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「大軍師司馬懿之軍師連盟(全42話)」第六集冒頭から。
袁紹討伐に向かう曹操。道中で曹娥の碑を見かける。その裏には書家・蔡邕による八文字が刻まれていた。
* * * * *

「黄絹、幼婦、外孫、齏臼。蔡邕が題したこの字はどういう意味だろうな。皆は解るか?」
「僕は解りましたよ、この碑は…」
「おい、先に言うな。私にもちょっと考えさせろ。」
しばらく行軍を続けると雨がぱらついてきた。曹操は行軍を一時停止させる。
「どのぐらい(の距離)来たかな。」
「父上、三十里ほどです。」
「ここまでやって来る道中私はずっとあの八文字の意味を考えていたが、この雨水に打たれてひらめいたぞ。徳祖(*1)、言ってもいいぞ。」
「ええ。黄絹は色のついた糸、合わせれば絶という字ができます。幼婦とは幼い女、合わせれば妙という字になります。外孫は女(娘の意)の子ですから、合わせれば好という字に。この齏臼(*2)はどうでしょう、香辛料を受けるものですから、辞(*3)という字になります。この蔡邕が言わんとするのは"絶妙好辞(*4)"です。」
「楊公子はさすが聡明だ。」
「彼の知恵は私より三十里も早く出てきたぞ。」
「とんでもない。」
「三十里だ!(素晴らしい!)」
「言葉に隠された謎を探る、ちょっとしたお耳汚しのお遊びですよ、すごいなんてものではございません。」
「楊公子は隠語をたちまちのうちに解く、ならば勢局も解けるかな。」
「司空がおっしゃるのはこの袁紹との戦いのことですよね。」
「その通り。袁氏は河北に拠点を構えその勢力を地盤に複雑に根付かせている。我が軍二万と袁軍十万が相対するのは、公子は螳臂当車(*5)だと思わないかね。」
「司空のお言葉はちょっと違いますね。この戦の勝敗は兵の多さではなく、人の心が集まっているかです。」
「楊主簿、詳しく教えてくれ。」
「この袁紹という人は外目には寛大なようで実際は心が狭く自分の名声を挙げることに必死で、大任を任せるのは親族か綺麗ごとばかり並べたてる輩のみ。そして司空は真心をもって人に接し誠意をもって行動し(大見得を張ることなく)つましく兵を率いておりますから、皆司空のためなら死んでも構わないという忠実で正直な兵士が大変多く、勝敗はひと目でわかりましょうとも(*6)。」
「楊主簿の答えはさすがだ。ただ郭軍師を超えるほどではない。十勝十敗論(*7)の範疇だ。」
「宝石のような(優れた)郭軍師のおん前で、この修は班門弄斧(*8)でした。」
「いやいや。英雄を見立てれば同じになるのでしょう。」
「郭軍師と楊主簿がそう言うのなら、私は何の心配もないなぁ。」
「父上、今回はきっと天下の全ての英才が集ってるのです、(天下)統一の大業は成し遂げられますよ。」
「あの司馬懿のこわっぱが我が府中に入らなかったのに、どうして天下の英才を語れようか。どうやら私はまだ天下の人心を得てないのだなぁ。雨が沛を満たす、きっと今年の収穫は良いぞ。」

*1 楊修の字。
*2 「齏」は細かくすりつぶした香辛料の事
*3 「辤」は「辞」の旧字。
*4 辞は詩の形式の一つ。「絶妙好辞」は「大変素晴らしい詩だ!」という意味。
*5 カマキリが車に向かってカマを振り上げぶつかっていくさま→身の程知らずの意味。
*6 直訳:勝敗がどうしてひと目でわからないだろうか(反語)
*7 郭嘉が曹操に提じた激励文。曹操が10の事柄で袁紹に勝っているので当然戦も勝てると論じた。
*8 その道のプロの前で自慢気に能力をひけらかすこと。班氏という名大工の門前で得意げに斧を振るっている様子からの故事成語。


* * * * *

「有知無知三十里」と呼ばれるエピソード。この作品では郭嘉も意味を解っていたが曹操の顔を立てるためにわざと黙っていたことが芝居で示唆されている。楊修のギラギラとした野心を印象付けるためのシーン。


