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妄想最終処分場

好きなジャンルの二次創作ブログです。
現在はス/キ/ビメインです。
ちょいちょい過去活動ジャンルも投入予定。

*出版者様、作者様とは一切関係ございません。
*禁:無断転載、二次加工、二次利用

ぼの様のリクエスト作品になります。蓮さんがかなり性格違います。スマートで紳士な蓮さんがお好きな方はご注意ください。


これまでの話

真夏の海のA・B・C…D                   10  11  12  13  14  15




真夏の海のA・B・C…D -16-



(大体、あの顔であんなこと言いってくるの、反則よね…)


連日、仕事で休憩時間が確保できなくなった時意外は常に同じ時間に店に現れ、耳にする周囲の人間が砂糖という名の砂を吐くほどにキョーコを口説いて仕事に戻る蓮。

繰り返される日常に慣れるしかないキョーコは、何時しか返事は保留のまま蓮が会いに来ることの抵抗も迷惑も日々薄れていっていた。


(そこいらのお嬢さんなら、あの顔であんな事言われればイチコロよね。良かった、変な耐性ができてて)


思えばそこそこ目は肥えていたのかもしれない。

昔王子様と信じていた幼馴染も、蓮とはタイプが違うが美形と周囲からもてはやされる容姿をしていた。キョーコを意のままに操るために、その綺麗な顔で微笑んで些細な褒め言葉を吐いていたのだ。

それを愚かしい過去として認識し、美形の甘言ほど裏に何かがあると無意識にも用心する。

幼馴染と違い万人受けするタイプの明らかに格上の美形に分類される蓮であっても…いやそう言う容姿の人間だからこそさらにキョーコは端から信用できるはずがないと思い込んでいたのかもしれない。

蓮は飽きもせずキョーコに独占欲まがいな愛の言葉や赤面ものの賛辞を贈り続けている。キョーコはキョーコで照れ隠しのように叱りつけたりしていたのだが、ほどなくある程度スルーするというスキルを身につけていっている。

蓮の気持ちを疑うことはなくなったが、はたして受け入れたいのか否かはまだキョーコの中に回答はない。


「最上さん、今日も可愛いね」

「はいはい」

「本当の事なんだけど…」

「毎日聞かされてれば慣れもします。どうもありがとうございます」


来店一番、いつものセリフにキョーコは呆れ顔であしらう。その様子に蓮は肩をすくめてカウンターの席に座るのだ。


「ねぇ、最上さん。いつになったら俺にキスしてくれる?」

「……質問の意味が分かりません」


もうキョーコが蓮の注文を取ることはなくなった。アイスコーヒーをサーブすれば、蓮は当然のようにそれを受け取ってそこから人気のまばらな時間の店内でキョーコとの時間を楽しむ。


「敦賀さんは女の子を口説く時に常にそうやってキスを迫るんですか」

「女の子を口説くって…君だけだよ?この唇で触れたいのは」

「…………キス魔」

「君に限って言うならそうかもね?」


告白をしてからの蓮は、何故だかキョーコの唇を狙う発言が多い。

以前そのことを追求したら、もちろんそれ以上だってしたいに決まってるけど最初はキスからだろう?なんて真顔で返されキョーコは返事に窮したのだ。そして、まだ冗談のようにあしらえている時の方がマシだとキョーコは気づくことになる。

あの時の告白のように真っ直ぐキョーコを射抜いて語りかけてくる蓮からはどうにも逃げられず、嫌でも蓮が男性で自分に求愛してきていることを目の当たりにしてしまうから。その目で見られると心臓がどきどきと早鐘を打ちどうにもならない居心地の悪さが押し寄せてくるのだ。


「告白の返事、要らないって言ったのは敦賀さんの方じゃないですか」


困ったように眉を下げて、キョーコが呟く。


「今は…ね」

「じゃあ、いつならいいんです?」

「君が俺を好きになってくれたら」


蓮の言い分に、キョーコはため息をついた。その理屈じゃキョーコが蓮を好きにならない限りこの状態はずっと続くということではないか。


「……私に断る権利はないんですか」

「少なくとも、俺の事嫌ってはないだろう?」

「………」


確かに蓮のことは当初の遊び人という思い込みもありちょっかいを出される度に迷惑していたが、色々と蓮を知る中で『嫌い』ではないのは分かっている。

その通りなのだが、答えるのが癪でキョーコは沈黙する。


「嫌いじゃないなら試に付き合ってみるっていうのも選択肢だと思うけど、最上さんはそういうことできないしね」

「当たり前じゃ無いですか!そんなの相手に失礼です」

「…俺は失礼には感じないけど?」


敦賀さんのことを言ってるんじゃありません!とむくれるキョーコに蓮はそんなに真面目じゃなくてもいいのに…とため息交じりに微笑んだ。


「そんな風に真面目なところも、好きだからね」

「……っ!」


さらりと落とされた蓮の不意打ちに、キョーコはかーっと顔が熱くなるのを感じた。そんな表情を蓮に見られればさらに恥ずかしくなるような甘言を聞かされると予感したキョーコはさっと厨房に逃げ込んだ。


恥ずかしがって逃げてしまったキョーコの背中をクスクスと笑って見ていた蓮はアイスコーヒーのグラスに口をつける。

出会ったその瞬間に一目惚れだったが、その直感は正しかった。

アプローチを重ねる中で増えてゆくキョーコの知らない一面は、どれをとっても蓮の愛おしさを増幅しキョーコしかいないという本能的な直感が正しいことを強化していってくれた。

自分の中にある想いと同じものをキョーコが持ってくれたらどんなに幸せか…そんな思考に浸っていれば、トンと何かが置かれた音に蓮は現実に引き戻された。


「……そんなに気を使わなくてもいいんだよ?」

「私がお節介しなければ、敦賀さんは霞でも食べてるんでしょうね」


蓮の前に置かれたのは小ぶりなおにぎりと控えめな量の小鉢に入ったお惣菜だった。

大盛りカレー事件以降、キョーコは律義にも助けてもらったお礼として蓮に軽食を提供していた。社からの情報もあり、蓮のぞんざいな食生活と驚くべき小食に、だるまに出入りするならその時だけでも少しは体にいいものをとはじめたのだ。

蓮に至っては当初キャパオーバーの大盛カレーを食べただけあって、キョーコから提供されるそれらを食べないなんて言う選択肢は持たない。蓮の食事量もすぐに把握したキョーコは、蓮にちょうどいい量で少しでもバランスのよいものをとその日のメニューの中から選んでいた。


「メニュー外でもお店の品物だろう?用意してくれたものはちゃんと代金を支払うよ」

「金銭面を気にするなら、敦賀さんがお店に来ないっていう選択肢もありますよ?」


ちゃんと手を合わせて、いただきますと言ってから出された食事に手を付ける蓮に食事に関心が無くても礼儀はちゃんとしてるんだなぁと思いつつキョーコは軽口で返す。


「……ありがたく頂きます」


そんな選択は出来やしない蓮は、参ったなと笑って頭を下げる。そんな蓮の様子にさっきの不意打ちの溜飲が下がったキョーコはにこやかに笑っていた。


「私もあのカレーだけじゃお礼として物足りないって思ってましたし。敦賀さんが食べる量なんて大した量じゃないですし、それに…」


(……あ……)


キョーコは何の気なしに自分が口にしようとした次の言葉に気づいてしまい、目を見開いて静止した。


「………」

「それに?」


不自然に止まったキョーコに、蓮が訝しげな顔をして覗き込んでくる。

蓮に先を促されたキョーコはほんの少しためらった後、その言葉を口にした。




「………ずっとじゃないですから。このお店で会うのは」


ぼの様のリクエスト作品になります。蓮さんがかなり性格違います。スマートで紳士な蓮さんがお好きな方はご注意ください。

停滞してしまってスイマセン~。順調に言再開がお約束できませんが、終わりに向かって頑張りたいと思います!


