日本人を拉致した謎が聞けた。産経新聞の記者の言うことでは、日本にスパイを潜入させるには、日本語はもちろん日本人のしぐさや癖などを徹底的に教えこませる必要がある。その先生役に日本人がなるのが一番という。いちおう納得できるが、そこまで徹底させる必要があるだろうか。見た目はほぼ同じだし、言葉を完璧にすればだまされるのじゃないか。拉致された日本人の教育を受けた工作員、つまり日本には北のスパイが来ていることになる。まるで映画のスパイもののようだ。北の工作員が韓国でスパイ活動をしている映画があった。
2005年時での映画なので、それ以降の推移と進展がない。しかも決定的な解決は未だにないので、このドキュメンタリーの内容で充分だ。時がたっても少しも進歩がないことがより如実に突出する。
上映前に政府拉致問題対策本部事務局の人の話があったが、特別な話はなく、北朝鮮に対しての強行一点張りの対応を述べただけで能がない。小泉首相だって2度行って、ある程度の結果を出した。それからの進展がないことを恥じるべきだ。
ここに来た職員にしても、どれだけの力があるか知らないが、良い結果が出ていない以上、褒められる事は無い。だからせめてこのような上映会をやるのだろう。関心のある人がこれだけきた意味を考えて欲しい。
政府はすべての手を尽くしてやってくれている、なんて思ってる人はいないと思う。思えば小泉は現在の首相につながる悪政の権化のような政治家だったが、一つだけ評価できるのは拉致被害者が戻されたことだ。以降の首相何人いたのかわからない位変わったが、何をしたのだ。政治が全てを動かす。その力を使わねばならない、力を向ける方向が違うだろう。
アメリカの大統領トランプ、評判の悪い彼でも彼だからこそ北朝鮮にはたらきかけられた。冒険は必要だ。話し合いは良い結果しか生まない。話し合えば喧嘩にはならない。うまくいかなければまた話せば良い。
日本人の拉致は13人いたことは認めた。そのうち8人は亡くなり、残りの5人が帰ってきた。実際にはずっと多くの日本人が拉致された。他の国の人も拉致されている。
認めた犯罪を裁くところはない。仕掛けた戦争にけじめをつけていない日本が、このことに強く反発できないことにつながっている。彼らは北朝鮮内に置かれた人質だ。拉致問題の解決がされない限り平和条約、国交を結ぶことがない。これはつまり二国間の進展がないのだから被害者は戻されない。
拉致被害者の家族会はまず政権を持つものに要求する。自民党だ。だが彼らはあてにならない。自民党本部前で抗議する。2002年に少しの、しかし確かな前進があった。それだけだった。後は動きはなかった。実行する気がないのだ。トランプ式に強引ではあるが有効な方法はある。政治家は動けないのだろうか。権力者でなければ対応してもらえないだろうか。何が方法はあるはずだ。
まるで神隠しのように突然いなくなる。いくら探してもいなくなった理由さえわからない。場所が共通している。主に日本海側の海岸だ。あちら側の方から誰かがやってきている。証拠がなければ判断できないが、北朝鮮がさらったらしい。脱北者の証言もあった。全ては計画されて実行されたこと。青年男女を誘拐拉致する。めぐみは大人びていたのか、間違って拉致されたらしい。新潟の海岸、夏でなければ人影も少ないだろう。日本に潜入した工作員が適当な人を見つけて連れ去る。安寿と厨子王がさらわれたような、神隠しの正体はいつも誘拐だ。神なら良いことをするはず、神と言う言葉を使って欲しくない。
小さな船に乗せられ二日間、北朝鮮に着く。そこからそれからどのような経緯があったのだろう。日本に帰ってきた5人の口は重かった。傷口を開くような事はよくないが、もう少し語って欲しかった。あちらでの実態の全貌を知りたい。またそこへの追求は可能だし、第2部としてそこを見たい。
ある事件やことがらについて、ある時点でドキュメンタリーが作られる。その事柄が既に解決済みのことであったら、その事の総括として捉えられる。だがその事柄が解決していないで、これからも続くことであったら、その時点でのレポートになる。
めぐみは明らかに後者である。ましてこの事がきっぱりと解決のすることは難しい。あるとすれば、北朝鮮がすべてのエビデンスを公表し、拉致した人を戻すことだ。それで事件の処理としては治まっても、罪の償いが残る。どちらがどのように裁くようになるかわからないが、このことは非常に重要だ。そこまでの処理が終わらない限り、真の意味での解決とは言えない。
ここで時も中身も違うので、対等に並べて考えることができないが、北が求めてくるであろう戦争中のこと、その前の韓国併合のことなどの責任をきちんと解決する義務が日本にはある。これは北だけではない。北南朝鮮、中国、東アジア、オーストラリア、ニュージーランド、南太平洋諸島等、当時日本が領土として奪っていた土地を含むのは当然だ。
戦争はただ一国だけではできないことだ。争う相手があり、その相手からしても別の意味付けができることがある。日本のやった事は複雑な部分もあるが、概ね単純に解釈できる。ひとまず謝ってしまえ、これに尽きる。何しろ全く良いことをしていなかったのだ。アジア各国の独立を助けただの、良いこともしただの、冗談も休み休み言って欲しい。それでもロシアの野望や、アメリカの原爆の実験地にさせられたことなど、こちらもこちらの立場として言いたいことはある。どちらにせよ、戦争で得をする一部の人の口車に乗せられないように気をつけよう。
解決の道筋はあると思う。そこに正しく乗ってゆけば、横田めぐみさんたちが帰ってくる。ただし今のままでは難しいだろう。
監督 クリス・シェリダン パティ・キム
2006年