鳥巣清典の時事コラム1566「マイナス金利で得する人、損する人」 | 絶対に受けたい授業「国家財政破綻」

鳥巣清典の時事コラム1566「マイナス金利で得する人、損する人」

 NHK『あさ イチ!』で、「マイナス金利の影響は」。

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マイナス金利で得する人、損する人とは?

柳澤秀夫(キャスター)
 金融機関が日銀におカネを預けるとこれまでは0・1パーセントの金利があった。ですが今回、これにプラスして一定の金額を超えて日銀におカネを預けると金利がマイナスになっちゃう(苦笑)。

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井ノ原快彦(キャスター)
 今まではそうじゃなかったんですね。
柳澤
 今までは金利があったから預ければそれだけ儲かった。これからは一定の金額を超えるとマイナスになっちゃうから、どうします? 民間の銀行は。
有働由美子(キャスター)
 「マイナス」ってどういう事ですか?
柳澤
 手数料がかかったりとか、預けたら損をするという事です。銀行にとってみると。そうすると銀行は手持ちのおカネを日銀に預けるのではなく、どうすると思います? 企業に貸し出したり、個人に貸して利息を取った方が良いという事になるじゃないですか。そうすると世の中におカネが出回りますから景気も好くなってインフレに行くんじゃないかというのが日銀の説明。


住宅ローンを組む人は諸手を挙げて{万々歳」?


柳澤
 さあ、ここでマイナス金利で得する人、損する人。なかなか断定はしにくいんですよ。ただ、ざっくり言うと得する人と損する人がどんな人か順番に見ていきたい。
 まず、これから住宅ローンを組みたい人。得すると思います? 損すると思います?
井ノ原
 この対策がうまくいってれば得するんじゃないかと思います。
柳澤
 つまり、住宅ローンを組むという事はおカネを借りる訳ですよね。金利全体が下がっている訳だから「ニコニコ」。ローン金利が下がるから、まんざら悪くない。ただし、諸手を挙げて金利が下がるから万々歳とはいかないところもあるので、このいマイナス金利の専門家を呼んでいます。今井解説委員です。
今井純子(解説委員)
 銀行の戦略にもよるのですが、おおむね住宅ローンの金利は下がるだろうとはみられます。



 ただ例えばすでにマイナス金利を導入しているヨーロッパの一部の国では、住宅ローンの金利が下がった結果、住宅バブルになって住宅の値段が上がってしまったというケースもあるんですね。そういうところも見ていかなければならない。また金利が安いからといって「今が借り時ですよ!」と言われて多額の借金を、しかも変動金利軟化でしてしまうと、長期的にみて金利がワッと上がったときに困るという事にもなりかねない。
 ですから、良い物件が見つかったときに身の丈で借りる。

借換には保証料や司法書士への報酬等を考慮


有働
 視聴者から。<すでに住宅ローンを借りています。警戒をすべきですか(30代)>。
柳澤
 これはどれだけ今、借金が残っているか。十分に合わせて考えないと借換を組むときにも色々おカネがかかりますよね。
今井
 保証料とか司法書士への報酬とか色んな費用がかかる。いま柳澤さんが言ったように、どのくらいの残額が残っているのか。どのくらいの期間が残っているのか。今借りている金利と新しく借りようとする金利の差がどのくらいなのか。そういうのを比較考慮して個別に検討していくことが大事。
柳澤
 いま確かにローン金利は下がっているかもしれませんが。将来的に上げる可能性だってある。そういう事も考え合せる必要がある。ヨーロッパでは実は、上がっているところもある。
井ノ原
 そういう例や注意点もちゃんと考慮して今回の政策が行われているのだったら良いなと思うんですけどね。

預貯金性の強い保険に入っている人は損?


柳澤
 次、生命保険に入りたい人。この人は、損か得か。
井ノ原
 どうなんですかね・・。
柳澤
 これは、「ちょっと渋い」。生命保険にみなさんおカネを払う。生命保険会社はそれで色々運用する。運用利回りは、全体的に利率が下がってきているから保険会社の運用実績が下がってくる。ただ、掛け捨てで終身保険という人よりもむしろ保険会社におカネを預けて預貯金性の強い、のちのちおカネが貰えるような人にとってみれば「渋い」事になる。
今井
 特に退職金などを一括して払って保険会社が運用するようなタイプのもの。亡くなってしまったときの死亡保険とか年金保険。こういったものは比較的早く保険料が上がる可能性があるといわれている。また月々で保険料を払っていくタイプの保険についても、このマイナス金利がしばらく続いていけばのちのち保険料が上がっていくといわれています。