これまでの話

真夏の海のA・B・C…D                   10  11  12  13  14



真夏の海のA・B・C…D -15-



「最上さん、昨日は来れなくてごめんね?寂しくて死にそうだった」


(……前言撤回)


昨日姿を現さなかった男は、いつもの時間にいつもの調子でだるまやに現れた。

昨日来なかったことと一昨日の告白劇の顛末を気にかけていたキョーコは、その様子に一気に脱力した。

そう、気にしていた自分がバカだったと感じるほど。


「やっぱりゴキブリかしら…?」

「何の話?」


両手を広げてキョーコ待ち体勢でキョトンと首をかしげる蓮に、キョーコは顔を顰めた。


「なんですか!この手は!」

「何って…最上さん、俺の気持ちを受け入れてくれたんだろう?」

「受け入れていません!聞いただけです」

「昨日会えなかったんだ。充電させて?」


広げた手をそのままにキョーコに近づく蓮は若干かみ合わない会話返してくるが、キョーコはその手を叩き落としてさっと後ろに飛びのいた。


「俺の事、生理的に受け付けないほど嫌い?」


(ううっ…この人は……っ)


叩き落された手をしおしおと引っ込めながら、しょんぼりとした表情を見せて蓮は小首をかしげた。キョーコはどうしてか自分が蓮をいじめている様な錯覚を覚えつつ、ギリっと唇をかむ。

そしてまた投げかけられたその言葉にキョーコが考え込んだ一瞬、キョーコの腕を蓮の掌が捉えていた。


「………」


掴まれた手首から、自分よりも高い蓮の体温が染みる。


(そういえば、あの時はぞわっとしたっけ…)


掴まれた手に、キョーコは以前ナンパ男に同じ場所を掴まれたことを思い出した。その時は不快感を感じたのだが、今それと同じ嫌悪感があるかと言われればそうではないことに気が付く。

たとえ話で出た、おそらく日本人の大半が嫌いであろう害虫を思い浮かべた時のあのぞわぞわ感と同種の不快感だった気がしないでもない。


「………なに、考えてるの…?」


腕を掴まれたまま考え込んでいたのは一瞬だったはずなのに、今まで聞いたこともないくらい冷えた蓮の声にてキョーコは慌てて顔を上げた。そこには何故か不機嫌さを滲ませた蓮の顔があった。


「なっ…、何で怒ってるんですか!この状況で怒っていいのは私の方でしょう!?」

「君が俺以外の事を考えてるから」

「……は?」


自分に告白しただけで、彼氏でもなんでもない…ましてや友人の位置かと聞かれても回答に苦慮する立場のはずなのに、目の前の男はなんと自分勝手なことを言っているのだろう?

何を考えていたかといえば、ゴキブリですけど?と思ったが蓮の様子にそんなことは軽口でも口にできない。


(ゴキブリに嫉妬する…?)


キョーコは掴まれた手に目を向けた。

なるほど『生理的に受け付けない』であれば、奏江に助けられたあの時のようにもっと不快感があるのだろう。

蓮の言葉は嫉妬以外の何物でもない。そう思ったら、なんだかおかしくなった。


「……ゴキブリは、許してあげます」


独占欲まがいな言葉を向けられ呆れもするが、まっすぐに向けられた好意に嫌悪感はそこまでなかった。

剣呑とした蓮の表情に対し、驚きから次第に可笑しさが込み上げてきてキョーコの口元が僅かに綻ぶ。


「え?ゴキ…」

「キョーコちゃん、4番さんの上がったよ!」


柔らかさの出たキョーコの態度とその口から出た言葉のつながりが理解できず、蓮が疑問の声を上げかけたが、それはキョーコを呼ぶ声に遮られた。


「は、はいっ」


背後から女将の声が飛んできて、キョーコは慌てて背後を振り返る。その様子に蓮はキョーコの腕を解放した。会話はブツ切れになったものの、キョーコの仕事の邪魔をするのは蓮も本意ではない。厨房から一瞬大将の鋭い視線が飛んだような気もしたが、そこは知らぬふりをして蓮はいつもの席に座ったのだった。






「昨日はちょうど昼休み前に怪我人が来ちゃってね。対応していたら君と会える時間を確保できなかった。ごめんね?」


(なんだ……)


ホールの仕事が落ち着いて数人の客だけになれば、蓮は遠慮なしにキョーコに相手を強請ってきた。すっかり『いつもの』になってしまったアイスコーヒーをサーブすれば、蓮が昨日見店に来れなかったことを謝罪してきた。

仕事上の対応で店に来れなかったというその理由に、何故だかキョーコはほっとする。


(…って、なによ!!??)


あからさまに安堵した自分の思考に気が付いたキョーコは、頭を振った。


「最上さんも、寂しいとか思ってくれてた?」


(……なっ…!)


「…なっ、何ですか!別に毎日来る約束なんてしてませんし!来てくれなんて言ってないし、敦賀さんが謝る意味が分かりません!」

「そこは嘘でも毎日来てね?って言えばいいのに。客商売なんだから」

「敦賀さんはそんなに売り上げに貢献してませんし、何より私が迷惑です!」


売り言葉に買い言葉。

ついついオーダーがドリンクだけの蓮に対しそんな言葉が飛び出すが、当初に感じていた迷惑と現在の迷惑の度合いは大きく変化している。

キョーコの力いっぱいの迷惑発言に、めげはしないものの蓮はカウンターから上目遣いにキョーコを見上げた。体格がよく背の高い蓮に見上げられることなんてそうそうない。しかも元からビックリするほどの美貌を誇る蓮のそんな態度に、うっかりカワイイかもと思いかけたキョーコはまたしても頭を振って気を引き締める。


「少しは気にかけてくれれば嬉しいけど。俺、君に会わなかった日は出会ってから昨日が初めてだったんだよ?」


そう返されればそうかとキョーコは思った。その事実はそれだけ蓮が自分の元に通い詰めているということ。


「………っ」


そう思ってふと蓮の顔を見れば、いつものニコニコした笑顔でなく、穏やかででもどこか甘い優しげな表情で自分を見つめている蓮と視線がぶつかる。キョーコは急に顔に熱が集まるのを感じ、ふいっと顔を反らした。


(…なんて顔で人のこと見てるのかしら)


無理をして食べた自分のお礼や真剣な表情の告白…セクハラまがいのストレートなアプローチだが今までからかいや冷やかしと思っていたことは自分の認識違いだったとキョーコも理解している。

明らかに自分に好意を寄せている男性という、今迄目の当たりにしたことのない存在にキョーコの内は戸惑いばかりだ。

どちらかといえばこんな風に異性としてだけではなく人から好意を向けられることにキョーコは慣れていない。

決別もして現在何の関係もない過去のこととはいえ、容姿の良い幼馴染の隣にいてその幼馴染に対しての好意を隠しもしなかったキョーコは嫉妬や敵意を向けられることがほとんどだったのだから。

誰しも自分のアイデンティティを守るためにも人に好かれたい…少なくとも嫌われたくない感情は持っている。好かれてはいないと分かっていても『嫌われたくない』。自分を見てもらうためにも『役に立ついい子』でいることが無意識の行動原理だったキョーコは何の見返りもなく向けられる好意や愛情が信じられずに拒絶をしていた。

本能的で理由なんてないという蓮の言い分は、そんな自分に価値を見いだせないキョーコにとって納得せざるを得ない理由で、頑なに『からかい』や『冷やかし』と思い込んできた蓮の行動も、表情や垣間見てしまった行動で否定せざるを得ない。


そして彼が言う『生理的に受け付けない』は、キョーコが蓮を嫌うのに正当な理由として納得せざるを得ないモノ。

蓮がキョーコに一目惚れした、本能的に求めているからという言い分と、同義で対極にあるもの。しかしそれは、キョーコの様々思考の中で否定されてしまった。


(私はこの人を本能的に嫌ってはいない)


…ということは、キョーコが蓮を好きになる『望みはある』ということ。


そして・・・


『返事は…今は要らない』


恋なんてしないという自分の言葉は蓮には聞こえていたはず。

その上で、告白の返事を返すこともあの時止められてしまった。


(……どうすればいいのよ…)


どうすることもできない現状に、キョーコはただただ居心地の悪さを感じるばかりだ。



でも居心地の悪さの裏に


向けられる愛情に応えられる状態でない自分に

戸惑いと罪悪感があること



そのことにキョーコはまだ気づいていなかった

こんばんはー。

色々とお知らせ的なブログ更新はしてますが、雑談ブログはそういや書いてなかったと気が付きました。

(……っていうかいらないでしょw)


今後の事とか、最近の事とか適当にダラダラと書きますので興味のない方はバックプリーズ!



さてと、スキビ本誌の方は9/20発売の2号ぶりの掲載&単行本新刊でしたね。


・・・・・・ひとこと(じゃないけど)言わせてくださいませ。

この影響、ハンパないです。


スキビ二次ブログとしては辺境中の辺境なうちのブログのはずですが、ネタバレ感想を書くせいかスキビ掲載のはなゆめ発売前後はアクセス数がかなりアップするのです。

・・・単行本派の方、気になりますもんね、スキビの今後・・・。


それはそれでいいんですが、今回のアクセ数の跳ね上がり方が異常で怖いです・・・。

だって、普段の・・・今までネタバレ感想を書いた前後の3倍くらいなんですよ?こんなの初めてです。

しかもね、本誌発売前の9/18あたりからアクセスがおかしい。

何でしょう?早売り地域だってまだゲットできない日から皆様気が早すぎます!!それとも本誌発売前の復習でしょうかね?

