松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。


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 近年ますます加速化する科学技術の進歩は、人類社会全体に大きなインパクトを与えつつあります。果たしてそれが人間本位の幸福な未来社会の実現に結びつくのか。人々の意識や社会の仕組みなどが的確に対応できるのか。そのようなテーマが私たちに突き付けられる時代に入っています。


すでに情報技術の面では、IоT、ビッグデータ、AI(人工知能)、スマートグリッド、自動運転、フィンテック、ブロックチェーンなどの言葉が人口に膾炙するに至っています。これらの言葉の普及も急速でした。そして、日本の経済社会にも急激な変化をもたらしつつあります。

 いま、米中の貿易戦争がエスカレートしていますが、その背後にあるのは、米中間での技術的覇権争いです。人材という面でみても、下図のように、AIに必要な人材は世界的に不足しており、その獲得合戦が繰り広げられています。現在の世界は、AIなどを中心に人類の未来社会を決定づけることになる新たな技術をめぐる、米中間の熾烈な競争を軸に動いているともいえます。

●転換期に直面する人類社会

 日本政府は未来社会のあり方として、「Society5・0」を打ち出しています。

これは、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」であり、「狩猟社会(Society1・0)、農耕社会(Society2・0)、工業社会(Society3・0)、情報社会(Society4・0)に続く、新たな社会を指すもの」とされています。

 「Society5・0」で目指されている「人間中心の社会」とは、従来、独立・対立関係にあったもの、例えば、モノ×モノ、人間×機械・システム、企業×企業、人間×人間、生産×消費、日本の現場力×デジタル、などの融合化を、大量の情報を基にしたAI(人工知能)による自律的な最適化によって実現しようとするものです。

科学技術の進歩がもたらす情報社会の次なる社会のステージとして、日本政府までもが、技術と人間とが融合した未来社会を構想しているということは、人類社会が人類史を画するような大きな変革期に入っていることを示唆しているように思われます。

 ここで、この変革期について、人間と技術との関係の歴史という視点から捉えてみますと、太古の昔、人類が最初に火を手にした日を、技術的特異点(シンギュラリティまたはテクニカル・シンギュラリティ)とするならば、まもなく人類は2度目のシンギュラリティを迎えると言われています。

人類が地球上に誕生し、火や道具を用いるようになってから長い年月をかけて発展してきた人類文明は、これから22世紀に向けて大きな変質を遂げていくでしょう。

そこに訪れるのは、これまで想像もできなかったような社会の姿であり、人々の生き方ではないかと思います。21世紀前半の現在に生存する私たち人類は、ちょうど、それに向けた大きな転換期の始まりの時代を生きているのだと捉えることができます。

●文明と情報革命

 この地球上のヒト以外の生物は、個体を変化させ、生命体として3億年をかけて進化してきました。これに対し、直立歩行し、火や道具を持ったヒトだけが、自らの肉体などの変化よりも、道具を使い、自らの外界を変化させる営みによって、わずか数十万年の間に、高速で移動し海を越え空を飛び宇宙へと向かう存在にまでなりました。


およそ地球に誕生した生命体とは、ヒト以外は、自らを取り巻く周囲の自然環境から直接的にエネルギーを摂取して自己の生存と種の保存を図る存在であるといえます。人類が他の生命体とは異なる大きな違いは、そうした営みに当たって、道具という中間機能を用いるところにあります。

火や器などから始まった道具は、やがて狩猟採集文明から農耕文明への転換を促しました。そして、人類の知恵によって道具が技術として高度化するにつれ、それによる富の蓄積がさまざまな中間機能の形態を生み出すようになり、多様で巨大な社会システムを中間機能として、人類は生存域を拡大するようになりました。

この意味での中間機能には、国家なども含まれます。これは、複雑多様な価値観を詰め込んだパッケージ型共生システム文明ともいえるものでしょう。

こうした中間機能の高度化による生産力の増大が、人類社会の歴史を規定してきました。

この共生システム文明の大きな転機になったのが、18世紀半ばから19世紀にかけて英国を中心に起こった第一次産業革命です。石炭火力と蒸気機関によって、人類は人手や家畜とは比較にならない動力を手にし、労働作業分担制により同じものを大量に作り出す術を獲得しました。