→インデックス
「大軍師司馬懿之軍師連盟(全42話)」第四集35分頃から。※ネタバレ注意!
司馬懿に依頼され楊修を罠に嵌めることで事件の真相を明かした荀彧だが、上司である曹操に嘘の報告をしたことになったため謝罪へ。曹操の前で荀彧は深々と頭を下げる。

* * * * *

「令君(*1)、言っただろう、君は私に対してそんな仰々しい挨拶をする必要はないと。」
「わたくしは罪を犯しました。」
「令君はこの事件をはっきりさせるのを手伝ってくれたのだ、何の罪があろうか。」
わたくしはすぐに楊修が司馬防を陥れようとしていると疑いましたが、何の証拠もありませんでしたし、想像に推測を重ねるのはよくありません。それで司空を騙して楊修の自供を誘いました。わたくしには主を騙した罪がございます。」
「令君。」
曹操は笑って荀彧の手を取り隣に座らせる。
「令君、君と私の間では、そんな他人行儀な挨拶をせんでよいのだ(*2)。私が令君に絶対的実権を与えたということは令君に絶対的な信頼を置いているのだ。一般の夫婦の間でもお互いにちょっとした秘密、ちょっとした思惑を隠し持っているものだ(*3)、だが大事に臨む際には苦楽を共にし肝胆相照らす(互いに心の内をすべてさらけ出す)。これは夫婦間だけのことではない、君と私の間もまたそうなのだよ。」
「司空がそのように(わたくしを)信任していただいているのに、(ご期待に添えず)お恥ずかしいばかりです(*4)。」
「令君、君がした事は充分すばらしい。私はもう追求せんし、私はもう司馬防一家を赦免したし、董承、王子服らの名誉を回復させ(*5)、さらに恩(褒美、補償)を加えるべきかと思っとるのだよ。これを天下に告知するための詔書はどう書くべきかを、令君は考えてくれたまえ。」
「司空・・・。」
荀彧は改めて跪き拝礼する。
「司空、司空の温情と威厳を併せるお沙汰に、多くの官吏民衆はひたすら感服し尊敬のまなざしを送り、罪人は(自分の愚かさを)恥じ入り悔やみ、罪のない者は感激し忠誠を誓います。司空の胸の内(お考え)はこの世に誰も及ぶ者のない、真の英雄にございます!」
「ハッハッハ…。令君。私の事を解ってくれる令君がいるから私は何の心配もない(*6)。令君、すぐに詔書を起草に行くがいい。ああ、司馬懿だが、令君はどう思う?」
「静かに流れる水のようで深い…わたくしはまだ彼(の心)を見透かせません。」
「静かに流れる水のようで深い者か、なら令君ともどこか似ておるなぁ。ハッハッハ…。」
「…司空のお話はよく分かりました、ではこれにて失礼いたします。」

*1 「令」は部署の長官で令君は長官どのというニュアンス。荀彧は尚書令(官房長官クラス)で曹操は司空(総理大臣クラス)。
*2 直訳:あなたと私の間では、他の人を騙しておくための決まりきった事を言うな。
*3 直訳:あたかも一般市民の夫婦の間で互いに小さな秘密、小さな思惑が無い者がいるだろうか(反語)
*4 慚愧は気恥ずかしい気持ちで、日本語よりは軽めのニュアンス。
*5 直訳では、さらし首にしていた董承、王子服らに足(胴体の意)をつけて威勢を取り戻させた、というような意味か。
*6 直訳:私を知る令君がいることは、どうしてまた悔やむことがあろうか(反語)



荀彧が去った後に衝立の裏から郭嘉が現れる。
「司空は本当に凄すぎて(*7)わたくし五体投地致します。わたくしは日頃から自分は優れておると思い他人に感服したことはございませんでしたのに、今日司空には感服致しました。」
「これまた巧言令色な。」
「本当の事です。袁紹が挙兵し劉備は裏切り逃亡し大戦がすぐにも始まろうというこの時、人を殺すのは容易いですが心を攻める(掌握する)のは難しい。」
「私はまもなく出征するが、許都の留守を護る大任は令君を除いて任せられる者はおらん。私は楊彪、司馬防、この二つの老廃物を解放し、盟書(*8)もまだ見つかっておらん。だが令君の信頼を得ることは、それだけの価値がある。
「司空が今回人心を得たのは、荀令君だけにとどまりましょうや。盟書に名を連ねた者の殆どは(調べれば)わかりますが、しかしこの頑固で道理の分からない老人どもは捨てておけばよろしい。司空にとって今そして将来に有用なのはこれからの時代の人材です。このように温情と威厳を併せ用いれば、司空は安心して出征できますし、許都には再び憂う事態など起こりません。」
「朝臣どもを今回みんな一度牢獄に入れて打ちのめしてやったが、しばらく平穏な日々が続いたなら、私は彼らを戻し受け入れよう。(ところで)楊修と司馬懿、奉孝(*9)は使えると思うか?」
「楊修はすでに良い(利用しやすい)道具になっておりますが、司馬懿はどうでしょうか…。」

