はじめに
今回の投稿は、No. 53の投稿の内容に少し関連があります。
ですが、今回はオノマトペではなく、俳句を使った英語の授業を考えてみます。
僕自身、俳句にはもともと興味があり、少し創作なんかもしているのですが(素人ですけどね!)、以前から俳句を英語教育に取り入れていければなあと考えていました。
そこで、実践されている方がいらっしゃるので、今回の投稿ではその方の論文を少し紹介し、自分が俳句を取り入れて授業をする方法を考えていきたいと思います!
俳句と英語教育
今回紹介する論文はこちらです。
Iida, A. (2010). Developing voice by composing haiku: A social-expressivist approach for teaching haiku writing in EFL contexts. English Teaching Forum, 48(1), 28-34.
短い論文ですが、俳句を使った英語教育についてわかりやすくまとめられているので、とてもおすすめです!
このなかで重要な文を引用しつつ、解説していきたいと思います。
studying and composing literature and poetry helps English learners develop their own voice and sense of audience, and to express important social ideas in the process (p. 28)
文学や詩を研究したり創作することは、英語学習者が彼らのvoiceや読み手への感性を高め、またその過程で重要な社会的考えを表現することを促進する
ちなみにこのvoiceとは、「個人的なニーズ、関心、考えを表明すること」とされています。
また、俳句を用いた授業では、学習者が内に秘めているものを表現させ、voiceと読み手への感性を高めるだけでなく、頻繁に使う単語や表現を身につけることにもつながります。なぜなら、短い俳句の文のなかでは語彙や表現のチョイスがとても大切だからです。
Haiku is a tool to construct and develop voice and ultimately define “who I am” (p. 30)
俳句は、voiceを構築したり発達させ、また究極的には「私が何者であるか」を定義する道具である。
これはまさに!僕がこのブログのテーマにしているidentityと重なっていますよね!
俳句は自分自身を発見するためのツールにもなるのです。
How L2 writers take social positioning in composing haiku is crucial because it greatly influences the way they construct voices and express themselves (p. 30)
第二言語の書き手が俳句を創作する際に、どのように社会的な立場を取るのかは重要である。なぜなら、それはvoiceを構築したり、彼ら自身を表現したりする方法に多大な影響を与えるからだ。
簡単にまとめるなら、俳句は自分自身を発見する「内向き」な側面に加えて、俳句を作り発信する以上「外向き(社会的)」な営みでもあるということです。identityも社会的に構築されるものですので、やはり俳句を創作することはidentity workといえそうです。
ここから先は僕の考えになりますが、英語の授業で俳句を扱うことは、translanguagingを促進できると考えています。
3つの理由を簡単にまとめると、
- 俳句が日本のものなので、必然的に日本語のレンズを通して世界を見ることになり、それを英語で表現することで、「内なる」translanguagingが起こるから
- 俳句には日本語のオノマトペなどを盛り込みやすく、translanguagingが発生するから
- 日本語を英語を織り交ぜたtranslanguagingを創造できる可能性があるから
といった感じでしょうか。
ここでは思いついたものを書いてみたのですが、まだまだ英語俳句とtranslanguagingの相性の良さはあるはずです。
もっと突き詰めていければと思います!
俳句を使った英語の授業の方法
Iida (2010) では、以下のようなステップが提案されています。
Step 1: 英語で俳句を読む
1-1: 俳句について知る
・それぞれの行の音節を数える
・季語を見つける
・切れ字があるかを考える
1-2: 俳句の解釈をする
・テーマは何か
・文脈は何か
・詩の中で何が起きているか
・書き手は何を伝えようとしているか
・あなたのその俳句の印象はどうか
ディスカッションなどを通じて、理解を深めていくと良いようですね。
英語俳句への理解を深めたら、いよいよ創作をはじめます!
Step 2: 俳句を創作する
2-1: 俳句のコンセプトを確認する
2-2: 俳句の種を探す(外に出向くのもあり)
・五感に訴えかけてくるものを意識する
2-3: 俳句を創作する
・ペアやグループで助け合う
・音節に合うように語彙を工夫する
2-4: 互いの俳句を読む
・二回読み上げる
・聞き手は印象などをメモする
・書き手は句の説明をする(フィードバックをもらう)
2-5: 別の句を作る
・忘れられない人生の思い出5選を書く
・どこにいて、どのように五感に訴えかけてきたかを書く
2-6: 俳句を出版する
1. World Haiku Association:
www.worldhaiku.net
2. The Haiku Society of America:
www.hsa-haiku.org
3. Asahi Haikuist Network:
www.asahi.com/english/haiku
4. The Mainichi Daily News–Haiku in English:
http://mdn.mainichi.jp/features/haiku
必ずしも全てのステップを網羅しなくてもいいかもしれませんが、非常に再現性の高い素晴らしいレッスンプランですよね!
放課後の特別授業なんかで実施できたら面白そうです!!
おわりに
俳句を使った英語の授業、面白そうですよね!
何より自由に英語で表現するというのが素敵ですし、日本文化との融合のところが英語教育として素敵な取り組みだと思います。
いつか実践報告ができるよう、しっかりと準備していきたいと思います!
参考文献
Iida, A. (2010). Developing voice by composing haiku: A social-expressivist approach for teaching haiku writing in EFL contexts. English Teaching Forum, 48(1), 28-34.