そして19日…あの…私、早売り地域住まいじゃないんですよ!?

ネタバレを読みたい誘惑と必死に戦っていたのに、なんなんですかー!!

そしてネタバレを書いた20日、ブログに設置したカウンターが1日で4ケタに突入・・・ひぃぃ!!!

それだけスキビの2号ぶりの掲載&新章突入が衝撃的!注目度が高いってことですよね。



翌日アメブロのアクセス解析を見て戦慄しました。

アメブロのアクセス解析は各ページごとそれぞれカウントするので、正確じゃないし実際にきたかたの人数を反映してないのは理解してるんですけどそれでも・・・ね。

検索ワードは「スキビ ネタバレ 感想」に全て占拠されましたw

アメブロのランキングもオソロシイ数字になってました。なんつーか、「小説」ジャンル…明らかに小説じゃない内容で1ケタに入ってしまった事にゴメンナサイって感じで逃げたしたい。(だって閲覧ページのほとんどがネタバレ感想で、二次小説のページはちょびっとですww)

そしてそれがブログ更新した20日以降、この3連休ずーっと同じくらいのペースに維持されているんですけど…!どんだけ皆様スキビに飢えてるの!?


なんだかね、これって私の書くモノが面白いとかそう言うのじゃなくて

ひとえにスキビの魅力故ですよねぇ…。

小説ジャンルのランキング参加もなんか申し訳ないくらいで外した方がいいのかなぁとか思ってしましました。


早くいつものペースに戻って欲しいです。

落ち着かなくてコワイ・・・。




そしてこの時期になると、ネタバレ感想を求めて迷い込んだ方が、うっかり二次創作を読んで二次にハマるという仕組みが垣間見えます。

そう・・・アメンバー申請が増えるのです・・・。別にね、二次初心者お断り!とかそういったことはないのですけれども・・・、二次に足をふみれたばかりの方!お願いしますから各サイト様の「初めに」とか「メッセージボード」とか「サイト案内」を読んでくださいまし!

(って、そう言う方に限って二次小説を求めているからこういう雑談ブログで言っても気が付いてもらえないんですけどねw)


こんな辺境ブログでも承認できないアメンバー申請が相次いでいます。

周囲を見渡すと、アメンバー申請を休止したり、時限開放したりとアメンバー申請に関してストレスを感じていらっしゃる作家様が多いのが分かります。

私も案内不足の対策でブログ内工事を行いましたが、それでも対策しきれないせいか(モバイル版はどうにもならないので…)メッセージなし申請は激減したものの、いただいたメッセを読んで迷わず承認ボタンを押せない微妙な申請が多いです・・・。しばらく迷って及第点かな・・・と思ってぽちりとOKするなんて事も実はあります。

偉そうで何様だ!と思われるかもしれませんが、当ブログの申請条件は厳しい上に私の印象が含まれ理不尽ですので、迷うくらいならOKしなくてもいいよね!?と、そのような微妙な申請メッセは精神的に余裕が無いときは開き直るってNG!!な事もあります。ご注意くださいませ。(判断しているのが偏った人間の私ですし、文章は印象次第なところもあるので・・・)



二次SSの今後…??


【真夏の海のA・B・C…D】

連載目途をつけて発車したはずの夏物のリクエスト連載が、気が付きたら3週間停止してる!?

ごごごごごめんなさいぃ~~~!!

もう涼しくなって海なんかはいれねーYO!な気候になったのに終わってないし・・・。

ブログ工事に気を取られ、そうこうしているうちにお祭りにうっかり参加し、そして本誌が発売されて脳内シェイクされている状態でして←言い訳

あとほんの少しで何とかなる状態ですのでしばらくお待ちくださいませ。


【Mondlandshaft】

もう完全停止です・・・。もう2カ月も前だ、最終更新が…。

ボロボロでもなんとか書き上げてから改訂!とずっと思ってましたがもう限界です。

申し訳ありませんが、こちらは【真夏~】を書き上げたら一度引下げさせていただきます。

水面下で改訂を行い、完成してからアップの方針にしたいと思っております。完成の目途がついてたら順次アップ…とも思いましたが、そう思ってスタートした【真夏~】がこの有様なので少なくとも真夏~より形ができた状態になってからアップを開始したいと思ってます。おそらくすごーく先になると思います。


【その他】

脳内の妄想が枯渇気味なのですが、ぼんやり考えているのは最新のACT204の続き妄想。これは次号発売前までに書ければ…でしょうか?長編にはならない・・・はず。絶対本誌とかぶらないぜぇ…というか、仲村先生の思考を想像するのをあきらめましたw

斜め上以上の仲村先生のお話作りはどんな作家さんの想像も及びませぬ。


あと連載コースのパラレルなお話の原案が1つぼんやりとあるのですが、これは・・・うーん、どうだろう??書くかどうかすらわかりませんが、アメブロでの公開は無理くさいお話になりそうなので、脳内でひたすら妄想にとどめます。


とにかく最近は妄想力はあるのですが、キーボードに向かう気持ちがなかなか起きず、ダラダラとサイトめぐりに勤しんだりピグで遊んだりが日常です。

もう落ち切った更新ペースがさらにスローになるかもしれませんので、本誌感想に合わせて月イチくらいで遊びに来ていただけると幸いです~。





お祭り期間に書き上げることができず・・・orz筆が遅くなったな、私。


ちょっと前にアップした企画参加モノの『ACT妄想-ouvrir(ウーヴリール)side/K- 』の対になる蓮さんサイドです。ちょーっとキョコさんサイドに比べるとまとまりに欠ける感が否めませんが、そこも私クオリティ…。直せば直すほどずれていってしまったのは秘密ですw


※今回の作品は本誌ACT.203までのネタバレ要素を含みます。ご注意ください。

単行本派、ネタばれがお嫌な方はバックプリーズ!
ネタバレOKの方のみ、スクロールでお進みください。













注釈:二人の会話は脳内で英語再生でお願いします…m(_ _ )m



*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

ACT203妄想 -ouvrir(ウーヴリール)- side/R



煙草の煙で薄もやがかかった天井を見上げる。


カインとしてこの部屋で一人で過ごすのは何日目か。


撮影はカインとして、順調だ。

現場でコミュニケーションが不足だとか時間を守らないとか…敦賀蓮としては考えられない状況を発生させているがそれはあくまでカインなのだから問題はない。

作品の求める要求された意志を持たない殺人鬼の役柄は、これ以上ない程こなせている。

フラッシュバックのように我を失い、演技上の凶行とカインの底にいる久遠の境界が混ざりあいコントロールを失うことはあの夜からなくなった。



…ではこの虚無感はいったい何なのか。


敦賀蓮のスケジュールが入らなければずっとカイン・ヒールでいるこの仕事。
この部屋で過ごすプライベートな時間さえもカインとして過ごす日常。


あの子がいなくても、この部屋で一人であっても

暗黙のルールを遵守する相手がいなくても、俺はカインのままだった。

今の俺にオンとオフは存在しない。しいて言うなら常にカインとしてオンのままだ。
でもそれは、今まで敦賀蓮として生きてきた時間と何ら変わりがないはず。


(…なのに)


いうなれば敦賀蓮として常時オンであったはずの俺の日常。敦賀蓮ではない『俺』はオフが存在しない生活では出る幕はないはずなのに。
あの子に関わってから封じ込めていたはずの自分が自然と表に出ることが多くなり、存在しなかったはずのオフの時間が生まれる。
自分ですら知らなかった一面を引っ張り出すのはいつだって最上キョーコで、俺は戸惑いながらも新たな自分を迎え入れてきていた。


そうやって発見した新たな一面や過去の暗く重い闇までもが『自分』を形作る欠片なのだと…

当たり前のことに気が付かずに過ごした日々は、あの夜の口づけで粉砕されて溶け合って…『役者の自分』として受け入れることができた。

今の俺はカイン・ヒールだが同時に敦賀蓮であり久遠である。

俺は『俺』を手に入れた。


普段なら吸わない煙草を当然のように燻らし、ミネラルウォーター代わりに酒を煽る。

食欲は普段以上に沸かない。


確かにあの子が…セツがいなければ、まともな食事などとらないだろうこの男。

社長に対して一人でもカインヒールとして食事だってとりますと言った過去の自分がおかしくさえ思える。


(…そうか)


何気なく目をやれば、主不在のベッドが目に入った。

きれいに整えられているが、糊のきいたシーツではない。ところどころ寄った皺と糊が取れて柔らかくなった布地。

室内清掃が入れば、セツの痕跡が消えてしまう。
しばらく離れることになった最愛の妹。


セツカの気配を消してしまうことなどできやしない。セツと別れたその日から、この箱庭に俺たち以外の人間が踏み入ることは許せなかった。


(セツがいるのがカインの日常だから、いないことの違和感があるのか…)