こうして「産業」を、人類が生存していく上での中核的な中間機能とする産業社会・産業文明の時代が到来します。そして20世紀前半には、米国を中心に、石油火力や水力によるエネルギーから産み出される電力や、流れ作業による大量生産技術に支えられた第二次産業革命が起こりました。

 文明評論家のジェレミー・リフキン氏によれば、現在の21世紀前半に起こっているのは「第三次産業革命」です。それは、エネルギー、移動手段、情報技術の分野を中心とする「限界費用ゼロ革命」がもたらすもので、これまでの社会のあり方を、集権的な巨大システムが支える競争型産業社会から、分散型システムが支える協働型コモンズへと移行させていくとされています。

これとも重なる未来予測として、かつて未来学者のアルビン・トフラーが著書「第三の波」(1980)で提唱したのが「情報革命」です。トフラーは、人類はかつて大変革の波を二度経験してきており、第一の波は農業革命(人類が初めて農耕を開始した新石器革命)、第二の波は産業革命であり、その次の第三の波として情報革命による脱産業社会(情報化社会)が押し寄せると唱えました。まさに今、この「第三の波」による人類社会の変革が現在進行中です。

●巨大化した中間機能の不可視化

文明の進歩は、装置の巨大化、つまり、中間機能の肥大化を伴うものでした。かつて自らの手で操っていた「道具」は、個々のヒトの手を離れていきました。人々は日常生活でいかなる目的を達するためにも、巨大な設備、集権的な大組織、複雑な社会システムなどを媒介しなければならなくなるに至っています。

人類が持続的に生存圏を拡大していくために生み出した中間機能は、人々が豊かさと利便性を追求するうちに、物理的にも社会制度的にも巨大システムへと化していきました。そして今や、それなくして人類は生存不可能になっています。

ただ、社会システムを利用するユーザー視点で考えてみますと、少なくとも表面的には、こうした巨大システムへの直接的な依存を人々は意識しなくても済む世の中への移行が進んでいます。背後にある巨大システムのことなど考えることなく、人々が豊かさや利便性を追求、実現できるような形態へと、人間の営みや社会の姿が変革されていきます。現在では、生産活動をはじめ社会生活を営んでいく上で、人々が直接接触する中間機能は、目前にあるパソコン機器一台という風景がますます強まっています。

ただ、このような風景を裏側で支えるシステムはより一層巨大化しています。IT革命が進展すればするほど、こうした巨大システムが、リアルな実存とは異なるバーチャルな時空(情報空間、電脳空間)に依存する度合いが高まっているという事実を無視することはできません。人々が直接接する世界は現実界から仮想世界へとシフトし、リアルな世界への関与はバーチャルな世界を通して行われるようになっています。

つまり、人類が持続的生存を確保するための中間機能において、バーチャルな世界が肥大化しています。


●電脳空間への依存で増大する不確実性

問題は、肥大化するバーチャル世界や、これを抱える巨大システムそれ自体が、社会の利便性を高める一方で、人々や人間社会に脅威を与えるリスクも高まっていることです。すでに起こっているのは、人々が情報関連の端末機器と直接向き合うことが活動の中核を占める状況になっている中で、これとつながるネットワークシステムやバーチャル電脳空間に対する信頼性、安全性が問われているという事態です。その一端を示すのが、度重なる情報漏えいや、サイバー攻撃などであることは論を待たないでしょう。

そして将来的には、IT化の究極としてAI化が進み、人間や社会のあり方は確実に激変していきますが、2045年に到来するとも言われるシンギュラリティ―に至ったときに、その姿がどうなるかは未確定です。

これは、一部の特殊な例外を除くと、ほとんどの人々にとって、自らのコントロールが及ばないブラックボックスのような不可視的な世界が肥大化し、それが自らの意思、あるいは人間社会や国家や人類の意思とは離れた独自の動きをして、私たちに予想できない作用を及ぼす脅威が拡大していくことを意味するものだと思います。