*7 直訳:司空は本当に(素晴らしすぎて)私をくらくらさせる。
*8 衣帯詔と呼ばれる、反曹操を掲げるクーデターの連名書のこと。
*9 郭嘉の字。役職ではなく字で呼ぶのはビジネスでなくプライベートな印象で、荀彧にはあくまでビジネスとして接し郭嘉には仲間として話していることがわかる。


* * * * *

セリフだけでは分からないだろうな、この曹操の一瞬で天国から地獄へと殴り堕とす強力パンチ。かっこええ・・・。


→インデックス
「大軍師司馬懿之軍師連盟(全42話)」の主に前半の名場面の台詞解読です。
ネタバレを含むのでご注意ください。

#1 静流水深 ※ネタバレ注意!
#2 三十里
#3 仁義
#4 曹家兄弟 ※ネタバレ注意!
#5 形勢
#6 明公
#7 改変自己 ※ネタバレ注意!
#8 無半歩可退 ※ネタバレ注意!
#9 一決生死
#10 共飲 ※ネタバレ注意!
#11 三匹馬
#12 誇賛
#13 十五従軍征


大軍師司馬懿之軍師連盟(全42話)

※日本語版ありません。



長いものに巻かれろ



「大軍師司馬懿之軍師聯盟(全42話)」のあらすじ。
中国語版のざっくり解読なので間違ってるところもあるかもしれません。


[第四十二集(最終回)]
鄧艾は司馬府を訪れ曹洪が投獄されたことを春華に伝え、尚書台として必ず仲達を救ってみせると言う。そこへ柏氏がやってきて、自分の恨みを晴らすためのその行為で仲達が危機に瀕することになったと言い放つ。曹洪が処刑されれば曹一族と軍兵らが黙っていない、そして彼らを抑えられなくなった陛下はどうする?仲達を処刑して彼らの怒りを収めようとするだろう。それを聞いた鄧艾は真っ青になる。そこへ鍾会もやって来てとんでもないことをしてくれたと鄧艾を殴りつける。曹洪を助けなければ仲達も助からない…鄧艾はすぐに陛下に情状酌量に行くと去って行ったが、陛下の気質からいって命令を撤回するとは思えない。今の陛下の気持ちを変えられるとしたらただ一人、郭皇后だけだ。しかし春華も柏氏も今は気軽に会いに行ける身ではない。そこで夏侯徽を皇后の元へと遣る。

鄧艾は私情により曹洪を追い詰めたと申し出て情状酌量を願うが、曹丕はお前が言い出したことをなぜ撤回すると問う。曹洪を処刑すれば曹一族や将士の不満が爆発し仲達や新制度そのものが彼らの怒りの対象となると訴えるが、曹丕はお前は結局のところわたしの味方なのかそれとも仲達の味方なのかと突きつける…。

話を聞いた郭皇后は太后の元へ。太后は皇后が政事に口をはさむのは許されないと激怒しこんな皇后は廃すべきだとまで言い出す。そこへ騒ぎを聞いて曹丕がやってきた。太后は曹洪のおかげで先帝は何度助けられたことかと言い、何も死刑にせずとも爵位剥奪などで済ませればよいではないかと説く。曹丕はとうとう母の意を汲む形で情状酌量を受け入れた。
郭皇后を連れて戻った曹丕は、司馬懿を救うためにしたのだろうと問う。郭皇后は蒼白になり慌てて平伏する。だが曹丕は彼女を助け起こし、ありがとう助かった、と言うのだった。