『俺』にとっても大切なあの子は、『カイン』にとっての唯一のセツカ。
深くカイン・ヒールと溶け合った自我は現実とは曖昧だが、大切なものは変わらない。


吸殻が山になった灰皿に、増える一方の酒の瓶や缶。
カインの気配だけが濃くなるこの部屋に少しでもセツカを感じていたい。


(お前がいなければ落ち着いて眠れやしない…)



会いたいとか


恋しいとか



この感覚はそんなレベルじゃない


これはカインの感情だけれども、同時に俺の感情でもあるのだ。

燻る気持ちを押さえつける様にタバコを灰皿に押し付け残った火種を揉み消すと、外側の紙の焼ける匂いとともに一筋ゆらりと煙が立ち上って空気に溶けた。


煙草の火は消えても、俺の心を蝕む火種は消えはしない。

ソファーに凭れてテーブルの上に乱雑に足を投げ出し、セツカのいない現実に目を閉じた。







あの子の香りを感じた気がした



満足な睡眠をとれずにいる体は疲労からか浅い眠りを繰り返し、夢か現かあいまいな感覚の中で感じた香りに慕情が募る。


(……重症だな)


カインとしては正しいのかもしれない。

ぼんやりした意識の中で、普段の俺以上に強い感覚に苦笑するしかない。


これがカインとしてならまだいい。

…でもこれが半分以上『俺』の感覚だったとしたら?


役が抜けた後、敦賀蓮と最上キョーコの距離に戻った時にこの感覚のまままら俺はどうやって生きていけばいいのだろう。

月単位で会えないことなんてザラだろう。今までだってそうだった。

あの子への想いを自覚してから会いたいと思うことや会えない時間に募る想いも感じたが、ここまでの飢えや焦燥感はなかった。



目を開いたら彼女がいない現実に打ちのめされそうで瞼を持ち上げることができない。


(夢でもいい、都合の良い幻でもいいから……)


久しぶりに感じたこの香りを味わっていたい。



そんな俺の願望は浅はかで即物的で。
僅かに傾いたソファーを感じ、胸を締め付けられる。

近づいた香りとともに体温まで…と思った次の瞬間、首筋に柔らかな感触とともに熱を感じた。


そこはかつてあの子の…セツカの口付けを受けた場所。

鋭い痛みと甘い痺れの両方を受けてしばらく存在を主張していたセツカの所有印は、彼女のいない日々とともに薄れていった。



ジンジンと響く噛み付かれた強烈な痛みの中で、セツカを装っていてもキスマークの付けからすら知らない彼女に安堵した。


『独占欲を刻み込むみたいに』


俺に施してほしい願望をカインの口を借りてあの子に告げた。

役の上であっても、あの子が肌に跡を残す『初めての男』になれることに喜びを覚えて。


印を刻むということは刻み付けた相手に独占欲を持つこと。


独占欲を刻み込む行為を通して、…愛を否定するあの子がこの行為を行う背景にどんな感情が潜むのかことさら意識することを期待して。



『他人に知らしめるには、いいのかも…』


そう言ってわざわざ首筋の歯型に重ねてくれた証。


一生消えないヤツをと強請ったソレは俺の中で消えることなく存在しているが、『単純に視覚的な事』は目にすれば彼女の所有物である自分を実感させてくれた。


でもそれは薄れて消えていく印に言いようのない喪失感ももたらした。




俺の願望通りに、何度も執拗に首筋に降りてくる柔らかな感触。

その度に吸い上げられてチクリと響く痛みが妙にリアルで、自分の欲の深さにため息をつきたくなった。


醒めない夢であってほしくても、その先を見たい。

抱きしめて、セツカの…彼女の顔を見たい。

でも目が覚めた瞬間、幻だったと現実に返るよりこのまま甘い夢に漂っていた方が幸せか・・・。

急速に埋められて癒えていく焦燥感に、心が揺れ動く。

目を閉じたまま葛藤を繰り返していれば、妙にリアルな感触が引っかかる。

何度目かの接触が離れていく間際、肌の上を熱く濡れた感触が掠めた事にはっとした。


(……現実?)


未だに目を開けて確認することを恐れる俺をあざ笑うかのように、再び降ってきた熱は肌に沈み込む硬い感触を伴って……





「………また噛みつく気か?」


ついに、言葉が口をついて出た。

現実を確かめようとすれば幻はかき消えてしまうだろう。僅かに震えた自分の声に情けなさを感じる。


でも……


笑うような吐息とともに、首筋の肌を甘噛みされた。

消えない感触にやっとこれが現実だと認識できて、慌てて重い瞼をこじ開けた。



「兄さんが寝たふりなんかしてるからでしょ?」


目に鮮やかなピンクの毛先が飛び込むと同時に、鼓膜を震わせたのはずっと聞きたかった音。

心臓を手で鷲掴みされたような錯覚を覚え、それでも現実だろうかと思う俺に更にセツカの声が降りかかった。


「わかってるのよ?アタシがいない間兄さんがまともに眠れやしないことなんて。…ふふっ…可哀想な兄さん」


喜びに震える心。さっきまでの焦燥感は霧散していた。

今すぐ抱きしめて、触れあってどんなに焦がれていたか伝えたい衝動に駆られる。

でもそこにいるセツカにカインらしくなく振る舞うことなんてできなかった。

ここは暗黙のルールが支配する、カインとセツカの舞台。


早く俺を映した瞳を確認したいのに、首筋に頭がうずめられいてもどかしい。

さっきまで熱が触れていた首筋を、少し冷たい指先に擽られる。

男を弄ぶようなその動きに背を這いあがる甘い疼きを抑え込んで、カインの表情でゆっくりと向き直るセツカを見ていた。


首筋の印に目線を落としたセツカは、俺の雄を揺さぶるほどの妖艶な微笑を口元に湛えていた。

一瞬そんな微笑を向けられる印に嫉妬するが、まともに俺の目を見てそんな表情をされたら自制することなんてできないだろうと妙な安堵を覚える。


「だからって噛みつくことはないだろう?」

「アタシの印が消えかけてるんだもん」


声をかければ、ようやくその瞳が俺を映した。

どこか不貞腐れたような表情は兄に甘える妹のそれで、先ほどの妖艶な微笑はなりを潜めている。


ホッとしたのも本心だったが、どことなく残念で。

そしてどこまでも完璧なセツカの表情に、ほんの少し素の彼女も味わいたくて。


(これくらい、いいよな…?)


誰となしに言い訳をして、ソファーの手すりに体重を預けた腰に手を伸ばして抱き寄せた。ほんの少し、不埒な本心をのぞかせた手つきで細い腰を指先で撫でる。

少しだけ照れたような、セツカの態度でも最上キョーコを思わせる表情を見たかったがための些細な悪戯。


なのに、彼女はどこまでもセツカで当然のように甘えた仕草ですり寄ってきた。

予想外の反応に、いつもの敦賀蓮の反応が顔を出した。


「…薄くなれば今日みたいにまたつければいい」


一瞬で取り繕ったつもりだった。

しかし芝居への感度をことあるごとに引き上げていくこの子がどこまでそれに気づいているのかは読み取れなかった。

俺の目の前の彼女はあくまでもセツカのままだったのだから。


「噛み跡はキライ?」

「…そうじゃない」


カインとしておかしくないセリフで間を繋げば、帰ってくるのはどこかとぼけた返答なのだか、この子の雰囲気と色香に惑わされそうになる。いや、惑わされたいのが本心なのかもしれない。


「イタイのはキライ…?」


なおも重ねられた質問に、意地の悪い思考が働き出す。

あの夜、この子に誓いたいと願った証は拒否されてしまったのだから。


「俺にもさせてくれるなら構わないが」

「兄さんがアタシに噛みつくの?」

「…そうじゃない」


俺の独占欲を刻み付けて、この子を取り巻くすべてのモノに知らしめてやりたい。

俺のモノだと。

身勝手な欲求だけれでも、それが許される今の状況を少しは堪能してもいいんじゃないかと満たされた焦燥感が煽ってくる。

いつにもまして隙のない完璧なセツカでいる最上さんに、心のどこかで期待した。


「お前にはない…」


指先を開いた胸元に滑らせた。白く柔らかい肌が指先に吸い付く様で、止められない。


「お前が俺のモノだという印がない」

「つけたいの?」

「………」


暗に要求したことをストレートに聞き返えされてほんの少し、俺の中に残った敦賀蓮の仮面が抵抗した。でもそんな抵抗は一瞬で、俺のとった行動は欲望に忠実だったと思う。

罰の悪さの沈黙は瞬時に消え去り、視線だけでセツカに許しを乞う。


カインとして溺愛する妹に甘える仕草を取ることは、この役で見つけた新たな楽しみだった。

敦賀蓮ならあの子に向けた事のないのない態度に、一瞬素の彼女が垣間見える。

セツカの向こうにあの子がいることに安堵して、そしてセツカなら溺愛する兄のおねだりは文句を言いつ甘やかしてくれるのだ。

きっと少し困ったような、一瞬朱の差す頬を見て俺は安堵できるのだろう。


しかし、返ってきた反応は予想外のモノだった。


「いいわよ?素敵ね、おそろいなんて」


照れも何もなく、まっすぐにかえってきたセツカのセリフ。即座に返ってきた答えにあの子の気配の欠片もなかった。妖艶にクスリと兄に笑いかける妹は、俺にとっては抗いがたい誘惑でしかないのだが。