個々の人間のコントロールを超えて肥大化するバーチャルな世界を抱えた巨大システムがもたらす不確実性や脅威を克服することは、私たち人類社会が科学技術の進歩を通じて次へと進んでいくために克服すべき課題の中で、とりわけ重要な柱となるものです。

●新たな社会へ、「第四の波」

「第三の波」の情報革命が行き着く先に訪れるのは、私たちの日常の意識から中間機能そのものが消え去り、限りなくゼロに近づいていく社会ではないかと思います。それは「デバイスゼロ革命」、「ネットワーク不可視化革命」を通じて達せられる「中間機能ゼロ社会」ともいえるものです。

その先には、ヒトそのものが進化する世界も想定されます。人類は自らの個体の進化ではなく、道具(→中間機能)を発達させることで生存を確保してきました。その人類自体が、今度は、自ら獲得してきた高度な中間機能と一体化することで、自分自身を変容させ、進化させていくプロセスが始まる可能性があります。

 これが人類にとっての理想郷をもたらすものかどうかは、この21世紀前半から、私たち人類が科学技術の急激な発展にどう向き合うかによって規定されてくることになります。社会のさまざまな制度や仕組み、人々の意識や価値観、政治や行政など、人類社会全体が、こうした変化への急速な対応を迫られていくことになるでしょう。

私は、この潮流が人類に与えるインパクトは「第四の波」とも名付けられるものではないかと考えています。

それは、情報革命がもたらした「第三の波」の帰結として到来する人類社会の次のステージとして位置づけられるものです。つまり、

  1. 情報空間と実空間が一体化していく中で、人間(生体)と実空間(外界)との関わりが、中間機能を意識しない、より直接的な感覚を通じてなされるようになる。これはIoT、ビッグデータ、AI、3Dプリンターなどがネットでつながることでもたらされるとされる「第4次産業革命」とも連動するものである。(「道具を持たないヒト」へ。)

  2. 人間自身が高度な情報空間を組み込んだ中間機能と一体化することで、新たな進化を遂げる。(「道具と一体化したヒト」へ。)

    この「第四の波」は、これを、人間の生体と外界との関わり方の変化や、生体内部の高度化として捉えれば、「生体革命」と称することも可能かもしれません。

    次回、その2では、想像力を膨らませて、その具体的な姿の一端を素描してみます。

     

    詳細につきましては、松田学の新著「サイバーセキュリティと仮想通貨が日本を救う」(創藝社、720日発売)の第1章「科学技術の進歩とサイバーセキュリティ」を、ぜひ、お読みください。

     

    松田学のビデオレター、第89回は「朝鮮半島とAI開発で繰り広げられる米中の覇権争奪」

    チャンネル桜626日放映。

 こちら↓をご覧ください。

 

 

 


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多くの人々が想定しなかった事態が日本でまた起こりました。

この度の西日本での豪雨災害につきまして、犠牲者の方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された皆様にお見舞い申し上げます。

安倍総理は欧州・中東への訪問を中止し、「赤坂自民亭」の汚名を返上するためか、被災現場に自ら出かけるなど、この大災害に真剣に向き合う姿勢をアピールしています。しかし、現時点で総理大臣が行うべきことは、海外出張の取りやめでも、被災地の訪問でもないと思います。今回の外遊には、日本の外交上、総理自らが出かけて行くことに重要な意味がありましたし、被災地の現場はまだ、総理が来ても迷惑なだけの段階にありました。

大災害に際して総理大臣が自らできることは、実際には、報告を聞いて指示を出すこと。それなら政府専用機内でもできますし、今般、総理が本当にすべきことは、むしろ、テレビなどで国民に直接、語り掛け、メッセージを出すことでしょう。

あとは現場での対応がシステマティックに進められるだけの体制の構築を関係機関に徹底し、連絡調整の体制や指揮命令系統など、必要事項の確認さえできれば、日本の重大な国益のために外交に飛び立つほうが総理の立場として望ましかったかもしれません。