曹丕の前に連れてこられた曹洪はひたすら畏れ入り平伏する。曹丕は郭照の皇后即位に伴う特赦として、曹洪をはじめ投獄されているすべての者の罪を赦しあるいは減刑すると言い渡した。曹洪の爵位を剥奪し、そして司馬懿も官位剥奪し郷里へ帰らせろと命じる。ところが曹真が反対する。司馬懿が罰せられたら曹一族の怒りが解けてしまう…。曹丕はもちろんそれが狙いだった。死罪であった曹洪が爵位剥奪されるのだから同様に死罪であった司馬懿も官位剥奪されるのは当然であろうと言う。

仕事場から荷物を引き上げる仲達はようやく平穏な日々を送れるとむしろ晴れ晴れしていた。陳群に新制度による富国強兵をあと三年は続け、若者たちをよく導いていってくれと頼む。鄧艾や鍾会ら尚書台の部下らは皆引き留めようとするが、仲達は彼らに常に"利害"と"形勢"を読み、国のために新制度を遂行していくようにと託して去って行った。

司馬府ではもう荷物もあらかたまとめ終わっていた。仲達は春華と共に夕食を摂る。昔拾った子亀はすっかり大きくなりすぐに碗から這い出てしまうようになった。思えばあの脚を折った日から随分経ち、絶対仕官はしないと考えていた自分が帝の傍らで政事をとるようになっていた。この亀と一緒に遙か洛陽まで這って来たが、また共に郷里へ帰るのだ。
彼女はどうするの?春華に訊かれた仲達は、全てお前のいいようにしなさいと答える。春華はご飯を食べ終わったら彼女に荷物をまとめるよう言いに行きなさいと言うのだった。


西の離れへ赴いた仲達は、柏氏に共に郷里へ行こうと言う。彼女が陛下のスパイであるがゆえに常に警戒してきたが、官職を退いたこれからは見張られる心配もなく腹を割ってつきあえる。しかし柏氏は共には行けないと答える。もし侯嬴が信陵君について行っていたら彼がその後の偉業を成し得たかどうかわからない。そして私はあなたがまた朝廷に戻って来ると信じている、その日のために私はここに残ります、と。この世はいつでも、どう転ぶかわからない。人の生死も紙一重…そう言う仲達に柏氏は初めて仲達を見た時の事をよく覚えていると言う。志に溢れた眼差しのその男は人生かけてその大きな仕事をやり遂げるだろう。私をあなたの手駒として使ってください、それだけが私があなたのためにお役に立てること…。

仲達は部屋へ戻ろうとするが、なぜか春華は部屋に鍵をかけて仲達を締め出し寝てしまった。どういうことだ?しばらく待ってみるが春華は灯も消してしまった。
仲達は仕方なしに西の離れへ戻り、柏氏に妻から締め出されたと告げる。柏氏は春華の気づかいだと悟る。柏氏は部屋に入れてもいいけどひとつだけ答えてほしいと言う。あの日、陛下の避暑地で会った時に私のことを魅力的だと思ったの思わなかったの?
仲達は妻との二十年来にわたる心の繋がりは一時の色香に惑わされるものではなかったと言い、しかし今は柏氏とも共に暮らし心の繋がりがあると感じていると答える。柏氏は仲達に抱き着き仲達もしっかりと抱きしめる。


曹丕は叡公子を連れ狩りに来ていた。曹丕は一頭の鹿を見事射止める。その鹿の側に仔鹿がいる。あいつを狙え、曹丕は叡公子に矢を射るよう指示するが、叡公子は母を殺された仔鹿を殺すのは不憫でならないと弓を投げ捨てた。

郷里へ戻った仲達はすっかり荒れ果てた農地を耕し始める。司馬師も司馬昭も、どうせ父は新制度のことが気になって仕方ないはずだ、途中で投げ出すはずがないからなと呆れながらも手伝うのだった。

都ではまたいつものように朝議が開かれる。そこに司馬懿の姿はない。(終)


→インデックス

* * * * *

総括。

おもしろかった、すごくよくできた連続ドラマだった!
何といっても脚本が良い。歴史ものなのであまり大きな改変ができないのに見事にサスペンスミステリに仕立てあげた巧妙さ!そしてこの脚本をわかりやすく(特に若年層向けに)味付けする演出、その演出をばっちり演じ切る俳優陣!
脚本、演出、お芝居が見事に揃った傑作というべき。