定期預金を普通預金と同金利に下げる銀行も


柳澤
 最後に年金暮らしで預金が1000万円あるおばあちゃん。どうでしょう、これから・・。
井ノ原
 預金があるんですね。で年金を貰っている。
柳澤
 得なのか、損なのかーー「渋い」顔なんです。今すぐ年金が減るという事ではないんですが、年金も運用する部分もある。それになんせ、おばあちゃん1000万円を銀行に預けている訳ですよ。銀行の利率が下がるという事になると、いくつかの銀行では定期預金の金利を普通預金の金利と同じくらいにしてきている。
井ノ原
 定期にする意味がない。(ゲストからも「ひどい」の声)
柳澤
 そうなってしまうと、このおばあちゃんの渋い顔。年金についても、今は下がってないですけども、この先ーーこの保険と同じようにーー運用して利益を出そうとしているんですが全体の利率が下がってきている。この先、年金の受給開始年齢の時期が先にずれたりという事もなきにしもあらず。

銀行AТMの手数料がある日上がることも


今井
 もうひとつ気を付けなければいけないのは、銀行が運用で利益を挙げられないという事になると、今度は手数料などで利益を稼ごうとしてくる。例えばAТMでおカネを引き下ろすときとか。あるいは送金するとき、振り込みするとき。あるいは今優遇されている措置が縮小されたり。知らないうちに手数料が上がっていく事もあるのでちょっと目を・・。(スタジオ、やや騒然)
有働
 今、銀行って投資信託とかにすごく呼びかけたりしているじゃないですか。それも手数料が欲しいから?
今井
 一概には言えませんけども、金融機関が熱心に勧めてくる商品はその金融機関にとって手数料などの収入が良い、利益になる。
井ノ原
 「おカネを眠らせていては駄目だよ」と。
柳澤
 世の中におカネを出して景気を良くしようと言うんだけども。


おカネを使えーーでもこの先が不安で貯め込む心理


井ノ原
 おカネがうまく回って、みんなが得したら一番良いなとは思うんですけども。気を付けなくちゃいけない事が、いくつか出てくるというのは・・。
柳澤
 企業でもこのおカネを使おうと思っても、この先何だか不安だからずっと貯め込んでたり。銀行の方も本当に貸していいのかなどうなのかな・・と滞ってしまう。しかも特にこういう時期にお年寄りの方は、「銀行に預けていてもうま味ないよ、メリット無いよ」というところに目を付けて、いま流行の電話をかける。「銀行よりもここにおカネを持って行った方が良いですよ」という話が来たときにはちょっと注意ですね。
井ノ原
 いちばん良いのは、今のままーーという事ですかね。
柳澤
 一概には、そうは言えない。

色んな”正確な情報”を集める方法とは?


今井
 お年を召した方には、あまり投資は勧められない。若い方が長期的な観点でリスクをある程度分散させながら投資をしていくというのは1つの方法かもしれない。その時にも他人に言われたから申し込むという事ではなくて。自分で本当に勉強して、情報を・・(スタジオ内からは「その情報集めが大変」、「いろんな情報が必要になる」。そして「それも正確な情報じゃないとね」<柳澤氏>などの意見が続出)

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<お金の話を聞いて怖くなりました>(視聴者)


有働
 視聴者からもお問い合わせです。
今井
 変動金利というのは、いつワッと金利が上がるか分からない。ましてや10年後とか20年後金利がどのくらいの水準位にあるか本当に読めない。返済額を決めて安心していたいという方は固定金利で借りる。いま金利が低いので変動金利でという人も、ただ金利がいざワッと上がったときに返すおカネがあるかどうか。自分の状況に応じて考えていくことが大事。
有働
 「おカネの話を聞いて怖くなりました。勉強も出来ないし、損もしたくないのでタンス貯金ーーつまり自分で管理する。これで安心できるなら、これでも良いでしょうか」。
今井
 ただ誤解して頂きたくないのは、銀行に預けていて、そのおカネに手数料がかかるという訳ではない。ちょっとずつでも金利はある。
井ノ原
 下ろしたりするときに。
今井
 それは手数料を気にすれば大丈夫ですし。泥棒に入られる心配をいつも抱えながら生きていくよりも、銀行の経営が安定していれば問題ない。


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PS

 『あさ イチ!』ゲストの仏料理人が和風サバの味噌煮に挑戦。そのときの一言。
「ひとつひとつの論理がきちんと組み立てていられればーー料理(の創り方)は1つに決めつけないでーーあれもあるよね、これもあるよね、という事だと思います」