自民党の宴会騒ぎなど、これをあえて取り上げて騒ぎ立てること自体、何か日本社会は、大人の良識というものを失ってしまったのかと感じさせるものです。

そんな精神論より、もっと真剣に考えるべきこと、議論すべきことはたくさんあります。

今回の大災害災についていえば、当面、注意点として重要なのは、二次災害を如何に防ぐかです。被災地での衛生管理や環境整備に加え、周辺地域も含めた二重被災や被災地の拡大への対応も重要です。上流部での土砂ダムの決壊が原因とみられる洪水が広島で起こったように、河川上流部の調査を早急に実施し、定期的な観察を行う必要があります。

その上で役立つのがドローンですので、私は先頃就任した一般社団法人・ドローンシティ協会の理事長として、早速、ドローンボランティアの方々が地元で対応できるように依頼をいたしました。私たちからの要請を受けた関係自治体が、きちんとした危機管理能力を発揮できるかどうか…。

いつ起こるかわからない激甚災害といえば、地震だけではなく、実は、大水害は東京都民にとっても決して他人事ではありません。私の知人の防災専門家である仲西宏之氏(一般社団法人日本防災教育振興中央会代表理事)によれば、最近では気候変動の影響で海水温が変化し、東京湾の水温も何度か上昇しており、海水温の上昇は台風などを激しいものにしますが、例えば小笠原で「スーパー台風」が発生すれば、たった2日で東京に到達するそうです。

3日間に548ミリの降雨量となれば、荒川堤防は決壊します。これは平成12年の東海豪雨の雨量と同じだそうで、スーパー台風なら一気に降る雨量とされます。荒川堤防が決壊すれば、最大で2メートルの高さの洪水が、なんと1時間半から2時間の間に千代田区の東にまで押し寄せるそうです。これでは逃げられません。霞が関あたりまで地下鉄も地下街も水の下、復旧は相当困難で、首都機能は壊滅…。

水害の場合は地震と違って事前の予知が可能です。都心から20万人が移動するのにも3日を要するそうで、社員に会社に出勤するなと指令を出すことは事業者としての危機管理になります。しかし、有事においては、個々の民間人の決断を逡巡させる不明確な要素が極めて多く、条例など行政によるガイドラインの整備が強く求められています。

災害に対する脆弱性ということでいえば、残念なことに、世界で最も危険な都市ランキングでは東京と横浜が第一位。危険度で、第二位の米国西海岸を大きく引き離しています。東京や横浜に限らず、こうした「わが街」の状況や、地震や水害に見舞われたときに目前で何が起こり、どう行動すべきかをイメージできる住民がどれだけいるでしょうか。

災害では、発災の時にどう行動するかが生存の可否のほとんどを決めるそうです。しかし、日本は戦後、GHQのもとで防災教育をやめさせられたそうで、前記の仲西氏の提言もあって、ようやくこれが復活することになりましたが、では、学校で何を教えるのか。日本は先進国では最も自然災害のリスクが高い国であるにも関わらず、そもそも防災というものが十分な科学的な裏付けのあるシステムとして組み立てられていない、「命の値段が安い国」とも評される国のようです。

いざという時に、どこにどう逃げるか、かつて日本の各地域コミュニティでは先祖からの伝承が語り伝えられてきました。ここは土砂崩れで危ないから人は住んではいけない、という伝承も各地にあるそうですが、行政が詳細なデータを持っているにも関わらず、危険度の高い土地にも分譲住宅などが広がってきました。

一般に、どのような事態が起こるか予見不可能な状態は「不確実性」と呼ばれ、これは民間や市場メカニズムでは対応できず、政府だけがこれを軽減できると言われます。不確実性を極力、リスク管理の世界へと落とし込み、いったん有事が発生した際にはシステムとしてこれに向き合う。

日本人は現場での状況対応は得意なものの、システム的な発想や体系的な組み立てが苦手だとされます。この点で、防災は政府の対応に大きな穴が開いてきた分野ではないでしょうか。松田政策研究所は、危機管理、リスク管理の専門的な知見に基づいた省庁横断的な機能として「総合防災庁」の設立を提案してまいります。