これは"三国志もの"ではなく、三国時代の魏国を舞台にした政治陰謀劇。一国の王位継承権を争うよくあるといえばよくある物語。巧妙だと思ったのは物語を推しつつキャラクターものとしても印象付ける演出…現代的なお芝居やコメディ風の逸話を細かにはさんで、漫画のキャラクターのような愛着を持たせることに成功してる所。主人公の司馬仲達は賢さより人柄の良さを前面に出していて、紳士で魅力的ですごくモテそう(若干おっさん臭いけどw)。影の主人公・曹子桓は卑屈で将来を諦めきってる青年という現代の若者が一番感情移入しやすいキャラで、これは彼の成長を描いた物語。絵にかいたようなライバル・楊修は憎らしいんだけどとにかく賢くてそつのないエリートで何度でも復活するボス級の強さが特に男性にウケそうだし(なかなかのイケメンなので女性にもウケそうだし)、そしてなんといっても曹操!最初からラスボスのごとく君臨する彼があまりに強大すぎて、そもそもこれ倒せない神なんじゃねと絶望してしまう超人っぷり。しかしその神にも人間らしいところがあったり、どんな絶望級のラスボスも勇者一人ではなく多くの仲間の協力によって立ち向かえるという、この作品のタイトルにもからむテーマを作りあげている。
主人公の仲達ははじめは己の力を過信して正しさを追求しようとするが荀令君から人々と協力することを教えられ、国は民衆の手によって動かされることを学ぶ。「正しさ」が政治を動かすのではなく「勢力」つまり国民が動かす、国民を納得させられなければ政治は動かない、ゆえに政治を動かそうと思う者は国民を動かすことから考えなければならない。当たり前そうで気づかない政治の仕組みを説く教材的なテーマがとても好印象。平たく言えば、より多くの人々と「協力」することの大切さを説いてる作品。

ミステリ仕立てなのでセリフと心情が合致しない(嘘をついている)事が多く、視聴者はその表情で真意を推測するため俳優の演技力が試される。でも本当にお芝居の巧い人ばかりが集ってるし、重要な手がかりが映る時はスローモーションにするなど印象付けて、それでも分かりにくいと思われるタネ明かし部分は複数の人物によって繰り返し言わせてるし、特にミステリ好きでない人にもわかりやすい親切設計。ただセリフ量が多いのと歴史にからめた表現が多いので、日本語版に翻訳する時は「含みのあるセリフ」が無くなり全て直接的なセリフに変更されるおそれも。そうなると陰謀劇としては面白さ半減するからもったいないなぁ。

司馬仲達役・ウー・ショウボー(呉秀波)はちょっと本人の味が前に出過ぎで苦笑してしまうけど、演技の幅が広くて素晴らしい。コメディは上手いしシリアスでも周りを圧倒する迫力。
曹子桓は一番裏腹なセリフが多く沈黙で語るシーンが多い最も難しい役どころ。それをジェリー・リー(李晨)は見事に描き上げた。しかも卑屈で素直じゃなくてかわいくないキャラなのにちっともそうは思わせないクールな格好良さを保ったままっていうのが凄い。ただのイケメンじゃ無ぇ…。
曹操役のユィ・ホーウェイ(于和偉)は別の有名な三国志ドラマでは劉備を演ってたらしい。いやでもこれ見たら劉備は到底考えられないんだけど。この人のポーカーフェイスな笑いの恐ろしさ!この作品はこの曹操だからこその面白さだったな!
楊修、荀令君、崔尚書、鄧艾、郭嘉、子丹、子建、献帝…みんなそれぞれ個性的で味があって印象に残るお芝居。
女性陣も皆個性的で可愛い子が多くて、でも可愛いだけじゃなくきちんとお芝居できて。というか演技力に応じて配役したんだろうと思う。見るからに若さが売りのタン・イーシン(唐藝昕)は単純思考キャラの郭照に、含みのある芝居のできるチャン・ジーシー(張芷溪)には甄宓を、と。「ミーユエ」でおしとやかなお姫様を演ってたリウ・タオ(劉涛)が破天荒な女剣侠でしかも似合ってたのが驚き!
唯一ミスキャストだと思ったのはチャン・チュンニン(張釣甯)。この子は清純派すぎてミステリアスなキャラである柏灵筠を演るのは無謀だった…こういう子は正統派主人公か悲劇のお姫様しかできないと思う。本当唯一の残念ポイント。

続編は「虎嘯龍吟」というタイトルで現在放送中らしい。今度は諸葛孔明がライバルとして出て来るということで、三国志ファン待望の内容になってるかもしれない…?



