこ、ぴょんこしてるわよ」。このひと言で、自分のスローを検証
YouTubeでプロのレッスンビデオを見ていると、「高い位置から急に落ちるようなスローは駄目」とのアドバイス。さらに「膝を柔らかく」。踊りを見直すきっかけとなりました。
 ジェットコースターを中止して、膝を柔らかく使う事を意識。K先生がシャドーで指導するステップと重ね合せて調整を繰り返していました。上半身と下半身が上手いバランス具合に踊れてるなーーそう思い始めた矢先でした。
「うまくなったね」
 K先生の目に留まったタイミングは絶妙でした。

 1つのハードルを越えたら、次のハードル目標を設定。
1、「軽くなった」と言われた原因には「支点」の解釈の変化にあるような気がします。ブログにあった「相手を支点とする」という考え方です。
2、新たな課題は、パートナーと肋骨を支点とした場合の「程度」の問題。1と2は同じような課題でありながら、微妙でかつ本質的な問題を含んでいるような気がしています。軽い接触感だと「軽い」。もっとペタッとした接触感だとやはり重くなる。この調整が課題として見えてきました。

【鳥巣注】

 サークルで暑気払いの飲み会がありました。同席した先輩のF氏に上記のような話をしたら「普通はそういう事に気づかずに先へ先へと進んでいく。そういう事に”気づく”ということが進歩だし大切なんだと思うよ」。その指摘には勇気づけられました。

 スローは「7種目の中で最も難しいといわれる」理由には、他の種目に比べ動きが”複雑”ーー正直まだ的確な表現が思いつきませんーーである事が挙げられるような気がします。私にとっては、「複雑」だからこそ面白い。K先輩にいわせると「ラテンは、覚えてしまえば簡単」--現在の私にはそのスピードが苦手なのですがーーだそうです。
 少しずつ各種目の特徴や私との相性が分かってきました。

 「重い」「軽い」と感じるのは相対的。そう言われて思ったのは、
1、N子さんと組んだときに、背中に回した指の腹とヘソの穴とを直線で結ぼうと意識。次の瞬間、「あ、いま私の指の腹とヘソの面が直線で結ばれた」。同時に私とN子さんが斜めに並行に向かい合っていることを脳で感じたのです。そしてお互いが上半身を反り合いながらステップーー「あ、これがK先生のいう”天秤棒を担いだ時の姿か”」と思ったりもした次第。

*(注)
 K先生によると、反り合う支点は本当は(パートナーを組んでいれば)「胸」ーーこれは初めて知ったのと同時に、意外でおどろきでした。「サークルだと身長差があるのであばら骨の下になります」。

2、次のフェザーステップ。以前は余裕がなかったこのステップも、今回は自然と「膝をゆるくしてロアーからアップしていってみよう」という脳からの指令が主に下半身に伝わったような気がしました。ホールドもそれなりに高く挙げられたのではと思いました。

3、ほんの少しずつでも余裕が出ることによって、踊っている最中に感じるところがあって修正していく割合が増えつつあるのかもしれません。ライター修業の経験では、テーマを設定しながら不断の努力を継続すれば「階段1つ上がる→数か月目立った成長は感じない→ある日、”あ、オレ階段を1つ上がった”と思う日が来る→再び、数か月進歩を感じない」の繰り返し。そして長い月日のうちには飛躍的に進歩をしているパターン。私の場合は、短期間にポンポンポンと階段を数段上がる事は決してなかった経験から、「とにかく地味でも不断の努力を怠らない」がモットーとなりました。

4、先輩も貴重なアドバイスをくれます。
 ピアノ調律師Т氏。「セイムフットランジ」についてのアドバイス。
「ふつうの人は、そのまま右に体重を移動していく。ポイントは、一旦身体の力を緩めて沈み、そこから体重を移動していくんです」
 ほんのちょっとした工夫なのですが、一味が加わることの重要さをT氏のアドバイスからはいつも感じてしまいます。