「……いいのか?」


承諾の返事をもらうための行動だったのにあっさりと微笑とともに返ってきた返答に、つい素で確認の言葉が出た。

その時望んだくせに、それでも心のどこかできっとセツカじゃない最上さんが拒否すると思っていた自分に気が付いた。


そんな俺の内心を見透かすように、セツカの双眸がすっと細められる。

瞳に宿った光にドキリと鼓動が跳ねた。


「……修行」

「……?」


相反する欲求と期待に揺れ動いていれば、急に脈絡のない言葉が呟かれて意識を引き戻された。

何を意味するのか分からず、セツカを見る目に疑問の色を乗せる。


「修行、積んできたから」


その台詞に、あの日の夜の会話がフラッシュバックした。


『ムカつく……っ』


あの時、俺の口付けを拒んだセツカは俺の腕から抜け出して何と言った?


「セツ?」

「今のアタシなら、兄さんの相手…できるから」


『今のアタシじゃ兄さんの相手にならないみたいだから、修行を積んでくる』


あれは見当違いなセツカの嫉妬から出た言葉。その先は…


「……っ!」


以前の言葉通りのことを、この別離の間に経験してきたというのか?


これが演技だとか、セツカのセリフだとか…

そんな事は一切考える余裕なく、ただただこの子が他の男に触れたことを意味する言葉に血が上った。



許せない、この子に触れた男が。

許せない、他の男に触れさせたこの子が。



気が付けば、軽い体躯を翻弄しベッドに縫い付け伸し掛かっていた。

何処に向けようもない怒りを隠すことなんてできずに、抗議するように眼下セツカを見下ろした。


いつぞやと同じ体勢にあの時の自分の気持ちが蘇る。


赦せなかった


この子が

俺以外に………!


ひどく一方的な独占欲を持っているのは俺の方で

その独占欲を刻むことを許されたにもかかわらずまたしても感情の波にのまれている


でもこれは、久遠という闇というより俺自身の感情だった。

頭のどこかでそれを意識できている自分に…ほんの少しの安堵もあって。


「…………」


早く否定してほしかった。

あの夜のように、生々しい俺の感情にセツカの中のあの子が顔を出すだろう。

最上さんの影を見出せばこの焦りや怒りも静まる気がした。


怒りを隠しもしないで無言で問い詰めたけれど、組み敷いた相手はずっとセツカのままだった。

ベッドに縫い止められたことに少しは驚いた表情を見せたものの、俺の顔をじっと見て…そして濃いめのルージュを引いた口角がゆっくりと吊り上った。


「………冗談よ」


クスクスと笑う妹に、からかわれたと一瞬で熱が引いた。

あのときだって、本気で焦って引き留めた俺に、呆れ顔で冗談よと言ったのはセツカだったじゃないか。

思わず自嘲の溜息が漏れる。


「……大人をからかうんじゃない」


ようやく絞り出した言葉とともに、現状に目が行った。

ずっとセツカを崩さずにいるこの子は、常に俺を誘うような妖艶な甘い香りを放ち続けている。

押し倒した状態で、じっと俺だけを映すセツカの瞳にこれ以上近づいたらカインと同化した俺は何をするか分かったものじゃない。

今の彼女なら、今迄のように妖しい関係を仄めかす発言にセツカとして従順に応えそうな気がした。


押さえつけた身体を解放し、距離を取ろうと身を起こそうとしたはずなのになぜだかセツカの瞳が近づいた。

するりと首筋に白い手が絡みつき、引き寄せられる。


「印……つけないの?」


どこまでもセツカなこの子に眩暈がしそうだった。
カインなら許しなんて乞わずに、当然のように所有印を刻むのだろう。

それから逃げた俺は、この子の前で知らずカインでいる事すら出来なかったのだろうか。


「ただいま…兄さん」


引き寄せられて、近づいて。

セツカの表情が見えなくなって、耳元で落とされた吐息は甘かった。
会いたかったと真っ直ぐに伝わるセツカの感情に、自然とカインのスイッチが入る。


(俺も会いたかった…)


「おかえり…セツ」


迎え入れる言葉を交わし、柔らかな肌に唇を寄せた。
当然のように受け入れるこの子に、今までも、これからもきっと俺は翻弄され続けるのだろうと思いながらも。


(今だけは………)


この子に一番近づいた男として、満たされる心に酔うことを赦してほしい。





※9/21追記

お祭り期間終了しましたので、カテゴリーを本誌DE妄想に変更しました。


企画参加モノです。

勢い余って畏れ多くも・・・参加(するかも)表明してしまいました。


名を連ねているマスター様を見てはドン引きし、筆が遅いあまりに先に公開された企画参加作品を見て「私書かなくてもいいじゃね?」的な後悔もしつつ、参加表明してしまった手前根性振り絞ってアップします。

石を投げつけられて大怪我する予感大ですけどね!!


★企画名…「ただいま(おかえり)企画」

 企画主催…ROSE IN THE SKY えみり様

※企画自体に本誌(Act.202くらいまで)のネタバレを含みますのでご注意ください。

単行本派、ネタバレNGな方はバックプリーズ!!

企画詳細については下記バナーより、えみり様本館のご案内をご覧になって下さい。

妄想最終処分場
http://roseinthesky.web.fc2.com/


※今回の作品は本誌ACT.203までのネタバレ要素を含みます。ご注意ください。



ネタバレOKの方のみ、スクロールでお進みください。













注釈:二人の会話は脳内で英語再生でお願いします…m(_ _ )m



*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆




――― 一流の役者を目指す以上…目を逸らすな

どんな感情であっても無駄になるものは何一つない




記憶をたどれば、かつて師と仰ぐ人にも同じようなことを言われた事を思い出した


見て見ぬふりをして

鍵をかけて

押し込めても

育っていた恋心

無駄なモノだと…必要ないモノだと、ずっと思っていた


でも私は幕を開ける決心をした


たとえどんなに醜くても

たとえどんなに愚かでも
私の心の内の中だけで想い、決して告げることのないこの心を育んでみようと



―――… それは新しい私を作っていくために必要な事


ACT203妄想 -ouvrir(ウーヴリール)side/K-



きつめのアイメイクに縁どられた目元に、躍るピンクの毛先。
瞼をそっと持ち上げれば鏡の向こうから私を見ているセツカが目に映る。

ゆっくりと詰めていた息を吐きだせば、それは気だるげな吐息に変わり久方ぶりのセツカが顔を出す。


セツカを演じる私を揺さぶり続け、セツカでいられなくしたのはこの恋心だ。
妖しさを伴う兄妹を演じる中でセツカとカインであれば当たり前なのに、私はカインの中に敦賀さんを重ねてしまっていた。

カインがセツカに触れるたびに、私の押し込めた恋心は膨らんで小箱の鍵を内側から破壊した。

鍵を吹き飛ばして壊すのは敦賀さんじゃない、私自身だったのだ。


そんな事にすら気づかずに、私はあの人のせいだと敦賀さんに全てを押し付けていた。



この恋心から目を背けていた私は、セツカを完璧に演じることはできなかった。


セツカがカインに向ける気持ちは恋に似ている。
家族の情を逸脱した強い執着と独占欲。

互いを互いに縛りあう強い気持ちは歪んだ愛情なんだろう。

『歪み』の原因は兄妹である事実で、二人は狂おしいくらいに求め合っているのに血の繋がりによる背徳感が見る者に『妖しさ』を匂わせる。


セツカであればカインの首筋のキスマークを問い詰められたとしても『だってアタシ達こういう関係だから』とにべもなく告げることができる。カインとセツカは兄妹だろうがなんだろうが、そんなものは気になんてしないはず。