長いものに巻かれろ
「大軍師司馬懿之軍師聯盟(全42話)」のあらすじ。
中国語版のざっくり解読なので間違ってるところもあるかもしれません。

[第四十集]
鄄城の監視役からの報告書には曹植が反逆を図っているとあった。しかも叡公子が実は曹植の子だと。曹真は曹植のこのような戯言や振る舞いを許してはおけないと曹丕を焚き付け、曹植を都へ呼び調査し罪を問うべきだと進言する。

灌均が曹丕に謀叛だのあることないことを報告していたと知った曹植は都へやってくると実姉の清河公主に助けを求めた。なんとかして母上に会わせてもらえないか…。しかし先に曹丕がやってきた。曹植は灌均の報告はでたらめで冤罪だと訴えるがやはり曹丕の心を動かすことはできなかった。諦めて連行されていく。
清河公主は母に救済を頼めないかと夫の夏侯楙に頼むが、後宮は政事に関与してはならない定め、太后でも無理だろう。今曹植を救えるとしたらただ一人・・・。

曹真は帰還してみれば朝廷はすっかり司馬懿の勢力に押され新制度が進められている。夏侯家が司馬家と縁を結んだためにやはりおおっぴらに反対できないからだと曹洪は言い訳する。曹植の事で甄氏が失脚し叡公子が太子候補から外れれば、我々は礼公子を推して太子の位につけよう。そして司馬懿らの勢力を排除するのだ。

夜更けに何者かの気配を感じた春華は飛び起きる。部屋の外の怪しい人影が、清河公主からの伝言で曹植が帰京しすぐに逮捕されたと言って去って行った。なぜ仲達にそんなことを伝えにくるのか…。
仲達は曹植の処遇は自分にも関わって来ると言う。純粋で駆け引きを知らない甄氏は子建を助けてくれと陛下に頼むかもしれない、そうすれば陛下の事だ、激怒してその怒りは叡公子にも及ぶやもしれぬ。そうなれば叡公子の太子の位は危うくなる…。

甄氏の元に叡公子が涙を湛えてやってきた。陛下から宮殿へ出入りするなと言われた、自分は陛下の子ではなく子建叔父さんの子だと…母上、ほんとうなのですか!?
甄氏はその言葉に驚愕する。あなたは間違いなく陛下の子、そのような妄言に惑わされてはいけないと甄氏は息子を抱きしめる。

仲達は曹丕に面会を申し入れるが曹丕は家の事に口出しするなと会うことを拒む。
甄氏はやはり曹丕に子建は無罪で釈放してほしいと願い出た。お前は昔から、昔から延々と子建を助けてくれとそればかりわたしに言う、まだ足りないのか、曹丕は怒りを抑えながら問う。甄氏は兄弟が争う姿は亡き先帝さまも見たくはないはずだと訴えるが、曹丕は先帝の事は口に出すなと激怒する。先帝は唯一過ちを犯した、それはお前をわたしに嫁がせたことだ!それが全ての元凶、わたしが子建を憎む元凶だ!
甄氏は涙を浮かべ、叡公子を自分の子と認めないことはこの十数年間の夫婦関係に一時たりとも愛情は通わなかったという事になると告げる。そしてそうではないことを私が死をもって証明すると。曹丕は後で薬を送らせると答える。
甄氏は拝礼して立ち上がる「曹子桓、もし来世があるなら…私はあなたには会いたくないわ。」そう言って甄氏は部屋を出ていく。最後まで手に入れることのできなかった彼女の心…曹丕は引き留める言葉を発することはできなかった。