国民の生命と財産を守るのが国家の最も基本的な機能と言われます。戦後は国家権力への過度なアレルギー、近年は「小さな政府」神話にとらわれてきた日本は、政府が本来果たすべき、政府しか果たせない役割を、果たせていない国なのではないか…。

 最近激しさを増す自然災害が起こるたびに、そんな思いが強まる一方です。

 


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すでに永久国債オペを含む「松田プラン」については、このブログでも何度も論じてきましたが、その出口は政府暗号通貨の発行であるということについて、特に仮想通貨という新しく出現した世界に馴染みの薄い方には分かりにくい点もあろうかと思います。さらに少し、深堀りをしてみたいと思います。

●アベノミクスの異次元緩和から政府暗号通貨へ、その道筋

まず、統合政府でみた財政再建効果については、アベノミクスの異次元金融緩和→日銀保有国債が320兆円規模で増大→これを含めた日銀保有国債450兆円については統合政府ベースでは債権と債務が相殺され、政府の民間に対する債務は消滅している状態に→すなわち、国債が日銀当座預金という日銀の負債勘定に変換されている→この負債は返済義務のない負債である→概ね900兆円にのぼる国債発行残高の半分が事実上、消滅していることになる、というものであることは、繰り返し述べてきました。下図の通りです。


この財政再建効果を確定するために、日銀保有国債について満期が来るたびに永久国債に乗り換える「永久国債オペ」を実施するわけですが、その最大の難点であり、現実に実施できない理由となっている壁は何かといえば、それは、このオペで拡大した日銀のバランスシートが、これでは永久に拡大したままとなってしまうことです。

現在、海外では、いわゆる「仮想通貨」(「暗号通貨」という呼び方が正しいのですが)を法定通貨として発行することを検討する国々が現われ(中国などもそうです)、その中にはデンマークのように政府による電子通貨の発行を検討している国も出てきました。

日本でも政府暗号通貨を発行することとすれば、民間からの政府暗号通貨に対する需要に応える形で、日銀保有の永久国債を政府暗号通貨で償還していけば、日銀のバランスシートが縮小していくとともに、民間では通貨の多様化による利便性の増大が起こります。


つまり、拡大した日銀のバランスシートの資産負債両建てでの縮小が、政府暗号通貨の発行・流通の拡大とともに起こります。このメカニズムについては、【試論・松田プラン】その8↓をご参照ください。

https://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-12382215128.html

●政府が通貨を発行することについて

現在はほとんどの国で、通貨を発行しているのは中央銀行ですが、元来、貨幣発行権は君主のみが持つ特権とされてきました。君主の特権といえば、モーツァルトのオペラ、フィガロの結婚が領主様の初夜権が題材となっていますが、通常なら禁断の、君主にしか許されない高権として位置づけられてきたのが貨幣発行権といえます。

ただ、この権限を濫用して国が貨幣を乱発したことが激しいインフレをもたらしたり、国家を衰退させてきた歴史的経験を踏まえ、ほとんどの資本主義国家では、通貨の発行は金融政策に預かる中央銀行に限定することで規律を確保するかたちをとっているものです。

多くの国では、政府管轄の印刷局(日本は国立印刷局)や印刷会社で製造した紙幣をいったん中央銀行に交付して、中央銀行が銀行券として流通させることが一般的です。ただし、現在でも一部の国では、政府機関が直接、紙幣を発行している事例があります。シンガポールの通貨であるシンガポールドルなどがそうです。

故・丹羽春喜氏(大阪学院大学名誉教授)は、政府の通貨発行権を「無体財産」と捉え、その一定額を日銀に売却することで、日銀はこれを資産としてバランスシートに計上し、同額を日銀にある政府口座に電子的に振り込むことで、政府は将来の財政負担(政府債務)にならない財政財源を自在に確保できるとしていました。しかし、これでは政府は何らの限定もなく通貨発行で財政支出を行うことができるようになりますから、経済の規律という点で現実的ではありません。実際には実現しないと思います。