そう解っているのに戸惑っていたあの時の私は、『セツカ』じゃなかった。


……敦賀さんは『カイン』でいるのに、私はセツカでなく『私』だったのだ。


この恋を認めれば…私が恋を知れば、カインに愛情を向けるセツカを完璧に演じることができる。

―――― そう、『セツカとして生きること』ができる。



逸る気持ちを押し込めてルーズな足の運びを意識しても、結局は足早だったと思う。

セツカの出で立ちでホテルの廊下を進み部屋のドアの前に立った。


ドアを開ければそこは私と敦賀さんの舞台で、カインとセツカの生きる場所。


前にこのドアの前に立った時は緊張感があった。

セツカじゃない私がカインじゃない敦賀さんに疚しさを抱えていたから。

でも、今は違う。
私は敦賀さんに恋する自分を認めた。


最上キョーコでは決して表に出さないと決めたそれを、この舞台でセツカであれば自由に解放することができる。

兄しか見えない、兄しか愛せないセツカとして。



早く逢いたい。

その心はセツカとして当たり前の感情。

溢れる恋心を自由に表現できるセツカを演じる舞台に



…………心が躍った。




ピ…



小さな電子音が開錠を知らせる。
開いたドアの隙間から重く籠った空気がたなびいてきた。

タバコとアルコール臭に混ざったその中に紛れる彼の匂いに胸が締め付けられる。

その空気さえほんの少しでも逃したくない。


私の体一つ分の隙間からするりと室内に入り込んだ。

ドアの前に立つと閉じてくるドアが背に当たり重みを感じる。

ゆっくりと音を立てず閉まったドアが、カチリと僅かな音をさせて密室の完成を知らせてきた。


(こんなにも、育っていたんだ…)


ローテンションを装うセツカの内の心は更に早く早くと急かしてくる。

瞬きをしてゆっくり息を吐き、急かす心と連動して早まった鼓動を諌める。


一呼吸おいて室内に目を向ければタバコで煙った室内の奥に、以前見た光景と同じようにくテーブル投げ出された長い足が見えて…。

その先に会いたかった姿が目に飛び込んできた。
ソファーに凭れ頭を反らせた窮屈な姿勢で、瞼は閉ざされたまま。


ドクンと跳ねあがった心臓をの音が、静かな部屋に響いてしまったような錯覚に陥る。

ソファーにもたれたカインは僅かな物音にも反応しないので眠っているかもしれない。極力音をたてないように近づいた。


(少しやつれた……?)


離れていた間、敦賀さんはほとんどの時間をカイン・ヒールとして過ごしている。

本人以上に食や健康なんてものに興味の欠片もない兄さんはきっと不摂生な生活をしていたのだろう。山になった灰皿や部屋に転がる酒の空き缶や空き瓶を見れば一目瞭然だ。

そんなところまでカインでなくていいのにと思うけれど、私との暗黙のルールを引いたこの部屋の中で例え一人であっても敦賀さんはカインだったのだろう。


(ホント、アタシがいないとダメなんだから…)


セツカとしてそばにいれば、この妹と芝居以外のことは無頓着な兄の全てを任され介入できる。

そのことにセツカの中で独占欲がひたひたと満たされていくのを感じた。本来の自分なら叱り飛ばしているはずの事にも仄暗い愉悦を感じてしまう。


足音を立てずに手の届く距離まで近づけば、天井を仰ぐカインの首筋が目に入る。

そこはかつ請われて独占欲の証をつけた場所で、蘇るのはあの日の彼の言葉。




『俺がお前のものだという印だからな』



一生消えないやつをとねだられてつけた印は、もう消えてしまって目を凝らせばリング状の歯型がわずかに分かる程度。


(……消えちゃった)


内側から湧き上がるのはセツカの声。


(またつけなくちゃ、アタシのモノだっていう印…)


セツカと一体になった私の心は、もう何も躊躇わなかった。






ソファーの肘掛けに軽く腰掛けて、瞳を閉ざしたままのカインの首筋に唇を寄せた。

唇に当たるなめらかな肌の感触と濃密な香りに胸が締め付けられる。

その肌を吸い上げて、内側から血の色を誘う。



もう消えてしまったキスマーク。

コレを付ける前のこの人は不安定だった。

B・J…カイン以外の闇が見え隠れし、私の知らない『誰か』の影がちらついていた。


何がきっかけかは分からない

だけど…



『もう二度と…お前を失望させるような真似はしない』



そう約束してくれた。



『俺はもう、大丈夫だから――…』



その時の表情に、この人が何かを乗り越えたのを確信した。



私が過去の自分やこの想いを受け入れられなかったように、敦賀さんが戦っていたのはきっと自らの闇だったのだと思う。


社長が言った『ソイツ』は敦賀さん自身で、負けなければ勝たなくてもいいと言っていたのは『受け入れる』ということ。

それはこの仕事、カイン・ヒールを、BJを演じるために。




1回ごとに唇を離して肌の上に咲いた花の色を確かめる。

繰り返すたびに濃くなるその色は急速に育つ私の心を反映しているかのようだ。


思えば敦賀さんはいつもカインとしてセツカに愛情を示していたのに、それに怯む私を見透かしていたのかもしれない。

カインの濃厚な愛情にひるんだ私を見る兄の瞳の奥に、敦賀さんの色がチラリと見え隠れしていた。

妖しさを伴う二人の関係に手加減していたのは敦賀さんの方で、私はその手のひらで踊らされていたのだろう。


(…ムカつく)


セツカの思考の中で私が呟く。


この感覚は覚えがある。

役者として少しは成長できたと思っていたけれど、敦賀さんとの間には演技のえの字も知らなかった鈴の音に惑わされた時の自分と変わらない距離があるのだろうか。


でも、今は負けない。

ぐんぐんと枝葉を伸ばすこの想いはセツカとして生きる時だけ思い切り解放できるのだから。


(今のアタシなら、兄さんの中の人がたじろぐ位に愛してあげるのに…)


思い出すのは切ない表情で『大切な人を作れない』と言った敦賀さんの表情。

復活した敦賀さんは嘉月の演技で、押し殺しても溢れだす複雑な恋心を演じ切っていた。

敦賀さんも今の私と同じように認められない自分の恋を受け入れたのか……大きく進化した。


それを誰よりもそばで目の当たりにしていたのは私だ。

今度は私が、同じように乗り越えるのだ。




繰り返し味わった肌は、私の唇の触れた場所に濃い花を咲かせていた。


いっそ毒々しい色のそれは私の醜い心を映しているのだけれど、今はもうそれだって受け入れてる。

私の想いは綺麗でもなんでもない、醜くて、汚くて……でも、大切な私の一部。


その花を視界に収めててうっとりと、気が付けば微笑んでいた。


まだ目覚めないアタシの兄さん。


独占欲の証を指先でなぞり、もう一度唇を寄せる。

今度はもう少しだけ、唇を開いた。




「………また噛みつく気か?」



柔らかな肌が犬歯を押し返す弾力を楽しんでいたら吐息が耳朶を掠めた。

咎めるような声だったけど、そのまま軽く甘噛みする。


「兄さんが寝たふりなんかしてるからでしょ?」


噛み跡が残らない程度にして、名残惜しい肌の感触に別れを告げて唇を離した。


「わかってるのよ?アタシがいない間兄さんがまともに眠れやしないことなんて。…ふふっ…可哀想な兄さん」


さっき付けたばかりの新しい花を指先で擽って微笑みかければ、閉ざされていたはず瞳が私を捉えていた。

どこか不機嫌そうに、でも甘える色を織り交ぜるカインの表情に胸の奥が甘く疼く。


「だからって噛みつくことはないだろう?」

「アタシの印が消えかけてるんだもん」


面白くないと口をとがらせれれば、手すりに浅く腰掛けたウエストに手を回された。

いつもなら平静を装いつつ内では動揺していた接触も、今は当然のように受け入れられる。

ごく自然に引き寄せられるのに合わせて自らカインにすり寄ると、ほんの少しだけカインの瞳が制止した。


「…薄くなれば今日みたいにまたつければいい」

「噛み跡はキライ?」

「…そうじゃない」


止まったのはほんの一瞬で、気のせいだったのかもしれない。

どことなくかみ合わないセリフで、焦らすように久方ぶりの兄との会話を楽しむ。


「イタイのはキライ…?」

「俺にもさせてくれるなら構わないが」

「兄さんがアタシに噛みつくの?」

「…そうじゃない」


私を抱き寄せたカインの指先が、つっと露出している鎖骨下の柔らかな皮膚をなぞった。


「お前にはない…」


長くて綺麗な指先が指し示したその場所はかつて誓いの証を刻まれそうになった場所で、その時は拒否した自分を思い出した。

過去女性に施してきたであろう行為を彷彿とさせたあのセリフに慣れた手つき。

敦賀さんの過去の経験に嫉妬して同じように扱われるのに腹を立てたはずなのに、その時はとにかく触れられたら小箱の中身が暴れ出しそうで怖かった。


「お前が俺のモノだという印がない」

「つけたいの?」

「………」


一度拒否されたからだろうか?