曹丕が甄氏に毒杯を送ったと侍従長から聞かされた仲達は甄氏の元へ連れて行ってくれるよう頼む。叡公子の目の前で甄氏が死ぬようなことがあれば、公子は親不孝者だとの誹りを受け、太子の位は受けられなくなる!
仲達は侍従長に案内され後宮を走る。(※後宮は皇族以外の男子は立ち入ってはならないので違反行為である。)やっとたどり着いた甄氏の部屋、その入口で毒酒の杯を持った侍従が出ていくのとすれ違った。甄氏は既に毒酒を飲んだ後だった。すぐに部屋に入るが甄氏は口から血を流している。後から駆けこんできた叡公子を仲達と侍従長が引き留め無理矢理部屋から連れ出した。
仲達は暴れる叡公子を背負って郭照の元へ向かう。泣きじゃくる叡公子に郭照を母上と呼べと怒鳴る。彼女だけがお前の命を救うことができるのだ、このままでは甄氏の死が無駄になる!早く跪いて母上と呼べ!
叡公子は泣きじゃくりながら母上と言い、郭照は公子を抱きしめる。そこへ陛下がやって来たとの報せ。曹丕は法に背いて勝手なことをした仲達と侍従長を連行させる。そして叡公子は追放するとの聖旨を出したと告げるが郭照は既に叡公子を自分の養子にしたと訴える。なぜこの子を選ぶ、なぜ彼女の子を養子に選ぶのだ…曹丕は怒りに震えながらも聖旨を撤回させる。郭照は当然仲達から頼まれたのだろう、司馬仲達め、やはりわたしの世継ぎのことにまで干渉する気か…。

曹丕の前に仲達はひれ伏す。罪を犯したのは重々承知、死をも覚悟しておりますと言う仲達に、わたしがお前を罰することはないとでも思っているのだろうと曹丕は突きつける。仲達は死を覚悟していると繰り返し、国家は長子が守っていくのが世の道で私情によって長子を太子に立てぬは死んでも諌めねばならない、それが自分の役目だと答える。曹丕は憤慨して書を投げつける。お前はいつもそうやって平伏して媚びへつらってるように見えて、その実わたしの人生を操って来たのだ!お前には政事をすべて自由に任せてきた、だがわたしの家のことにまで手を出すのか?将来お前はわたしの太子をも自在にしたいのか?!
仲達は曹丕の目をじっと見て、今までもこれからも未来永劫、私は陛下に忠誠を捧げていると告げる。

[第四十一集]
陛下は先帝さまが成し得なかった数々の偉業を達成してこられた、こうして栄えた魏国を見ることができて私は幸せです、もはや悔いはございません…仲達は首を垂れる。
曹丕は打ち震えながら仲達を大理寺の死牢へ入れろと命じた。
司馬懿を友人として扱うな、彼は臣下だ…王とは孤独なもの…父の言葉が蘇る。しかし彼は幾度も、今までずっと自分を助けてくれた…信じればよかったのか…?葛藤が彼を苦しめる。咳き込んだその痰には血が混じっていた。

帰ってこない夫を心配する春華。様子を探りに行った柏氏が帰って来た。仲達はどうやら甄氏の事で曹丕の怒りを買い投獄されたようだ。
柏氏は鍾会と鄧艾を呼び、仲達がいなければ曹一族の勢いを抑えることができなくなると訴えるよう頼む。

曹植は激しい拷問を受けてもなお罪を認めなかった。曹植の牢の前に現れた曹丕はこれが罪を認める最後のチャンスだと告げる。曹植はゆっくりと立ち上がって歩み寄り詩を詠む「豆を煮て汁物を作る、窯の下の薪はめらめら燃える。鍋の中の豆は泣いている、元々同じ大地に根を生やしていた者同士なのに、なぜにそんなにひどく私を熱し焙るのだ…。」
曹丕は牢を開け、曹植に甄氏の枕を手渡した。枕の中には曹植の作った詩がしまい込まれていた。甄氏が死んだと聞いて曹植はその場に泣き崩れる。

曹真らは甄氏も司馬懿もいなくなってこれで太子の選定は自分たちの思うがままだと祝杯を挙げる。ただ一人夏侯尚だけは浮かない顔。曹真は娘婿に肩入れするのかと揶揄するが、夏侯尚は陛下が本当に司馬懿を処刑するだろうかと疑問を投げかける。

陳群と鐘繇は司馬懿なくして新制度を推し進めることはできないと情状酌量を願い出る。曹丕は今まで苦い汁を飲まされてきた曹一族がこの機を逃すはずがなく、彼らの不満を解消させるという意味でも仕方ないと言う。鐘繇は司馬懿を殺せば曹一族は増長し抑えられなくなるやもしれないと提言する。しかし彼は自ら死んでもかまわないと罪を犯したのだ、酌量する必要があろうか、そう言われて鐘繇も黙り込む。
しかし新制度のためには司馬懿を失うことは大きな痛手になることは曹丕も重々承知しているのだった。