ただ、政府に貨幣発行権があるのなら、本質的には、それは紙幣であっても硬貨であっても、あるいはカードに打ち込まれたポイントやブロックチェーン技術に基づいたインターネットで送金可能な電子通貨やクリプトキャッシュのような暗号記号列のかたちをとつたものであっても、物理的の形態の如何を問わず、政府にはこれらを貨幣として発行できると考えてもおかしくないはずです。

●政府紙幣の不幸な歴史

確かに、歴史を振り返ると、これまで政府が直接、通貨を発行するとロクなことがありませんでした。硬貨については、時の君主たちが金銀などの貴金属の割合を下げる「改鋳」によって「悪化が良貨を駆逐する」という言葉もあるように、通貨の信認の低下やインフレを招いてきた歴史があります。

ここで政府紙幣の歴史を辿ってみますと、日本でも江戸時代には「藩札」が乱発されたりしましたが、世界最初に政府紙幣を出したのは中国だとされています。

これは中国の四川で発行された交子(こうし)とよばれる紙幣で、当初は鉄貨の引換券として流通していましたが、やがて宋の政府が交子の発行を官業として国家が発行するようになり、これが政府紙幣の始まりです。


その後の元の時代には交鈔(こうしょう)が発行され、補助貨幣の面もあった交子とは異なり当初から通貨として流通しました。しかし、財政難により濫発されたことから、激しいインフレーションを招きました。元ののちの明でも、宝鈔(ほうしょう)が活発に発行されたが、インフレーションを免れなかったようです。

米国でも、独立戦争中の独立政府で、膨大な戦費をまかなう為に大陸紙幣 (Continental) と呼ばれる一種の政府紙幣が発行され、アメリカ合衆国建国後、地域紙幣として使用された実績があります。しかし、不換紙幣ということで濫発されたため価値が暴落し、信用のない通貨の代名詞になったようです。

その後、南北戦争時には戦費調達の必要性から1862年にリンカーン大統領によって、法貨条例(Legal Tender Act of 1862)が制定され、これに基づいて総額4.5億ドルのデマンド・ノート(Demand Note)が発行されています。これは米国の財務省が初めて発行した紙幣でしたが、リンカーン大統領の暗殺で発行が停止されたと言われています。

1933年にフランクリン・ルーズベルト大統領は、ニューディール政策の一環として政府紙幣の発行を決め、政策を成功に導いたと評価されており、1963年はケネディ大統領の大統領令によって政府紙幣が復活しましたが、その直後にケネディ大統領は暗殺されました。19711月以降は、米国では政府紙幣の新規発行は行われていないそうです。

日本では、明治の維新政府は、税制などの歳入システムが未整備のままスタートしたため、当初、政府支出の大部分は太政官札などの政府紙幣の発行によって賄われていました。当初は、デフレギャップが存在していたので、物価も上昇せず、経済も順調に拡大しましたが、1877年の西南戦争の戦費がかさみ、そのための政府紙幣が大量に発行されたことが原因でインフレが起こりました。農産物が高騰し、農村は潤ったものの、都会の生活者や恩給暮しの方々は困窮したようです。

そこで政府は、増税などによって政府紙幣の回収を始め、この結果、物価動向も落ち着きましたが、松方内閣(松方首相が大蔵大臣兼任)がさらに多くの政府紙幣の回収を行ったため、大幅に需要が減り、デフレになりました(松方デフレ)。

●法定暗号通貨は日銀ではなく、政府でなければならない理由

このように、政府が通貨を発行すると総じてロクなことがなかったのが歴史の教訓ですが、今回提案している政府暗号通貨は、これらとは全く異なる環境条件のもとで仕組まれるものです。

その前に、いま、暗号通貨を法定通貨として発行するということでは、中央銀行が発行する形をイメージする向きが多いようですが、これについては必ずしも賛成できない理由を述べておきたいと思います。