セツカなら喜んでOKするはずのところなのに、伺うように私を見上げてくるカインは大型犬の癖に飼い主の許しを請う子犬のようでもある。


「いいわよ?素敵ね、おそろいなんて」


以前と同じように、この人はどこかでセツカの中の最上キョーコが拒否すると思っていたのだろうか?

滑らかな頬に手を添えて、クスリと笑うとさっきと同じようにほんの一瞬カインの表情が止まった。


「……いいのか?」


わざわざ確認してくるなんて兄さんらしくない。

前はいいかと聞いたくせに、回答なんて必要とせずにつけようとしたくせに。


「……修行」


「……?」


「修行、積んできたから」


「セツ?」


意地悪な思考が頭の中を占拠した。

あの日の夜の、自分のセリフを逆手にとってカインを焦らそうとセツカがささやかな仕返しを画策する。


「今のアタシなら、兄さんの相手…できるから」


(この想いを認めた今の私なら、カインを演じるあなたと本物のセツカで向き合える)


自らの闇を克服した敦賀さんと、同じ立場で演じることができると思うのはおこがましい事だろうか?


「……っ!」


腰に回されていた腕がギュッと巻き付き、その力強さに体が浮いて気が付けばソファーの隣のベッドに縫い止められていた。


目の前には、怒気を孕んだ美貌があった。

以前にあったようなシチュエーション。

でも、もう恐怖なんて感じない。


「…………」

「………冗談よ」


ニンマリとそう口にすれば、目の前で冷たい焔が燃えていた瞳がすっと冷えていく。

距離が近いせいで、安堵したかのようにふっと吐き出された吐息が私の頬を掠めた。


「……大人をからかうんじゃない」


縫い止められた肩から大きな手が外れ、覆いかぶさっていた重みが軽くなる。



ねえ敦賀さん。

あなたは私のセツカが最上キョーコなら考えられないようなセリフのを口にすることに、少しは動揺してくれている?

安堵の溜息は、印をつけていいって言ったのを冗談と否定したからだと思ってる?



「印……つけないの?」


体を起こそうとしたカインに手を伸ばし、首に腕を絡めた。


「ただいま…兄さん」


カインを演じる敦賀さんは、度を越した愛情を示すセツカを演じる私に動揺したりしてくれるのだろうか?

かつて私があなたに翻弄されたみたいに。


抱きしめて、引き寄せて逢いたかった気持ちを込めて耳元で囁いた。


「おかえり…セツ」


降ってきた言葉は掠れて艶めいて。

ゆっくりと腕を解かれて胸元に落とされた唇に、私の心が甘く痺れる。



チクリと感じたわずかな痛みを残して私の肌に咲いた花を見て笑みがこぼれた。



限られた時間の中で、あなたに恋するセツカを精一杯演じるから…


(―――― 覚悟して下さいね、敦賀さん)



幕は今、上がったばかり

先日から何回もお知らせしたり謝罪したりが続いてましたが、動作確認も終わって一区切りとなりました!


最終的に、当ブログへのアメンバー申請は

推奨・メインルート↓

①ブログサイドバーのプロフィールの『アメンバーになる』ボタンから


消してしまいたかったけど諸事情によりそのまま。できたらここから来ないで―!↓

②ブログ中央の限定記事タイトルから(↓この画面からです)

妄想最終処分場


の2択まで整理できました!

とはいえ②の方からはいっても、もともとアメンバー申請する際の私からのメッセージである『ブログ内アメンバー申請についての記事からお入りください。条件を満たさないと承認できません』という注意書きが表示されるのですがね・・・。


そして前にもお伝えしましたがPC以外…スマフォやガラケーから見る画面はカスタマイズ不能なので依然となんら変わりません。


そんなわけで、大半のケースは強制的に『アメンバー申請について』の記事を経由していただくことになります。

よろしくお願いいたします。


最後に、親切丁寧にご指導いただきました幾夜様!

本当にありがとうございました~!!!!


ぼの様のリクエスト作品になります。蓮さんがかなり性格違います。スマートで紳士な蓮さんがお好きな方はご注意ください。


これまでの話

真夏の海のA・B・C…D                   10  11  12  13



真夏の海のA・B・C…D -14-



(………もう、やだ…)


キョーコは仕事を終えてホテルの部屋に帰ると、ベッドに身を投げ枕に顔をこすりつけた。


結局身構えていたものの、今日蓮はだるまやに来なかった。

出会ってから連日続いていた蓮のキョーコ詣が途切れたのは今日が初だ。約束をしているわけでもないし、キョーコが来てほしいわけでもないのだが。


時間的にかち合うことが多く、いつも蓮にキョーコを独占され牽制されている光がいつもより頑張ってキョーコにアプローチをしていたが、もちろんそんな事にキョーコが気づくはずもない。

いつも蓮がだるまやに来る時間になっても現れないその人物にほっとしていたはずが、時間が過ぎるごとになぜだか気持ちが落ち着かなかった。


顔を合わせることに抵抗を持っていた癖に合わなくて済んだ今日、キョーコの頭の中は昨日一昨日に耳にした言葉がグルグルと回っていた。


『生理的』

『受け付けない』

『無理』

『毛嫌い』


で、ないなら

『望みはある』


『望み』とは上記の言葉たちと対義的な意味を持つことだとはキョーコも理解できる。

すなわち自分が相手を受け入れる、好きになるということ。


(『望み』なんて、これっぽっちも!かけらも!あるわけないじゃない)


過去に想いを寄せた幼馴染は、自分の想いを知った上でいいように自分を利用していた。自分が向けた気持ちに応える気なんてないくせに。


それでも表面上の言葉に浮かれて、決定的に別離の言葉を突きつけられるまで踊らされていた自分。それをようやく思い知ったのは痛みを伴った後で、恋に浮かされた自分の行動がどんなに愚かだったか、冷静になってようやく理解できた。

大学に進んで、物理的な距離も離れた。金銭的に苦しくても、自分の為に勉強し自分の為にお金を稼いで生活する日々は充実感にあふれていた。


もう二度と、あんな愚かな自分にはなりたくない。


(私はもう二度と恋なんて愚かなことはしないんだから…!)


キョーコが枕をぎゅうぎゅうに抱きしめて悶絶していると、キーが解除される小さな音が響いた。同じく本日の仕事を終えた奏江が戻ってきたのだ。


「…………」


部屋に入るなりベッドに突っ伏しているキョーコが目に入り、奏江はどうしたものかと思案する。

一昨日のキョーコは自分との会話中に急に何かに気が付いて黙り込んだ。

昨日のキョーコは顔を赤くしたり青くしたりと忙しく顔色を変化させながら終始ブツブツと何かしらの文句を呟き続けていた。

あの日から、キョーコの口から出てくる文句や愚痴、罵詈雑言は特定の人物に向けられているものばかりだ。いつも自分をそっち方向でからかう蓮に対して顔を赤くして怒ってはいるのだが、昨日の信号機の様なキョーコの顔色の変化の赤にはいつもと違った色合いが見え隠れしていた。


(…何かあったようね。大方やっとキョーコが気が付いたってところかしら)


大学で紆余曲折を経て親友になった奏江は、キョーコの捻じれ拗れで断線多数の壊死した一部分の思考回路を知っている。

幼馴染に手ひどく破壊され、自らの愚かしさを自覚したキョーコによって更に粉々に粉砕されたキョーコの『色恋に関する』思考回路。加えて、その幼馴染はキョーコを地味で色気のない女と評し、そう言った事柄の事象の外に自分が存在するのだという認識をキョーコに植えつけた。故に、キョーコは他人から自分が女として見られる可能性を全く考えていない。

ストレートすぎる蓮のアプローチはストレートすぎるが故、蓮の容姿と相まって『冷やかし』とキョーコはとらえているのだが、そう思っているのはキョーコだけだ。


その上で奏江は考える。

仕事が終わった後は余計なことに振り回されずにゆっくりと休みたい。ひと夏一緒に過ごすことができる喜びを尻尾を振ってまとわりついて全身で表現するキョーコ程ではないにしろ、あの家から離れて親友と過ごす時間は自分だって気持ちよく過ごしたい。


(なんだかんだ言って、この子だってあのストーカーと共通点があるのよね…)


奏江が恥ずかしくなる様な愛情表現をキョーコは臆面もなくぶつけてくるのだ。自分に言い寄ってくるストーカーの事をとやかく文句を言う資格はないと思う。


(どっちにしても、面白くないわ)