曹丕は郭照を皇后に封じると発表、併せて彼女の養子である叡公子を平原王に封じる。曹一族の一人の朝臣が、郭照は生まれが卑しく皇后には相応しくないと言うと、曹丕は激怒し皇后を侮辱した罪で連行させた。まったく反対の余地はない…曹真は押し黙るしかなかった。

牢の仲達の元に鍾会がやってくる。陛下から伝言があるというのだ。一つ目は、郭照を皇后に封じ、叡公子を育てていくよう命じたということ。二つ目は、劉備が関羽の仇討を掲げて大軍を率い呉国へ出発したということ。しかし伝言だけで特に命令はない。
朝臣らの間ではこの機に乗じて呉国へ攻め込むべきという意見もあるらしい。しかし仲達は反対する。蜀と魏ではさみうちにすれば呉を攻め落とすのは容易いのではと鍾会は問うが、仲達は言う、今呉を亡ぼせば蜀は東呉を手にするだろう、蜀にはあの諸葛孔明がいる。魏に近い東呉が奴の手に渡れば必ず将来憂いの種となる。呉と蜀が争っている間に我が魏は地道に富国強兵に努めるのだ。鍾会は納得する。

曹洪はせっかく呉を攻めるチャンスだというのに自分の精鋭も動かさず屯田を続けさせることに腹を立て、全ては屯田令の鄧艾のせいだと八つ当たりし彼の仕事場へと乗り込む。鄧艾が法に沿って仕事を行っているだけだと言うと曹洪は法なんぞくそくらえだと吐く。そして鄧艾に向かってあらゆる不満を口にし罵倒するが、鄧艾はただ黙って彼の怒鳴るに任せる。左右の書記官がその言葉をしっかり書き留めていく。自分の言葉が記録にとられ、そしてその言葉は陛下の政策を真っ向から否定するものであると気づいた曹洪は嵌められたと激高し暴れるが大勢の衛兵によって抑えられ、ついに連行されて行った。
これは子夜の仇討ちの一端に過ぎない…鄧艾はその後姿を睨みつけるのだった。

鄧艾は曹丕に記録を提出する。曹丕は憤慨し死罪だと厳しく言い放つ。
曹真の元へ夏侯尚があわててやって来て、曹洪が死刑を言い渡されたと伝える。だが曹真は驚きもしなかった。情状酌量を訴えに行っても曹丕は逆に怒るだけだ、曹洪は救えない、諦めろ。その代わり我々が叔父の仇を討つのだ、そう言って曹真は剣を手にする。曹洪は将軍として将士らの尊敬を一身に集める、彼を殺せば麾下の兵士らの心は乱れる。それを収めるためには人の首が必要だ、かつての楊修のように。そして今回鄧艾と司馬懿がその首となるのだ。


[A] 司馬懿(仲達)
御史中丞、侍中。新制度を推進する二大柱の一人。
[B] 曹丕(子桓)
魏皇帝。その育った境遇からとても疑り深い性質。
[C] 曹植(子建)
平原侯。曹丕の弟。後継争いに敗北し地方でひっそり暮らしていた。かつて甄氏に想いを寄せていた。
[D] 甄宓
皇帝の正室。かつて曹植に心寄せていたことから曹丕からは冷遇されている。叡公子の母。
[E] 郭照
皇帝の側室。爵位は貴嬪。仲達の妻・張春華と義姉妹の契りを交わしている。
[F] 曹真(子丹)
鎮西将軍。曹丕の従兄弟。仲達とは昔からうまが合わない。
[G] 曹洪(子廉)
驃騎将軍。曹丕の叔父。短気で荒っぽい性質。
[H] 柏霊筠
皇帝の命で仲達を監視するため妾となった美女。だがその行動目的は皇帝のためではなく仲達のためとなってきている…。
[I] 鍾会(士季)
秘書郎。廷尉・鐘繇の息子。仲達を策士として尊敬している。
[J] 鄧艾(士載)
屯田令。新制度の屯田策は彼の発案。鍾会の同期で互いに尊敬しあう仲。


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