もし暗号通貨を「日銀コイン」として発行するなら、それは日本銀行券などと同じく日銀の負債になりますので、民間からの日銀コインとの交換要求は、同じく日銀の負債項目である日銀当座預金や日銀券発行残高の減少=日銀コインの増加ということになり、日銀の負債構成が変わるだけで、日銀の負債の総額は減りません。バランスシートの縮小も、日銀保有(永久)国債の減少にもつながらず、「出口」にはなりません。


暗号通貨の発行で多くの人々が懸念するのは、発行元が通貨使用者の個人情報を握ってしまう可能性があることですが、最悪なのは、人民元を暗号通貨で発行し、一帯一路での基軸通貨化を狙う中国の当局が日本人の情報を握ってしまうことです。だからこそ、私たちは日本円という法定通貨で信頼できる暗号通貨の発行を検討しなければならないのですが、この場合も、日本銀行と日本政府のいずれが個人情報を握る上でベターなのか、と言えば、すでに政府は、そういう意味で言えば、マイナンバー制度を運営しているわけですから、その管理運営にガチガチの制約が課されている政府のほうがまだマシといぅことになると思います。

法定暗号通貨を日銀コインとして仕組んだ場合、それは日銀の負債になるのに対し、政府暗号通貨として仕組めば、それを日銀が保有すれば、(永久)国債同様、それは日銀の資産になります。これを国債と等価交換し、市中銀行に売却すれば、国債を市中銀行に売却した時と同様、日銀の資産は減少し、同額の日銀当座預金の減少(市中銀行から日銀への支払)が起こり、日銀のバランスシートは縮小します。

●危機をチャンスに~いまの日本だからできる通貨のイノベーション~

これは民間の企業や個人が市中銀行の窓口に来て、政府暗号通貨を、自らの銀行預金口座から引き落としたり、現金と両替する形で購入しようとする際に起きる現象です。かつての政府通貨のように、政府が自らの意思で増発ができるものではありません。あくまで民間側の通貨多様化の要請に従う形で発行・流通量が増えていく性格のものです。

こうした民間側からの政府暗号通貨保有の要求に応えられるよう、銀行は支払い準備として日銀当座預金を、日銀は政府暗号通貨と交換する資産として(永久)国債を、それぞれ相当な規模で準備しておかねばなりません。もし、日銀当座預金がない状態で政府暗号通貨の購入要請が銀行に来た場合には、銀行は貸付など運用資産を引き揚げて政府暗号通貨を日銀から購入する財源を確保することを迫られ、信用収縮効果が経済に生じてしまいます。

その意味で、異次元緩和で国債と日銀当座預金を莫大な規模で積み上げて、政府暗号通貨をもっぱら民間の要請に従う形で発行するに必要な準備を用意してくれたアベノミクスは、政府暗号通貨を規律ある形で発行できるチャンスを創ってくれたと評価できるものです。現在、市中マネー(マネーストック)は、狭義で約700円、広義で約1,000兆円。その一部が政府暗号通貨に振り替わる額として、450兆円の国債資産や400兆円近い日銀当座預金は、準備としては十分な水準でしょう。

結局、以上の「松田プラン」のもとで、経済に中立的な形(市中マネーは増えない)で、①法定という価値に裏付けられた暗号通貨の流通(社会の利便性と安心)、②日銀の出口戦略の円滑化、③財政再建、が、同時達成されることになります。

日本が未曽有な財政悪化(国債累増)となったことも、日本経済が戦後未曽有のデフレになって、いつまでも未曽有な国債爆買いを続けても2%インフレ目標が達成できずに悩んでいることも、これを「危機」とは捉えず、「危機はチャンスなり」とチャンスに転じる。そして、世界に先駆けて未来社会の通貨インフラを整備し、様々な暗号通貨が行き交う中で通貨価値のアンカーとして法定の「政府暗号通貨」をもって暗号通貨のメッカとして日本は世界の中でのポジションを取っていく。松田プランは、今までの財政金融政策の行き詰まりや、財政破綻の懸念という危機を、未来を拓くチャンスに転じようとするものです。

 

松田学のビデオレター、第88回は「

 

 

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