別にキョーコが拒否しているなら無理に恋愛をすすめる気も無い。

ただぶつくさと文句を言い毎夜愚痴を聞かされるこっちの身にもなって欲しい。かといって、自分をあんなに威嚇して牽制してきたストーカーを応援してやる気なんて奏江にはさらさらない。

部屋に入るなり見つけたキョーコを見てそんな事を考えていた奏江だったのが、帰ってきた自分に気が付きもせずに、一人思考の海で悶えているキョーコにだんだんとイライラが募ってきた。


「一体何なのよ!辛気臭いっ!」

「ひゃぁぁああ!」


一喝すれば飛び上がったキョーコの体にベッドが揺れる。驚いて奏江を振り返ったキョーコは情けない表情をしていた。


「なんて顔してるのよ、疲れて帰って来たんだからゆっくり休みたいのにアンタは私の平穏をいつも乱すのね」

「ええぇ?そんなぁ…」

「何に悩んでいるか知らないけど、ここは私も休む部屋なんだから。あんまりひどいと追い出すわよっ!」

「だって…」

「悩むなら私のいないところで一人でやって。私もいるこの部屋にそう言うの持ち込まないで」


奏江に向き直ったキョーコは枕を抱きしめたまま視線を彷徨わせた。

冷たく突き放せば、キョーコは耳と尻尾を垂れた犬のようにしょんぼりと項垂れる。その姿を視界に入れてしまうと思わず甘やかしたくなる自分に奏江は内心で舌打ちした。


「ううっ、モー子さぁぁ~ん……」


無意識だろう甘えた声を出して、キョーコは上目遣いに奏江を見上げた。


……キョーコに懸想する男どもばかりを責められない。この無防備全開の天然娘に奏江は頭痛を覚える。


「話す気も無いなら私を巻き込まないでちょうだい」


我ながら甘いと思いながらも、奏江はため息とともに髪を掻き上げた。






「生理的に無理ってどういうことだと思う?」


案に悩みを聞くわよと言っているのに、開口一番に出てくる質問がどうしてそれなのか?

とはいえ、こうなったキョーコに分かりやすく建設的な説明を求めても時間がかかりすぎて面倒なので奏江はそのまま話を聞くことにした。

生理的に無理といえば…そのキーワードから出てくるのは嫌いなモノ、苦手なモノのあれやこれや。言葉通りに思い浮かんだことを奏江は口にした。


「うーん……あんた、嫌いなモノってある?」

「嫌いなモノ…?」

「たとえば、蛇とかカエルとか」

「それは平気よ?」


キョーコから同意を得られないので、もっと一般的な事例を挙げてみる。


「……ナメクジとかゴキブリとか」

「う…それは好きな人の方が少ないでしょ」


思わずその姿を想像してザワリとし、キョーコは自分を抱きしめる様に両腕を手のひらでさすさすと擦った。


「蝶とかトンボとかは平気?」

「うん、綺麗よね」

「そう。昆虫全般が駄目って事じゃないわね」


自分が思っているのと違う方向に転がり始めた話に首をかしげつつもキョーコは奏江の話に相槌を打つ。

まったくもって自分がどうしてそのキーワードに引っかかっているのか前置きをして無いのがいけないのだが、キョーコはそのことに全く気が付いていなかった。


「じゃあ聞くけど、ゴキブリってなんで嫌いなの?」

「だって、なんか気持ち悪いじゃない」

「ま、生ごみ食べてたりとかそう言うのもあるけど。アイツら実際にアンタに危害を加える?襲って来たり、噛みついたり、毒を持ってたりとか…」

「それは……無いけど」


いよいよ方向性の違う話にキョーコは疑問を禁じ得ない。蓮の事で悩んでいるのにどうして虫とかゴキブリとか…。


「じゃあ正当な理由もなく、相手が自分に危害を与える訳でもないのは分かっているけど嫌いって事でしょ」

「あの…」

「なんかのテレビで言ってたわ。生理的に無理って事は本能的に無理って事だって。本能的に受け付けないんだって」


大いに考えたい所とは違うところに来ているのに、何故だかキョーコは奏江の発した言葉が引っかかる。


「……本能的?」

「そ、理由なんてないの。アンタだってゴキブリと聞いて鳥肌立ったんでしょ?腕擦ってたし」

「……理由なんてない?」


『理由が無ければダメなの?』

『理由なんて俺にもわからない』

『俺って人間が、本能的に最上さんを求めてるんだ』


キョーコの脳裏に蘇ったのは、昨日の蓮の言葉。

自分は信用できないと言った事に対しての回答だったはず。


「………で?顔を赤らめてする話じゃないわよね、ゴキブリの話なんて」

「へ?」


記憶の旅に出てしまっていたキョーコは、奏江の声に現実に引き戻される。


「ご…ゴキブリって言い出したのモー子さんの方じゃない…」


キョーコからゴキブリの話題を振ったわけではない。それなのにこの言いよう。キョーコはいささかむっとして口をとがらせた。


「アンタの説明が足りないんでしょ。生理的に無理って話じゃなかったの?」

「………」

「敦賀さん=ゴキブリ?」

「ちょ…」


奏江のあまりの発言にさすがにキョーコも否定しにかかった。


「そりゃ最初は女を弄ぶ顔のイイ男は信用できないと思ったけど…」

「けど?」

「なんか誤解だったって分かったし、思い込みで人を見てた私も悪かったし…」

「…ふーん」


何がどうつながっているのか奏江には理解できないが、やっぱり蓮と繋がっているらしいこの話。

ましてやキョーコは蓮の認識を改めている。


「疑問、解消した?」

「…………」


キョーコが静かになったので奏江は腰掛けてたベッドから立ち上がると、夕飯食べに行きましょ、とキョーコを促した。



昨日からの二次創作以外の記事更新が頻繁で申し訳ありません。


かねてより気にしていたアメンバー申請に関して、親切な神様の協力もありまして順調にブログ内改善処置を進めております。

まだ想定の最終段階に至っておりませんが区切りがつきましたので報告させていただきます。



アメンバー申請の『アメンバーになる』ボタンは現在プロフィール画面・ブログ内左上部サイドバーのプロフィールのコーナーから撤去しております。

サイドバーのプロフはこの通り~。アメンバーになるボタンありません。(画像内赤丸のところ)

※パソコン画面をそのままデジカメで撮ってますので見づらい画像でスイマセンあせる
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プロフィールも同様に。
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アメンバー申請は『アメンバー申請について』の記事内にあります『アメンバー申請する』/『メッセージを送る』からのリンクをご活用していただくスタイルにしました。


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赤丸のところをクリックするとメッセージ送信画面/アメンバー申請画面に飛びます。



なお、限定記事のトップから入るアメンバー申請についてはまだ工事の目途が立っておりません(というかできるか否かもまだ判別でいません…)


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ここからの↓


妄想最終処分場
これです。

これも対策できれば完璧かなぁと思っていますが…。


アメンバー申請をお考えの方は、出来る限り『アメンバー申請について』の記事を経由してアクセスして頂く目的のためにこのような処置をさせていただきました。

理想は従来の『アメンバーになる』ボタンを押すと当ブログの『アメンバー申請について』の記事に飛ぶ形なのですが…。ただ今神様頼りで自力で進めません…orz



ただし、スマフォ・ガラケー版はカスタマイズ不能で今迄通りですので、PC版のみの対応となっております。

スマフォ・ガラケーユーザー様に向けた対策としては、現状と同じく『アメンバー申請について』の定期更新に合わせ、『初めての方へ』のブログ内初期案内も定期的にトップに来るように日時更新をしたいと思っています。※こちらの初期案内はブログの一番古い更新日に固定と完全コピペの記事を定期アップの2本立てじゃないとダメそうですが…。


そのため、すでにアメンバーになっていただいている方々、および当ブログの初期案内・特性を理解していただいて遊びに来ていただいている方にとっては、いつも最新更新情報が上記の二つに占められることが多く、新規アップの二次創作タイトルが分かりづらくなって迷惑以外の何物でもないという状況…。

上記の理由・対策のためとはいえ、常に既知の記事が常に先頭に更新案内が来る可能性をご容赦くださいませ。

(可能な限り一番手に最新二次創作が来るように投稿更新日時は配慮いたしますが…)


現在、更新日時修正して再アップを繰り返す記事が当ブログには下記の5つあります。


☆アメンバー申請について

☆初めての方へ

☆目次-1-

☆目次-2-

☆限定目次(アメンバー限定)


特に月初めはこちらの5つを必ず該当月のフォルダーに移動するため更新案内が重なります。

もう知ってるわ!アンタのとこの案内なんて!という方、寛大な心で更新案内を無視して新規アップのお話だけ探していただけると幸いです。


ご迷惑をかけますが、よろしくお願いいたします。


妄想最終処分場 霜月さうら拝