5、「スリーステップ~ホバークロス~スピン~セイムフットランジ」。K先生も「ちょっと難しかったかな」。身体の使い方とタイミングがなかなか難しい。


*****
PS

 E先輩と電話で「スロー」論議。
 私が頑固に「スローが好き」と言い、E先輩は「スローは1番難しい」と譲らない。「あまり、その事は(周囲に)言わない方が良いよ」ともアドバイス。それでも私は「スローが好き」という思いを抑えられない。
 ついに私「みなさんが嫌いなものが私は好きで、私が好きなものは皆さんが嫌いなのかもしれません。逆に私が嫌いなものは、みなさんが好きなのかもしれない。皆さんが難しいと思うことを私は簡単。私が難しいと思うことが皆さんは簡単なのかもしれない。今回、スローに本気で集中して取り組んだら、明らかに進歩することが分かりました。進歩するかどうかは、本気になれるかどうかだという事も分かりました」。するとE先輩は「もしそうなら、将来有望かもよ」。問題は、まだ心底本気になれるフィギュアがスローだけだということです。残り6種目。N子先輩ではありませんが「うまくなるためには、好きになること」--至言です。
 
 生意気盛りを見せ始めた私にE先輩は、ありがたいことに大所高所から見てくれています。私は「今は笑って下さい」と添えました。そんな私にE先輩は「フリー・パーティでは、流れてきた音楽が即座にワルツかタンゴかを聴き分けられるようにすること」とアドバイス。「そうしないと、1で出るか2で出るかの判断ができない」。
 そしてE先輩は「踊る機会を増やした方が良い。中級のレッスンは受けながら、ベーシック主体のフリー・パーティやレッスンなんかで踊り慣れた方が良い」。私もベーシックの機会を増やす事を考えていたところでした。「キレイさ」を目指すにはベーシックのテクニックでは修正すべき点が多々ある。ベーシックがしっかりする事で幅広い人と気軽に踊れるようになる利点があるーーそういう時期のような気がします。

 E先輩が後日小声で言いました。
「鳥巣さんがいつか足幅の広いパートナーと組んでスタンダードを踊ったらキレイだろうな」
 私が4年前最初に所属したサークルに入ってきたばかりで目撃した光景のことです。E先輩は思い出すのか目を細めるようにして時々言います。
 サークルのМ子先生は私をホールドすると部屋の中を飛び回りました。
M子先生は小柄ながら驚くほどのジャンプ力がありました。私は歩幅だけは自信がありますからM子先生の幅広いステップに合せました。ピョ~ンピョ~ンピョ~ンと部屋を数歩で横切りました。そのときの空中姿勢がE先輩にどう映ったかは分かりません。
 テクニックを覚え、パートナーに恵まれた時のスタンダードーーワルツやスローフォックストロットーーの踊りを見てみたい・・というのが夢らしいのです。
 有難い事です。


「音が先!」ーー衝撃のE先輩の言葉


 そのE先輩の言葉。
「ダンスはまず足型のように思うかもしれないけど、リズム。足型が先じゃない、音楽が先。音楽に乗って、女性をリードする。歌は上手いんだから、音は取れるはず」
 この言葉は、目から鱗かもしれません。足型を覚えるのに汲汲としていた私。耳を研ぎ澄まして「音」を聴いていたのか? 何度か言われていたはずなのに、心に突き刺さる。人間は、ある種の”瀬戸際”に立たされたときに初めて気づく。その言葉の真の重さを。
 「音が先」ーー嗚呼!

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PS②
 ライターの現役中は「仕事は仕事」。好き嫌いとは別物だと思い込んでいました。ダンスを始めてから、「もう現役とは違う。種目には好き嫌いを言わせてもらおう」と思いました。しかし、改めて現役を振り返れば、「インタビュー」「調査報道」など相手と真剣にがっぷり四つに組む力相撲は、やはり自分の体質に合い、好きになり、どんどん進化していったのだと思います。ハートフルな「ヒューマン・ドキュメンタリー」も連載ものとしては1番長いものになりました。「相性」は大事。
 一方で肩の力を抜いて軽めの企画に真面目に取組んだら好評で、どんどん面白くなって人気企画を連発したジャンルもあります。中には「自分には向かなかった。やらなきゃよかった」という企画もありました。向かない企画は、早い話が才能がないか興味が湧かないもので淘汰されていくものです。

 スロー以外のダンス種目ーー興味が湧くようになりたいものです。


PS③

 さらに後日、E先輩が電話で。
「スローやワルツ、鳥巣さんが好きな踊りを進化させていくのは良いと思うよ」